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    フリーランスの事業計画|公庫の創業計画書と持続化補助金の経営計画書を比較

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    白く明るい部屋の机で、無地の封筒3通を横に並べ、真ん中の1通に手を添える。手前に書類の束

    📘 この記事でわかること

    • 事業計画の出し先が日本公庫・持続化補助金・相談窓口・自分の4つに分かれることと、出す相手ごとに変わる見られ方
    • 日本公庫の創業の手引が資金計画と収支計画で示す、自己資金の参考値と売上の計算根拠という2つの手がかり
    • 業務委託の売上を取引先ごとの契約から組み立てる考え方と、持続化補助金の書類で自分が書く部分・商工会が発行する部分

    フリーランスとして独立し、最初の打ち合わせを終えた夜のことです。事業計画のひな形を開くと、「事業の見通し」の欄だけが空白のまま残っています。売上の数字が1つも埋まらず、業務委託で案件を受けるだけの自分に事業計画は要るのかと手が止まります。埋まらない原因は数字の不足ではなく、誰に見せる書類かを決めていないことです。事業計画は、出す相手を決めてから書きます。

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    1. フリーランスの事業計画の出し先

    事業計画は書類の名前ではなく相手で決まる

    「事業計画書」という名前の書類が1種類あるわけではありません。日本公庫から資金を借りるときは創業計画書、持続化補助金を申請するときは経営計画書と、出す相手ごとに様式も尋ねられる中身も変わります。ひな形の名前から入ると、どの欄に何を書いてよいか分からなくなります。

    そのため、最初に決めるのは書き方ではなく出し先です。出し先は大きく4つに分けられます。日本公庫は資金を借りるときの創業計画書を見ます。持続化補助金は、販路開拓の経費の補助を申請するときの経営計画書を見ます。相談窓口には、計画を見てもらうために出します。最後の1つは自分自身で、計画を見直すときの基準として使います。

    図1:事業計画を出す相手と、それぞれの目的
    事業計画を出す相手と目的 出す相手で、書く中身が変わる 日本公庫 資金を借りる 創業計画書 持続化補助金 販路開拓の補助 経営計画書 相談窓口 計画を見てもらう 立て方の相談 自分 見直しの基準 案件の受け方

    図の作成:Remogu編集部。事業計画の出し先を整理したもので、統計データではありません

    業務委託でも出し先は生まれる

    業務委託で案件を受けるだけなら、事業計画を出す相手はいないように見えます。ただし、独立して数か月たつと、開業の資金を借りる、補助金を申請する、といった場面は思いのほか近くに来ます。相手が現れてから書き始めると、期限に追われて数字の根拠を集める時間がありません。

    一方で、出す相手がまだいない時期にも、計画を書く意味はあります。それが4つ目の「自分」です。案件を何社から受けるか、1か月にどれだけ稼働するかを紙に書き出しておくと、次の案件を受けるかどうかを判断する物差しに使えます。この節の内容は書き手の整理であり、制度が定めた区分ではありません。

    では、出し先の1つ目である日本公庫は、創業計画書のどこを見るのでしょうか。

    2. 日本公庫の創業計画書は資金と収支を見る

    手引が示す自己資金の参考値

    日本政策金融公庫は、創業の手引(令和8年5月)で、資金計画の参考になる数字を載せています。同公庫の2025年度新規開業実態調査で、調達総額に占める自己資金の割合は平均22.9%でした1。新規開業者を対象にした調査の平均値で、フリーランスに絞った数字ではありません。

    ただし、この22.9%は融資の条件でも基準でもありません。手引は参考として載せているだけで、「この割合を用意すれば借りられる」とは書いていません。自己資金がこの数字に届かない場合に何が起きるのかも、手引は述べていません。平均と見比べる材料として使い、結論は日本公庫に直接尋ねます。

    収支計画の売上高は計算根拠を求められる

    手引は、収支計画の売上高について、計算根拠をもって予測を立てることが重要だとしています1。売上の欄は、希望の金額を書く場所ではありません。その数字がどんな前提から出てきたのかを、説明できる形にしておく欄です。

    手引が挙げている計算根拠の例には、業務委託の契約や取引先ごとの見込みは入っていません。業務委託で独立するとき何を根拠にするかは、次の節で書き手の見立てとして考えます。ここでは、手引が売上に根拠を求めているという一点だけを押さえておきます。

    創業期の方の説明

    手引のQ&Aは、創業期の方を「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」と説明しています1。新たに始める方だけでなく、始めてから税務申告をまだ2期終えていない方も、この説明に含まれます。

    なお、この説明に当たることと、融資を受けられることは別の話です。融資を利用できるかどうかは審査で決まります。自分が創業期の説明に当たるかを見る目安として読み、融資の見通しを立てる根拠にはしません。

    手引の説明を項目ごとに並べる

    ここで取り上げた手引の説明は、資金計画の自己資金、収支計画の売上高、創業期の方の3つです。いずれも創業計画書の様式にある項目の定義ではなく、手引の説明や参考値です。表では、項目ごとに手引が何を述べているかだけを並べました。

    項目手引の説明
    創業期の方新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方1
    資金計画の参考調達総額に占める自己資金の割合は、2025年度新規開業実態調査で平均22.9%1
    収支計画の売上高計算根拠をもって予測を立てることが重要1

    3. 業務委託の売上は取引先ごとの根拠で見込む

    机で、無地の書類を3つの山に分けて片手を添え、手前の無地のノートにペンで線を引く

    売上は取引先の数ではなく契約の中身から組む

    手引が売上高に計算根拠を求めている以上、業務委託の売上にも根拠が要ります。この節は手引の記述ではなく、書き手の見立てです。業務委託では、売上の根拠は取引先ごとの契約にあると考えると、書き進めやすくなります。

    たとえば、取引先と結んだ契約の期間を書き、その期間に自分が引き受けられる稼働を見込みます。取引先が増えるほど、月ごとの見込みは取引先ごとの積み上げです。全体で「月にこのくらい」と先に置くのではなく、取引先ごとの契約から数字が出てくる順番にします。

    図2:業務委託の売上の見込みを取引先ごとに組み立てる流れ
    売上の見込みの組み立て 根拠は取引先ごとに積み上げる 取引先ごとの 契約期間 稼働の見込み 月ごとの見込み 更新しない 場合の幅

    図の作成:Remogu編集部。売上の見込みの考え方を整理したもので、統計データではありません

    見込みには幅を持たせる

    業務委託の契約には期間があり、期間が終わると更新される場合もあれば、更新されない場合もあります。売上を1つの数字で置くと、更新されなかったときの落ち込みが計画に入りません。そこで、更新された場合と更新されなかった場合の2通りを並べ、売上に幅を持たせておきます。

    幅を書くことは、自信のなさを見せることではありません。どの契約が更新を前提にしていて、どの契約が期間で終わるかを分けて書くと、数字の根拠が読み手に伝わります。この記事では具体額を書きません。金額は契約ごとに異なるため、自分の契約書から拾って入れてください。

    売上の見込みが取引先ごとに組めたら、次はもう1つの出し先である持続化補助金の書類を見ます。

    4. 持続化補助金の経営計画書は自分で考えた計画が前提

    補助金が支援するのは自分で立てた経営計画

    小規模事業者持続化補助金<創業型>の公募要領は、この補助金を、小規模事業者が自ら自社の経営を見つめ直し、経営計画を策定した上で行う販路開拓の取組を支援するものと説明しています2。計画は補助金の前に置かれた前提で、誰かに代わりに書いてもらうものではありません。

    ただし、この補助金にはすべてのフリーランスが申請できるわけではありません。対象になる要件は公募要領が定めているので、自分が当たるかは公募要領で確かめます。要件と締切は持続化補助金<創業型>の記事にまとめているので、この記事では書類のほうに絞ります。

    申請者が書く書類と、商工会が発行する書類

    公募要領では、申請者は経営計画書と補助事業計画書(様式2・3)を書いたうえで、地域の商工会・商工会議所に事業支援計画書(様式4)の発行を依頼し、発行を受ける手順になっています2。同じ「計画書」の名前でも、自分で書く書類と、商工会・商工会議所が発行する書類とが混ざっています。

    そのため、申請の準備では、様式2・3を書き終えてから様式4の発行を依頼する、という順番を頭に置いておきます。様式4は商工会・商工会議所が発行する書類なので、自分で書くものではありません。表では、書類ごとに誰が書き、誰が出すのかを2行に分けました。

    書類誰が書く・出す
    経営計画書・補助事業計画書(様式2・3)申請者が書く2
    事業支援計画書(様式4)地域の商工会・商工会議所が発行する2

    様式2・3に書く内容は、第3節で整理した売上の見込みと重なります。取引先ごとの契約から組んだ見込みがあれば、経営計画の説明に使える材料はもう手元にあります。

    では、持続化補助金の書類を整えるとき、計画の中身を誰に見てもらえばよいのでしょうか。

    5. 計画を見せられる無料の相談先

    日本公庫の創業サポートデスク

    書き上げた計画を、書いた本人だけで点検するのは難しいものです。日本公庫の国民生活事業は、全国152支店に「創業サポートデスク」を置き、創業計画書の立て方や融資申し込みの流れなどの相談に応じています3。創業計画書を書く段階で、立て方そのものを尋ねられる窓口です。

    ただし、相談したからといって、融資が受けられると決まるわけではありません。相談は計画書の立て方や申し込みの流れを知るための場で、融資の可否は審査で決まります。相談の前に、第2節の3つの説明と、第3節の売上の見込みを手元に用意しておくと、尋ねたいことを絞りやすくなります。

    よろず支援拠点

    もう1つの窓口が、よろず支援拠点です。中小企業基盤整備機構のよろず支援拠点全国本部は、よろず支援拠点を、中小企業・小規模事業者の経営上の相談に応えるため国が全国に設置した無料の経営相談所と説明しています4。経営全般の相談に応える窓口なので、事業計画の中身を見てもらう先の候補に入ります。

    個人のフリーランスがこの窓口に相談できるかどうかは、説明には書かれていません。相談する前に、よろず支援拠点に直接問い合わせて確かめます。ここでも、相談すれば補助金や融資を受けられる、とは言えません。

    2つの窓口の使い分け

    2つの窓口は、相談の中身が違います。創業計画書の立て方や融資の申し込みを尋ねるなら日本公庫の創業サポートデスク、経営全般の相談ならよろず支援拠点と、聞きたいことで選べます。

    図3:計画を見せられる無料の相談先の比較
    計画を見せられる相談先の比較 聞きたいことで窓口が分かれる 日本公庫の創業サポートデスク 全国152支店 創業計画書の立て方 融資申し込みの流れ よろず支援拠点 国が全国に設置 無料の経営相談所 経営上の相談

    図の作成:Remogu編集部。日本公庫とよろず支援拠点の公開説明を整理したもので、統計データではありません

    相談先が決まっても、出す相手がまだ見つからない時期の計画は何を書けばよいのでしょうか。

    6. 出す相手がいなくても書いておく項目

    相談窓口の机で、相談員がペンで無地の書類を示し、向かいの相談者が手帳を開いて聞く

    相手がいない時期の計画は自分への報告書

    公庫にも補助金にも出す予定がない時期でも、計画を書く意味は残ります。出す相手が自分だけなら、様式に合わせる必要はなく、後から読み返して判断に使える形で書けば足ります。この節の内容は、制度が定めた項目ではなく書き手の整理です。

    書いておくと役立つのは、案件を受けるかどうかを決めるときに迷う項目です。契約の更新時期が重なっていないか、1か月に受けられる稼働の上限を超えないか。この2つは、次の案件の打診が来た日に答えを求められます。その場で数字を出せるように、先に紙へ書き出しておきます。

    エンジニアが書いておく5つの項目

    項目は5つに絞れます。取引先の数と契約の更新時期、1か月に受けられる稼働の上限、事業の資金と生活費の分け方、使える技術の棚卸し、計画を見直す時期です。表では、それぞれをエンジニアの場合にどう書くかを並べました。

    項目エンジニアの場合の書き方
    取引先の数と契約の更新時期取引先ごとに契約が切れる時期を並べ、更新される場合と更新されない場合を分けて書きます
    1か月に受けられる稼働の上限案件の稼働時間の合計がどこまでなら質を保てるかを、自分の経験から書きます
    事業の資金と生活費の分け方事業で使うお金と生活で使うお金を別に管理し、それぞれの口座と目安を書きます
    使える技術の棚卸し実際に案件で使った技術を書き出し、次に受けたい案件との距離を確かめます
    計画を見直す時期契約の更新前や、案件が1つ終わるときなど、見直す節目を先に決めておきます

    書いた計画は節目で読み返す

    計画は書いて終わりではありません。契約の更新が近づいたときや、新しい打診が来たときに読み返すと、数字がどこまで当たっていたかが分かります。当たらなかった部分は、次の計画で根拠を組み直す手がかりになります。

    では、この5つの項目と、出す相手ごとの見られ方は、日々の案件の受け方にどうつながるのでしょうか。

    7. 事業計画を案件の受け方につなげる

    順番を決めると、手が止まらなくなる

    冒頭の夜に手が止まった原因は、出す相手が決まっていなかったことでした。相手が決まれば、書く欄の意味も決まります。日本公庫なら資金と収支、持続化補助金なら自分で考えた経営計画、相談窓口なら尋ねたいこと、自分なら見直しの基準です。

    順番は4つです。出す相手を決める、資金と収支の根拠を集める、相談で見てもらう、案件の組み方を見直す。先に相手を決めると、集める根拠の種類が絞れます。根拠が集まってから相談すると、尋ねることも具体的に絞れます。

    図4:事業計画を案件の受け方につなげる順番
    計画から案件の受け方までの順番 最初に決めるのは出す相手 出す相手を 決める 資金と収支の 根拠を集める 相談で見てもらう 案件の組み方を 見直す

    図の作成:Remogu編集部。事業計画を進める順番を整理したもので、統計データではありません

    計画の土台は、根拠になる継続案件

    第3節で見たとおり、売上の根拠は取引先ごとの契約にあります。そのため、契約の期間が見通せる継続案件が手元にあるほど、計画の数字は説明しやすくなります。この点は書き手の見立てで、資料に書かれた事実ではありません。

    継続案件を探すなら、リモートで参画できる案件を中心に見る方法があります。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。登録して、自分の経験に合う条件を確かめるところから始められます。契約の期間や稼働の条件は案件ごとに違うため、計画に入れる前に1件ずつ確認します。

    書類の名前に迷う夜は、また来るかもしれません。そのときは、ひな形を閉じて、誰に出すのかを先に決めてください。事業計画は、出す相手を決めてから書きます。

    8. よくある質問

    取引先が1社だけでも事業計画は書けますか

    書けます。1社だけなら、その1社に頼る期間と、契約を更新しない場合の幅を分けて書いておくと、計画の読み手に状況が伝わります。取引先が1社のときは、契約が終わった後の見込みが計画の中心になります。

    独立して2年目でも創業期の扱いになりますか

    日本公庫の創業の手引のQ&Aは、創業期の方を、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方と説明しています1。独立2年目でも、税務申告をまだ2期終えていなければ、この説明に当たる場合があります。ただし、融資を利用できるかどうかは審査で決まります。

    事業計画を書けば融資や補助金を受けられますか

    計画を書くことは出発点で、受けられるかどうかはそれぞれの審査で決まります。書いたから受けられる、という関係は資料のどこにもありません。計画は、相談窓口で自分の考えを伝え、申請の準備を進めるための材料として使います。

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    事業計画は、売上の見込みを取引先ごとに根拠で示せると書きやすくなります。根拠になる継続案件を、リモートで受けられる案件から探してみてください。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 日本政策金融公庫「創業の手引」(2026年5月・2026年10月確認)
    *2 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<創業型>」(2026年5月27日・2026年10月確認)
    *3 日本公庫「創業サポートデスク」(2026年9月29日・2026年10月確認)
    *4 中小企業基盤整備機構「よろず支援拠点とは」(2026年・2026年10月確認)