【旅行先で働くフリーランス】案件を進める前に決める通信と経費の判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 旅先での作業がワーケーションの制度ではなくクライアントとの取り決めで決まることと、出発前に確かめる5つの項目
- データの種類ごとに旅先で開いてよい範囲を分けることと、公衆Wi-Fiにつなぐ前に見る3つの確認
- 旅費と観光の費用を分ける考え方と、あとから説明できるように残しておく記録の中身
帰省の新幹線を予約した直後に、週次の定例が帰省中の水曜にあると気づきました。実家の回線でつないでよいのか、クライアントに先に伝えたほうがよいのか、考えているうちに手が止まります。旅行や帰省のたびにリモート案件を続けたいフリーランスのエンジニアが抱えるのは、旅先で作業したことが、あとから契約や情報管理や税務の指摘につながらないかという不安です。旅先で働く日は、仕事の分と旅の分を出発前に分けておきます。この一言を軸に、確かめる順番を整理します。
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1. 旅先での作業とワーケーションの違い
ワーケーションは企業と地域に向けた言葉
ワーケーションは、仕事と休暇を組み合わせる働き方として広まった言葉です。観光庁は、ワーケーションやブレジャーを、働く場所や時間の自由度を高める点で働き方改革や企業の経営課題への対応に寄与するものとして、普及・定着に向けた取組を進めています1。
ただし、この取組が主に想定しているのは、企業が制度として導入する場面と、受け入れる地域が整える場面だと考えられます。観光庁のナレッジ集の抜粋には、個人事業主の経費や税の扱いに関する記述が見当たりません。国が推進しているから旅先で働ける、とは読めないのです。
では、フリーランスの旅先での作業は、何で決まるのでしょうか。業務委託では、働く場所や時間はクライアントとの契約と取り決めで決まります。企業の就業ルールの代わりに、業務委託契約や秘密保持の条項が、旅先でどこまで作業してよいかの物差しになります。
誰が認めるかで見る、制度と契約の違い
表では、誰が認めるか、場所の決まり、費用の3つで両者を並べています。企業のワーケーションでは、認めるのは企業の制度で、場所の決まりは就業ルール、費用は企業の負担の決まりに沿います。フリーランスの旅先での作業は、認めるのがクライアントとの契約と取り決めで、場所の決まりが業務委託契約や秘密保持の条項、費用は自分の事業の費用としての区分です。この並べ方は書き手の整理であり、資料が定めた区分ではありません。契約の中身は案件ごとに違うため、手元の契約書で確かめるのが出発点です。
| 項目 | 企業のワーケーション | フリーランスの旅先作業 |
|---|---|---|
| 誰が認めるか | 企業の制度 | クライアントとの契約と取り決め |
| 場所の決まり | 企業の就業ルール | 業務委託契約・秘密保持の条項 |
| 費用 | 企業の負担の決まり | 自分の事業の費用として区分 |
言葉が違うと、確かめる相手が変わる
言葉の違いは、確かめる相手の違いでもあります。企業の制度なら社内の窓口に聞く場面でも、フリーランスが確かめる相手は、契約を結んだクライアントです。旅先で作業する日が決まったら、制度の有無を探すより先に、契約書の場所に関する条項と、秘密保持の範囲を読み返します。条項があるかどうかは案件によります。
次は、その確認を出発前にどう進めるかです。
2. 出発前にクライアントと決めておく項目
個人データを扱う案件でクライアントが負う立場
個人情報保護委員会は、報告された不正アクセスによる個人データの漏えい等の事案を分析し、個人情報取扱事業者に向けて、九つの事例に類型化できる問題点を挙げています2。
同じ注意喚起は、これらの問題への措置が十分でない場合、個人情報取扱事業者について、安全管理措置や委託先の監督(法第25条)などの違反と判断される可能性があるとしています2。義務を負うのは個人データを取り扱う事業者、つまり委託元の側です。委託先に直接課す規定の説明ではありません。
とはいえ、個人データを扱う案件では、委託元のクライアントは委託先の作業の仕方に関心を持つ立場にあると考えられます。旅先で作業する予定を出発前に伝えておくのは、許可を得るためというより、クライアントが確かめたいことに先に答える信頼の話です。注意喚起は不正アクセスの事例を分析したもので、旅先での作業を定めたものではない点は押さえておきます。
決めておく5つの項目
決めておく項目は、作業場所の決まり、扱うデータの範囲、接続の方法、連絡のつく時間帯、不在日の共有の5つです。これは書き手の見立てで、契約や案件によって増減します。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、資料が定めた手順ではありません
作業場所の決まりでは、契約書に場所の定めがあるかを読み返し、定めが無ければ旅先での作業を伝えて取り決めを確かめます。扱うデータの範囲では、旅先で開いてよい資料と開かない資料を分けます。接続の方法では、クライアントが接続の方法を指定しているかを確かめ、指定があればその方法で接続します。
連絡のつく時間帯と不在日の共有は、旅の予定が作業にどう響くかを先に伝える項目です。定例の日と移動日が重なるなら、その日の代わりの連絡手段や、返信が遅れる時間帯を決めておくと、当日に慌てずに済みます。
許可を求めるより、取り決めを協議する
伝え方は、許可を求める形より、取り決めを協議する形が合います。「旅先で作業する日があります。場所と接続について、確かめておきたい点はありますか」と尋ねるだけで、クライアント側の決まりが見えてきます。決まりが無ければ、その場で5項目を取り決めにできます。
次は、5項目のうち旅先で開いてよいデータの範囲です。
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3. 扱うデータで決まる旅先での範囲

データの種類ごとに、旅先での扱いを決める
旅先で作業する日に最初に分けるのは、場所よりもデータの種類です。同じノートパソコンでも、ソースコードを開く日と、個人データを含む資料を開く日とでは、必要な取り決めが変わります。
表では、旅先での扱いの目安をデータの種類ごとに並べています。ソースコードはクライアントの指定する環境の中で扱い、個人データを含む資料は旅先で開かず、開く場合は事前に合意を取ります。設計書や議事録は手元の端末に保存せず指定の保存先で扱い、認証情報は端末やメモに残しません。いずれも書き手の見立てであり、クライアントとの取り決めがある場合は、そちらが優先します。
| データの種類 | 旅先での扱いの目安 |
|---|---|
| ソースコード | クライアントの指定する環境の中で扱う |
| 個人データを含む資料 | 旅先で開かない。開く場合は事前に合意を取る |
| 設計書・議事録 | 手元の端末に保存せず、指定の保存先で扱う |
| 認証情報 | 端末やメモに残さない |
手元に置かない運用
注意喚起が挙げる九つの事例の1つに、個人領域に保存したデータの漏えい事例(事例6)があります2。資料から言えるのは、この事例が一覧に含まれていることまでです。この見出しに照らすと、手元の端末や個人のクラウドにクライアントのファイルを置かない運用は、旅先でも続けたいところです。
出発前に、指定の保存先から必要な分だけを開く手順を決めておきます。作業のあと、手元の端末に資料が残っていないかを確かめる手順まで含めておくと、帰ってから慌てずに済みます。
データの扱いが決まったら、次は接続する回線です。
4. ホテルや駅の公衆Wi-Fiで確かめる点
公衆Wi-Fiにつなぐ前の3つの確認
総務省の「公衆Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(令和7年2月版)は、公衆Wi-Fiを使うときのセキュリティ対策のポイントとして、接続するアクセスポイントをよく確認すること、正しいURLでHTTPS通信しているか確認すること、パソコンの共有設定に注意することの3つを示しています3。
そのため、つなぐ前に見る場所を、接続先、通信、端末の順に並べておくと、迷わず確かめられます。ホテルのロビーでも駅の待合でも、見る順番は同じです。
出典:総務省「公衆Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」(令和7年2月版)をもとに作成
実家の回線とテザリングの考え方
実家や旅館の回線、スマートフォンのテザリングを使う場合の考え方は、資料にはなく書き手の見立てです。基本は、どの回線を使うかをクライアントとの取り決めに合わせることです。クライアントが接続の方法を指定しているなら、回線の種類にかかわらずその方法で接続します。VPNの利用を求められている場合も、取り決めの範囲で決まります。
指定が無い場合は、先に決めた接続の項目で、使いたい回線を伝えて取り決めを確かめます。回線を選んだ理由を説明できる状態にしておけば、旅先で作業した日の説明がしやすくなります。
回線とデータの話が済むと、残るのは旅費と観光の費用の区分です。
5. 旅費と観光の費用を分ける考え方
旅費交通費の例と、観光の費用
国税庁の「収支内訳書(一般用)の書き方」は、必要経費の科目「旅費交通費」の具体例として、電車賃、バス代、タクシー代、宿泊代を挙げています4。宿泊代が例に入っているからといって、旅行の宿泊代がそのまま経費になるという意味ではありません。科目にどんな費用が入るかを示した記述にとどまります。
そのため、仕分けの出発点は、その移動や宿泊が仕事のためだったかどうかです。書き手の見立てでは、案件のための打ち合わせや作業で動いた分は旅費交通費として検討でき、観光や私用の移動、食事は家事上の費用と考えられます。判断が分かれるときは、税務署や税理士に確かめます。
業務と私用が混ざる費用の区分
宿泊代のように、業務と私用が混ざる費用もあります。同じ説明書は、家事関連費の家事分と事業(業務)分の区分について、使用面積や保険金額、点灯時間などの適切な基準によってあん分して計算するとしています4。業務の分を明らかに区分できるかどうかが、考え方の軸です。
ただし、この記述は地代家賃や水道光熱費などの例に即したもので、旅行の費用に向けて書かれた箇所ではありません。割合の数値も示されていません。旅行の日数で割るといった計算式を、この資料から導くことはできません。
図の作成:Remogu編集部。国税庁「収支内訳書(一般用)の書き方」の記述をもとにした見立てで、統計データではありません
旅費交通費の例示と、あん分の基準の例は、同じ説明書の別々の箇所の記述です。二つをつないで、旅費も使用面積などで分けると読むことはできません。自分の申告の方法に合った説明書も、あわせて開いておきます。
費用の仕分けは、後から説明できてはじめて意味を持ちます。そのための記録を、次の節で見ていきます。
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6. 記録の残し方

残しておく5つの記録
業務の分を区分するための基準は、先ほどの資料に旅行向けの割合として示されていません。したがって、旅の費用のどこまでを業務の分と考えたかは、後から自分で説明できる形にしておく必要があります。次の5つは、そのために残しておきたい記録で、書き手の見立てです。
| 残すもの | 残す理由 |
|---|---|
| 旅程と作業した日・時間 | 旅の日と、作業した日を分けて示せる |
| 領収書と利用明細 | 費用の中身と金額を、後から確かめられる |
| その日に進めた案件と作業内容 | 業務のための移動や宿泊だったと説明する材料になる |
| 打ち合わせの記録 | 旅先で参加した日の状況が分かる |
| クライアントとの取り決めのやりとり | 旅先での作業を伝え、協議した経過が残る |
たとえば、旅程と作業した日の記録があれば、旅行の日のうち何日を案件に充てたかを示せます。領収書の日付と照らし合わせると、どの費用がどの日のものかも追えます。作業内容は、その日のうちに一行でも書いておくと、数週間後に思い出す手間が省けます。
区分に迷う費用の確かめ先
記録を残しても、区分に迷う費用は出てきます。業務の分を明らかに区分できない費用を、無理に業務の分として扱う必要はありません。判断に迷う費用は、税務署や税理士に確かめます。
相談するときは、先に挙げた5つの記録を手元に持っていくと、話が早く進みます。何を業務のために使い、何が私用だったのかを、記録で示せるからです。
費用と記録の話が済んだところで、旅の前から帰ってからまでを一つの流れにまとめます。
7. 旅先で稼働する日の組み立て
出発前・旅先・帰宅後の3つの時点
ここまでの内容は、時点で分けると使いやすくなります。出発前は、クライアントとの取り決めの確認、扱うデータの整理、費用の区分の方針づくりです。旅先では回線を確かめ、作業を記録します。帰宅後に、領収書を整理し、業務の分を区分します。書き手の見立てとして、この順番で並べます。
図の作成:Remogu編集部。ここまでの内容を時点ごとに整理した見立てで、統計データではありません
帰省の水曜に戻って
帰省の新幹線を予約したあと、実家の回線で定例につないでよいのかと手が止まった場面に戻ります。出発前に、作業する場所と回線をクライアントに伝え、取り決めを確かめておけば、その水曜は迷わずに済みます。扱う資料は指定の保存先から開き、領収書と作業の記録を残します。
旅先で働く日は、仕事の分と旅の分を出発前に分けておきます。通信も、データも、費用も、分けておくと、旅の間は目の前の作業に集中できます。
場所を選ばずに働き続けるには、こうした取り決めを一つずつ整える力が支えになります。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみてください。
8. よくある質問
帰省先の実家で作業するときも同じ考え方ですか
取り決めの確認と回線の確認は、旅行でも帰省でも同じ考え方です。実家の回線を使うときも、クライアントとの取り決めに合わせます。
一方、費用の面では慎重に考えます。帰省は私用の移動が中心と考えられるため、業務のために動いたと説明できる部分が無ければ、旅費交通費として検討する対象になりにくいといえます。判断に迷うときは、税務署や税理士に確かめます。
海外旅行の先で作業するときは何が変わりますか
国外では、データを国外へ持ち出す扱い、時差、税が別の論点として加わります。まず出発前に、クライアントと取り決めを確かめます。
住まいを国外に移す場合の考え方は、海外在住でフルリモートの日本案件を受ける場合の確かめ方と、海外移住するフリーランスエンジニアの税金で扱っています。短い旅行でも、確かめる順番は同じです。
同行者の宿泊代や観光の費用は経費になりますか
書き手の見立てでは、同行者の宿泊代や観光の費用は家事上の費用にあたり、業務の分として説明するのは難しいと見ています。検討できるのは、自分の業務の分を明らかに区分できる部分に限られます4。
宿泊代は旅費交通費の例に挙がっていますが、科目の例示であり、旅行の宿泊代がそのまま経費になるという意味ではありません。区分に迷う費用は、税務署や税理士に確かめます。
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旅行先での作業は、出発前にクライアントと場所と通信の条件を決め、業務の費用と旅の費用を分けて記録しておくと迷いません。場所を選ばず進められるリモート案件から探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 観光庁「「ワーケーション&ブレジャー等の普及・定着」ナレッジ集」(2025年5月30日・2026年10月確認)
*2 個人情報保護委員会「不正アクセスによる個人データ」(2026年10月7日・2026年10月確認)
*3 総務省「公衆Wi-Fi利用者向け」(2025年2月・2026年10月確認)
*4 国税庁「収支内訳書(一般用)の書き方」(2025年10月1日・2026年10月確認)