AI基本計画のAI人材5区分|フリーランスエンジニアが担う実装人材の役割と違いを整理
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 2025年12月23日に閣議決定された初の計画と、令和8年7月14日閣議決定の版との関係、そして計画が整理した5つの人材像
- 研究開発人材と実装人材がそれぞれ担う仕事の違いと、実装人材に求められる現場とAIの双方への理解
- 人の関わり方の3つの考え方と、AI利活用で損害が生じた場合の責任分界が継続して検討されている途中であること
RAGを組み込む案件の提案書を書いていて、経歴の欄に「AI人材」と書きかけて、手が止まりました。研究者なのか、作る人なのか、どの言葉が自分に当てはまるのか分からなかったからです。AI基本計画は、AI人材を5つの人材像に整理しています1。フリーランスエンジニアにとって、AI基本計画の5区分は、自分の仕事を説明するための物差しです。
▶ あわせて読みたい
・AIエンジニアの案件で問われる実装能力とは?エージェント型AIとAXで広がる需要の実態
・AIガバナンスの案件で押さえるAI事業者ガイドラインとリスク対応
・【Dify】フリーランス案件で確かめること|AIエージェントを作るときの権限と人の確認の注意点
1. フリーランスエンジニアがAI基本計画を確かめる理由
ニュースで「AI基本計画が改定された」と聞くと、まず気になるのは、エンジニアの仕事について何が書かれているかです。内閣府の人工知能基本計画(令和8年7月14日閣議決定)は、副題を「日本AX、より強く、より豊かに」としています1。
ただし、この計画には前段があります。2025年12月23日に、AI法第18条第1項に規定する初の人工知能基本計画が閣議決定されているからです1。日付が2つ並ぶため、どちらの決定の話をしているのかを分けて読む必要があります。
案件の提案書や面談では、自分の役割を短く説明する場面があります。公的な計画が人材にどんな呼び名を付けているかを知っておくと、自分の仕事を説明する言葉を選ぶときの手がかりになります。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です2。では、この計画は人材について何を整理しているのでしょうか。
2. AI基本計画の位置づけ
2つの閣議決定の関係
この記事でAI基本計画と書くときは、内閣府の人工知能基本計画を指します。令和8年7月14日に閣議決定された資料で、副題は「日本AX、より強く、より豊かに」です1。
一方で、資料によると、2025年12月23日にAI法第18条第1項に規定する初の人工知能基本計画が閣議決定されました1。2026年7月の版は、この初の計画のあとに閣議決定された版です。「改定」という言葉で語られるニュースは、この2つの日付の関係を指しています。
出典:内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月)をもとに作成
人材像を5つに整理している
この計画は、AIの利活用や開発を担う人材の人材像として5つを整理しています。技術の動向などを踏まえて、必要に応じて柔軟に見直すともしています1。
つまり、5つの区分は固定された名簿ではなく、見直されることを前提にした整理です。そのため、自分の仕事を5つのどれかに決めつけるより、どの説明に近いかを確かめる使い方が合っています。では、5つの人材像はそれぞれ何を指すのでしょうか。
リモートで参画できる案件を見てみる →
3. AI人材の5つの区分
5つの人材像と資料の記載
人工知能基本計画が整理した5つは、AI適正活用人材、AI研究開発人材、AI実装人材、AIガバナンス人材、AIイノベーション人材です。名前だけでは中身が似て見えるため、資料の記載を並べました。最低限のリテラシーを身につける人材から、課題解決を先導する人材まで、役割の向きが違います。
| 区分 | 資料の記載 |
|---|---|
| AI適正活用人材 | 基礎的な知見・知識として最低限のリテラシーを身につけ、適正な形でAIを利活用できる人材。全ての国民が目指すもの1 |
| AI研究開発人材 | AIの研究開発に係る研究者やエンジニア等の人材。基礎研究や開発を担う1 |
| AI実装人材 | 汎用的なAIソリューションでなく現場に適合したAIソリューションを提供する者。産業・行政の現場とAIの双方を理解することが求められる1 |
| AIガバナンス人材 | 安全・安心で信頼できるAIを開発・活用するためのルールや仕組み等を整備・運用する人材1 |
| AIイノベーション人材 | AIを利活用して経済・社会構造の変革や付加価値の創出を行い、課題解決を先導する人材1 |
適正活用人材とガバナンス人材の位置
適正活用人材は、5つのうち最も裾野の広い区分です。資料は、最低限のリテラシーを身につけ、適正な形でAIを利活用できる人材と書き、全ての国民が目指すものとしています1。専門職の呼び名というより、AIを使う全員の基礎に当たります。
ガバナンス人材は、安全・安心で信頼できるAIを開発・活用するためのルールや仕組み等を整備・運用する人材です1。AIを作る側の区分ではなく、ルールと仕組みを整える側の区分として書かれています。
イノベーション人材と、見直しの前提
イノベーション人材は、AIを利活用して経済・社会構造の変革や付加価値の創出を行い、課題解決を先導する人材です1。技術を作ることそのものより、AIで何を変えるかに重心が置かれています。
一方、エンジニアの仕事に近い記述を探すなら、研究開発人材の説明に「研究者やエンジニア等」とあり1、実装人材の説明には現場に適合したソリューションの提供とあります1。この2つは名前が近いので、違いを見分けておく必要があります。
4. 研究開発人材と実装人材の違い
基礎研究や開発を担う側
研究開発人材は、AIの研究開発に係る研究者やエンジニア等の人材で、基礎研究や開発を担います1。説明に「エンジニア」という語が入っているため、エンジニアなら研究開発人材と読みたくなります。ただし、資料が書いている役割は、基礎研究や開発を担うことです。
現場に適合させる側
実装人材は、汎用的なAIソリューションでなく、現場に適合したAIソリューションを提供する者です。産業・行政の現場とAIの双方を理解することが求められます1。AIそのものの研究より、現場に合わせて使える形にすることが軸です。
出典:内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月)をもとに作成
提案書の言葉にするときの目安
冒頭のRAGを組み込む案件で、手を動かす中身が、発注側の現場の業務に合わせてAIを組み込むことなら、書き方は実装人材の説明に近づきます。逆に、モデルそのものの開発が中心なら、研究開発人材の説明に近くなります。
ただし、資料が個人の職種をどちらかに割り当てているわけではありません。どちらの説明に近いかは、自分の仕事の中身から読み取る手がかりです。では、AIを動かす流れのなかで、人はどこに関わる設計になっているのでしょうか。
5. 人の関わり方の3つの考え方
直接関与するHuman in the loop
人工知能基本計画は、人の責任の在り方として議論されている考え方を紹介しています。1つ目はHuman in the loopで、人がAIのタスク実行の流れに直接関与する仕組みと説明されています1。AIが出した結果を、人が途中で受け取って判断を挟む形が、この言葉の指す範囲です。
RAGを組み込む案件で言えば、検索して回答を作る流れのどこかに、人が直接加わる設計がこれに当たります。ただし、資料が個別の案件の設計を示しているわけではないため、自分の案件がどの考え方に近いかは、設計の中身を見て読み取る必要があります。
全体設計と監視を担うHuman on the loop
2つ目のHuman on the loopは、タスク実行自体はAIに任せつつ、その流れの全体設計や監視は人が担う仕組みです1。1つ目との違いは、人が流れの中に入るのか、流れの外から設計と監視を受け持つのかにあります。
主導権を握るHuman in the lead
3つ目のHuman in the leadは、AIをツールとして統制し、人が意思決定や価値創出の主導権を握る仕組みと説明されています1。実行の流れへの関わり方というより、AIを使う側が何を決めるのかに重心があります。
3つの違いは、人がどこで関わるかです。次の表で、資料の説明と人の位置を並べて確かめられます。
| 考え方 | 資料の説明 | 人の位置 |
|---|---|---|
| Human in the loop | 人がAIのタスク実行の流れに直接関与する仕組み1 | 実行の流れに直接関与 |
| Human on the loop | タスク実行自体はAIに任せつつ、流れの全体設計や監視は人が担う仕組み1 | 全体設計と監視 |
| Human in the lead | AIをツールとして統制し、人が意思決定や価値創出の主導権を握る仕組み1 | 意思決定と価値創出の主導権 |
では、AIの利活用で損害が生じたとき、その責任はだれが負うのでしょうか。
自分の経験に近いリモート案件を見てみる →
6. 責任分界は検討の途中
資料が書いている範囲
人工知能基本計画は、エージェント型AIの進展も前提としつつ、AI利活用でリスクが顕在化し、権利侵害や損害が発生した場合の責任分界について、継続的に検討するとしています1。書かれているのは、検討を続けるという方針です。
つまり、損害が起きたときにだれがどこまで責任を負うかは、この資料では決まった形で示されていません。前の節で見た3つの考え方も、責任の在り方として議論されている段階の紹介です1。
決まっていない点の扱い方
責任の線引きが示されていない以上、「この区分なら責任はここまで」といった説明を自分で作ることは避けたいところです。区分や考え方は、自分の役割を説明する言葉として使い、責任の範囲を決める根拠としては使わないほうが、事実と食い違いません。
この資料には、案件の契約でだれがどう責任を分けるかは書かれていません。責任の範囲を知りたいときは、案件ごとにクライアントと協議し、その内容を書面で確かめることになります。
出典:内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月)をもとに作成
では、これまで見てきた区分と考え方を、自分の仕事の説明にどう使えばよいのでしょうか。
7. 自分の仕事を説明するときに確かめる順番
5つの確認項目
提案書の経歴欄に「AI人材」と書く前に、確かめたい項目は5つあります。区分への近さ、研究か実装か、人の関わる位置、責任分界の扱い、区分が見直されうる点です。どれも、資料の記載から確かめられる範囲に絞りました。
| 順番 | 確かめること | 資料の記載 |
|---|---|---|
| 1 | 5区分のどれに近いか | 人材像を5つに整理している1 |
| 2 | 研究に近いか、現場への適合に近いか | 研究開発人材は基礎研究や開発を担い1、実装人材は現場に適合したAIソリューションを提供する1 |
| 3 | 人がどこで関わる設計か | 直接関与するHuman in the loopなど、3つの考え方が紹介されている1 |
| 4 | 責任分界が検討の途中であること | 責任分界について継続的に検討するとしている1 |
| 5 | 区分が見直されうること | 技術の動向などを踏まえて必要に応じて柔軟に見直すとしている1 |
上から順に通す理由
順番には理由があります。まず区分に当てはめ、研究か実装かを分けると、自分の仕事の呼び名が決まります。そのあとで、人の関わる位置と責任分界を確かめる流れにすると、説明が仕事の中身から離れません。
一方で、4つ目と5つ目は、説明に書く内容というより、前提の確認です。責任分界は検討の途中で1、区分も見直されうるため1、今の区分を絶対のものとして書かないという心づもりが要ります。
図の作成:Remogu編集部。資料の記載をもとに確認の順番を整理したもので、統計データではありません
提案書の手が止まったときに
冒頭の場面に戻ります。RAGを組み込む案件の提案書で、「AI人材」の一語が書けずに手が止まりました。研究者なのか、作る人なのか、迷ったのは、1つの言葉に自分の仕事を押し込もうとしたからです。
5区分を見れば、現場に適合したAIソリューションを提供する仕事は実装人材の説明に近く1、基礎研究や開発が中心なら研究開発人材の説明に近いと分かります1。どちらの言葉を選ぶにしても、資料が個人を割り当てているわけではないので、書くのは「説明に近い」という距離感までです。
AI基本計画の5区分は、自分の仕事を説明するための物差しです。区分に自分を決めつけるために使うのではなく、仕事の中身を相手に伝わる言葉に置き換える手がかりとして使います。
Remoguに登録すると、リモートで参画できる案件を探しながら、自分の経験に合う条件を確かめられます。提案書に書く役割の言葉が固まったら、その言葉に近い案件から見てみるのが、最初の一歩です。
8. よくある質問
AI基本計画はいつ決まったのですか
AI法第18条第1項に規定する初の人工知能基本計画は、2025年12月23日に閣議決定されました1。この記事で参照した資料は、令和8年7月14日に閣議決定された版で、副題は「日本AX、より強く、より豊かに」です1。
フリーランスのエンジニアはどの人材にあたりますか
資料は、個人の働き方ごとに人材像を割り当ててはいません。研究開発人材の説明には「研究者やエンジニア等」とあり1、実装人材の説明には現場に適合したAIソリューションの提供とあるため1、どちらの説明に近いかは仕事の中身で変わります。1つに決めず、仕事の内容に近い説明を選んで使います。
Human in the loopとは何ですか
人工知能基本計画では、人の責任の在り方として議論されている考え方の1つで、人がAIのタスク実行の流れに直接関与する仕組みと説明されています1。タスクの実行を任せつつ全体設計や監視を人が担うHuman on the loopや、人が主導権を握るHuman in the leadとは、人が関わる位置が異なります。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
自分がどの区分の仕事に近いかが見えたら、その経験を生かせる案件の条件も確かめてみてください。リモートで参画できるAIの案件から探せます。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 内閣府「人工知能基本計画」(2026年7月・2026年10月確認)
*2 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能