【フリーランスエンジニアの融資】借りる前に分ける運転資金と設備資金の判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 入金までの期間とPCの買い替えを、運転資金と設備資金に分けて考える見方と、返済期間の上限が使いみちで分かれていること
- 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の枠組みと、公庫の融資を受けた企業の調査から見える資金調達の姿
- 借りる額を資金計画から逆算する順番と、借りる前に書き出す項目、業務のための借入金の利息が必要経費になること
独立して最初の業務委託の案件が決まりましたが、契約書の支払条件の欄には「月末締め翌月末払い」とあり、最初の入金が2か月近く先になると気づきました。同じ月にPCの買い替えも重なり、フリーランスエンジニアとして「融資」で検索し始めた方もいるのではないでしょうか。何のためのお金かが分からないまま探しても、どこからいくら借りるのかは決まりません。この記事では、借りる前に、何のためのお金かを分けます。
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1. フリーランスエンジニアが融資を考える場面
入金までの期間に空く間
この節の場面の分け方は、資料の記載ではなく書き手の見立てです。たとえば月末締め翌月末払いの契約で、4月の頭から稼働を始めたとします。4月分の報酬が支払われるのは5月末ですから、稼働を始めてから最初の入金までは2か月近くあきます。契約書の支払条件の欄は、融資を考える前にまず読み返したい場所です。
一方で、この間も支払いは止まりません。事業のための支払いも、日々の生活の支払いも、入金の日を待たずに来ます。業務委託の案件では、稼働した分の報酬が後からまとめて入る形になるため、独立した直後ほど手元の資金と入金の時期のずれが目立ちます。
PCや検証機材の買い替え
エンジニアの事業は、店舗や大きな機械を構える仕事と比べると、設備が小さく済むと考えられます。書き手の見立てでは、まとまったお金が要る場面の中心は、PCや検証用の機材の買い替えです。入金までの期間と買い替えが同じ月に重なると、支出が先に来て、入金があとから来る形になります。
案件の切れ目
案件が終わってから次の案件が始まるまでの間も、同じように入金が途切れます。この間がどのくらいになるかは、案件の契約期間と次の案件が決まる時期によって変わるため、一律には言えません。入金までの期間と同じく、事業の支払いと生活の支払いを手元の資金でつなぐ場面です。
お金が要る理由を2つに分ける
融資では、お金の使いみちを設備資金と運転資金に分けて考えます。公庫の創業の手引の概要も、返済期間を設備資金と運転資金で分けて載せています1。入金までの期間や案件の切れ目は運転資金の側、PCや検証機材の買い替えは設備資金の側に入る、というのが書き手の見立てです。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません
では、創業期の資金調達は実際にどのような姿なのか、公庫の調査から見ていきます。
2. 創業期の資金調達では借り入れが大きな割合を占める
公庫の融資を受けた企業の資金調達
日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査2は、公庫の融資を受けた企業に聞いた調査です。対象はエンジニアに限らないため、フリーランスエンジニア一般の姿を表す数字ではありません。この節の数字は、あくまで公庫の融資を受けた企業の調査結果として読みます。
この調査で、開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。そのうち金融機関等からの借り入れは平均827万円で、平均調達額に占める割合は67.9%です2。借りた人の割合ではなく、調達した金額の内訳のうち借り入れが占める割合を表しています。
ただし、対象が公庫の融資を受けた企業ですから、この割合を独立する人全体の姿として読むことはできません。創業期の資金調達で借り入れが大きな割合を占める例がある、という読み方にとどめます。
調査項目ごとの結果と読み方
次の表は、調査の対象、資金調達額のうち借り入れの金額と割合、現在苦労していることの割合を並べたものです。右の列には、数字を読むときに外せない注意を添えました。借り入れの割合は調達額の内訳であり、借りた人の割合ではありません。苦労していることの割合も、公庫の融資を受けた企業の回答です。
| 項目(2025年度新規開業実態調査) | 調査の結果 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 調査の対象 | 公庫の融資を受けた企業(エンジニアに限らない) | フリーランス一般の姿ではありません |
| 資金調達額のうち、金融機関等からの借り入れ | 平均827万円(平均調達額に占める割合は67.9%)2 | 借りた人の割合ではありません |
| 現在苦労していること「資金繰り、資金調達」 | 36.2%2 | 「顧客・販路の開拓」(48.8%)に次ぐ項目です |
現在苦労していること
同じ調査で、現在苦労していることとして「資金繰り、資金調達」を挙げた割合は36.2%でした2。「顧客・販路の開拓」の48.8%に次いで、割合の高い項目です。最も多い項目ではなく、資金の悩みは仕事を取る悩みと並んで挙がる項目の一つ、という位置づけです。
一方で、この数字は公庫の融資を受けた企業の回答です。資金繰りの苦労がずっと続くとまでは、この数字から言えません。では、公庫の融資にはどのような枠組みがあるのでしょうか。
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3. 日本公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の枠組み

創業の手引に載っている概要
日本政策金融公庫の創業の手引(2026年5月版)には、新規開業・スタートアップ支援資金の概要が載っています。次の表は、その記載のうち、利用できる方、融資限度額、返済期間、担保・保証人の4項目を並べたものです。利率は表に入れていません。どの数字も手引の記載であり、実際の融資の条件は公庫の窓口で確かめます。
| 項目 | 創業の手引(2026年5月版)の記載 |
|---|---|
| 利用できる方 | 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方1 |
| 融資限度額 | 7,200万円(上限の記載)1 |
| 返済期間 | 設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は原則10年以内(うち据置期間5年以内)1 |
| 担保・保証人 | 創業期の方向けの案内で、原則として無担保・無保証人。一部利用できない融資制度があります1 |
表を読むときの3つの注意
1つ目は、数字がいずれも上限だという点です。7,200万円は融資限度額の記載で、借りられる額を示すものではありません。返済期間の20年以内と原則10年以内も、上限の記載です。
2つ目は、無担保・無保証人の区切りです。この案内は、創業期の方、つまり新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方に向けたものです1。「おおむね7年以内」という利用対象の区切りとは別のものなので、混ぜて読みません。
3つ目は、フリーランスの開業が「新たに事業を始める方」に当たるかどうかです。個人事業主として独立した場合にどう扱われるかは、この記事では断定できません。公庫の窓口で確かめます。では、使いみちはどのように分けて考えるのでしょうか。
4. 設備資金と運転資金の分け方
返済期間の上限が使いみちで分かれる
手引の概要では、返済期間の上限が使いみちによって分かれています。設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内で、据置期間はどちらも5年以内です1。設備資金のほうが、上限の期間が長く設けられています。
ただし、これは上限です。何年で返せるかを示すものではなく、実際の返済期間は借りるときに決まります。使いみちを分ける根拠として手引から示せるのは、この返済期間の上限が違う点までです。
エンジニアの場合の例示
ここからは書き手の見立てです。PCや検証機材、ソフトウェアの購入は設備資金に、入金までの事業の支払いは運転資金に当たると考えられます。図2の左右は、その見立てを並べたものです。
出典:日本政策金融公庫「創業の手引」(2026年5月版)の返済期間の記載をもとに作成。使いみちの例示は書き手の見立てです
どちらに当たるかは公庫の窓口で確かめる
個々の支出が設備資金と運転資金のどちらに当たるかは、この記事では断定しません。生活の分を運転資金に含められるかどうかも、この記事では断定しません。図2の例示は、考え方を整理するための見立てとして使い、実際の区分は公庫の窓口で確かめます。次は、借りる額をどう決めるかです。
5. 借りる額を資金計画から逆算する順番
資金計画の説明
日本政策金融公庫の創業の手引(2026年5月版)は、資金計画を「創業するのにいくら必要で、その資金をどう調達するのかを検討する計画」と説明しています1。借りる額は、この説明のうち「どう調達するのか」の中で決まるものです。先に額を決めて使いみちをあとから探すと、順番が逆になります。
たとえば第1節の場面なら、入金までの2か月近くに出ていく事業の支払いと、PCの買い替えの額を、別々に書き出します。ここは書き手の見立てです。運転資金の側と設備資金の側で、返済期間の上限が違うため、額も分けて出しておくと話が整理されます。
手元の資金と不足分
必要な額が出たら、次に手元の資金を確かめ、必要な額との差を不足分として出します。この段取りは手引の記載ではなく、書き手の見立てです。事業のために使える預金と、生活のために残しておく預金は、分けて数えます。
入金の時期が契約で決まっている案件なら、入金の月までに出ていく支払いを月ごとに並べて、資金が不足する月を探します。不足するのが入金までの期間だけなのか、買い替えが重なった月なのかで、不足分の中身は運転資金と設備資金に分かれます。
不足分が出てから借り先を当たる
借り先を当たるのは、不足分が出てからです。この記事で取り上げているのは、日本公庫の新規開業・スタートアップ支援資金と、自治体の制度融資です。手引は、資金調達の方法の一つとして、都道府県や市区町村が実施する制度融資を挙げています1。
制度融資の詳しい内容は、創業予定地の自治体のホームページなどで確認するよう案内されています1。この記事では、制度融資の条件には立ち入りません。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てによる段取りで、公庫の手引の手順ではありません。借りる額の目安は示していません
借りる額の目安は、この記事では示しません。契約の支払条件と手元の資金は人によって違い、必要な額も変わるためです。次は、借りる前に書き出しておく項目です。
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6. 借りる前に書き出しておくこと

書き出す4つの項目
借りる前に書き出しておく項目を、エンジニアの場合に当てはめて並べました。公庫の手引が求めている項目ではなく、書き手の見立てです。利息の行だけは、国税庁の説明が根拠です。
| 書き出すこと | エンジニアの場合 |
|---|---|
| 使いみち | 設備資金に当たる買い替えか、運転資金に当たる入金までの支払いかを分けます |
| 入金の時期 | 契約ごとの締め日と支払日を並べ、最初の入金がいつになるかを出します |
| 返済の時期 | 返済の開始が、入金のあとに来るかどうかを確かめます |
| 事業と生活の口座 | 事業の支払いと生活の支払いを、分けて記帳できるかを確かめます |
| 利息の記録 | 業務のための借入金の利息は必要経費になります3 |
入金の時期と返済の時期は、並べて見ると違いが分かります。入金より先に返済が始まる形では、手元の資金のやりくりが変わるためです。返済の開始時期は公庫の窓口で確かめ、ここでは断定しません。
開業のために先に出した支出の扱いは、別の記事で開業費の償却としてまとめています。借りる前の書き出しでは、支出の日付と内容を残しておくと、あとで見返せます。
借入金の利息と経費
国税庁のタックスアンサー(No.2210 必要経費の知識)は、業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になると説明しています3。対象は、業務のために借りた借入金の利息です。
一方で、どの借入金が何のためのものかは、あとから分からなくなりがちです。書き手の見立てとして、借りたときの使いみちと、利息の支払いの記録を結びつけて残しておきます。事業と生活の口座を分けておけば、記帳のときにも迷いません。次は、案件の受け方から資金の波を小さくする考え方です。
7. 案件の受け方で資金の波を小さくする
支払条件で入金の空白を短くする
融資より先に、支払条件で入金の空白を短くできる場合があります。これは書き手の見立てです。締め日と支払日は案件ごとに違うため、同じ稼働でも、最初の入金までの期間は契約によって変わります。
そのため、契約を結ぶ前に、支払条件をクライアントと協議できる場面があれば、そこで確かめるのが先です。協議の余地があるかどうかは案件によって違うので、条件が動かない案件では、不足する月を前もって出しておきます。
借りる額を決めるまでの順番
次の案件を選ぶときも、同じ見方が使えます。契約期間が終わる時期と、次の案件の最初の入金の時期を見比べると、案件の切れ目にどの月が空くかが見えてきます。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てによる段取りです。金額は入れていません
融資以外の備え
融資のほかに、事業の備えとして経営セーフティ共済の仕組みを扱った記事もあります。融資と共済は役割が違うため、どちらを使うかは、この記事では勧めません。
借りる前に、何のためのお金かを分ける
最初の案件の支払条件の欄を読み返したところから、この記事は始まりました。借りる前に、何のためのお金かを分けます。入金までの支払いは運転資金、PCや検証機材の買い替えは設備資金の側です。分けて額を出せば、どこへ相談に行くかも話しやすくなります。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。次の案件を選ぶときは、契約期間と支払条件を見比べる入口として、リモートで参画できる案件も見てみてください。
8. よくある質問
自治体の制度融資とは何ですか
公庫の創業の手引は、資金調達の方法の一つとして、都道府県や市区町村が実施する制度融資を挙げています1。詳しくは、創業予定地の自治体のホームページなどで確認するよう案内されています1。条件の中身は、この記事では扱いません。
借りたお金の利息は経費になりますか
国税庁のタックスアンサー(No.2210 必要経費の知識)は、業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になると説明しています3。対象は業務のための借入金の利息です。個別の判断は、税務署か税理士に確かめます。
開業してしばらくたっていても新規開業・スタートアップ支援資金の対象になりますか
手引(2026年5月版)の概要には、利用できる方として、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方と記載されています1。自分が当たるかどうかは、公庫の窓口で確かめます。
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フリーランスエンジニアの融資は、運転資金と設備資金を分け、入金の見通しから借りる額を決めると判断しやすくなります。フルリモートの案件から、契約の期間と支払いの条件を見比べてみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 日本政策金融公庫「創業の手引」(2026年5月1日・2026年10月確認)
*2 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日・2026年10月確認)
*3 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(2026年4月1日・2026年10月確認)