【フリーランスのケガ】業務中と業務外で分かれる公的保障と備えの判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- ケガで働けなくなる困りごとが治療費と働けない期間の収入に分かれることと、場面によって関わる制度が変わること
- 労災保険が対象にする範囲と、フリーランスが労災保険に入るときの入口になる特別加入団体の役割
- 業務外のケガで治療を受けるときの流れと、民間の保険を考える前に公的な制度で確かめておく順番
在宅で作業していた夜、機材の配線に足を取られて手首をひねり、キーボードが打てなくなりました。クライアントに納期の相談の連絡を入れたあとで、「これは労災の話なのか、国保の話なのか」と手が止まります。ケガで働けなくなったとき、フリーランスには使える制度がほとんど無いのではないか。その不安は、制度の入口が1つではないところから生まれます。ケガへの備えは、業務中か業務外かで分けて確かめます。
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1. ケガで働けなくなると困る2つのこと
治療費と、働けない期間の収入
ケガをして最初に頭に浮かぶのは、病院に払う費用です。ただ、フリーランスが困るのはそれだけではありません。手首が使えなければ作業が進まず、納期にも響きます。困りごとは、治療にかかる費用と、働けない期間の収入の2つに分けると整理しやすくなります。
2つに分ける理由は、受け皿になる制度が別だからです。治療費は、診療に対して給付が出る制度が受け皿になります。一方、働けない期間の収入は、どの制度に給付があるのかを一つずつ確かめなければ、備えが足りているかどうかが分かりません。
業務中・通勤中か、業務外か
次に分けるのが、ケガの起きた場面です。業務中や通勤中のケガは労災保険、業務外のケガは国民健康保険というように、場面によって関わる制度が変わります。冒頭の手首のケガも、仕事の作業中に起きたのか、休日に起きたのかで、最初に確かめる先が違ってきます。
ただし、フリーランスの場合、労災保険を使えるかどうかは特別加入しているかどうかが前提です。治療費と働けない期間の収入の2つが、場面によってどう分かれるかを図に表しました。
図の作成:Remogu編集部。ケガで困ることを整理したもので、統計データではありません
では、業務中・通勤中のケガを受け持つ労災保険から順に見ていきます。
2. 労災保険は業務と通勤のケガのための制度
労災保険が対象にする範囲
厚生労働省の労災補償のページは、労災保険を「業務上の事由または通勤による傷病等」に対して保険給付を行う制度と説明しています1。対象を決める軸は、業務や通勤との関係にあります。
そのため、仕事と関係なく起きた休日のケガは、この制度の説明の範囲の外にあります。休日にスポーツで手首を痛めた場合と、納品前の作業中に痛めた場合とでは、先に確かめる窓口が変わります。
病気の場合の考え方
病気については、中央労働災害防止協会の特別加入団体用テキストが、業務との間に相当の因果関係があると認められる場合にはじめて業務上疾病として労災保険給付の対象になると説明しています2。業務中に起きたことだけで対象が決まるわけではありません。
この説明は病気についてのものです。長時間の作業のあとに出た手首の痛みや腰の不調が業務と結びつくかどうかは、この記事から判断できる範囲を超えます。迷うときは、加入している特別加入団体や労働基準監督署に確かめます。
ケガの場面ごとの制度と確かめる先
場面ごとに、主に関わる制度と確かめる先を並べました。業務中・通勤中のケガでは、特別加入している場合に労災保険が関わります。業務外のケガでは、国民健康保険で治療を受ける形が基本です。ケガが長く続く場合は、障害年金が関わることもあります。いずれも、どこまで給付の対象になるかは加入先の窓口で確かめる必要があり、この表だけで決まるものではありません。
| ケガの場面 | 主に関わる制度 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 業務中・通勤中 | 労災保険(特別加入している場合) | 加入している特別加入団体 |
| 業務外 | 国民健康保険 | 加入している国民健康保険の窓口 |
| 長く続く場合 | 障害年金 | 障害年金の窓口 |
この表の最初の行にある「特別加入している場合」が、フリーランスにとっての分かれ目です。
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3. フリーランスが労災保険に入る方法は特別加入

特別加入団体を通じて申し込む
フリーランスが労災保険に入る入口は、特別加入です。厚生労働省のページによると、特定フリーランス事業で特別加入を希望する人は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体に申し込み、加入手続はその団体が行います3。個人が窓口に直接申し込む形ではありません。
中央労働災害防止協会のテキストも、特別加入は事業または作業ごとに該当する特別加入団体を通じて加入すると説明しています2。つまり、加入する前に、自分の業務がどの事業や作業にあたるのかを確かめることになります。
区分の例と、対象にならない人
区分の例として、同じテキストは特定フリーランス事業のほかに「ITフリーランス」を挙げています2。区分の中身はこの記事では扱いません。自分の業務がどの区分にあたるか、どの団体で入るかは、加入する前に確かめる点です。
対象にならない人もいます。特定フリーランス事業の対象にならない人として、厚生労働省のページは、消費者のみから業務委託を受けている人を挙げています3。企業などから業務委託を受けているかどうかが、ひとつの分かれ目です。
特定フリーランス事業で加入する場合の流れは、次の図のとおりです。給付の種類や申請の細かな手順は、この記事では扱いません。
図の作成:Remogu編集部。厚生労働省の説明をもとに流れを整理したもので、統計データではありません
入り方が分かったところで、エンジニアの仕事に引き寄せて、ふだん確かめておく場面を見ていきます。
4. エンジニアの仕事で気をつけたい場面とふだんの確認
テキストが取り上げている項目
中央労働災害防止協会のテキストは、共通項目の章に、情報機器作業の章(「情報機器を快適に使おう」)、腰痛予防、転倒災害の防止などを置いています2。ケガや不調の件数を示した資料ではないので、エンジニアにケガが多いと読み取る材料にはなりません。
そのうえで、エンジニアの作業に引き寄せると、長時間の画面作業、座り方、在宅での配線や通路、移動の経路が、ふだん確かめておく項目の候補になります。これは書き手の見立てです。冒頭の手首のケガも、配線を片づけておけば防げた場面かもしれません。
場面ごとのふだんの確認
場面と、ふだん確かめておくことを表に並べました。長時間の画面作業なら画面と椅子の高さ、腰の痛みなら座り方と作業時間、在宅での転倒なら配線と通路の物、移動中なら打ち合わせや出社の経路が対象です。どれも費用のかからない見直しで、起きてからの制度の話より前に取れる行動です。件数や発生の多さを示すものではなく、書き手の見立てとして置いた項目です。
| 場面 | ふだん確かめておくこと |
|---|---|
| 長時間の画面作業 | 画面と椅子の高さ、休憩の取り方 |
| 腰の痛み | 座り方、続けて作業する時間 |
| 在宅での転倒 | 配線、通路に置いた物 |
| 移動中 | 打ち合わせや出社の経路 |
業務中かどうかの線引き
同じ手首のケガでも、それが業務中に起きたと言えるかどうかは、個々の状況を見て判断されます。この記事では線を引きません。表の項目は、起きる前に見直すための材料として使い、起きたあとの扱いは加入先の窓口で確かめます。
次は、業務外のケガで治療を受けるときの流れです。
5. 業務外のケガは国民健康保険で治療を受ける
窓口での支払いと高額療養費
休日の転倒のように、業務と関係のないケガでは、医療機関で国民健康保険の資格を示して診療を受け、窓口で支払います。最初に動く先は、労災保険の団体ではなく、加入している国民健康保険です。
窓口での支払いが大きくなったときに関わるのが、高額療養費制度です。厚生労働省のページによると、この制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、その超えた額を支給する制度です4。上限額はこの記事では扱いません。
国民健康保険を使う場面で、高額療養費の仕組みを確かめる流れは、書き手の見立てです。治療が続きそうなときは、医療機関の窓口に支払う額が膨らむ前に、この制度の対象になるかどうかを加入先に尋ねておきます。
休んだ間の収入の給付
治療費とは別に、休んだ間の収入を補う給付があるかどうかは、この記事では分かりません。手元に事実の資料がないため、「ある」とも「ない」とも書きません。
確かめる先は、加入している市区町村の国民健康保険、または国民健康保険組合です。窓口では、休んだ間の給付があるかどうかを尋ねます。手続きが必要なら、その場で必要な書類も聞いておきます。
図の作成:Remogu編集部。国民健康保険と高額療養費を結んだ並びは書き手の見立てで、統計データではありません
公的な制度で答えが出ない部分は、民間の保険で補うかどうかを考える材料になります。
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6. 民間の保険は公的な制度で埋まらない部分を補う

民間の保険が向かう2つの方向
民間の保険には、ケガの治療費に備えるものと、働けない期間の収入に備えるものの、2つの方向があります。第1節で分けた2つの困りごとと、向きがそろっています。商品の名前や保険料は、この記事では扱いません。
書き手の見立てでは、先に確かめるのは公的な制度です。特別加入の有無、国民健康保険と高額療養費、休んだ間の給付の有無を確かめると、残る穴の形が見えてきます。穴の形が分かってから、民間の保険が必要かどうかを考えます。
確かめることと、確かめる先
確かめることと、確かめる先を表に並べました。業務中のケガの補償は特別加入の有無で、業務外の治療費は国民健康保険と高額療養費で、それぞれ公的な窓口に尋ねられます。働けない期間の収入は、加入している国民健康保険の給付と民間の保険のどちらも候補です。ケガが長く続く場合は、障害年金の窓口が確かめる先になります。
| 確かめること | 確かめる先 |
|---|---|
| 業務中のケガの補償 | 特別加入の有無(加入している特別加入団体) |
| 業務外の治療費 | 国民健康保険・高額療養費 |
| 働けない期間の収入 | 加入している国民健康保険・民間の保険 |
| 長く続く場合 | 障害年金 |
公的な窓口で答えが出る行を先に埋め、残った行だけを民間の保険を考える対象にします。次は、そのあとに取る準備の順番です。
7. ケガをしても仕事を止めないための準備
契約の前に決めておく連絡と引き継ぎ
制度を確かめたあとに残るのが、クライアントとの段取りです。連絡先、作業の引き継ぎ、納期の相談の仕方は、契約の前に決めておきます。冒頭のように手首が使えなくなった日に、誰に何をどの順で伝えるかを探していては、連絡が遅れます。
書き手の見立てでは、リモートで受けられる案件は、通院中も調整しやすい場合があります。ただし、案件によって異なります。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。
備えの順番
備えは、公的な制度の確認から、自分の生活費の目安、クライアントとの段取りの順に進めると、抜けが出にくくなります。生活費の目安は、働けない期間が長引いたときに、どれだけの期間をしのげるかを決める材料です。金額は人によって違うので、この記事では数字を示しません。
図の作成:Remogu編集部。備える順番を整理したもので、統計データではありません
冒頭の夜に戻ります。手首をひねった直後は、労災なのか国保なのかで手が止まりました。ケガへの備えは、業務中か業務外かで分けて確かめます。分けて確かめておけば、その夜に連絡する先と、治療を受ける窓口が、すぐに決まります。
制度を確かめたら、次の一歩は、通院中も調整しやすい働き方を選ぶことです。Remoguに登録して、リモートで参画できる案件の条件を見ながら、連絡と引き継ぎの段取りを協議できる案件かどうかを確かめてみてください。
8. よくある質問
在宅で作業しているときのケガも労災保険の対象になりますか
労災保険は、業務上の事由または通勤による傷病等に対して保険給付を行う制度です1。フリーランスの場合は、特別加入していることが前提で、そのうえで業務との関係から判断されます。在宅での作業中というだけで、対象になるともならないとも、この記事からは言えません。
迷ったときは、加入している特別加入団体や労働基準監督署に、ケガの起きた状況を伝えて確かめます。
個人の依頼主から受けた仕事の途中のケガはどうなりますか
特定フリーランス事業の対象にならない人として、消費者のみから業務委託を受けている人が挙げられています3。個人の依頼主から受けた仕事が対象になるかどうかは、依頼主が事業者か消費者かなど個別の事情で変わります。
詳しい条件は、加入を考えている特別加入団体で確かめます。
民間の保険にはいつ入るのがよいですか
書き手の見立てでは、公的な制度で埋まる部分を先に確かめ、そのあとで、働けない期間の収入に残った穴を見て決めます。時期や商品は、この記事では勧めません。
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ケガへの備えは、業務中か業務外かで使える制度を分けて確かめると、足りない部分が見えてきます。働き方を整えながら、フルリモートで受けられる案件も探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「労災補償」(2026年7月・2026年10月確認)
*2 中央労働災害防止協会「フリーランスの業務災害防止」(2025年6月・2026年10月確認)
*3 厚生労働省「「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました」(2024年11月1日・2026年10月確認)
*4 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日・2026年10月確認)