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    【フリーランスの印鑑】実印・認印・電子署名の違いと契約書で使い分ける判断基準

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    午後の机で、無地の書面に手を添え、左に寝かせた無地の木の印鑑、奥に閉じたノートパソコンとペン

    📘 この記事でわかること

    • 署名・記名・押印がそれぞれ何を指すかと、民事訴訟法の推定が実印に限らず「署名又は押印」に置かれていること
    • 実印が市区町村への印鑑登録で決まることと、姫路市の例でゴム印等の材質の印鑑が登録できないこと
    • 電子署名法の推定と特定認証業務の認定が、紙の押印と同じ「本人の意思で作られたか」にどう答えるか

    初めて受けた業務委託の契約書の押印欄を前に、実印を作る必要があるのかと印鑑店を調べていたところ、翌日になって「電子契約で送り直します」と連絡が来て、用意しかけた印鑑の出番がなくなりました。印鑑がなければ、後で揉めたときに本人が結んだ契約だと示せないのではないか、と不安になる場面です。印鑑で守るのは、印影ではなく、本人が結んだという記録です。紙の押印と電子署名がそれぞれ何を残すのかを、公的な資料の範囲で順に見ていきます。

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    1. 契約書で印鑑が問われる場面

    印が付く書類の並び

    フリーランスが仕事を始めるとき、印が付く書類は一つではありません。まず業務委託契約書があり、情報の扱いを定める秘密保持契約書が続きます。発注の段階では注文書と注文請書を交わし、仕事を終えれば請求書を出します。これはエンジニアの実務を書き手が並べたもので、取り交わす書類の組み合わせは案件ごとに異なります。

    図1:フリーランスの契約で印が付く書類の地図
    フリーランスの契約で印が付く書類の地図 書類ごとに紙と電子の両方がある 紙の書面 電子の書面 業務委託契約書 署名・押印 電子署名 秘密保持契約書 署名・押印 電子署名 注文書と注文請書 署名・押印 電子署名 請求書 署名・押印 電子署名

    図の作成:Remogu編集部。実務で取り交わす書類を整理したもので、統計データではありません

    同じ書類でも、受け取り方は一つに決まっていません。業務委託契約書であれば、郵送の紙で届く案件もあれば、PDFや電子契約で届く案件もあります。割合を示せる資料はありませんが、書き手は電子で届く場面が増えていると見ています。

    受け取り方で変わる問い

    紙で届けば、署名や押印をして返送します。電子契約であれば、画面上で電子署名を付けます。冒頭の場面のように、途中で紙から電子へ切り替わる場合もあります。

    そのため、印鑑を用意する前に確かめたいのは、その契約書でどの方法が求められているかです。紙なら印鑑の種類が問題になり、電子なら電子署名の仕組みが問題になります。どちらの場合も、問われているのは文書が本人の意思で作られたかどうかです。では、押印は何を意味するのでしょうか。

    2. 押印が意味すること

    署名・記名・押印の言葉の違い

    国土交通省の資料「署名又は記名押印」は、建設業法の請負契約書の署名又は記名押印を扱うものです1。業務委託契約に当てはまる規定ではありませんが、契約書の言葉を整理した部分は読み方の参考になります。資料は署名を、自己の氏名を自ら書き記すこと、つまり自署と整理しています1。

    一方、記名は自ら書く必要がなく、他人が書いてもよいし、印刷でも可としています1。押印は、印を押すことです。同じ氏名が入る欄でも、本人が手で書いたのか、印刷されたのかで言葉が分かれます。

    言葉意味
    署名自己の氏名を自ら書き記すこと(自署)1
    記名自ら書く必要はなく、他人が書いても、印刷でもよい1
    押印印を押すこと
    民事訴訟法第228条第4項私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する1

    民事訴訟法第228条第4項の推定

    同じ資料には、民事訴訟法第228条第4項が抄録されています1。私文書は本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定すると定めています1。真正に成立したとは、その文書が本人の意思で作られたということです。

    この条文から読み取れるのは、推定の条件が「署名又は押印」であることです。署名でも押印でも条件を満たし、実印に限った規定ではありません。これは条文の文言を見た書き手の読みです。

    ただし、この規定が扱うのは、文書が本人の意思で作られたと推定される場面です。契約が成立するかどうかは別の論点で、この記事では触れません。資料から言えるのは、推定の規定の範囲までです。

    押印が残すもの

    書き手の整理では、押印が残すのは、その文書を本人が作ったと言える材料です。印影そのものが価値を持つというより、後から文書を見た人が本人の関与を読み取る手がかりになります。次は、その押印に使う印鑑の種類、実印と認印の違いです。

    3. 実印と認印の違い

    公共施設の窓口カウンターに、蓋を開けた黒い印鑑ケースを置く手

    実印になる条件

    姫路市の印鑑登録申請の案内は、印鑑を「実印」として使用するには登録が必要だとしています2。これは市区町村の印鑑登録の一例で、条件は自治体ごとに定められます。実際に登録するときは、お住まいの市区町村の案内で確かめる必要があります。

    書き手の整理として、実印は市区町村に登録した印鑑、認印は登録していない印鑑です。実印は、印鑑登録証明書によって登録された印鑑と照合できる点が違います。この整理は資料の文言そのものではなく、登録の有無に着目した書き手の分け方です。

    登録できない印鑑の例

    姫路市の案内は、職業の肩書等、本人の氏名以外の内容が含まれている印鑑や、ゴム印等、材質が変形しやすい印鑑は登録できないと示しています2。実印として使えるのは登録された印鑑だけなので、登録できない印鑑は実印にできません。

    図2:印鑑の種類と登録の関係
    印鑑の種類と登録の関係 登録の有無で呼び名が分かれる 実印 市区町村に登録 実印には登録が必要 認印 登録していない印鑑 印鑑登録の対象外 ゴム印等 材質が変形しやすい印鑑 姫路市の例では登録不可

    図の作成:Remogu編集部。姫路市の案内の例を整理したもので、統計データではありません

    図の3つは、登録の有無と材質で分かれます。ゴム印等は、材質が変形しやすい印鑑として姫路市の案内に挙がっている例です。ほかの自治体で同じ扱いかどうかは、この資料からは分かりません。

    契約書で実印を求められたとき

    業務委託契約で、実印と印鑑登録証明書を求められる場面は多くないと、書き手は見ています。頻度や割合を示す資料はないので、あくまで見立てです。

    求められたときは、何のために実印が要るのかを、委託元に尋ねてみます。理由が分かれば、登録の有無や、手元の印鑑で足りるかどうかを判断しやすくなります。次は、紙の押印に対して、電子契約の電子署名が何を意味するのかです。

    4. 電子契約の電子署名が意味すること

    電子署名法が置く推定

    デジタル庁の電子署名のページ(最終更新2026年3月9日)によると、電子署名法に基づき、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したもの、つまり本人の意思に基づき作成されたものと推定されます3。押印の推定と同じく、本人の意思で作られたかどうかに答える仕組みです。

    ここで押さえたいのは、推定の条件が「本人による一定の要件を満たす電子署名」であることです。電子契約というだけで、どのサービスでも推定が働くとは、この資料からは言えません。

    根拠・推定・認定・所管の整理

    デジタル庁のページが述べているのは、電子署名法を根拠に、一定の要件を満たす電子署名には真正な成立の推定が及ぶことと、認証業務のうち一定の基準を満たすものが国の認定を受けられることです3。所管はデジタル庁で、電子署名法の所管庁として認定等を行っています3。下の表は、この4項目を並べています。

    項目内容
    根拠電子署名法3
    推定本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定される3
    認定電子署名の認証業務のうち一定の基準を満たすもの(特定認証業務)は、国の認定を受けられる3
    所管デジタル庁が、電子署名法の所管庁として認定等を行っている3

    紙の押印と並べた整理

    書き手の整理では、紙の押印は民事訴訟法第228条第4項、電子署名は電子署名法と、根拠の法律は違っても、どちらも文書が本人の意思で作られたかという同じ問いに答える仕組みです。紙で届くか電子で届くかによって、本人の関与を示す手段が変わると考えると、全体が見通しやすくなります。

    認定は、一定の基準を満たす認証業務が受けられるものです。認定を受けていない電子署名が無効になるという意味ではなく、すべての電子署名サービスが認定を受けているわけでもありません3。では、電子契約にすると印紙の扱いはどう変わるのでしょうか。

    5. 電子契約なら印紙はどうなるか

    国税庁の質疑応答事例が答えていること

    電子契約に切り替わると、印鑑だけでなく印紙の扱いも変わるのか。これは気になる点です。国税庁の質疑応答事例は、取引情報を記録した電磁的記録に電子署名を付して電子メールで送信した注文請書の事例を取り上げています4。

    この事例で国税庁は、電磁的記録は印紙税の課税対象となる文書に含まれず、印紙税は課税されないと回答しています4。令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく回答で、照会に書かれた事実関係を前提にした一般的な答えです。

    図3:紙の契約書と電磁的記録で印紙の判断が分かれる位置
    紙の契約書と電磁的記録で印紙の判断が分かれる位置 電磁的記録は課税の対象外 紙の契約書 課税文書かどうかの判断 契約の内容ごとに確認 電磁的記録 課税文書に含まれない 注文請書の事例

    出典:国税庁「質疑応答事例(取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い)」をもとに作成

    この事例から言える範囲

    ただし、この回答は注文請書の事例です。電子契約ならすべての契約書で印紙税が不要だと読むことはできません。業務委託契約書そのものが印紙の要る契約書に当たるかどうかは、この事例では扱われていません。

    印紙が要る契約書の見分け方は、案件の契約書と収入印紙の記事で整理しています。電子で届いた契約書の印紙が気になるときも、まずその記事で、契約書の種類を確かめてください。印紙の次に決めておきたいのは、契約を結ぶ前に何を尋ねておくかです。

    6. 契約の前に確かめること

    木の机で、無地の紙の書面と伏せたタブレットにそれぞれ手を添える

    契約書の形式と押印欄の種類

    印鑑を買いに行く前に、契約書の形式を確かめます。紙で届くのか、PDFや電子契約で届くのかが分かれば、用意するものが変わります。ここは書き手の整理で、法令が定める手順ではありません。

    紙の契約書であれば、押印欄が実印の指定なのか、認印でよいのかを尋ねます。冒頭の場面のように、電子契約に切り替わることもあるため、形式は契約の直前にもう一度見ておくと迷いません。

    電子契約で尋ねること

    電子契約では、誰が署名するのか、本人確認をどんな方法で行うのかを尋ねます。電子署名の推定が及ぶのは、本人による一定の要件を満たす電子署名です3。そのため、署名者と本人確認の方法は、紙の押印で言えば印鑑の種類にあたる確認点です。

    署名を終えたあとの控えの受け取り方と、保存する場所も、この段階で決めておきます。契約ごとにファイルをまとめておけば、あとで文書を示す場面でも探し直さずに済みます。

    名義と取引条件の明示

    契約の名義を個人名にするか、屋号を使うかも、署名や押印の前に決めます。屋号の扱いはフリーランスエンジニアの屋号の記事に整理があります。取引条件を契約書とは別にメールやPDFで示すときは、案件の電子契約での明示の条件も確かめておきたい点です。

    確かめること理由
    契約書の形式(紙か電子か)用意するものが、印鑑か電子署名かで変わります
    押印欄の種類(実印の指定か否か)実印の指定なら、印鑑登録の有無を先に確かめます
    電子契約の署名者と本人確認の方法電子署名の推定は、本人による一定の要件を満たす電子署名が条件です
    控えの受け取り方と保存場所署名済みのファイルを、契約ごとに探せる形で残すためです
    屋号の印を使うか、個人名か(屋号の記事)契約の名義と、押す印や署名の名前をそろえるためです
    取引条件の明示の方法(電子契約での明示)契約書とは別に条件を示す場合の扱いを確かめるためです

    表は、書き手が契約前の確認として整理した6点です。法令が定める項目ではなく、案件ごとに加わる確認点もあります。次は、これらを踏まえて、印鑑をどう用意するかの判断です。

    7. 印鑑を用意するときの判断基準

    判断の順番

    印鑑の用意は、契約書の形式から順に決めます。紙なら押印欄の指定を見て、実印の指定がなければ、朱肉を使う認印で足りるかを委託元に尋ねます。電子なら、印鑑を探す前に電子署名の本人確認の方法を確かめます。

    図4:印鑑を用意するときの判断の順番
    印鑑を用意するときの判断の順番 最初に見るのは契約書の形式 手順1 契約書の形式 紙か電子か 手順2 実印の指定 あるかないか 手順3 認印で済むか 委託元に確認 手順4 電子署名の 本人確認 手順5 控えの保存 契約ごとに保管

    図の作成:Remogu編集部。契約前の確認を整理したもので、統計データではありません

    手順4は電子契約のときだけ通る手順で、紙の契約では手順3のあとに手順5へ進みます。どの手順も、問われているのは文書が本人の意思で作られたかどうかです。

    印鑑で守るもの

    冒頭の場面で、用意しかけた印鑑の出番はなくなりました。それでも、慌てる必要はありませんでした。紙の押印は、民事訴訟法第228条第4項の推定に結びつきます1。電子署名は、電子署名法の推定に結びつきます3。

    印鑑で守るのは、印影ではなく、本人が結んだという記録です。紙なら押印や署名、電子なら本人確認を伴う電子署名と、手段は違っても、その記録が残る形を選んで契約を結べば、不安は小さくなります。

    契約書の形式まで含めて、自分に合う案件の条件を知っておくと、契約の前に何を尋ねるかが決めやすくなります。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみてください。

    8. よくある質問

    ゴム印で契約書に押してもよいですか

    姫路市の案内は、ゴム印等、材質が変形しやすい印鑑は登録できないとしています2。実印にはできない例ですが、契約書に押せないという意味ではありません。書き手の考えでは、紙の契約では朱肉を使う認印を用意しておくと、押印欄で迷いません。

    屋号の印鑑は作ったほうがよいですか

    契約の名義が個人名であれば、個人の印で済むと書き手は考えています。屋号を名義にするときは、押す印や署名の名前をそろえることになります。屋号の扱いは、フリーランスエンジニアの屋号の記事で確かめられます。

    電子契約の控えはどう残せばよいですか

    書き手の整理では、署名が済んだファイルを受け取り、契約ごとにまとめて保存します。保存期間などの義務については、この記事では扱いません。契約の前に、控えの受け取り方を委託元に尋ねておくと、署名のあとで探す手間を減らせます。

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    フリーランスの契約書の印鑑は、押印そのものより、本人の意思で作った記録が残るかどうかで選びます。契約の形が決まったら、フルリモートで受けられる案件から探してみてください。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 国土交通省「署名又は記名押印」(2025年3月4日・2026年10月確認)
    *2 姫路市「印鑑登録申請」(2026年7月30日・2026年10月確認)
    *3 デジタル庁「電子署名」(2026年3月9日・2026年10月確認)
    *4 国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(2025年8月1日・2026年10月確認)