【ServiceNow】フリーランスの参画初期に信頼を得る権限と変更管理のポイント
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 参画初日に管理者の権限を渡されても手が止まらないよう、設定の持ち主と変更の手続きを先に確かめる理由と順番
- 政府のクラウド方針とデジタル庁のガイドラインが、設定の適切さと変更管理について述べている内容と、参画への当てはめ方
- チケットに個人データが入る場面での個人情報保護委員会Q&Aの例と、参画前に決める項目、任される範囲を広げる順番
参画初日に管理者の権限を渡され、「承認フローの文言を少し直しておいてください」と頼まれました。直す場所は数分で見つかります。けれども、そのフローが誰の設定で、どこまで影響するのかは分かりません。ServiceNowをフリーランスとして業務委託で受けるとき、最初に手が止まるのはこの一歩です。ServiceNowの参画は、触る前に「誰の設定か」を確かめるところから始まります。
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1. ServiceNowの参画初期が難しく見える理由
「直せる場所」と「直してよい場所」の差
冒頭の場面に戻ります。管理者の権限があり、画面を開けば、承認フローの文言は直せます。ただ、直せることと、直してよいことは別です。承認フローは、誰がいつ何を承認するかという業務の流れを写したものです。文言ひとつの修正でも、その流れを前提に動いている人がいます。
参画先の側から見ると、外から入ったばかりのフリーランスに管理者の権限を渡すのは、仕事を進めてもらうための手段です。権限の範囲をどこまで認めるかは、参画先の運用の中で決まっています。渡された権限の広さが、そのまま任された範囲の広さを示すとは限りません。
一方で、導入や運用の経験がある人ほど、画面の操作には迷いません。迷うのは操作ではなく、その設定の背景です。どの担当が作り、どの部署が使い、過去にどんな調整があったのか。ここは、画面を眺めても読み取れない部分です。
政府の基本方針が示す背景
背景として、デジタル庁が2025年5月27日に改定した政府情報システム向けの基本方針は、従来のパッケージシステムがSaaSなどのクラウドサービスへ移行する流れが加速している、という見方を示しています1。政府向けの方針なので、ServiceNowの利用が増えたことや案件の増減を述べたものではありません。
この記事は、その見方を一つの背景として借ります。業務の流れがSaaSの設定の中にある現場では、設定を触る人が業務の流れを触っているのと同じになります。これは資料の記述ではなく、筆者の見立てです。
参画初期に見えにくい3つのもの
参画初期に見えにくいものは、設定の持ち主、変更の手続き、データの所在の3つだと筆者は考えます。どれも画面の操作を覚えても分からず、参画先に聞くか、残っている文書を探すしかありません。
図の作成:Remogu編集部。筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
設定の持ち主が分かれば、直してよいかどうかを誰に聞けばよいかが決まります。変更の手続きが分かれば、直すときの順番が決まります。データの所在が分かれば、画面を開いたときに何が写っているのかを前もって想定できます。3つは別々の問いですが、最初の数日で順に確かめれば足ります。次は、その3つのうち設定にあたる部分が、政府の方針でどう扱われているかを見ます。
2. SaaSでは設定が利用側の守る範囲
基本方針が設定について述べていること
前の節で触れた基本方針は、クラウドの利用における対策の考え方も述べています。今日のクラウド利用では、データの暗号化や認証など、様々な設定を適切に行うことがセキュリティ対策の中心になる、との記述です1。
もう一つの記述は、政府情報システムがクラウドを利用する際の対策の持ち方です。従前のセキュリティ対策の踏襲を基本とせず、利用するクラウドのベストプラクティスに準拠した最新の対策を行う必要がある、としています1。
どちらも政府情報システム向けの方針で、民間企業のServiceNow利用を直接定めた資料ではありません。ServiceNowの設定にこの記述を当てはめるのは、筆者の見立てです。カスタマイズを禁じる内容でもないので、作り込みをどう扱うかは参画先の判断に任されます。
方針の記述と参画での見立ての対応
2つの記述を、参画する側の視点に置き換えて並べます。左の列が方針の記述、右の列が筆者の見立てです。右の列は資料に書かれた内容ではなく、参画初期に何を確かめるかを考えるための材料として読んでください。方針は設定そのものの重みを述べているので、設定を変える作業は、見た目以上に影響の大きい作業になりえます。
| 項目 | 方針の記述 | 筆者の見立て |
|---|---|---|
| セキュリティ対策の中心 | データの暗号化や認証など、クラウド利用における様々な設定を適切に行うこと | 設定を変える作業は、対策に直結しうる作業です |
| 対策の考え方 | 従前の踏襲を基本とせず、利用するクラウドのベストプラクティスに準拠した最新の対策を行うこと | 参画先の過去のやり方は、引き継ぐ前に由来を確かめる材料です |
とはいえ、過去のやり方を疑ってかかる必要はありません。確かめたいのは、その設定がいつ、誰の判断で入ったかです。由来が分かれば、直すときも、そのまま残すときも、理由を説明できます。
責任分担の契約面、つまり利用する側と提供する側のどちらが何を負うかは、この記事では扱いません。ここで見ているのは、参画した人が日々の作業で設定に向き合うときの順番です。次は、設定を変えるときの手続きに話を移します。
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3. 変更の手続きを最初に確かめる

ガイドラインに書かれている変更管理
デジタル庁の「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」は、2026年6月12日の改定で、記載事項の一つとして変更管理を挙げています。運用により発生する変更内容の管理対象、変更手順、管理手法等を記載するとしています2。
これは政府情報システムの話です。民間の参画先に同じ文書があるとは限りません。ただ、変更の管理対象と手順と手法を書き出す、という整理の仕方は、手順書の有無を問わず、参画先に聞く項目の下敷きになります。
聞く順番は、手順書があるかどうかが最初です。ある場合は、読む前に誰が管理しているかも合わせて聞きます。ない場合は、これまで変更がどう進められてきたかを担当者に尋ねます。どちらでも、参画初日の頼まれごとを、その手続きに乗せて進める準備になります。
変更が本番に届くまでの流れ
変更が本番に届くまでの流れの一例を、図にしました。これは筆者の見立てで、ガイドラインに書かれた手順ではありません。参画先によって段数も順番も違いますが、どの現場でも、依頼を受けた後に影響の確認があり、承認を経て、本番に反映する流れは共通します。
図の作成:Remogu編集部。筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
図の中で、参画初期に最も食い違いやすいのは、承認と検証環境の2段です。承認は誰が行うのか、検証環境はあるのか。この2つの答えで、参画初日の頼まれごとを、いつまでにどう進めるかが変わります。
頼まれごとを受ける前に聞くこと
冒頭の「承認フローの文言を直しておいてください」への返し方は、聞く順番を決めておくと迷いません。まず、そのフローの持ち主は誰かを尋ねます。次に、変更の依頼と承認はどの手続きで進めるのかを確かめます。最後に、本番に反映する前に試せる環境があるかを聞きます。
この3つを聞くのは、疑っているからではありません。参画先ごとに答えが違うので、聞かなければ分からない項目だからです。聞いたうえで進める人は、変更の記録も自然に残ります。運用の変更の手続きは、運用保守のサービスレベルの決め方とも隣り合う話です。
変更の話をしているうちに、もう一つ確かめたい点が出てきます。画面に何が写っているかです。次は、チケットに個人データが入っている場面を扱います。
4. チケットに個人データが入っているとき
個人情報保護委員会のQ&Aが挙げる2つの例
運用の現場では、チケットの中に、問い合わせた人の氏名や連絡先といった個人データが入っていることがあります。個人情報保護委員会のQ&A(A7-55、2025年7月1日)は、保守サービス事業者が個人データを取り扱うこととなる場合には、法第25条に基づき当該事業者を監督する必要がある、としています3。
Q&Aは、この例として、個人データをキーワードとして情報を抽出する場合を挙げています。チケットの検索で個人データを引き当てる作業に当てはめるのは、筆者の見立てです。Q&Aがチケットの検索を名指ししているわけではありません。
同じQ&Aは、単純なハードウェア・ソフトウェア保守サービスのみを行う場合で、契約で個人データを取り扱わない旨を定め、適切にアクセス制御を行っている場合等に、作業中に個人データが閲覧可能となっても、取得(記録・印刷等)を防止する措置が講じられている場合等を、個人データの提供に該当しない例に挙げています3。
2つの例の並び
2つの例を、区分、Q&Aが挙げる例、前提の3列に並べます。前提の列は、例が成り立つ条件を示しています。条件が揃わなければ例の扱いも変わるので、前提を読み飛ばさずに見てください。この表は、Q&Aの記述をそのまま整理したもので、参画先ごとの個別の判断を示すものではありません。
| 区分 | Q&Aが挙げる例 | 前提 |
|---|---|---|
| 事業者の監督が必要な場合 | 個人データをキーワードとして情報を抽出する場合 | 保守サービス事業者が個人データを取り扱うこととなる場合には、法第25条に基づき当該事業者を監督する必要があります |
| 個人データの提供に該当しない例 | 作業中に個人データが閲覧可能となっても、取得(記録・印刷等)を防止する措置が講じられている場合等 | 単純なハードウェア・ソフトウェア保守サービスのみを行う場合で、契約で個人データを取り扱わない旨を定め、適切にアクセス制御を行っている場合等です |
チケットの画面に当てはめるときの見立て
ServiceNowの運用や設定の作業が、Q&Aの言う単純な保守サービスにあたるかどうかは、この資料からは言えません。「閲覧するだけなら問題ない」とも書けません。提供に該当しない例には、取得を防ぐ措置とアクセス制御と契約の定めという前提がついているからです。
そのため、参画初期に確かめたいのは、チケットの画面でどんな個人データが見えるのか、閲覧の範囲に制限はあるのか、記録や印刷をどう扱う取り決めなのか、の3点です。個別の判断は、参画先と協議して決めます。委託の制度全体は、個人情報保護法でフリーランスが求められる対応の記事で整理しています。
設定、変更の手続き、データの扱いという3つの確認がそろえば、次は具体的な仕事の形に移ります。最初の数週間で任される仕事を見ていきます。
5. 最初の数週間で任される仕事の形
読む、小さく変える、報告する
参画初期の進め方を、筆者は3つの段階で考えます。既存のフローと設定を読む段階、小さな変更を手続きに沿って行う段階、定例で報告して任される範囲を確かめる段階です。これは資料に書かれた型ではなく、筆者の見立てです。参画先の運用によって、段階の長さも順番も変わります。
最初の段階では、何も変えません。既存のフローと設定を読み、気づいた点をメモに残します。読んで分かったことと、読んでも分からなかったことを分けて書いておくと、後で参画先に質問するときの材料になります。
設定の一覧を自分の手でまとめる作業は、地味ですが、持ち主の確認と同時に進められます。一覧の各行に、持ち主の名前と、最後に変更した時期の欄を設けます。空欄が多い箇所は、聞く先がまだ分かっていない箇所として、そのまま質問の一覧になります。
図の作成:Remogu編集部。筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
小さな変更が信頼の材料になる理由
2つ目の段階は、小さな変更です。冒頭の承認フローの文言であれば、持ち主に確認し、手続きに乗せて依頼し、検証環境があれば先に試し、本番に反映して記録を残します。内容は小さくても、前の節で見た流れを一周する経験になります。
参画先から見ると、変更の中身よりも、手続きをなぞって進める人かどうかが分かる場面です。記録が残っていれば、後から同じ変更を見た人も経緯をたどれます。筆者は、ここで残す変更の記録が、次の依頼を任せてもらうときの根拠になると考えています。
3つ目の段階では、定例の場で、読んで分かったことと、変更の結果を報告します。あわせて、次にどこまで触ってよいかを参画先に尋ねます。任される範囲は、こちらが決めるものではなく、報告を受けた参画先が決めるものです。聞くことで、範囲の認識を毎回そろえられます。
ここまでが筆者の考える最初の数週間の形です。参画前の段階で、この形を成り立たせるための取り決めを済ませておく必要があります。次は、参画前に決めておく項目を整理します。
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6. 参画前に決めておくこと

参画先と協議したい6つの項目
参画初日に手が止まるのは、決めていなかったことが一度に降ってくるからです。権限、検証環境、承認者、個人データ、記録、連絡の6つは、参画前の打ち合わせや面談で話題にできます。後から尋ねるより、参画前に聞いておく方が、参画先も答えを用意しやすくなります。
下の表は、6つの項目ごとに、協議の例と、決めておきたい理由を並べたものです。右の列の理由は資料に書かれた内容ではなく、筆者の見立てです。契約条件にあたる報酬や支払いの話は、この表の対象に含めていません。
| 決めること | 協議の例 | 決めておきたい理由 |
|---|---|---|
| 付与される権限の範囲 | 参照だけか、設定の変更まで含むか | 初日に渡された権限の広さと、任される範囲を切り分けるためです |
| 検証環境の有無 | 本番の前に試せる環境があるか | 変更の前に、影響を試せるかどうかが分かれるためです |
| 変更の承認者 | 依頼と承認を誰が担うか | 依頼の宛先と、反映までの時間の見通しを立てるためです |
| 個人データを閲覧する場面と記録の可否 | 画面の写しや印刷を取ってよいか | 個人データの扱いを、参画先の取り決めにそろえるためです |
| 作業の記録の残し方 | 変更の記録を残す場所と書式 | 後から経緯をたどれる形にそろえるためです |
| 連絡の時間帯 | 連絡の取れる時間と、緊急時の連絡先 | リモートで進める作業の待ち時間を減らすためです |
聞き方と決め方の順番
聞く順番は、前の節から続けて、権限、検証環境、承認者の3つを先にします。この3つで、参画初日の頼まれごとをどの手続きで進めるかが決まります。個人データと記録の取り決めは、その次です。連絡の時間帯は、最後に確かめても間に合います。
答えが曖昧なまま参画することもあります。その場合は、曖昧だった項目を自分のメモに残し、最初の定例で改めて確かめます。参画先と協議して決めた内容は、短い文章にして共有しておくと、後で認識がずれたときに立ち戻れます。
報酬や支払いなどの契約条件は、この6項目とは別の話です。契約条件を決める場面は別にあり、この記事では扱いません。次は、6項目を確かめながら、任される範囲を広げていく順番を整理します。
7. 信頼を広げる順番
4つの確認を順に重ねる
これまでの内容を、一本の順番に並べます。最初が権限の確認、次が変更の手続き、その次がデータの扱い、最後が任される範囲の拡大です。この順は筆者の見立てで、参画先によって前後します。ただ、前の確認が済んでいない状態で、後の確認に進むのは避けたい順番です。
図の作成:Remogu編集部。筆者の見立てを整理したもので、統計データではありません
順番の背景には、これまで見てきた資料があります。基本方針は、設定を適切に行うことがクラウド利用の対策の中心になると述べ1、ガイドラインは変更管理の記載事項として変更内容の管理対象と変更手順を挙げ2、Q&Aは個人データの扱いの例を示していました3。3つの資料は別々の場面を扱っていて、1つの結論に束ねられるものではありません。
それでも、設定、変更、データという3つの場面がどれも参画初期に出会う場面だという点は共通します。一つずつ確かめながら進めれば、参画先に「この人は触る前に確かめる」と伝わります。信頼が積み上がる速さは参画先ごとに違いますが、確かめる順番を持っていること自体が、任される範囲を広げる話し合いの足場になります。
冒頭の場面に戻る
冒頭の場面に戻ります。参画初日に管理者の権限を渡され、承認フローの文言を直すよう頼まれたとき、直す前に確かめるのは、そのフローの持ち主と、変更の手続きと、画面に写るデータの3つです。持ち主が分かれば、直してよいかを聞く先が決まります。
ServiceNowの参画は、触る前に「誰の設定か」を確かめるところから始まります。その確認を済ませてから触る人は、手が止まる時間が短く、頼まれた変更にも自信を持って取りかかれます。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。リモートで参画するときほど、聞く順番を決めておくと確認の抜けが減ります。まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみてはいかがでしょうか。
8. よくある質問
導入プロジェクトの経験だけでも、運用の案件は受けられますか
筆者の見立てでは、受けられる余地はあります。設定を読んで構造をつかむ力は、導入でも運用でも共通だからです。違うのは、運用では変更の手続きと記録が中心になる点です。導入の経験を話すときは、設定を作った経験に加えて、その設定を他の人が引き継げる形で残した経験にも触れると、運用の案件でも伝わりやすくなります。
参画初日に管理者の権限を渡されたら、どうすればよいですか
権限をそのまま受け取らず、まず作業に必要な範囲を参画先に確かめます。参照だけでよいのか、設定の変更まで要るのかを話し合い、広すぎる権限は参画先と協議して絞ってもらいます。渡された権限の広さと、任された範囲の広さは別なので、使う前に、この作業にはどの範囲が要るかを言葉にして伝えておきます。これは筆者の見立てです。
チケットの画面の写しを手元に残してもよいですか
残してよいかどうかは、断定できません。個人情報保護委員会のQ&Aは、単純なハードウェア・ソフトウェア保守サービスのみを行う場合で、契約で個人データを取り扱わない旨を定め、適切にアクセス制御を行っている場合等に、取得(記録・印刷等)を防止する措置が講じられている場合等を、個人データの提供に該当しない例に挙げています3。取得を防ぐ措置が前提になっているので、画面の写しを残すかどうかは、参画先と協議して決めます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(2025年5月27日・2026年10月確認)
*2 デジタル庁「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(2026年6月12日・2026年10月確認)
*3 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(2025年7月1日・2026年10月確認)