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    【AI推進法】AIを作るフリーランスが確かめる適正性指針の4つの基本方針と契約での対応

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    夕方の自宅の仕事場で、2台のモニターに向かって作業するエンジニアの写真です。

    📘 この記事でわかること

    • 2025年12月に決定された指針がAI法第13条に基づくことと、規模や立場、リスクに応じた水準で対応する前提
    • リスクベースとアジャイルを含む4つの基本方針と、透明性が情報の開示と事後的な検証で成り立つこと
    • 活用事業者が利用者に渡す情報や事業継続計画を含む取組と、定例で聞かれたときに確かめる5つの順番

    RAGを組み込む案件の定例で、発注側から「AI推進法の指針には対応できていますか」と聞かれ、答えに詰まりました。法律ができたと聞いてはいても、自分が作るAIに何が求められるのかは分からないままです。指針の中身を確かめると、この問いは罰を恐れる話ではなく、リスクに応じた水準で説明できるかどうかの話だと見えてきます。「指針は罰ではなく物差し」という一言を、この記事の終わりまで持っていきます。

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    1. AIを作るフリーランスが指針を確かめる理由

    内閣府の人工知能戦略本部は、2025年12月19日に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」を決定しました1。AI推進法の下で、AIを作る側と使う側の双方が何に取り組むかを示した文書です。生成AIやRAGを組み込む案件を受ける立場では、発注側がこの指針を話題にする場面が出てきます。

    聞かれて困るのは、指針を読んでいないときです。反対に、指針が何を求めて何を求めていないのかを知っていれば、定例の場で落ち着いて答えられます。そこでこの記事では、資料である指針そのものに書かれた範囲だけを確かめていきます。

    Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です2。まず、指針がどんな位置にある文書なのかから見ていきます。

    2. 適正性確保に関する指針の位置付け

    AI法第13条に基づく指針

    指針は、AI法第13条に基づいて策定されました。目的は、事業者や国民等の全ての主体が、AIの研究開発と活用を適正に進めるための自主的かつ能動的な取組を促すことです1。対象は開発する側に限られず、AIを使う側も含む全ての主体です。

    ここで押さえたいのは、指針が「促す」文書だという点です。資料の言葉は、自主的かつ能動的な取組を促すために策定された、というものです。一方で、資料にこの指針を守らなかった場合の扱いは書かれていません。罰則の有無は、資料に記載がないこととして受け止めます。

    図1:法律から指針、各主体への流れ
    法律から指針、各主体への流れ AI法第13条 適正性確保に関する指針 全ての主体

    出典:内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」(2025年12月)をもとに作成

    規模や立場、リスクに応じた水準

    指針が取り組む事項について求めているのは、各主体の規模や立場、AIがもたらすリスクに応じて、適切な水準で対応することです1。全ての主体に同じ水準を求める形にはなっていません。小さな案件には小さな案件なりの、大きなリスクを持つAIにはそれに見合った対応が想定されます。

    さらに、指針は適正性について一義的な定義や絶対的な水準を定めるものではありません1。つまり、チェックリストを全項目満たせば合格、という文書ではないのです。冒頭の定例で使える一言が、ここから出てきます。指針は罰ではなく物差しなので、リスクに応じた水準で説明できるようにします。

    3. 4つの基本方針

    木の机に並べた4つの無地の積み木の、最後の1つを置く手元の写真です。

    基本方針ごとの資料の記載

    指針の基本方針は4つの柱で組まれています。このうち、この記事で中身まで確かめるのは、一つ目のリスクベースでのアプローチと、アジャイルな対応の2つです。ほかの2つは、名前の紹介にとどめます。中身は指針の原文で確かめてください。

    基本方針資料の記載
    リスクベースでのアプローチAIがもたらすリスクを特定・評価し、影響度合いに応じて適切な対策を講じる1
    ステークホルダーの関与名称のみ紹介します
    一気通貫のAIガバナンス名称のみ紹介します
    アジャイルな対応変動し得るリスクに対して、PDCAサイクルを回しながら柔軟・迅速に対応する1

    リスクの大きさで対策を決める考え方

    リスクベースでのアプローチでは、AIがもたらすリスクを特定し、評価し、その影響度合いに応じて適切な対策を講じます1。対策の厚みを、AIが引き起こしうる影響の大きさで決める考え方です。先に見た「規模や立場、リスクに応じた水準」と、同じ向きの話です。

    たとえば社内の文書検索に使うRAGと、利用者に回答を返すRAGとでは、起こりうる影響が違います。指針が求めるのは、その違いを見積もったうえで対策の水準を決めることです。見積もらずに全てを同じ厚みで固めることも、見積もらずに何もしないことも、この考え方とは噛み合いません。

    変わるリスクに合わせて回す対応

    アジャイルな対応は、変動し得るリスクに対して、PDCAサイクルを回しながら柔軟・迅速に対応するというものです1。AIの出力や使われ方は、公開した後も変わりえます。一度評価して終わりにせず、見直しを回し続ける前提で作る、ということです。

    次の節では、4つの基本方針とは別に、指針が「要素」の例として挙げる透明性を見ていきます。

    4. 透明性という要素

    情報の開示と事後的な検証

    指針が挙げる要素の一つに、透明性があります。透明性の要素は、必要かつ技術的に可能な範囲での情報の開示と、事後的な検証可能性の確保等によって、透明性を適切に確保することです1。要素は他にもありますが、この記事で扱うのは透明性だけです。

    図2:透明性の要素が示す2本の柱
    透明性を支える2つの手段 開示と検証の二本立て 情報の開示 必要かつ技術的に可能な範囲 事後的な検証 検証可能性の確保 透明性の確保

    出典:内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」(2025年12月)をもとに作成

    「必要かつ技術的に可能な範囲」の読み方

    情報の開示には「必要かつ技術的に可能な範囲」という限定が付いています1。全てを開示せよ、という書き方ではありません。技術的にできないことまで求める文書ではなく、必要性と実現可能性の両方を見て決める余地が残されています。

    もう一方の事後的な検証可能性は、何かが起きた後に確かめられる状態を保つことです1。開示と検証のどちらも、定例で問われたときに「何を開示し、何を後から確かめられるようにしているか」という形で答えられます。次の節では、この透明性を含めて、活用事業者が取り組む事項を見ます。

    5. 活用事業者が取り組む事項

    活用事業者という呼び名

    指針で「活用事業者」と呼ばれるのは、AIを活用した製品、サービスの開発、提供をする者です1。AIを使うだけの立場ではなく、AIを組み込んだものを作って渡す側が含まれます。RAGや生成AIを組み込むシステムを手がける仕事は、この説明に近い位置にあります。

    ただし、個人で受託する立場が活用事業者に当たるかどうかは、この資料には書かれていません。当たるかどうかを自分で決めつけず、指針の原文と発注側とのやり取りで確かめます。発注側が自社を活用事業者と考えているのか、それとも別の立場なのかを聞いておくと、定例での会話がかみ合います。

    ライフサイクル全体でリスクに向き合う

    活用事業者に求められる中心の取組は、AIの設計・開発・提供・実装等のライフサイクル全体で、リスクの特定・評価・対処をするための組織的なプロセスを含むAIガバナンスを構築・運用・継続改善することです1。作って終わりではなく、運用に入ってからも改善を続ける前提で書かれています。

    前の節で見たアジャイルな対応と、向きが重なります。リスクは変わりえるので、特定と評価と対処を一度きりにせず、組織の仕組みとして回し続けます。個人の頑張りではなく「組織的なプロセス」と書かれている点も、受託の側にとっては見ておきたい箇所です。自分の担当範囲が、発注側のどのプロセスにつながるのかを確かめる手がかりになります。

    既存のITの仕組みを活かす考え方

    AIガバナンスは、ゼロベースから構築することに限りません。既存のITシステム等に適用されているガバナンスプロセスを活用することも有用だと、指針は述べています1。新しい仕組みを一から作らなくても、すでに動いている運用の流れに、AI特有のリスクの見方を足していく形が想定されます。

    案件の現場で言えば、発注側にある変更管理や障害対応の流れをどこまで使えるのかを聞くことが、最初の一歩になります。

    取組ごとの資料の記載

    活用事業者に関する資料の記載を、取組の種類ごとに並べると、指針が何を言っていて何を言っていないのかが見分けやすくなります。定義、組織的なプロセス、既存の仕組みの活用の3点は、それぞれ別の文で書かれています。

    項目資料の記載
    活用事業者とはAIを活用した製品、サービスの開発、提供をする者1
    取り組む中心ライフサイクル全体で、リスクの特定・評価・対処をするための組織的なプロセスを含むAIガバナンスを構築・運用・継続改善する1
    進め方の考え方ゼロベースから構築することに限らず、既存のITシステム等のガバナンスプロセスを活用することも有用1

    6. 利用者に渡す情報と生成物の見分け、事業継続

    テーブルに並べた2枚の風景写真を、二人がそれぞれ指して見比べる写真です。

    AIを提供するときに利用者へ渡す情報

    AIを提供する際は、AIの仕組み・限界、禁止事項、学習するデータの収集ポリシー、出力の信頼性に関する注意喚起等の情報を、利用者に提供します1。作ったAIを使う人が、何ができて何ができないのかを知らないまま使い始めることがないように、渡す側が先に用意する情報です。

    RAGを組み込む案件なら、回答の根拠にどんな文書を使うのか、外れた回答が出ることがあるのか、といった内容が該当しそうです。ただし、資料が挙げているのは先ほどの項目までです。画面にどう表示するか、どの文言にするかは、資料には書かれていません。発注側と相談して決めます。

    図3:AIの提供時に利用者へ届ける情報
    利用者に提供する情報の中身 提供時に添える中身 AIの仕組み・限界 禁止事項 データの収集ポリシー 出力の信頼性への注意

    出典:内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」(2025年12月)をもとに作成

    AIの生成物と見分ける技術

    もう一つ、活用事業者は、AIの生成物であることが判断できる技術の開発に努め、必要に応じて実装します1。資料が例に挙げているのは、電子透かし、来歴管理、APIです。文章や画像を生成するAIを組み込む案件では、出てきたものがAIによるものだと後から判断できる状態を考えることになります。

    書かれているのは「開発に努め、必要に応じて実装する」です。全ての案件で全ての技術を実装する、という書き方ではありません。案件のリスクに応じて、どこまで入れるかを発注側と決める余地があります。

    障害に備える事業継続計画

    AIを用いたシステムの運用者やサービスの提供者は、障害に備えて事業継続計画をあらかじめ策定します1。AIが止まったとき、あるいは想定外の出力を続けたときに、業務をどう続けるかを先に決めておく、という趣旨です。

    受託の側が自分の仕事として計画を書くのか、発注側が持っている計画に合わせて動くのかは、資料からは分かりません。そのため、案件の始めに「障害時の計画は誰が持っていますか」と聞いておくと、後で食い違いが起きにくくなります。次の節では、ここまで見てきた内容を、定例で聞かれる順に並べます。

    7. 定例で聞かれたときに確かめる順番

    確かめる5つの順番

    「AI推進法の指針には対応できていますか」と聞かれたとき、全てを一度に答える必要はありません。指針が求めるのは、リスクに応じた適切な水準での対応です1。作るAIのリスクの大きさから確かめ、組織の流れ、利用者への情報、事業継続、原文の順に進めると、答えが組み立てやすくなります。

    順番確かめること資料の記載
    1作るAIのリスクの大きさを見積もったかリスクを特定・評価し、影響度合いに応じて対策を講じる1
    2リスクの特定・評価・対処の流れが発注側にあるかライフサイクル全体での組織的なプロセスを含むAIガバナンス1
    3利用者に渡す情報を用意したか仕組み・限界、禁止事項、データの収集ポリシー、出力の信頼性への注意喚起1
    4障害時の事業継続計画を誰が持つか運用者やサービスの提供者があらかじめ策定する1
    5指針の原文を確かめたか2025年12月19日に内閣府の人工知能戦略本部が決定1
    図4:定例で答える順番
    定例で確かめる順番 1 リスクの大きさの見積もり 2 特定・評価・対処の流れ 3 利用者に渡す情報 4 事業継続計画の担当 5 指針の原文

    図の作成:Remogu編集部。指針の記載をもとに確かめる順を整理したもので、指針が定めた手順ではありません

    指針を物差しとして使う

    5つの確認は、指針が定めた手順ではありません。資料の記載を、受託の側が定例で使いやすい順に並べたものです。指針は適正性について一義的な定義や絶対的な水準を定めるものではなく1、満たせば合格という文書ではありません。使い方としては、自分が作るAIのリスクに合わせて、どこまで説明するかを決める物差しです。

    冒頭の定例に戻ります。「AI推進法の指針には対応できていますか」と聞かれたら、まず作っているAIのリスクの大きさを話し、発注側の流れの中でどこを担当しているかを伝えます。指針は罰ではなく物差しなので、リスクに応じた水準で説明できるようにします。

    Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングです。案件の90%以上がフルリモート可能です2。AIを組み込む案件に関わる前に、登録して自分の経験に合う条件を確かめておくと、定例で聞かれる前に準備を始められます。

    8. よくある質問

    AI推進法の指針を守らないと罰則がありますか

    指針は、事業者や国民等の全ての主体による自主的かつ能動的な取組を促すために策定されたものです1。また、適正性について一義的な定義や絶対的な水準を定めるものではありません1。この資料には、罰則の記載はありません。

    小さな案件でも同じ水準が求められますか

    同じ水準を一律に求める書き方ではありません。取り組むべき事項は、各主体の規模や立場、AIがもたらすリスクに応じて、適切な水準で対応することが求められます1。案件の大きさとAIのリスクの両方を見て、どこまで説明するかを決めます。

    指針の「活用事業者」とは誰のことですか

    AIを活用した製品、サービスの開発、提供をする者です1。個人で受託する立場が当たるかどうかは、資料には書かれていません。指針の原文と発注側とのやり取りで確かめます。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」(2025年12月・2026年10月確認)
    *2 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能