SharePointのフリーランス案件を掛け持ちする前に決める3つの条件
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- SharePointの仕事が手元で完結する仕事と違って掛け持ちしにくく見える理由と、クライアントが組織の外での情報の扱いを気にする背景
- 悪意が無くても規則に背けば持ち出しとして扱われる範囲と、アカウントを共用すると誰の操作か確認できなくなる点
- アカウント、権限の範囲、資料の線引きという3つの条件を、参画前の打ち合わせでどの順番に確かめるか
2社目の案件の初日、ブラウザでSharePointを開くと、1社目のクライアントのポータルが表示され、慌てて閉じました。フリーランスが業務委託でSharePointの仕事を受けると、作業の場所はクライアントのMicrosoft 365の中にあります。掛け持ちでアカウントや資料が混ざるのではないかと、不安になるのはそのためです。混ざる原因は作業時間の足し算より、入口がどこにあるかを決めていないところにあります。SharePointの掛け持ちは、作業時間より先に、入口を分けて決めます。
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1. SharePointの仕事が掛け持ちしにくく見える理由
SharePointの仕事の範囲
SharePointの仕事と一口に言っても、中身は幅広くあります。社内ポータルの構築、文書管理の設計、権限の整理、既存の仕組みからの移行、そして日々の運用です。どれも、クライアントが業務で使っている情報の置き場を相手にする点で共通しています。設計であれば、どの部署がどの文書をどこに置き、誰が読み、誰が直すのかを決めます。移行であれば、古い置き場から新しい置き場へ、文書の構造と権限を引き継ぎます。
そのため、成果物は手元のファイルより、クライアントのSharePointサイトの状態そのものです。設計書や手順書は残りますが、内容が正しいかどうかは、サイトを開いて確かめる場面が多くなります。作業の対象が、自分の端末の外にあるわけです。
作業が行われる場所
手元で完結する仕事を思い浮かべると、違いが見えてきます。たとえば、自分の端末にリポジトリを置いて開発する仕事では、作業の場所は自分の管理下にあります。案件を2つ並べても、リポジトリが2つ並ぶだけで、どちらを開くかは自分で選べます。
図の作成:Remogu編集部。作業の場所を整理した概念図で、統計データではありません
一方、SharePointの仕事は、クライアントのMicrosoft 365の中で進みます。テナントとは、組織ごとに用意されたMicrosoft 365の環境のことです。アカウントはクライアントが発行したもので、文書もクライアントのものです。作業の場所そのものが、クライアントごとに別の建物にあるような形です。
掛け持ちで増えるのは、作業の量より開く先の数です。開く先が増えるほど、どの環境にいるのかを取り違える場面も増えます。
混ざったときに問われること
ただし、開く先が増えること自体が問題なのではありません。問われるのは、どのクライアントの環境で、どのアカウントを使い、どの文書に触れているのかを、自分がいつでも言えるかどうかです。冒頭の場面のように、ブラウザが前のクライアントのポータルを開いてしまうだけで、初日の印象は揺らぎます。
では、クライアントの側は、外部の人が自社の環境で作業することをどう見ているのでしょうか。次の節で、公的な資料から確かめます。
2. 組織の外で扱われる情報へのクライアントの心配
公的な資料が示す内部不正の位置づけ
クライアントが外部の人に自社の情報を預けるとき、気にするのは、その情報が組織の外でどう扱われるかです。この見立てと重なる資料が、IPAから二つ出ています。
一つ目は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」です。組織向けの脅威として「内部不正による情報漏えい等」が7位に入り、2016年以降11年連続で選ばれています1。順位は被害の件数を数えたものではありません。
二つ目は、同じIPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」です。第5版の改訂の骨子のひとつに、テレワーク等の広がりで組織外での秘密情報の取扱いが増えたことに伴うリスクを低減する対策の追記が挙げられています2。組織向けのガイドラインであり、業務委託のフリーランスを名指しした資料ではありません。
二つの資料の記載の中身
7位の脅威と、組織外での取扱いの増加は、別々の資料が述べていることです。前者は脅威の順位で、後者はガイドラインが対策を書き足した背景です。どちらも、組織の側から見た記述です。クライアントが外部の人の作業環境を気にするのは、この二つの流れと重なる、というのが書き手の見立てです。
| 資料 | 発行元 | 記載の中身 |
|---|---|---|
| 情報セキュリティ10大脅威 2026 | 独立行政法人情報処理推進機構 | 組織向けの7位に「内部不正による情報漏えい等」。2016年以降11年連続で選出 |
| 組織における内部不正防止ガイドライン(第5版) | 独立行政法人情報処理推進機構 | テレワーク等で組織外での秘密情報の取扱いが増えたことに伴うリスクを低減する対策を追記 |
ただし、この二つの資料が述べているのはクライアントの側の対策で、フリーランスの行動を評価するものではありません。参画前の打ち合わせでアカウントや持ち出しの扱いを聞かれたら、疑われているのではなく、クライアントが自分の管理の範囲を確かめている場面と読めます。
では、悪意が無くても持ち出しとして扱われる範囲は、どこまででしょうか。
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3. 悪意が無くても「持ち出し」になる範囲

規則に背いた持ち出しも範囲に入る
持ち出しと聞くと、情報を盗む行為を思い浮かべがちです。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編]」は、内部不正による情報漏えいに、意図的な持ち出しだけでなく、組織の情報管理規則に背いた情報の持ち出しも含まれると説明しています3。
この説明は、組織の内部関係者についてのものです。業務委託のフリーランスが内部不正をすると述べた資料ではありません。ただ、範囲の考え方は、クライアントの環境で作業する人にとっても参考になります。資料の保存先や持ち帰り方に規則があるかどうかを先に聞いておけば、規則の外に出る場面を避けられます。
アカウントの共用と操作の確認
同じ解説書は、内部不正の手口のひとつとして、複数人で端末やアカウントを共用していると誰が不正アクセスしたのか確認できない点を挙げています3。
ここで書かれているのは、複数人で一つのアカウントを使う場合の話です。一人のフリーランスが複数のクライアントのアカウントを使い分ける場合とは、場面が違います。それでも、考え方は応用できます。一つのアカウントを複数のクライアントの作業に使い回すと、どのクライアントの作業なのかを、アカウントから切り分けられません。この応用は書き手の見立てです。
出典:独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編]」をもとに作成
持ち出しが問われる場面の一般的な整理は、案件のセキュリティで「持ち出し」が問われる場面と参画前に確かめる順番を解説でもまとめています。
では、掛け持ちの前に何を決めておけばよいのでしょうか。最初の条件は、アカウントです。
4. 条件1:アカウントをクライアントごとに分ける
クライアントが決める利用者の範囲
IPAの「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」は、クラウドサービスを運用するときの確認ポイントのひとつに「利用者の範囲を決める」を挙げ、誰にどのような権限を与えるかを確かめるよう示しています4。中小企業の利用者向けの確認項目で、サービスを利用する組織の側の管理項目です。
ここから読み取れるのは、誰がクライアントの環境に入れるかを決める立場が、クライアントの側にあるということです。そのため、フリーランスの側は、クライアントが発行したアカウントで作業する前提かどうかを、参画前に確かめます。自分のアカウントや、別のクライアントのアカウントで入る前提では、クライアントが決めた利用者の範囲と合いません。この確認は書き手の見立てです。
たとえば、打ち合わせでは「作業用のアカウントは発行してもらえますか」「どの端末から入ってよいですか」と尋ねます。尋ねる相手はクライアントで、答えが出るまでは、自分のアカウントでサイトに入りません。
分けるものと分け方
アカウントを分けたあとも、混ざる場所が残ります。ブラウザにはクライアントごとのログイン状態が残り、端末にはダウンロードしたファイルが残り、通知やチャットには別のクライアントの話題が届きます。分けるものを四つに整理し、それぞれに分け方の例を置くと、作業の入口がそろいます。
| 分けるもの | 分け方の例 | 分ける狙い |
|---|---|---|
| アカウント | クライアントが発行したものを使う | どのクライアントの操作かを、アカウントで切り分ける |
| ブラウザ | クライアントごとにプロファイルを分ける | 開く先を取り違えない |
| 端末上の保存場所 | クライアントごとにフォルダを分ける | 資料が混ざらない |
| 通知とチャット | クライアントごとに確認する | 別のクライアントの話題を取り違えない |
分け方の例は書き手の見立てです。クライアントが運用の方法を決めているときは、その方法を確かめたうえで合わせます。アカウントが分かれたら、次は、そのアカウントでどこまで触れるかです。
5. 条件2:権限の範囲を作業に合わせて決める
権限の段階の一般的な例
同じアカウントでも、できることは権限によって変わります。文書を読めるだけの段階もあれば、中身を直せる段階、サイトの設定まで変えられる段階、組織全体の設定に触れる段階もあります。段階の名前や区切りは、クライアントの運用によって異なります。次の図は一般的な例で、製品の権限レベル名を示したものではありません。
図の作成:Remogu編集部。権限の段階を一般的な例として整理した概念図で、製品の権限レベルを示すものではありません
たとえば、既存のポータルの文書を整理する作業なら、要るのは編集までです。サイトの構成を作り直す作業なら、サイトの管理まで必要になる場面があります。作業の中身で、受け取る段階が決まります。
広い権限を受け取らない理由と外す時期
クライアントが広い権限をまとめて渡してくれる場面もあります。作業は進めやすくなりますが、権限が広いほど、触れられる文書も増えます。必要以上に広い権限は受け取らず、作業に要る段階を頼む。これが書き手の見立てです。
掛け持ちの場合は、もう一つ理由があります。複数のクライアントで広い権限を持つと、取り違えたときに触れてしまう範囲も広がります。冒頭の場面で開いたのが閲覧だけの権限のポータルなら、慌てて閉じれば済みます。管理の権限なら、そうはいきません。
作業が終わった段階で、権限を外してもらうよう頼むことも大切です。たとえば、移行の作業が終わったあとも管理の権限が残っていれば、使わない入口が開いたままになります。外す時期は、作業の区切りに合わせて参画前に話しておくと、あとから切り出しやすくなります。この進め方も、書き手の見立てです。
アカウントと権限が決まったら、次は、資料を持ち出さない線引きです。
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6. 条件3:資料を持ち出さない線引きを契約前に決める

委託元に課されている監督の義務
SharePointの文書に個人データが含まれる案件では、法律の定めが関わります。個人情報保護委員会の通則編ガイドラインによると、個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する事業者に、委託先に対する必要かつ適切な監督を義務づけています5。義務を負うのは委託元であるクライアントで、フリーランスではありません。
同じガイドラインは、委託契約に、委託先での個人データの取扱状況を委託元が合理的に把握することを盛り込むのが「望ましい」としています5。義務ではなく、望ましいとする記載です。
そのため、個人データを含む文書を扱う案件では、クライアントから取扱いについて確認や報告を求められることがあります。これは書き手の見立てで、すべての案件に当てはまるわけではありません。求められたときに慌てないよう、資料の置き場や受け渡しの方法を、契約の前に自分の側でも整理しておきます。
契約前に決めておく項目
線引きは、口頭の了解より、契約や打ち合わせの記録に残る形で決めるほうが、あとから見返せます。決める項目は五つです。個人データを含む文書を扱うか、作業の記録や手順書をどこに置くか、成果物の受け渡し方法、契約終了時のアカウントと権限の扱い、別のクライアントの事例として話してよい範囲です。
| 決めること | 決め方の例 | 決める狙い |
|---|---|---|
| 個人データを含む文書を扱うか | 扱う場合は、取扱いの条件をクライアントに確かめる | クライアントの監督の範囲と合わせる |
| 作業の記録や手順書の置き場 | クライアントの環境の中の置き場を指定してもらう | 資料が自分の端末に残らないようにする |
| 成果物の受け渡し方法 | クライアントが指定する場所と手段で渡す | 受け渡しの経路をそろえる |
| 契約終了時のアカウントと権限の扱い | 終了日にアカウントと権限を外してもらう | 使わない入口を残さない |
| 別のクライアントの事例として話してよい範囲 | 契約で確かめ、決まらないうちは話さない | 前のクライアントの情報を次に持ち込まない |
表の例は書き手の見立てで、クライアントが規則を決めているときは、その規則が優先されます。ただし、決まっていない項目を空白のまま参画すると、あとから食い違いに気づいても、どちらの決めごとなのかを確かめにくくなります。
では、アカウント、権限、線引きの三つを、打ち合わせのどの順番で確かめればよいのでしょうか。
7. 3つの条件を参画前の打ち合わせで確かめる順番
確かめる順番
三つの条件には、前後の関係があります。アカウントが決まらなければ、どの権限を頼むかが決まりません。権限が決まらなければ、どこまでの資料に触れるかも見えません。そこで、確かめる順番は、アカウントの発行、権限の範囲、持ち出しの線引き、契約終了時の扱いです。
図の作成:Remogu編集部。確かめる順番を整理した概念図で、統計データではありません
契約終了時の扱いを最後に置くのは、参画前の段階で、終わりの場面まで話しておくためです。始まるときに出口を決めておけば、終わるときに権限やアカウントの扱いで迷いません。
打ち合わせで尋ねる言葉
尋ね方は、疑うような形にしなくて構いません。クライアントが管理の範囲を確かめたい立場にあることは、IPAの資料からも読み取れます。尋ねる側も、同じ目線で、作業の入口をそろえたいと伝えれば足ります。
たとえば「作業用のアカウントは、こちらの案件専用に発行してもらえますか」「権限は、作業に要る段階までで構いません」「資料の置き場と受け渡しの方法を教えてください」「契約が終わる日に、アカウントと権限を外してもらえますか」のように尋ねます。四つの質問が、図の四つの箱に対応しています。
冒頭の場面に戻ると、2社目の初日に1社目のポータルが開いたのは、入口を分けていなかったからです。SharePointの掛け持ちは、作業時間より先に、入口を分けて決めます。クライアントごとにアカウントを分け、権限を作業に合わせ、持ち出さない線引きを契約の前に決める。この三つがそろえば、掛け持ちは、混ざる不安から、整えて進める仕事に変わります。
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8. よくある質問
SharePointの経験だけで受けられる案件はありますか
案件によって異なります。書き手の見立てでは、社内ポータルや文書管理の設計、移行といった仕事に、Power Platformとの連携など周辺の経験を組み合わせて求められる場面が多くあります。SharePointだけで見るより、これまで触れてきた周辺の経験も並べて整理すると、合う案件を探しやすくなります。
自分の端末で作業してよいかはどう確かめますか
参画前に、クライアントの情報管理の規則を聞きます。IPAの解説書は、内部不正による情報漏えいに、組織の情報管理規則に背いた持ち出しも含まれると説明しています3。規則の中身が分からないまま自分の端末に資料を置くと、意図しなくても規則の外に出る場面が生まれます。端末の扱い、保存してよい場所、持ち帰りの可否を、打ち合わせで聞いておきます。
前のクライアントで作ったポータルの構成を、次の案件で生かしてよいですか
文書や設定の写しを持ち出さず、自分の知識として説明できる範囲にとどめるのが、書き手の見立てです。どこまでが話してよい内容かは、前のクライアントとの秘密保持の範囲によって決まるので、契約で確かめます。専属義務や実績の公表については、案件の掛け持ちを制限されたら?専属義務と実績の公表の考え方を解説でもまとめています。
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出典・参考情報
*1 独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日・2026年10月確認)
*2 独立行政法人情報処理推進機構「組織における内部不正防止ガイドライン」(2025年5月19日・2026年10月確認)
*3 独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編]」(2026年3月・2026年10月確認)
*4 独立行政法人 情報処理推進機構「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2026年6月・2026年10月確認)
*5 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年6月・2026年10月確認)