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    フリーランスの電気代を経費にする3つの判断基準と家事按分の記録

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    夜の暗い部屋のデスクライトの下で、無地のノートに透明な定規を当てて縦に1本の線を引く手元

    📘 この記事でわかること

    • 電気代のうち経費にできるのは、取引の記録などから業務の分と明らかに区分できる金額だけで、家事分は必要経費にならないこと
    • 国税庁の資料が按分の基準に挙げる使用面積・保険金額・点灯時間の例と、割合の数値が示されていない箇所があること
    • 作業用の機器・共用の設備・生活だけの家電への分け方と、経費にする前に決めておく3つの判断基準

    夏の電気料金の明細を開くと、去年より数字が上がっていて、仕事で使った分が大きいはずだと思いました。家事按分の割合を帳簿に書きかけたところで、その割合の根拠を聞かれたら何も出てこないと気づき、手が止まりました。フリーランスの電気代は生活の電気と同じ契約で届くので、経費にする範囲は自分で説明できる形にしておく必要があります。電気代は、割合を決める前に、分けた理由を残します。

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    1. 電気代が経費になる範囲は業務の分だけ

    家事関連費としての電気代

    自宅で仕事をすると、電気代は仕事と生活の両方で使われます。作業用のPCやモニターは仕事のために動かしますが、同じ部屋の照明や空調は、仕事の時間にも生活の時間にも働きます。国税庁のタックスアンサーNo.2210は、家事上と業務上の両方にかかわる費用を家事関連費と呼びます。その例として挙げているのが店舗併用住宅に係る費用で、租税公課や家賃と並んで水道光熱費が入っています1。

    ただし、この例は店舗併用住宅の費用に関するものです。在宅で働くエンジニアの電気代がそのまま家事関連費に当たると資料が述べているわけではありません。仕事と生活にまたがって使われるので同じ考え方で整理できる、というのが書き手の見立てです。

    電気料そのものについては、白色申告の説明書である「収支内訳書(一般用)の書き方」に記載があります。水道料や電気料、燃料費などのうちに含まれている家事分の費用は、必要経費にならないと書かれています2。 この説明書は白色申告向けのものなので、青色申告の書式に同じ文言があるかどうかは、この記事では扱いません。

    必要経費になる条件

    業務の分を経費にするための条件も、No.2210に書かれています。必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます1。

    条件の言葉を拾うと、「取引の記録などに基づく」と「明らかに区分できる」の2つです。この2つを並べると、割合の大きさよりも、区分した根拠を記録から示せるかどうかが焦点になる、というのが書き手の読みです。

    所得税での電気代の扱い

    次の表は、電気代を所得税の側から整理したときの扱いを、項目ごとに並べています。電気代全体を家事関連費として見るのは書き手の整理です。必要経費になる部分、ならない部分、区分の条件は、国税庁の資料の記載に沿っています。区分が記録に基づくかどうかは、割合を考える前に確かめる項目です。

    項目所得税での扱い
    電気代全体仕事と生活の両方で使うので、家事関連費として整理します(書き手の見立て)
    業務遂行上直接必要で、明らかに区分できる部分必要経費になります1
    家事分必要経費になりません2
    区分の条件取引の記録などに基づいて区分します1

    回線やスマホ端末の按分は、通信費の家事按分の記事で扱っています。電気代は生活の電気と同じ契約で届くので、次の論点は分け方の基準です。

    2. 按分の基準は例が示され、割合は示されていない

    資料にある基準の例

    では、家事分と業務分は何で分けるのでしょうか。同じ「収支内訳書(一般用)の書き方」には、家事関連費の家事分と事業分の区分は、使用面積や保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算すると書かれています2。

    この3つは、家事関連費全体についての例です。電気料に限った基準として書かれているわけではありません。電気代に当てはめるなら、使用面積は作業部屋の広さ、点灯時間は電気を使った時間に近い考え方だと読めます。ただし、これは書き手の見立てで、資料が電気代にこの基準を使うよう指定しているわけではありません。

    図1:家事関連費を分ける基準の例
    使用面積 基準の例 保険金額 基準の例 点灯時間 基準の例 時間で分ける考え方 書き手の見立て

    出典:国税庁「収支内訳書(一般用)の書き方」をもとに作成。電気代に近い考え方は書き手の見立てです

    割合の数字を書かない理由

    電気代は何割まで経費にしてよいのかを知りたくなりますが、この記事では割合の数字を書きません。理由は2つあります。

    1つ目は、説明書の該当箇所に、具体的な割合の数値が示されていないことです2。 割合の数値が示されていない以上、他の人が使った割合を借りても、自分の使い方の根拠にはなりません。

    2つ目は、基準の選び方で結果が変わることです。たとえば、作業した時間で分ける人と、作業部屋の面積で分ける人とでは、同じ電気代からでも業務の分は違ってきます。どの基準を選んだか、その基準のもとになる記録があるかが、割合の数字より先に決まります。

    帳簿に書く前に決めるのは、割合ではなく、分け方とその理由を残す方法です。次は、自宅で働くエンジニアの電気の使い方を、分けやすいものから並べます。

    3. 自宅で働くエンジニアの電気の使い方の3分類

    机の足元で、白い電源タップに挿した3本のうち1本のプラグを抜く手

    仕事だけに使う機器

    電気の使い方を分けるときは、機器を1つずつ見ていくのが近道です。作業用のPC、外部モニター、検証用の機器、ルーターのようなネットワーク機器は、仕事のために動かしているので、業務にほぼ専用の電気として分けられます。この分類は国税庁の区分ではなく、書き手の整理です。

    ただし、専用かどうかは機器の名前では決まりません。同じモニターでも、仕事の時間にしか使わないなら専用で、私用の動画やゲームにも使うなら共用に寄ります。ネットワーク機器も、生活の通信と共用しているなら、専用とは言えません。

    機器ごとに置き場所と使う時間帯を一覧にしておくと、専用と共用の線引きをあとから説明できます。

    共用の設備と、生活だけの家電

    照明や空調は、仕事の時間にも生活の時間にも使うので、生活と共用の電気です。そのため、国税庁の資料が基準の例に挙げる使用面積や点灯時間のような、按分の基準が必要になるのはこの共用の部分だと読めます。これも書き手の見立てです。

    冷蔵庫、調理家電、風呂の給湯は、仕事のためには動かしていないので、生活だけの電気です。経費の対象には入れず、按分の計算にも入れません。

    図2:自宅の電気の使い方の分け方(書き手の整理)
    業務にほぼ専用 生活と共用 生活だけ 作業用PC 外部モニター 検証機 ルーター 照明 空調 冷蔵庫 調理家電 給湯

    図の作成:Remogu編集部。機器の使い方を整理したもので、国税庁の区分や統計データではありません

    3つのどこに入るかが決まったら、次は、経費にする前にどんな判断を済ませておくかです。

    4. 経費にする前に決める3つの判断基準

    業務で使った電気を区分できるか

    1つ目の判断基準は、業務で使った電気を区分できるかです。No.2210が条件に挙げるのは「明らかに区分できる」ことなので、作業用の機器のように専用と言えるものと、照明や空調のように共用のものとを、まず分けます1。

    専用と言える機器が多ければ、区分の説明は短くなります。共用の設備が中心なら、次の判断基準で、どう分けるかを決めることになります。

    何で分けるか

    2つ目は、何で分けるかです。国税庁の資料は、使用面積・保険金額・点灯時間などの適切な基準を例に挙げています2。 電気代なら、作業した時間か作業部屋の面積のように、自分の使い方を説明できる基準を1つ選ぶのが、書き手の考える手順です。

    選んだ基準は、年の途中で変えません。途中で変えると、前の月と後の月で同じ電気の分け方が食い違い、なぜ変えたのかを聞かれたときの説明が増えます。

    根拠を残せるか

    3つ目は、根拠を残せるかです。No.2210は、取引の記録などに基づいて区分することを条件に挙げています1。 作業した時間の記録、作業部屋の間取り、機器の一覧のように、基準の計算のもとになる記録を、毎月の請求書といっしょに保管します。

    判断基準ごとの確認事項

    次の表は、3つの判断基準ごとに、確かめることと残すものを並べています。1つ目は専用と共用の仕分け、2つ目は分ける基準の選択、3つ目は計算のもとになる記録です。2つ目と3つ目の中身は書き手の見立てで、国税庁の資料に指定があるわけではありません。順番に済ませると、帳簿に書く前に説明の材料がそろいます。

    判断基準確かめること残すもの
    1. 業務で使った電気を区分できるか専用の機器か、共用の設備かを分けます機器の一覧
    2. 何で分けるか作業した時間か作業部屋の面積など、自分の使い方を説明できる基準を1つ選び、年の途中で変えません(書き手の見立て)選んだ基準と、その理由のメモ
    3. 根拠を残せるか基準の計算のもとになる記録があるかを見ます作業時間の記録、間取り、機器の一覧

    所得税の側の整理が済んだら、次は消費税の側で電気代がどう扱われるかを見ます。

    5. 消費税の仕入税額控除での電気代の扱い

    課税仕入れの定義

    所得税の必要経費と、消費税の仕入税額控除は、別々の制度です。仕入税額控除の対象になる課税仕入れについて、国税庁のタックスアンサーNo.6451は、事業者が事業として他の者から資産の譲り受けや借り受けを行うこと、または役務の提供を受けることと説明しています3。

    ここで注目したいのは「事業として」の4文字です。電気の供給を受けることは役務の提供にあたりますが、定義の中心は、それが事業のために受けたものかどうかに置かれています。所得税のNo.2210が「業務遂行上直接必要であったこと」を条件にしていたのと、向きが近い条件です。

    課税仕入れの例に挙がる水道光熱費

    同じページには、課税仕入れとなる取引の例として、広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払が挙がっています3。 水道光熱費が例に入っているので、事業のために受けた電気の分は、課税仕入れの話として扱う余地があります。

    一方で、資料が書いているのは定義と例までです。自宅の電気のうち家事分をどう外すかは、資料に書かれていません。定義が「事業として」なので、所得税で家事分として外した部分は、消費税でも同じように外して考えるのが筋だというのが、書き手の読みです。資料が示した手順ではない点に留意してください。

    自分の方式を確かめる

    この節の話が自分に当てはまるかは、消費税の立場で変わります。課税事業者かどうか、課税事業者であればどの計算方式を使っているかによって、電気代の扱いは違ってきます。まず自分の立場と方式を確かめるのが先で、そこから先は書き手の整理にとどまります。

    仕入税額控除の要件全体は、仕入税額控除の帳簿と請求書の記事で扱っています。本記事では、電気料金に当てはめたときの帳簿と請求書の残し方だけを、次の節で見ます。

    図3:消費税で電気代を扱うときの流れ
    課税仕入れ 事業として受ける 例に挙がる取引 水道光熱費の支払 業務分の電気代 書き手の読み 自分の方式を確かめる 課税事業者かどうか・計算方式

    出典:国税庁「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」をもとに作成。業務分の扱いは書き手の読みです

    6. 電気料金の請求書と帳簿の残し方

    明るい机で、無地の封筒が並ぶグレーのファイルボックスに封筒を差し入れる手

    検針で届く請求の年月日

    電気は、毎月の検針で使った量が決まり、その料金が請求されます。国税庁のタックスアンサーNo.6497は、電気、ガス、水道水等のように一定期間ごとに供給量を検針して料金を請求する取引について、請求書等に記載する課税仕入れの年月日をその一定期間としてよいとしています。それに基づく帳簿の年月日も、同様の記載で差し支えないという内容です4。

    つまり、請求の年月日を「何月何日」の1日で書けなくても、検針の期間で書いて構いません。これは年月日の書き方の話で、請求書の保存そのものが不要になるという意味ではありません。

    税込1万円未満の経過措置

    もう1つ、1万円という線があります。No.6496には、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行った税込1万円未満の課税仕入れは、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるという経過措置が書かれています。免税事業者は、この経過措置の対象から除かれています5。

    この経過措置は、3つの条件がそろったときに使えます。対象の事業者であること、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間の取引であること、税込1万円未満の課税仕入れであることです。電気料金の請求が1回で1万円以上になる月は、この経過措置の対象になりません。電気代の請求書が要らなくなる、という話ではないので、取り違えないようにしてください。

    場面ごとの扱い

    次の表は、電気料金の請求がどの場面にあたるかで、帳簿と請求書の扱いがどう変わるかを並べています。検針の年月日はNo.6497、1万円未満の経過措置はNo.6496の記載に沿っています。2つは別の制度なので、行を分けました。

    場面扱い
    検針で毎月請求が届く請求書等と帳簿の年月日は、検針の期間で書いて差し支えありません4
    税込1万円未満の課税仕入れ対象の事業者が令和11年9月30日までに行う分は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。対象は、基準期間の課税売上高1億円以下または特定期間の課税売上高5,000万円以下の事業者で、免税事業者は除かれます5
    税込1万円以上の月この経過措置の対象になりません5

    毎月の電気代を帳簿に書くとき、その月のうちに業務分を按分して書く方法と、毎月は請求の全額を書いておき、年末にまとめて家事分を外す方法の、2通りがありえます。どちらが認められるかは国税庁の資料に書かれていないので、ここは書き手の整理です。どちらを選んでも、分けた基準と理由を同じ形で残しておくと、あとから説明しやすくなります。

    残し方が決まったところで、年の終わりに、集めた記録をどう締めるかを見ていきます。

    7. 年末の締めで電気代を説明できる形にする

    仕分けから基準までを年の最初に決める

    年末に説明できるかどうかは、年の最初に決めた順序で決まります。最初に、作業用の機器と作業部屋を、生活の機器や部屋から仕分けます。次に、共用の照明や空調を分ける基準を1つ選びます。国税庁の資料が挙げる使用面積や点灯時間は、基準の例です2。

    選んだ基準と、その理由は、メモに書き残します。必要経費になるのは取引の記録などに基づいて区分できる部分なので、メモは記録の1つとして働きます1。 そのうえで、毎月届く電気料金の請求書を、検針の期間のまま保存します。

    年末の集計から申告まで

    年末は、毎月の記録を使って、業務分をまとめて集計します。集計の元になるのは、機器の一覧、選んだ基準のメモ、作業した時間の記録、そして毎月の請求書です。この4つが同じ年のものとしてそろっていれば、集計した金額の説明は、記録をたどるだけで済みます。

    白色申告で収支内訳書に書き込む場合の書き方は、収支内訳書の書き方の記事で扱っています。集計した業務分を申告書類のどこに書くかは、その記事で確かめられます。

    図4:電気代を年末に説明できる形にするまで
    機器と部屋の 仕分け 基準の 決定 請求書と記録の 保存 業務分の 集計 申告

    図の作成:Remogu編集部。作業の順序を整理したもので、国税庁の手順や統計データではありません

    説明できる形で残す理由

    冒頭の場面に戻ります。夏の明細を開いて割合を書きかけた手が止まったのは、割合を決める前に、分けた理由が手元になかったからです。国税庁の資料が示すのは、基準の例と、取引の記録などに基づいて区分するという条件で、割合の数字は説明書の該当箇所に示されていません2。 数字を決めるより先に、使い方を説明できる記録をつくることが、手が止まらない近道です。

    電気代は、割合を決める前に、分けた理由を残します。機器の一覧、基準のメモ、毎月の請求書があれば、聞かれたときに記録をたどって答えられます。

    自宅で仕事を進める環境が整っているほど、こうした記録の積み重ねが、日々の仕事の外側で効いてきます。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。自宅で働く前提で案件を探すなら、まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみてください。

    8. よくある質問

    電気代は何割まで経費にしてよいですか

    国税庁の「収支内訳書(一般用)の書き方」の該当箇所には、割合の数値は示されていません2。 示されているのは、使用面積、保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算するという考え方です。必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額です1。 そのため、割合の大きさより、どの基準で分けたか、その記録があるかが問われます。

    作業用に電気の契約を分けたほうがよいですか

    これは書き手の見立てです。作業用に契約を分ければ、業務で使った電気を請求書の段階で区分しやすくなります。ただし、契約を分けるには手間や費用がかかるので、分けたときの区分のしやすさと、その負担とを比べて決めます。分けなくても、機器の一覧と基準のメモで区分の理由を残す方法があります。

    免税事業者でも電気代の請求書を残す意味はありますか

    あります。所得税の必要経費は、取引の記録などに基づいて区分できる金額が対象なので、電気料金の請求書も、区分を説明するときに使える記録の1つと考えられます1。これは書き手の見立てです。 消費税の仕入税額控除の話とは別に、所得税の側で説明の材料として使えます。

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    出典・参考情報

    *1 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(2026年4月1日・2026年10月確認)
    *2 国税庁「収支内訳書(一般用)の書き方」(2025年10月1日・2026年10月確認)
    *3 国税庁「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの」(2026年4月1日・2026年10月確認)
    *4 国税庁「仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」(2026年4月1日・2026年10月確認)
    *5 国税庁「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」(2026年4月1日・2026年10月確認)