副業と本業の両立で決めるのは何?連絡が取れない時間帯の合意の作り方と注意点
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- スマートフォンでいつでもつながれる状態が前提になっている理由と、連絡が取れない時間帯は書かないと存在しないという考え方
- 合意に書いておく3つの具体的な項目と、急ぎの連絡が来たときにどう扱うかを決めておく順番
- 手法の導入状況によって連絡の速さが現場ごとに違う理由と、依頼する側も効果を測りきれていない実情
副業で受けている案件は順調でも、本業とのあいだで連絡のタイミングがずれる場面は増えていきます。スマートフォンでいつでも連絡が取れる状態が土台になっている一方で1、「つながらない時間」をどう扱うかは案件ごとに解釈が分かれています。連絡が取れない時間帯を先に合意しているかどうかで、そのあとにすれ違いが起きたときの進め方が変わります。この記事では、受けた案件のなかで連絡の合意をどう作るかを整理します。
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1. つながる前提が既定になっている
スマートフォンでつながれる状態が土台になっている
副業の案件を受けていると、チャットやメッセージがいつ来ても不思議ではない感覚があります。スマートフォンの利用は20〜59歳の各年齢層で9割に上っており1、連絡の手段はすでに広く行き渡っています。
行き渡っているのは手段だけではありません。インターネットの利用目的では、SNSの利用が81.9%で最も高くなっており2、日常のやり取りがチャットベースに寄っていることがうかがえます。
手段が整っているほど、返信の速さが「できて当然」に見えてきます。ここに、連絡が取れない時間帯を扱う難しさの出発点があります。
「つながらない時間」は前提の外側にある
いつでもつながれる状態が前提になると、つながらない時間はその前提から外れた例外として扱われがちです。例外は、明示しない限り相手には伝わりません。
副業の案件では、本業がある時間帯とそうでない時間帯が入り混じっています。前提が「つながる」側にある以上、つながらない時間のほうを言葉にして渡す必要があります。
手段の多さより、いつ使わないかを決めておくことのほうが、このあとの進め方を左右します。次の章では、時間帯を書かないとどうなるかを見ていきます。
図の作成:Remogu編集部。連絡の前提と時間帯の関係を整理したもので、統計データではありません
2. 「つながらない時間」は書かないと存在しない
書かないと、相手の解釈にゆだねることになる
時間帯を書かずに案件を進めると、急ぎの連絡が来たときにどう応じるかは、そのつど相手の解釈にゆだねられます。解釈が食い違えば、同じ出来事でも受け止め方が変わります。
取引の場面でも、同じ発想の見直しが進んでいます。フリーランス・事業者間取引適正化等法の運用では、施行規則の改正が令和7年10月1日に公布され、令和8年1月1日に施行されました5。
この改正が目指すのは、運用の透明性と事業者の予見可能性を確保することです6。書かれていることを増やし、あとから解釈がぶれる余地を減らす方向は、個人の連絡の合意にも当てはめられます。
時間帯を書いている場合と書いていない場合の違い
連絡が取れない時間帯を書いているかどうかは、日々の進め方だけでなく、すれ違いが起きたあとの対応にも表れます。書いていない場合は、急ぎの連絡への応じ方やそのあとの振り返り方までそのつど相手の解釈に委ねられ、同じ出来事でも受け止め方が食い違いやすくなります。書いている場合は、事前に共有した内容に沿って確認できるため、次に同じことが起きたときの進め方も決めやすくなります。
| 場面 | 時間帯を書いていない場合 | 時間帯を書いている場合 |
|---|---|---|
| 急ぎの連絡が来たとき | 応じるかどうかをそのつど判断する | 合意した範囲に沿って確認する |
| すれ違いが起きたとき | どちらの解釈が正しいかで話が止まる | 書いてある内容に立ち返って確認できる |
| 次に同じことが起きたとき | また同じやり取りを繰り返す | 合意を見直す材料になる |
表からも分かるとおり、差が生まれるのは連絡の頻度ではなく、あとから確認できる材料があるかどうかです。合意は一度作れば、そのあとの判断の基準になります。
次の章では、その合意に何を書いておくと役立つのかを具体的に見ていきます。
3. 合意に書く3つのこと
運用の透明性を高める発想を、個人の合意にも使う
先に触れた法改正が目指すのは、運用の透明性と事業者の予見可能性を確保することでした6。予見できる状態をつくるという発想は、個人が交わす連絡の合意にもそのまま使えます。
予見できる状態とは、次に何が起きるかが事前に分かっている状態です。連絡が取れない時間帯についても、いつ・どこまで・どう扱うかを先に共有しておけば、相手はそれをもとに動けます。
合意に書いておく3つの項目
合意に書く内容は、連絡できる時間帯・返信の目安・急ぎのときの扱いの3つに絞ると扱いやすくなります。連絡できる時間帯は、本業がある時間を避けて確保できる範囲を指します。返信の目安は、その時間帯の中でどのくらいで返せるかのおおよその幅です。急ぎのときの扱いは、目安を外れる連絡が来た場合にどう応じるかをあらかじめ決めておくものです。3つがそろっていれば、あとから解釈が分かれる場面を減らせます。
| 項目 | 書いておく内容 | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 連絡できる時間帯 | 本業がある時間を避けて確保できる範囲 | 週の中でおおよそ変わらない枠を選ぶ |
| 返信の目安 | その時間帯の中でどのくらいで返せるか | 幅を持たせて共有する |
| 急ぎのときの扱い | 目安を外れる連絡が来た場合にどう応じるか | 先に一つだけ決めておく |
図の作成:Remogu編集部。合意に書く内容を整理したもので、統計データではありません
3つとも細かく決めすぎる必要はありません。決めていない項目が一つ残るだけで、その項目が次のすれ違いの起点になります。
ここまでで、書く内容の骨格ができました。次の章では、書いても運用が難しくなる現場の事情を見ていきます。
合意のもとになる案件の条件を確認する →
4. やり取りの速さが人に依存する現場
手法の導入状況にはばらつきがある
合意を書いても、現場の進め方によっては運用のしやすさが変わります。アジャイル開発は、一部を含めると全体の2〜4割程度の企業が導入しています8。
一方で、DevOpsやモデルベース開発については、作る側の企業を除くと導入している企業は少ない状況です9。手法が整っている現場ばかりではないということです。
出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成
アジャイル開発を取り入れている現場では、短い周期で状況を確認し合う場面があらかじめ組み込まれているため8、連絡の速さが個人の判断だけに委ねられにくくなります。決まった確認の場があること自体が、合意を補う役割を果たします。
一方でDevOpsやモデルベース開発のように、作る側の企業を除くと導入が少ない領域では9、確認の場そのものが定まっていない分、連絡のやり取りが担当者どうしの個別のペースに寄りやすくなります。合意した時間帯の意味合いも、そのぶん大きくなります。
手法が整っていない現場ほど、人に依存しやすい
手法や手順が整っていない現場では、進捗の共有やレビューの依頼が、決まった仕組みよりも個人のやり取りに寄りやすくなります。担当者の応答の速さが、そのまま進み方を左右する場面が増えます。
人に依存する場面が多い現場ほど、連絡の合意が効いてきます。仕組みがない分を、決めた時間帯と目安が補う形になります。
手法が整っているかどうかは、参画してから見えてくることも少なくありません。合意はその見え方に合わせて調整していく前提で作っておくと扱いやすくなります。
次の章では、依頼する側の状況にも目を向けます。
5. 相手も効果を測りきれていない
新しい働き方への取り組みは広がっている
新しい働き方の実現に向けた取り組みは、業務プロセスの改善・改革と並んで全体的に多く挙げられています3。取り組み自体は珍しいものではなくなっています。
取り組んでも、効果を測りきれていない側面がある
この白書では、期待する効果を得られていないという回答が4か国の中で最も多いという結果も示されています4。取り組みを進めていても、効果の実感には差があるということです。
効果を測りきれていないのは、進め方や体制が整っている企業に限った話ではありません。取り組みが広がっている段階だからこそ、成果の測り方自体が模索されている状況です。
依頼する側が効果を測りきれていない状況では、連絡の頻度や速さについての基準も、まだ固まっていないことが多くなります。基準が固まっていない分、合意を個別に作っておく意味が増します。
取り組みの広がりと効果の実感は、同じ速さで進むとは限りません。この差を前提に置いておくと、連絡のペースについての期待も調整しやすくなります。
新しい働き方への取り組みは全体的に多く挙げられている一方で3、その中身は組織によって幅があります。制度を整える段階の組織もあれば、日々の運用まで踏み込んでいる組織もあり、進み方は一律ではありません。
効果を得られていないという回答が4か国の中で最も多いという結果は4、取り組みの量が多いことと効果を実感できることが、同じようには結びつかないことを示しています。依頼する側の実感が固まっていない段階では、連絡のペースについての期待も、案件ごとに違って当然ということになります。
次の章では、法改正に伴う実際の措置の内訳を数字で見ていきます。
進め方や体制が見える案件を条件から探す →
6. 数字で見る全体像——措置の内訳
改正後の運用状況
施行規則の改正は令和7年10月1日に公布され、令和8年1月1日に施行されました5。改正後の運用状況は、行われた措置の件数という形で公表されています。
措置の内訳
公表されている運用状況のうち、個別の類型として示されているのは、報酬を減らす行為と、不当な経済上の利益の提供要請です。報酬を減らす行為は1件、不当な経済上の利益の提供要請も1件となっています7。件数自体は多くありませんが、どちらも取引の内容にかかわる項目として区分されている点は、合意の中身を具体的にしておく理由につながります。
| 措置の類型 | 件数 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 報酬を減らす行為 | 1件 | 取引条件にかかわる措置として区分 |
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 1件 | 取引条件にかかわる措置として区分 |
図の作成:Remogu編集部。合意を作る際の進め方を整理したもので、統計データではありません
件数の多さよりも、取引の内容が具体的に区分されて公表されている点に意味があります。合意しておきたい項目を考えるときの手がかりになります。
次の章では、この動きの前提にある働き方全体の変化に触れます。
7. テレワークの減少という前提
テレワークは増え続けているわけではない
民間企業のテレワークは、2022年以降減少傾向が続いています10。本業のなかでオンラインでのやり取りが占める割合も、この数年で変わってきている可能性があります。
その一方で、新しい働き方の実現に向けた取り組み自体は、業務プロセスの改善・改革と並んで全体的に多く挙げられています3。テレワークが減っても、働き方の見直し自体は止まっていません。
つまり、本業側の環境が変わっていく可能性がある一方で、副業側の連絡は引き続きオンラインで完結することが多くなります。前提が入れ替わりやすい分、時間帯の合意は本業側の状況が変わるたびに見直す対象になります。
本業の予定が変わったら、合意はどうすればいいですか
本業側の時間帯が変わったタイミングで、連絡できる時間帯を見直すと、そのあとのずれを防ぎやすくなります。急ぎのときの扱いだけ先に確認しておくと、見直しの間も対応しやすくなります。
急ぎの連絡にどこまで応じればいいですか
急ぎのときの扱いとしてあらかじめ共有した範囲であれば、その範囲の中で応じれば足ります。範囲を超える依頼が続くようであれば、合意した内容に立ち返って確認する場面です。
合意は誰が最初に提案すればいいですか
先に提案した側が不利になるわけではありません。連絡できる時間帯を先に共有しておくほうが、そのあとのやり取りを進めやすくなります。
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連絡の時間帯を合意できれば両立は続きます。案件の条件から見てみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 総務省「通信利用動向調査の結果」働く層の利用(2025年5月・2026年8月確認)
*2 総務省「通信利用動向調査の結果」使われ方(2025年5月・2026年8月確認)
*3 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」取組の中身(2025年7月・2026年8月確認)
*4 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」効果の実感(2025年7月・2026年8月確認)
*5 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」規則の改正(2026年6月・2026年8月確認)
*6 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」予見できるように(2026年6月・2026年8月確認)
*7 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」そのほかの類型(2026年6月・2026年8月確認)
*8 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」混在する現実(2025年4月・2026年8月確認)
*9 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」確認の自動化(2025年4月・2026年8月確認)
*10 総務省「令和7年版 情報通信白書(デジタル活用の動向)」受け入れ側の変化(2025年7月・2026年8月確認)