サポート詐欺の偽警告が業務PCに出たら?フリーランスが止める手順と事後の確認
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 偽警告で不安をあおり、電話をかけさせてサポート契約へ誘導する手口と、2026年4〜6月に相談が1,400件余りへ増えた推移
- 国税庁を名乗る電話から遠隔操作ソフトを入れてしまった事例と、相談できる相手が近くにいない環境で起きること
- 偽警告が出たときに止める3つの動きと、遠隔操作を許したあとにIPAの回答が挙げる確認の順番
納期前の夜、調べ物をしていたブラウザから警告音が鳴り、「ウイルスに感染しています」の画面が出ました。表示された番号に電話をかけるか、手が止まります。相談できる同僚は近くにいません。
フリーランスエンジニアの業務PCには、預かったコードや資料、ネットバンキングの画面が同居しています。サポート詐欺の偽警告に遠隔操作を許したら、委託元の情報まで危うくなるのではないか。その不安に、IPAの2つの相談状況レポートから答えます。
答えを先に言えば、電話の前に、画面を閉じて、誰かに話します。
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1. サポート詐欺の手口
偽警告から電話へ誘導する流れ
サポート詐欺は、IPAが「ウイルス検出の偽警告」として整理している手口です。ウイルスを検出したという偽の警告で不安をあおり、電話をかけさせてサポート契約に誘導します1。画面の警告は、電話をかけさせるための入口です。
流れは三つに分けると見通せます。偽警告が表示され、表示された番号に電話をかけ、その先でサポート契約への誘導や遠隔操作へ進みます。最初の一歩が画面を見ることなので、ここで止まれば、その先には進みません。
図の作成:Remogu編集部。IPAの説明を整理したもので、統計データではありません
相談の中で最も多い手口
IPAの情報セキュリティ安心相談窓口で、2026年4〜6月に手口別で最も多かった相談が「ウイルス検出の偽警告」です。1,400件余りで、構成比は37.3%でした。続く「不正ログイン」は423件(11.0%)で、差の大きさが分かります1。
ただし、この1,400件余りは相談の件数です。実際に被害を受けた件数を表す数字ではありません。偽警告が出て不安になり、相談した人の数だと読むのが、資料に沿った読み方です。
では、この手口の相談は増えているのでしょうか。次に、四半期ごとの推移を見ます。
2. 相談件数の推移
相談全体の増え方
IPAの情報セキュリティ安心相談窓口が2026年4〜6月に受けた相談対応は3,832件で、前四半期から約8.5%増えました1。前年の同じ四半期と比べると、約30.3%の増加です1。
その中で「ウイルス検出の偽警告」の相談は1,400件余りで、前四半期から約23.7%増えています1。相談全体の増え方より、偽警告の増え方のほうが大きい四半期でした。
偽警告の相談件数の5四半期
「ウイルス検出の偽警告」の相談件数を、2025年4〜6月から2026年4〜6月まで並べました。2025年4〜6月が912件、7〜9月が647件、10〜12月が789件、2026年1〜3月が1,154件、4〜6月が1,400件余りです1。最初の四半期と最新の四半期を比べると、1,400件余りのほうが大きく、途中に減った四半期が挟まっています。
| 期間 | ウイルス検出の偽警告の相談件数 |
|---|---|
| 2025年4〜6月 | 912件 |
| 2025年7〜9月 | 647件 |
| 2025年10〜12月 | 789件 |
| 2026年1〜3月 | 1,154件 |
| 2026年4〜6月 | 1,400件余り |
出典:IPA「情報セキュリティ安心相談窓口の相談状況[2026年第2四半期(4月~6月)]」をもとに作成
検挙の発表と、その後の動き
2025年5月30日に、警察庁がサポート詐欺に関係する被疑者6人の検挙を発表しました。IPAのレポートによると、その後に相談件数は一時的に減りましたが、再び増えています1。
検挙のニュースが出れば、同じ手口は消えると考えたくなります。しかし、5四半期の並びで見ると、2025年7〜9月の647件を底に、相談は2026年4〜6月まで3四半期続けて増えています。減った時期があっても、偽警告が出たときの備えを外す理由にはなりません。
次は、個人からの相談ではなく、企業・組織向けの窓口に届いた相談を見ます。
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3. 企業・組織向けの窓口に届く相談
サイバーセキュリティ相談窓口の件数
IPAには、個人向けとは別に、2025年4月に開設した企業・組織向けのサイバーセキュリティ相談窓口があります。2026年4〜6月の相談対応は302件で、前四半期から約6.7%増えました2。
その302件のうち、サポート詐欺は68件です。2026年1〜3月は41件でした2。なお、この窓口の件数と、先に見た個人向け窓口の件数は別の窓口の数字です。足し合わせたり、同じ尺度で比べたりはできません。
国税庁を名乗る電話の事例
同じ窓口の相談事例に、国税庁を名乗る自動音声の電話があります。e-Taxソフトのバージョンアップが必要と案内され、送られてきたメールのリンクから、遠隔操作ソフトを入れてしまいました2。
この事例では、ほかの人が怪しいことに気付き、電話を保留にして端末の電源を落としました2。止めたのは、操作していた本人ではなく、そばにいた人です。
個人事業主にとっての意味
この事例は企業・組織向け窓口に届いたものです。ただし、個人事業主のフリーランスもe-Taxを使います。申告の時期に、国税庁を名乗る電話とソフトの更新の案内が重なれば、同じ流れに入る可能性があります。ここから先は書き手の推論ですが、他人事とは言えません。
事例で電源を落としたのは、そばにいた人でした。自宅で一人で作業しているなら、その役目を担う人がいません。この違いが、次の節の中心です。
4. 一人で作業する環境で偽警告が通りやすい条件
相談しにくい状況を作る仕組み
IPAは、攻撃者が被害者を電話やチャットなどの閉じた環境へ誘導し、第三者への相談や確認が行われにくい状況を作り出すとしています2。偽警告に電話番号が載っているのは、画面の外の会話へ移すためです。
電話口の相手とだけ話している間は、誰にも画面を見せていません。同僚に「これ、おかしくないか」と聞く機会が生まれにくく、その機会が無いことを、攻撃者は利用します。
チェック体制と複数人対応の違い
IPAは、チェック体制がしっかりしている組織や、複数人で対応している場合は、その後の詐欺へ進みにくくなっている様子がうかがえるとしています2。裏返すと、一人で対応する場面は、止める仕組みを自分で持たなければなりません。
さらにIPAは、近年は遠隔操作ソフトと電話を組み合わせ、二要素認証を含む各種認証手続きを被害者自身に実施させる手口が増えているとしています2。認証を通すのが自分の手なら、その場で止める人が近くにいないことの重みが増します。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です3。自宅で一人で作業する働き方が前提になるほど、相談の仕組みは自分で作ることになります。
攻撃者が作る状況と一人の環境
下の表は、IPAが示す攻撃者の動きを左に、それを一人で働く環境に置き換えたときに起きうることを右に並べています。右の列は、IPAの記述をもとにした書き手の推論で、資料にそのまま書かれているわけではありません。
| 攻撃者が作る状況 | 一人で働く環境で起きること |
|---|---|
| 電話やチャットなど閉じた環境へ誘導する2 | その場の会話を、ほかの人に見せる機会が無い場合があります |
| 第三者への相談や確認が行われにくくなる2 | 怪しいと感じても、確かめる相手が近くにいない場合があります |
| 遠隔操作ソフトと電話で、認証手続きを本人に実施させる2 | 認証を通す操作を、自分の手で進めてしまう場合があります |
| チェック体制や複数人対応があると進みにくい2 | その仕組みが無く、止める役目を自分で担うことになります |
止める仕組みを自分で持つ、という考え方は、次の節の手順につながります。偽警告が出たその場で、どの順番で動けばよいのかを見ていきます。
5. 偽警告が出たときに止める手順
電話をかける前の三つの動き
偽警告は、電話をかけさせるための入口です1。そうであれば、止めるのは電話の前になります。画面の具体的な操作手順は資料に書かれていないので、ここではIPAの説明と事例をもとに、書き手が三つの動きに整理します。
一つめは、画面を閉じることです。二つめは、表示された番号に電話をかけないことです。電話の先でサポート契約への誘導が始まるので、かけなければ、その先へは進みません1。
三つめは、誰かに話すことです。IPAは、攻撃者が被害者を電話やチャットなどの閉じた環境へ誘導し、第三者への相談や確認が行われにくい状況を作り出すとしています2。画面を人に見せて話せば、その閉じた環境が崩れます。
図の作成:Remogu編集部。IPAの説明と事例を整理したもので、統計データではありません
電源を落とした事例
国税庁を名乗る電話の事例で、止めたのはそばにいたほかの人でした。怪しいことに気付き、電話を保留にして、端末の電源を落としています2。通話の相手と端末の両方を、その場で止めた動きです。
一人で作業していれば、気付く人も、保留にする人も自分です。そのため、誰かに話す先は、偽警告が出てから探すより、出る前に決めておくほうが動けます。これは書き手の推論で、決め方は第7節で扱います。
では、すでに電話をかけ、遠隔操作を許してしまったときは、何を確かめればよいのでしょうか。
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6. 遠隔操作を許してしまった後の確認
初期化と保全の順番
企業・組織向け窓口でIPAが示した回答は、どのようなソフトが実行されたか判断できないため、安全のためパソコンの初期化を推奨しています。あわせて、そのパソコンで使っていたパスワード等の変更も推奨しています2。
ただし、端末上で何が行われたかを調べたい場合は、別の流れになります。同じ回答は、デジタルフォレンジック調査を検討し、その場合は初期化をすぐに行わず、電源を切ったまま保全して、ベンダーの案内を受けるとしています2。
初期化を先に行えば、端末に残った記録を調べる道は閉じます。そのため、調べたいかどうかを先に決めることが、順番の分かれ目です。これは二つの回答を並べたうえでの書き手の整理です。
サービスとカードと個人情報
同じ回答は、そのパソコンで利用していたサービスの不正使用の確認を推奨しています。クレジットカードやネットバンキングがあれば、すぐにカード会社や銀行へ相談するよう求めています2。
個人情報が保存されていた場合は、個人情報保護委員会への報告が必要になる場合があります。そのため、同委員会へ相談するなどの対応が挙げられています2。報告が必要かどうかは場合によるので、預かった情報の中身が分からなければ、相談もできません。
認証の見直し
個人向けの窓口のレポートでIPAは、不正ログイン対策として、パスワードをできるだけ長く、複雑で、使い回さないものにするよう推奨しています。多要素認証が設定できるサービスでは、積極的に使うことも推奨しています1。企業・組織向け窓口の回答とは別のレポートの内容です。
確認項目と回答の中身
下の表は、遠隔操作を許したあとの確認を、IPAの回答の中身とともに並べています。パソコンの扱いは、初期化と保全のどちらを選ぶかで分かれます。そのほかの項目は、サービス、カード、個人情報、認証の順に、確かめる先が違います。
| 確認すること | IPAの回答の中身 |
|---|---|
| パソコンの初期化 | 安全のため初期化を推奨し、使っていたパスワード等の変更も推奨2 |
| 端末の保全 | 端末上の行為を調べたい場合は、初期化をすぐに行わず、電源を切ったまま保全2 |
| サービスとカード・銀行 | サービスの不正使用を確認し、カードやネットバンキングはすぐに相談2 |
| 個人情報 | 保存されていた場合、個人情報保護委員会への報告が必要になる場合があるため相談2 |
| 認証(個人向け窓口のレポート) | パスワードを長く、複雑に、使い回さず、多要素認証を積極的に使う1 |
この確認は、起きたあとの動きです。起きる前に何を決めておけば、一人でも動けるのかを、次の節で見ます。
7. 委託元の情報を預かる立場で決めておくこと
相談先を先に決める
チェック体制がしっかりしている組織や、複数人で対応している場合は、その後の詐欺へ進みにくくなっている様子がうかがえるとIPAは述べています2。一人で働く環境には、その仕組みがありません。
そこで、仕組みの代わりに、画面を見せて話せる相手と、相談する窓口を、偽警告が出る前に決めておきます。窓口には、個人向けの情報セキュリティ安心相談窓口と、企業・組織向けのサイバーセキュリティ相談窓口があります1。どちらに連絡するかも、先に決めておくと迷いません。
預かった情報の範囲をつかむ
個人情報が保存されていた場合は、報告が必要になる場合があります2。そのパソコンに、預かったコード、資料、個人情報のうちどれが入っているかを知らなければ、相談する内容も決まりません。
案件ごとに、預かった情報がどのパソコンのどこにあるかを控えておくと、相談の場で説明できます。これは資料に書かれた手順ではなく、書き手の提案です。
委託元への連絡は契約で確かめる
委託元へいつ、どのように連絡するかは、契約で取り決めた内容によって異なります。契約の中身はこの記事では断定できないので、発注の書面を見て、情報の取り扱いと事故のときの連絡について、どう書かれているかを確かめます。
図の作成:Remogu編集部。IPAの回答を踏まえた書き手の整理で、統計データではありません
画面の前で手が止まる夜に
納期前の夜に警告音が鳴り、手が止まっても、動き方は決まっています。電話をかける前に、画面を閉じます。そして、決めておいた相手に話します。相談しにくい状況を作るのが攻撃者の側なら、先に相談先を決めておくのは、その状況を崩す備えです。
電話の前に、画面を閉じて、誰かに話します。この一言を、一人で働く環境の決まりごとにしておく。それが、委託元の情報を預かる立場での最初の備えです。
備えを整えたうえで、次の案件の条件も知っておきたいなら、Remoguに登録して、自分の経験に合うリモート案件の条件を確かめてみてください。
8. よくある質問
偽警告の番号に電話をかけてしまいました。まず何をすればよいですか
IPAが紹介する事例では、怪しいと気付いたほかの人が、電話を保留にして端末の電源を落としました2。遠隔操作を許した場合のIPAの回答は、パソコンの初期化と、使っていたパスワード等の変更を推奨しています2。
端末上で何が行われたかを調べたい場合は、初期化をすぐに行わず、電源を切ったまま保全するとしています2。電話をかけただけで遠隔操作を許していない場合の扱いは、この資料には書かれていません。
遠隔操作されたパソコンは初期化したほうがよいですか
IPAの回答は、どのようなソフトが実行されたか判断できないため、安全のため初期化を推奨しています2。ただし、端末上で行われたことを調べたい場合は、デジタルフォレンジック調査を検討し、初期化をすぐに行わないとしています2。調べたいかどうかで、順番が変わります。
個人事業主も相談できる窓口はありますか
IPAには、個人向けの情報セキュリティ安心相談窓口1と、企業・組織向けのサイバーセキュリティ相談窓口があります2。個人事業主が企業・組織向けの窓口の対象に含まれるかどうかは、この資料からは断定できません。窓口の案内ページで対象を確かめてください。
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出典・参考情報
*1 独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ安心相談窓口の相談状況[2026年第2四半期(4月~6月)]」(2026年7月22日・2026年10月確認)
*2 独立行政法人情報処理推進機構「サイバーセキュリティ相談窓口の相談状況[2026年第2四半期(4月~6月)]」(2026年7月22日・2026年10月確認)
*3 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能