【SAP】副業は制度改正の設定見直しから受ける?本業の取引先と重ならない選び方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 令和8年度の改正で見直されたインボイスの経過措置と、1億円の上限が一の仕入先ごとにかかる範囲
- JPPINTの更新と経過措置の見直しが同じ2026年に並ぶ流れと、日付を取り違えないための見分け方
- 影響範囲の洗い出しやテストシナリオ作成など区切りのある仕事の形と、本業の取引先との重なりの確かめ方
副業の打ち合わせで、「導入プロジェクトは週3日の出社が条件で」と聞こえかけました。やはりSAPの副業は無理か、と思った矢先に、相手が続けます。「今回お願いしたいのは、インボイスの経過措置の見直しに合わせて、設定と帳票を確かめる範囲の洗い出しです」。導入の全体は大がかりで、本業の取引先とも重なりやすく見えます。ただ、業務委託で受けるなら、SAPの副業は、導入の全体ではなく、改正で区切られた仕事から受けます。
▶ あわせて読みたい
・SAPの移行案件で任される範囲|見積りと刷新の分け方から読む条件を解説
・デジタルインボイス(Peppol)の標準対応案件とは?JP PINTとデータ変換の実務スキル
・副業と本業の両立で決めるのは何?連絡が取れない時間帯の合意の作り方と注意点
1. SAPの副業が常駐前提に見える理由
導入プロジェクトの形
SAPのERPを新しく入れるプロジェクトは、要件定義から本番稼働まで工程が長く続き、関わる部署も増えていきます。ここは書き手の見立てですが、副業の打ち合わせで常駐が前提に聞こえるのは、この導入の全体を思い浮かべるからです。
導入の全体を受けるなら、決まった時間に同じ場所へ集まる前提になりがちです。本業を持ちながらその前提を満たすのは難しく、ここで「SAPの副業は無理」と判断する人が出てきます。
区切りのある仕事の入口
一方、SAPの仕事が導入の全体だけとは限りません。たとえば制度の改正に合わせて、影響する範囲を洗い出し、設定を確かめ、テストのシナリオを作り、出力データを仕様と照合する仕事があります。どれも始まりと終わりを決めやすく、成果物は文書やデータの形で渡せます。
導入の全体は関わる範囲が広がっていくのに対し、区切りのある仕事は、範囲と成果物を先に決められます。この違いが、本業と並べられるかどうかを分けます。
図の作成:Remogu編集部。副業で受ける範囲を整理したもので、統計データではありません
では、区切りのある仕事の題材になる改正には、どんなものがあるのでしょうか。
2. 令和8年度の改正で見直されたインボイスの経過措置
改正の中身
国税庁の令和8年度税制改正特集によると、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの一定割合を控除できる経過措置(7・5・3割控除)は、適用期限が2年間延長され、控除可能割合が見直されました1。割合の中身や計算は、国税庁の特集と税理士で確認してください。
上限にも触れています。同特集によると、7・5・3割控除は、一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)がその年又は事業年度で1億円を超える場合、超えた部分には適用できません1。改正前は10億円でした。会社全体の仕入れの合計に対する上限ではない点が、読み違えやすいところです。
適用の始まりについても、同特集は7・5・3割控除の説明に続けて「令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用」と注記しています1。適用の始まりは事業者の課税期間によって異なるため、10月1日に全員が一斉に切り替わるわけではありません。この注記がどこまでの範囲に係るかは、特集の原文で確かめてください。
改正の項目の整理
改正の項目は、対象、適用期限、控除可能割合、上限、適用の始まりの5つに分けて読むと、読み違いを防げます。表では、国税庁の特集に書かれている範囲だけを並べました。割合の数字と計算の中身は載せていないので、必要なときは国税庁の特集と税理士で確かめます。仕事として受けるときも、この5項目のどれが依頼の範囲に入るかを先に決めておくと、確認が広がりすぎません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの経過措置(7・5・3割控除)です |
| 適用期限 | 2年間延長されました |
| 控除可能割合 | 見直されました。割合と計算は、国税庁の特集と税理士で確認します |
| 上限 | 一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込み)が、その年又は事業年度で1億円(改正前は10億円)を超えた部分には適用できません |
| 適用の始まり | 上限を含む7・5・3割控除の説明に続く注記に「令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用」とあります。始まりは課税期間によって異なります |
設定や帳票を確かめる場面
ここからは書き手の見立てです。仕入先ごとの区分や合計額を確かめる場面は、SAPの設定や帳票にも及びます。たとえば、仕入先の区分がどう持たれているか、帳票に何が出力されるかを照らして、一覧にしていく作業です。
ただし、税の処理をどうするか、どの税区分を選ぶかは、この記事では扱いません。影響する設定と帳票の一覧を作り、確認結果を表にして渡すところまでなら、処理の判断は依頼元と税理士に残したまま、仕事を区切れます。
次は、制度の側でもう一つ動いているデジタルインボイスの標準仕様です。
リモートで参画できる案件を見てみる →
3. デジタルインボイスの標準仕様の更新

JP PINTと2026年6月の更新
デジタル庁は、日本におけるデジタルインボイスの標準仕様であるJP PINTを管理しています2。2026年6月8日には、JP PINTの仕様(JP PINT Specifications)を更新・公表し、Peppol BIS Standard Invoice JP PINTはVer. 1.1.3になりました2。
同じ政策ページの最終更新日は2026年10月9日です2。ただし、これはページの更新日で、仕様書が10月9日に改訂されたことを示すものではありません。個々の仕様書の更新日は別に見る必要があります。
ここも書き手の見立てです。仕様の版が上がるたびに、SAPから出力する請求のデータが新しい版と合っているかを突き合わせる場面があります。仕様書を読み、差分を一覧にする作業は、成果物を文書で渡せる仕事です。JP PINTの中身は、デジタルインボイスの標準対応案件を扱った記事で詳しく説明しています。
ミーティングで聴取された自社請求の対応
デジタル庁は2026年4月22日に第3回 Peppol Certified Service Provider ミーティングを開催し、参加したのは10社でした3。同じミーティングで、自社の請求のデジタルインボイス化について聴取したところ、5社が対応していました3。
この数字は、ミーティングに参加した事業者についての記録です。一般の企業の対応状況を示すものではなく、SAPを使う企業の状況とも別の話です。
2026年の動きを日付順に並べると、ミーティング、仕様の更新、課税期間の適用が同じ年に連なっています。
出典:デジタル庁、国税庁の公表資料をもとに作成
では、こうした改正や更新に合わせた仕事は、なぜ副業として区切りやすいのでしょうか。
4. 改正対応が区切りのある仕事になる理由
期限と成果物が先に決まる
ここは書き手の見立てです。制度の改正には、適用の始まりがあります。たとえば7・5・3割控除の説明に続く注記は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からと書いています1。期限が外から決まっていれば、いつまでに何を確かめるかを逆算できます。
成果物も、改正の内容から形が決まります。影響する設定と帳票の一覧、確認結果の表、テスト仕様書、仕様との差分の一覧。どれも、渡した時点で「ここまで」と言える形です。
そのため、本業の稼働が読めない時期でも、範囲と成果物を先に合わせておけば、依頼元と無理のない約束を結べます。導入の全体では、この約束がしにくくなります。
4つの仕事の形
改正対応の仕事は、影響範囲の洗い出し、設定の確認、テストシナリオの作成、出力データの仕様照合の4つに分けると、それぞれの終わりが見えます。表では、仕事の形ごとに、どこまでやれば区切りになるかと、渡す成果物を並べました。依頼を受けるときは、この区切りと成果物を、仕事を始める前に依頼元と合わせておきます。範囲の広さは依頼元の事情で変わるため、4つのうちどれを受けるかも先に決めておきます。
| 仕事の形 | 区切り | 成果物 |
|---|---|---|
| 影響範囲の洗い出し | 改正内容の確認まで | 該当する設定・帳票の一覧 |
| 設定の確認 | 対象の設定の照合まで | 確認結果の表 |
| テストシナリオの作成 | シナリオの完成まで | テスト仕様書 |
| 出力データの仕様照合 | 版との突き合わせまで | 差分の一覧 |
では、この4つの仕事は、どこまでリモートで進められるのでしょうか。
5. リモートで進む部分と、現地が要る部分
資料と文書で進む作業
ここは書き手の見立てです。4つの仕事のうち、影響範囲の調査、設計書のレビュー、テスト仕様書の作成、出力データと仕様の照合は、資料とデータがそろえば、手元の端末で進められます。成果物が文書や一覧の形で渡せるからです。
たとえば影響範囲の調査なら、改正の内容を読み、依頼元から受け取った設計書や帳票の定義と照らして、該当する箇所を一覧にします。決まった時間に同じ場所へ集まらなくても、約束した日までに成果物を渡せば足ります。
本業の稼働が読めない週があっても、作業の区切りごとに成果物を渡す形なら、依頼元と進め方を合わせやすくなります。進捗の共有の頻度や連絡の手段は、仕事を始める前に決めておきます。
現地や本番の権限が要る作業
一方で、本番環境への反映、現場の業務の聞き取り、帳票の出力確認は、現地や本番の権限が要る作業です。本番の環境には、依頼元が許した人しか入れません。現場の聞き取りも、相手の予定に合わせて動く場面が出ます。
開発環境や検証環境へ外から接続できるかどうかは、依頼元によって変わります。接続できない場合は、依頼元の担当者が出力した帳票や画面の資料を受け取り、それを読んで確認する形になります。打ち合わせの段階で、どの環境に入れるかを尋ねておくと、受けられる範囲が早く分かります。
図の作成:Remogu編集部。作業を場所で分けて整理したもので、統計データではありません
次は、本業との並べ方です。ここで先に確かめたいのが、取引先の重なりです。
フルリモートの案件を見てみる →
6. 本業の取引先と重ならないかを先に確かめる

重なりが起きやすい場面
ここは書き手の見立てです。SAPは同じ業界の会社で使われることが多く、本業の顧客の競合が副業の依頼元になる場面もありえます。打ち合わせで依頼元の名前を聞いた時点で、本業の顧客や競合に当たらないかを、まず確かめます。
競業に当たるかどうかの法的な判断は、この記事では扱いません。確かめる先は、本業の会社の規程と、本業で結んでいる契約です。副業の扱いがそこにどう書かれているかを読み、判断に迷う点は本業の会社や専門家に尋ねます。
確かめる6つの点
確かめる点は、取引先の重なり、規程と契約での副業の扱い、秘密保持の範囲、持ち出さない資料、作った資料の権利の帰属、連絡の取れる時間帯の6つです。表では、それぞれで何を見るかを並べました。このうち取引先と規程は仕事を受ける前に、権利の帰属と連絡の時間帯は契約を結ぶ前に、依頼元と本業の双方に対して確かめます。
| 確かめること | 中身 |
|---|---|
| 取引先の重なり | 副業の依頼元が、本業の顧客や競合に当たらないかを確かめます |
| 規程と契約での副業の扱い | 本業の会社の規程や、本業で結んでいる契約に、副業がどう書かれているかを読みます |
| 秘密保持の範囲 | 本業で負っている秘密保持が、どこまでの情報に及ぶかを確かめます |
| 持ち出さない資料 | 本業で得た顧客の設定情報や資料は、副業に持ち込みません |
| 作った資料の権利の帰属 | 副業で作った設定資料やアドオンの権利が、どちらに帰属するかを契約で決めます |
| 連絡の取れる時間帯 | 本業の稼働と重ならない時間に、依頼元と連絡が取れるかを合わせます |
とくに持ち出さない資料は、SAPの仕事では起きやすい論点です。設定の内容は、本業の顧客ごとに積み上げたものだからです。副業で自分の手を動かすときは、依頼元から渡された資料と、公表されている制度の資料だけを使います。
では、この6点を確かめたうえで、どんな順番で副業の依頼を受けていけばよいのでしょうか。
7. 本業と並べるための受け方
依頼を受ける5つの順番
ここまでの内容を順番にすると、受け方は次の流れになります。最初に取引先の重なりを確かめ、次に改正の範囲と適用の始まりを依頼元と合わせます。そのうえで成果物の区切りを決め、リモートで進む部分を切り分けて、最後に契約を結びます。
図の作成:Remogu編集部。受け方を整理したもので、統計データではありません
日付を取り違えない
2番目の「適用の始まり」は、依頼元と合わせる点です。7・5・3割控除の説明に続く注記には、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からとあります1。始まりは事業者の課税期間によって異なるので、依頼元の課税期間の始まりを先に聞いておきます。
JP PINTの政策ページの更新日である2026年10月9日と、仕様の更新・公表日である2026年6月8日も、取り違えやすい日付です2。どの日付を根拠に仕事の範囲を決めるのかを、成果物の区切りと合わせて書面に残します。
打ち合わせの場面に戻る
冒頭の打ち合わせに戻ります。週3日の出社が条件と聞こえたのは、導入の全体を思い浮かべたときの話でした。依頼元が頼みたかったのは、経過措置の見直しに合わせて、設定と帳票を確かめる範囲の洗い出しです。範囲と成果物が決まっていて、リモートで進む部分も多く、本業の取引先との重なりも先に確かめられます。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。まず登録して、自分のSAPの経験に合う条件を確かめてみてください。本業と並べられる範囲の仕事は、登録した先で見つかるかもしれません。
SAPの副業は、導入の全体ではなく、改正で区切られた仕事から受けます。
8. よくある質問
ABAPの開発だけでも副業で受けられますか
書き手の見立てでは、受けられる場合があります。改正対応の帳票やインターフェースの改修のように、範囲と成果物を先に決められる仕事があるからです。出力する項目や仕様との差分を一覧にして渡す形なら、導入の全体に関わらなくても区切れます。
S/4HANAへの移行の仕事は副業に向きますか
書き手の見立てでは、移行の全体は副業に向きにくい仕事です。移行は期間が長く、関わる人も多いためです。受けるなら、全体ではなく、影響調査やテストの一部のように範囲を切れる作業から始めます。
本業の会社に副業を伝える前に何を確かめますか
書き手の見立てでは、本業の会社の規程での副業の扱いと、秘密保持の範囲を先に読みます。あわせて、副業の依頼元が本業の取引先と重ならないかを確かめます。この3つがそろっていれば、本業の会社に伝えるときも、何をどの範囲で受けるかを具体的に話せます。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
SAPの副業は、制度改正に合わせた設定の見直しのように区切りのある仕事から始めると本業と並べやすくなります。フルリモートで受けられる業務委託の案件から探してみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 国税庁「令和8年度 税制改正特集」(2026年4月1日・2026年10月確認)
*2 デジタル庁「JP PINT」(2026年10月9日・2026年10月確認)
*3 デジタル庁「Peppol Certified Service Provider ミーティング」(2026年4月22日・2026年10月確認)