NetSuiteのフリーランス案件は何で選ぶ?参画先の目的と役割分担で見る判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 同じ「導入支援」の案件でも、参画先の目的と役割分担で仕事の中身が変わる理由と、案件を見分ける2つの物差し
- 総務省の白書で、日本企業の取組の遅れや効果の実感、課題の上位に目的と役割分担が入っている様子
- 初回の打ち合わせで目的を確かめる聞き方と、役割分担を受ける前に確かめる項目、受ける・見送るの分かれ目
NetSuiteの案件の初回の打ち合わせで、こちらが「この導入で、月次の締めを何日早めたいのですか」と尋ねました。相手は経理と営業の担当者の顔を見合わせ、「それをこれから決めたいんです」と答えました。NetSuiteの案件をフリーランスとして業務委託で受けるとき、説明が「導入支援」の一行だけだと、参画してから目的も決める人も決まっていないと分かるのではないか。そんな不安が頭をよぎります。NetSuiteの案件は、製品ではなく参画先の目的と役割分担で選びます。
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1. 同じ説明に見えるNetSuiteの案件
「導入支援」の一行に入る仕事の幅
NetSuiteの案件の説明を並べると、「導入支援」「運用改善」「周辺業務の整備」といった言葉が続きます。製品名が同じなので、どの案件も似た仕事に見えるのは自然です。ただ、説明に書かれているのは製品と作業の名前で、参画先が何を目指しているのかは、その一行からは読み取れません。
同じ導入支援でも、仕事の中身は参画先によって変わります。月次の締めを早めたい会社なら、経理の締めの手順を決める作業が中心です。受注から請求までの流れを整えたい会社なら、営業と経理の間の受け渡しを決める作業が中心になります。製品が同じでも、毎日向き合う相手と判断の内容は別物です。これは書き手の見立てで、案件の説明の書き方を調べた結果ではありません。
案件を見分ける2つの物差し
見分ける物差しとして、この記事では2つを使います。1つめは目的で、参画先が導入で何をどう変えたいのかが言葉になっているかを見ます。2つめは役割分担で、業務の決め事を誰が最終的に判断し、どの部門がどのデータを持つのかが決まっているかを見ます。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません
この2つが言葉になっている案件では、参画後の最初の打ち合わせで、作業の範囲を線引きしやすくなります。一方、どちらも決まっていない案件でも、受けられないわけではありません。決めるところから一緒に進める作業を範囲に入れて受けるなら、変わるのは受け方だけです。受ける前に、どこまで決まっているかを知っておくと、参画後に手戻りを抱え込む場面を避けやすくなります。
では、参画先になる日本企業のデジタル化は、全体でどこまで進んでいるのでしょうか。
2. 日本企業のデジタル化の取組状況
調査の対象と日本全体の状況
先に調査の対象を確かめます。総務省の令和8年版 情報通信白書は、日本・米国・ドイツ・中国の企業にデジタル化の取組状況を尋ね、「わからない」と回答した人を除いて集計しています1。
この集計で、デジタル化に関連する取組を未実施と回答した日本の割合は約50%でした。内訳は「今後実施を検討」が9.2%、「今後も予定なし」が40.6%で、白書は他の3か国に比べて取組が遅れている状況がうかがえるとしています1。
ただし、この約50%は、取組の状況を尋ねた設問で「未実施」と答えた割合です。ERPやNetSuiteの導入率を聞いた数字ではありません。取組の状況、効果、課題や障壁は設問が別なので、この記事でも設問ごとに分けて書きます。
企業規模別の未実施の割合
同じ白書は、日本での取組状況を企業規模別にみると、大企業では約25%、中小企業では約70%が「未実施」と回答しているとし、企業の規模によってデジタル化の取組状況に差異が生じているとしています1。
出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月24日)をもとに作成
この数字から、案件の数や種類は分かりません。分かるのは、取組の状況を尋ねた設問で「未実施」と答えた割合に、企業規模で差があることまでです。
数字から案件の選び方につなぐ範囲
取組がまだの会社では、業務の決め事から一緒に始める場面があると、書き手は見ています。たとえば受注から請求までの流れが文書になっていない参画先なら、設定を始める前に、その流れを決める作業が入ります。
一方、取組が進んだ会社でも、導入の目的が部門ごとに違っていれば、同じ確認が要ります。そのため、規模で参画先を判断せず、個別の案件で目的と役割分担を確かめるのが、この記事の立場です。これも書き手の見立てで、白書が述べている内容ではありません。
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3. 全社の取組が多い日本企業と部門ごとの決め事

白書が述べる全社的な取組の傾向
同じ白書は、日本企業では業務プロセスの改善・改革の全社的な取組が多い傾向がうかがわれるとしています。例として挙がっているのが、ERPによる業務フロー最適化です。業務の省力化についても、AIやRPAによる無人化などの全社的な取組が多い傾向として並べています1。
ここは傾向の記述で、割合は示されていません。ERPは例として挙げられた言葉で、NetSuiteの名前は白書に出てきません。ERPの導入そのものが全社の取組になりやすい、と読むことも書き手は避けます。
業務プロセスの改善は、複数の部門にまたがります。経理だけで決められる範囲を超えるので、参画先の誰がどの部門の決め事を持つのかを、先に確かめる必要が出ます。これは書き手の見立てです。
部門ごとに決めることの例
表1は、業務システムの導入で部門ごとに決める内容の例です。経理は勘定科目の体系と締めの日程、営業は受注から請求までの流れ、購買は発注と検収の承認の流れ、在庫は品目の管理単位と棚卸の頻度を挙げています。例はすべて書き手の見立てで、実際の参画先の決め事とは異なる場合があります。
| 部門 | その部門と決めることの例 |
|---|---|
| 経理 | 勘定科目の体系、締めの日程 |
| 営業 | 受注から請求までの流れ |
| 購買 | 発注と検収の承認の流れ |
| 在庫 | 品目の管理単位、棚卸の頻度 |
4つの部門の決め事は、どれも設定の作業より前に決まっている必要があります。たとえば品目の管理単位が決まっていなければ、品目の登録の仕方が決められません。経理の締めの日程が決まっていなければ、締めに合わせた集計の作り方が決められません。
どの部門の誰に聞けば決まるのかが分かる案件は、参画後の打ち合わせの進み方を想像しやすくなります。分からない案件では、初回の打ち合わせで尋ねる項目が増えます。次は、導入の効果がどう実感されているかです。
4. 「期待する効果を得られていない」が最多の日本
4か国の比較で分かる範囲
効果についての設問は、取組の状況の設問とは別です。同じ白書の4か国の企業調査では、デジタル化の効果について、日本は各観点に共通して「期待以上」の回答が最も少なく、「期待する効果を得られていない」との回答が4か国の中で最も多くなっています1。
これは4か国の相対比較です。日本企業の何割が効果を得られていないのかは、ここでは書けません。ERPの導入が失敗しているという意味でもありません。
効果が出ない理由は、この調査からは分かりません。目的が曖昧だったから、と結び付けることも書き手はしません。ただ、案件を選ぶ側として、参画先が「何をもって効果とするか」を言葉にしているかどうかは、自分で確かめられます。
初回の打ち合わせで目的を確かめる聞き方
表2は、初回の打ち合わせで目的を確かめる聞き方の例です。聞くことを3つ置き、目的が言葉になっている答えと、まだ決まっていない答えを並べました。「〇営業日」は具体の数値を入れていない記号で、答えの例も書き手の見立てです。
| 聞くこと | 目的が言葉になっている答えの例 | まだ決まっていない答えの例 |
|---|---|---|
| 何がどうなれば終わりか | 月次の締めを〇営業日早める | まずは入れてみたい |
| いまの困りごと | 拠点ごとに集計を手で合わせている | 全体的に古い |
| 誰が効果を判断するか | 経理の責任者 | 全員で |
目的が言葉になっていれば、終わりの線を引けます。「月次の締めを〇営業日早める」なら、その営業日数に届いたかどうかで、導入の区切りを話し合えます。「まずは入れてみたい」のままだと、区切りの話が始められません。
答えがまだ決まっていなくても、その場で案件を見送る必要はありません。決める作業から一緒に進めるなら、その作業を範囲に入れて話し合う道があります。次は、課題の上位に並ぶ項目と、2つの物差しの関係です。
5. デジタル化の課題の上位に並ぶ人材・目的・役割分担
課題や障壁の上位4項目
ここで見るのは、デジタル化に関して現在認識している、もしくは今後想定される課題や障壁を尋ねた設問です。取組の状況や効果の設問とは別なので、割合を足し合わせたり、同じ企業群の話として読んだりはしません。日本企業の回答では「人材不足」が39.4%で最も大きく、次いで「明確な目的・目標が定まっていない」が29.5%でした1。
同じ設問で、「DXの役割分担や範囲が不明確」は26.0%、「アナログな文化・価値観が定着している」は23.9%です。白書はこの2つを、回答割合が高い項目として挙げています。順位では、役割分担や範囲が3番目、アナログな文化・価値観が4番目に当たります1。
出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月24日)をもとに作成
上位4項目のうち、2番目の「目的・目標」と3番目の「役割分担や範囲」が、この記事で使う2つの物差しに当たります。これは書き手の見立てです。白書が目的と役割分担を物差しとして並べているわけではなく、設問の項目名を、案件の選び方に引き寄せて読んだものです。
課題の数字を案件の選び方に当てはめる範囲
最も大きい課題は人材不足で、39.4%でした。ただ、この数字から案件の数が増えるかどうかは読み取れません。人材不足が課題として挙がる企業が、外部のフリーランスに仕事を出すとは限らず、白書もそこまでは述べていないので、案件の増減とは結び付けません。
「明確な目的・目標が定まっていない」を課題に挙げた割合が3割近くあるのなら、初回の打ち合わせで目的を尋ねる意味は大きくなります。聞き方は、表2の3つで足ります。目的が言葉になっていない答えが返ってきたとき、その場で見送らず、決める作業を範囲に入れる選択肢があることは、先ほど書いたとおりです。
役割分担や範囲が不明確という項目も、同じ設問の中にあります。こちらは、参画の前に確かめる項目として、次の節で表にします。
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6. 役割分担を受ける前に確かめる項目

確かめる相手と項目
役割分担を確かめるとは、作業の進め方に口を出すことではありません。誰が決めて、誰が窓口になり、誰がデータを持っているのかを、参画の前に知っておくことです。表3は、その確かめ方を4つの項目に分けた例で、確かめる相手と、決まっていないときの受け方は、書き手の見立てです。
| 確かめること | 確かめる相手 | 決まっていないときの受け方(見立て) |
|---|---|---|
| 業務の決め事の最終判断 | 業務の責任者 | 判断する人が出る場に加わる作業を、範囲に入れます |
| 参画先の窓口 | 情報システムの担当者 | 連絡先と確認の流れを、最初の打ち合わせで決めます |
| データの持ち主(取引先・品目・顧客のマスタ) | 各部門の担当者 | 持ち主を部門ごとに書き出す作業を、範囲に入れます |
| 導入支援会社がいる場合の分担 | 窓口の担当者 | 分担を文書に残すことを、最初に相談します |
業務の決め事の最終判断は、経理や営業など、部門ごとに持ち主が異なります。表1の4つの部門の決め事のうち、どれを自分の作業の前提にするのかが分かれば、誰の判断を待つ作業なのかも見えてきます。判断する人が曖昧な案件は、確認の待ち時間を見込んだ進め方を、最初に相談しておきます。
導入支援会社が別にいる案件では、その会社と自分とで作業の分担が重なる場面があります。どこまでを自分が持ち、どこからを相手の会社が持つのか。この線引きは、参画してから探すより、受ける前に窓口の担当者へ尋ねるほうが話が早く進みます。範囲の線引きを細かく考える手順は、SAPの移行で任される範囲の記事に詳しくまとめています。
決まっていないときは範囲に入れて受ける
表3の項目が決まっていなくても、受けられないわけではありません。決まっていないから受けない、と決めてしまうと、参画先が本当に困っている部分を、最初から手放すことになります。決める作業そのものを範囲に入れて、その作業に区切りを付けて受ける道があります。これは書き手の見立てです。
たとえば、データの持ち主が決まっていない案件なら、持ち主を部門ごとに書き出すところまでを最初の作業にします。そこが終わってから、設定や移行の作業の範囲を、もう一度話し合います。作業の範囲を一度に決め切らず、区切りごとに確かめながら進める形です。
業務システムを外部のサービスとして使う案件では、誰がどの権限を持つのかや、責任の分け方も話題になります。この点はSalesforceの責任分担の記事で扱っているので、そちらを参照してください。契約書の条文に関する法的な判断は、この記事の範囲に含めていません。
次は、ここまでの2つの物差しを使って、案件を受けるかどうかを決める流れです。
7. 受ける・条件を付けて受ける・見送るの分かれ目
2つの問いで決まる3つの出口
2つの物差しは、2つの問いに置き換えられます。目的が言葉になっているか、役割分担が決まっているか、です。どちらも「はい」なら、そのまま受けます。目的が言葉になっていなければ、目的を決める作業を範囲に入れて受けます。役割分担が決まっていなければ、決める作業を範囲に入れられるかを、参画先と話し合います。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません
図の「見送る」は、役割分担を決める作業を範囲に入れる話し合いが成り立たなかったときの出口です。決まっていないことだけが理由なら、見送る前に、決める作業を範囲に入れる提案を一度してみます。提案しても、参画先が決める人も場も用意できないなら、そこで見送ります。これは書き手の見立てで、案件ごとに事情は変わります。
参画後の最初の打ち合わせで決めること
案件を受けたあとの最初の打ち合わせでは、終わりの線と、判断する人を決めます。終わりの線は、月次の締めを〇営業日早める、のように、届いたかどうかを判断できる形にします。判断する人は、その線に届いたかどうかを、最後に見る担当者の名前までそろえます。
この2つが最初の打ち合わせで言葉になれば、そのあとの作業は区切りごとに進められます。言葉にならなければ、そこから先の作業の範囲は、毎回話し合い直しになります。この記事の冒頭の場面で、参画先の担当者が「これから決めたい」と答えたのは、その入口に立っていたからです。
案件の説明の一行から読み取る
「導入支援」の一行だけの案件でも、目的と役割分担は、尋ねれば分かります。表2の聞き方で目的を、表3の確かめ方で役割分担を知っておけば、受ける・条件を付けて受ける・見送るのどれかを、自分で選べます。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。場所に縛られずに案件を選べるからこそ、説明の一行に隠れた問いを、参画の前に自分で確かめられる案件を探したいところです。
月次の締めを何日早めたいのか、と尋ねて、答えが返ってきた案件もあれば、返ってこなかった案件もあります。どちらの案件でも、NetSuiteの案件は、製品ではなく参画先の目的と役割分担で選びます。選ぶ基準を持っていれば、「これから決めたい」という答えも、受ける理由になります。
8. よくある質問
NetSuiteの経験が無く、ほかのERPや会計システムの経験だけでも案件を受けられますか
受けられると言い切ることはできません。案件ごとに、参画先が求める経験は異なります。書き手の見立てでは、経験の中身を具体的に伝えることが、いちばんの手がかりになります。
製品名の経験より、業務の流れを決めた経験と、部門と調整した経験を伝えます。たとえば、受注から請求までの流れを整理した経験や、経理と営業の間で決め事をそろえた経験です。こうした経験は、この記事の2つの物差しで案件を選ぶときにも、そのまま使えます。
経理や会計の知識はどこまで要りますか
書き手の見立てでは、締めの日程や勘定科目の体系の話が分かる程度が目安です。経理の担当者と打ち合わせをするとき、その2つの言葉が出てきても話についていけるか、という水準です。資格の名前や、税・法令の要件には、この記事では触れていません。
導入が終わった後の運用改善の案件は、何を見て選べばよいですか
運用改善の案件でも、見るのは同じ2つの物差しです。改善の目的が言葉になっているかと、改善を判断する人が決まっているかです。書き手の見立てでは、改善は終わりの線が引きにくいので、この2つの確認が導入の案件より重くなります。
保守の範囲と期間も、受ける前に確かめます。どこまでが日々の保守で、どこからが改善の作業なのかが決まっていれば、作業の線引きをしやすくなります。
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NetSuiteの案件は、参画先の目的と役割分担が言葉になっているかを確かめてから受けると、参画後の手戻りを減らせます。フルリモートで受けられる業務システムの案件から探してみてください。
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