フロントエンドエンジニアの副業はアクセシビリティ改修から?画面ごとに受ける案件の見極め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 新規画面の開発で待ちが生まれやすい場面と、既存画面の改修を本業の時間と重ねやすい理由
- 2024年4月に義務化された合理的配慮と、努力義務にとどまるウェブアクセシビリティの書き分け
- 公的機関の84.9%が取り組む一方で、取り組まない団体の59.4%が専門の人員不在を挙げている実態
本業のレビューで、ボタンにラベルが無い、見出しの順番が飛んでいる、と指摘されました。画面を1つずつ直していくと、その画面は閉じられ、夜の2時間でも終わりが見えます。フロントエンドエンジニアが業務委託の副業を始めるとき、心配なのはデザインの確定や仕様の変更を待つあいだに締切だけが迫り、本業の時間まで食われることではないでしょうか。フロントエンドの副業は、画面ごとに閉じられる仕事から選びます。
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1. フロントエンドの副業が止まりやすい理由
待ちが生まれる3つの場面
フロントエンドの仕事は、画面を組む人だけでは進みません。デザインが確定するのを待つ、仕様が変わるのを待つ、レビューの返事を待つ。この3つの待ちが、副業では本業の時間と重なりやすいと筆者は考えています。
本業であれば、待っているあいだに別の画面へ移れます。副業は使える時間が夜や週末に限られるため、待ちが入ると、その日の作業時間がそのまま空きます。たとえばデザインの修正が届くのが翌日なら、次に手を付けられるのは翌々日の夜です。
仕様の変更も同じ形で響きます。ボタンの挙動が途中で変わると、組んだ分の一部をやり直すことになります。やり直しの時間を本業の側から取り戻そうとすると、副業の締切が本業の予定を押し出します。
新規画面の開発と既存画面の改修の違い
新規画面の開発は、デザインと仕様が固まって初めて手が動きます。決める人が増えるほど、待ちの入る場面も増えるというのが筆者の見立てです。
一方、既存画面の改修は、直す対象がすでに画面として存在します。直す箇所を一覧にして1画面ずつ閉じていけば、だれかの返事を待たずに進められる部分が残ります。
図の作成:Remogu編集部。筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
では、既存画面の改修のなかで、副業に向く区切り方のできる仕事は何でしょうか。
2. 画面ごとに区切れる仕事の例

アクセシビリティ改修の中身
アクセシビリティ改修は、ボタンのラベル、見出しの順番、色の組み合わせなど、画面の構造を直す仕事です。直す箇所は画面ごとに挙げられるため、1画面で1つの成果として区切れます。デザインの確定を待たずに、すでにある画面から着手できる点が、副業と相性のよい理由だと筆者は見ています。
この仕事が頼まれる背景には、法律の動きがあります。デジタル庁のガイドブックによれば、2024年4月1日から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害者への合理的配慮が義務化されました1。
一方、ウェブアクセシビリティへの取り組みは、合理的配慮を提供するための環境の整備として、努力義務が課されています1。義務化されたのは合理的配慮であり、ウェブアクセシビリティそのものが義務になったわけではありません。
義務と努力義務の書き分け
次の表は、デジタル庁のガイドブックに書かれた内容を、項目ごとに並べ直したものです。義務化されたのは、事業者による障害者への合理的配慮です。ウェブアクセシビリティへの取り組みは、その合理的配慮を提供するための環境の整備にあたり、課されているのは努力義務です。発注する側と話すときに、この二つを混ぜると、依頼の前提がずれてしまいます。副業で改修を受けるなら、自分の説明が義務と努力義務のどちらを指しているのかを、言葉にして区別しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠の法律 | 改正障害者差別解消法 |
| 施行日 | 2024年4月1日 |
| 義務化されたもの(ガイドブックの説明) | 事業者による障害者への合理的配慮 |
| ウェブアクセシビリティの位置づけ | 合理的配慮を提供するための環境の整備として、努力義務 |
本業の時間に収める見立て
改修の依頼は、画面の一覧から始められます。トップページ、問い合わせフォーム、ログイン画面と並べていけば、1画面ずつ見積もりを出し、1画面ずつ納められます。こうして区切った仕事なら、本業で急な会議が入った週は、次の画面を翌週に回せます。
ここまでに挙げたのは、筆者の見立てです。実際に画面を区切れるかは、依頼する側のサイトの作りによって変わります。
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3. 公的機関の取り組み状況と専門人員の不在
取り組んでいる団体は84.9%
総務省の調査では、公的機関1,058団体に、ウェブアクセシビリティの確保に取り組んでいるかを尋ねています。「取り組んでいる」と答えたのは84.9%、「取り組んでいない」は15.1%でした2。
ただし、この数字は自治体などの公的機関の回答です。民間企業の割合ではないため、民間のサイトの状況を示す根拠には使いません。
取り組んでいない団体が挙げた理由
次の2つの割合は、全体ではなく、取り組んでいないと答えた団体の中での割合です。最も多かった理由は「人員や予算が限られており、十分な投資ができない」で、65.6%でした2。
次いで多かったのは「アクセシビリティに関する専門知識や経験を持つ人員がいない」で、59.4%でした2。
出典:総務省「公的機関のウェブアクセシビリティ対応の促進に関する調査研究報告書」(2026年3月)をもとに作成
改修を頼まれる入口としての見立て
専門知識や経験を持つ人員がいない、という回答が取り組まない理由の2番目に挙がっています。画面の直し方を知る人が、外部から呼ばれる入口になりうるというのが筆者の見立てです。調査が示しているのは理由の割合までで、外部への依頼の数や条件は書かれていません。
では、改修の範囲をどこまでとするか、ものさしになるのは何でしょうか。
4. 目標の適合レベルと仕事の区切り方
ガイドブックが示す目標
デジタル庁のガイドブックは、JIS X 8341-3:2016の適合レベルのうち、原則AAに適合させることを目標とするとしています1。これは行政機関・公共機関に向けた目標の置き方で、民間のサイトや副業の案件に求められる基準ではありません。
ただ、依頼の側で目標のレベルが先に決まっていれば、どこまで直せば終わりかを同じ線で見られます。これは筆者の見立てで、案件ごとに確かめる点です。
適合レベルそのものの中身は、別の記事で詳しく扱っています。ここでは、仕事の範囲を決めるものさしとして使う話にとどめます。
改修を区切る3つの型
次の表は、改修の仕事を区切るときの型を3つに分けた、筆者の整理です。画面ごとに区切る型は、1画面で成果が閉じるため、夜の2時間でも終わりを見通せます。達成基準ごとに区切る型は、直す内容が似ている箇所をまとめて進められます。部品ごとに区切る型は、直した部品を別の画面でも使えます。どの型を選ぶかで、見積もりの出し方と納品の単位が変わります。本業の予定が読みにくい時期ほど、最初の依頼は画面ごとの型から始めると、途中で止めても成果が残ります。
| 区切り方 | 例 | 副業との相性 |
|---|---|---|
| 画面ごと | トップページ、問い合わせフォーム、ログイン画面 | 1画面で成果が閉じ、夜の短い時間でも終わりを見通せます |
| 達成基準ごと | ボタンのラベル、見出しの順番 | 直す内容が似ており、複数の画面をまとめて進められます |
| 部品ごと | ボタン、入力欄、ダイアログ | 直した部品を、ほかの画面へ広げられます |
では、改修を運用保守の延長として頼まれたときは、どう受ければよいのでしょうか。
5. 運用保守の延長で頼まれるときの注意

運用保守の事業者に頼む場合の意見
総務省の報告書には、JIS試験の依頼先についてのヒアリング意見が載っています。ホームページの運用保守の事業者に依頼すると、新たな予算を確保せず運用保守費用で対応できる一方、客観性と専門性の担保が難しいとの意見がありました2。
この文は調査の結論ではなく、ヒアリングで出た意見です。運用保守の事業者に頼むことの良し悪しを、この資料だけで決めることはできません。
ただ、意見の中身は副業の受け方に置き換えて読めます。運用保守の延長で改修を頼まれれば、費用の枠がすでにあるぶん、頼む側は話を進めやすくなります。一方で、直した本人が結果の確かめまで行うと、第三者の目で見た結果にはなりません。筆者はこの引っかかりが、意見の指す点だと読んでいます。
検証の範囲と結果の出し方
副業で受けるなら、検証の範囲と結果の出し方を最初に決めておく、というのが筆者の考えです。これは意見に対する筆者の見立てで、資料に書かれた手順ではありません。
たとえば、確かめる画面は何画面か、どの達成基準で見るか、結果は一覧にして渡すのか画面ごとに渡すのか。この3点を決めておくと、直した後に「どこまでが依頼だったか」が食い違いにくくなります。
図の作成:Remogu編集部。総務省報告書のヒアリング意見と筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
本業の予定が詰まる週があっても、範囲と結果の形が文書に残っていれば、次の夜に続きから再開できます。運用保守の延長で頼まれた場合も、改修の分を別の項目に分けて見積もれば、運用保守本来の作業と混ざりません。
では、頼む側はどのような準備で話をしているのでしょうか。
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6. 発注する側と話がかみ合うための準備
頼む側も資料で学んでいる
デジタル庁のガイドブックは、十分な知識がないところから始めても、調達・受託事業者と適切なコミュニケーションができることを目指して構成されています1。
ただし、この資料が読者に想定しているのは行政の職員です。民間の発注側まで同じ状況だとは言えません。読み取れるのは、発注する側もこうした資料で学びながら頼んでいる、というところまでです。
そのため、改修を受ける側が専門用語をそのまま並べると、話がかみ合わなくなるおそれがあります。筆者は、専門用語を頼む側の言葉に言い換えて説明できる人が、頼りにされやすいと見ています。これも資料の記述ではなく、筆者の見立てです。
話をかみ合わせる準備
次の表は、依頼を受ける前に整えておく準備を、目的とあわせて並べた筆者の整理です。言い換えの準備は、ボタンにラベルが無い、という指摘を「ボタンに名前が付いていない」と言い直せる程度で足ります。範囲の準備は、改修する画面を一覧にして、頼む側と同じ紙を見ながら話すためのものです。見せ方の準備は、直した結果を頼む側が自分で確かめられるようにします。目標の準備は、どのレベルまで直すのかを先に尋ねて、終わりの線をそろえます。
| 準備すること | 目的 |
|---|---|
| 専門用語の言い換え | 頼む側と同じ言葉で話すため |
| 改修する画面の一覧 | 見積もりの前提を共有するため |
| 直した結果の見せ方 | 成果を頼む側が確かめられるようにするため |
| 目標とする適合レベルの確認 | 終わりの線をそろえるため |
では、これらの準備を本業の予定とどう並べればよいのでしょうか。
7. 本業と並べるために決めておくこと
決める順番
資料から読み取れたのは、3点です。公的機関では8割超が取り組む一方、取り組んでいない団体は専門知識や経験を持つ人員の不在を理由に挙げています2。合理的配慮は義務、ウェブアクセシビリティは環境の整備としての努力義務です1。発注する側も、資料で学びながら頼んでいます1。
この3点に筆者の見立てを重ねると、本業と並べるために決める順番は4つになります。最初に画面の範囲を決め、次に確かめ方、続いて連絡の時間帯、最後に契約です。範囲が決まらないうちに契約を結ぶと、あとで直す箇所が増えたときに、夜の時間で収まるかを測れません。
図の作成:Remogu編集部。筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
画面ごとに閉じられる仕事から選ぶ
本業のレビューで、ボタンのラベルを直していた夜に戻ります。1画面を直して閉じる。その繰り返しなら、デザインの確定も仕様の変更も待たずに、夜の2時間で終わりを数えられます。
フロントエンドの副業は、画面ごとに閉じられる仕事から選びます。範囲、確かめ方、連絡の時間帯、契約の4つを先に決めておけば、本業の時間まで食われる不安に見通しが立ちます。
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8. よくある質問
ReactやVue.jsの経験でもアクセシビリティ改修は受けられますか
受けられると筆者は考えています。アクセシビリティ改修は画面の構造を直す仕事なので、使っている技術の名前より、直し方の知識が問われます。ReactでもVue.jsでも、ボタンのラベルや見出しの順番を直す作業の考え方は共通です。これは資料の記述ではなく、筆者の見立てです。
週末だけでも副業として回せますか
画面ごとに区切れば、締切を合わせやすくなると筆者は見ています。1画面で成果が閉じる仕事なら、週末に1画面か2画面を納め、翌週は本業を優先する、という組み方ができます。依頼する側が週末の連絡に応じられるかは、案件ごとに異なります。
民間のサイトにもアクセシビリティの対応は求められますか
デジタル庁のガイドブックは、2024年4月1日から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害者への合理的配慮が義務化されたと説明しています1。
一方、ウェブアクセシビリティへの取り組みは、合理的配慮を提供するための環境の整備として、努力義務が課されています1。義務なのは合理的配慮で、ウェブアクセシビリティは環境の整備としての努力義務です。
民間のどのサイトが対象になるのかは、この資料の説明だけでは断定できません。依頼を受けるときは、依頼元にどのような対応を求めているのかを尋ねて、範囲を決めます。
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フロントエンドの副業は、画面ごとに区切れる改修から始めると本業と並べやすくなります。リモートで受けられるフロントエンド案件から探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」(2025年10月16日・2026年10月確認)
*2 総務省「公的機関のウェブアクセシビリティ対応の促進に関する調査研究報告書」(2026年3月・2026年10月確認)