行政のSaaS調達を変えるデジタルマーケットプレイス(DMP)案件の仕組みとカタログ実装を徹底解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 行政の調達手法が都度入札から登録制のカタログ調達へ移りつつある背景と、その仕組みの全体像
- 従来の総合評価方式が抱えていた参入障壁の高さという課題と、カタログ調達がそれをどう変えようとしているか
- カタログ登録や行政向けメタデータ整備の実務にリモートのエンジニアがどう関わり、参画の足がかりをどこに見つけるか
行政向けのSaaS開発案件を探していると、これまで見かけなかった言葉が並ぶようになりました。デジタルマーケットプレイス、カタログ登録、調達仕様チェックシート。官公庁の仕事は縁遠いと感じてきたエンジニアにとって、この変化は案件の間口そのものが変わる合図でもあります。本記事では、DMPという調達手法の仕組みと、そこでリモート・フリーランスのエンジニアが担える役割を整理します。
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1. 行政向けSaaS・DMPの案件が増えている背景
官公庁の仕事というと、大手のシステムベンダーが長期の契約を抱え、個人のエンジニアが直接関わる余地は少ないと感じてきた人も多いはずです。ところが最近、行政向けSaaSの開発や導入支援を扱う案件が、フリーランス向けのマッチングでも見られるようになってきました。理由は、行政機関がソフトウェアを調達する手続きそのものが変わりつつあるためです。
調達手法を転換する「デジタルマーケットプレイス」
その中心にあるのが、デジタルマーケットプレイス(DMP)と呼ばれる仕組みです。DMPとは、デジタル庁とあらかじめ基本契約を締結した事業者がデジタルサービスを登録するサイトを設け、各行政機関が最適なサービスを選択して個別契約を行う調達手法です1。従来のように行政機関が案件ごとに提案を募るのではなく、あらかじめ登録された候補の中から選ぶという流れに置き換わります。
この転換の目的は、行政機関によるクラウドソフトウェア(SaaS)調達を迅速にすることと、多様なベンダーの参入によって調達先そのものを広げることにあります1。1社の提案を待つよりも、あらかじめ並んだ選択肢を比較するほうが手続きは早く進みます。行政の情報システム担当者にとっても、SaaS開発に関わる事業者にとっても、調達の景色が変わる話だと捉えるとわかりやすくなります。
調達のスピードを重視するのは行政機関だけではありません。カタログに載る側の事業者にとっても、登録内容の整備がそのまま案件獲得の入口になります。単に見た目のよい機能一覧をつくるよりも、行政が検索しやすい形に情報を整えるほうが、結果として選ばれやすくなります。ここに、開発だけでなく情報設計や仕様整理を担えるエンジニアの出番があります。
出典:デジタル庁「デジタルマーケットプレイス(DMP)について」(2025年2月)をもとに作成
2. DMPの仕組み(登録→検索→選定→個別契約)
DMPの中身を知らないまま「行政向け案件が増えている」とだけ聞くと、担当できる場面が想像しにくいかもしれません。実際の流れを4つの段階に分けて見ると、どこにエンジニアの手が必要になるかがはっきりします。
登録から契約までの4段階
最初の段階は「登録」です。デジタル庁と基本契約を結んだ事業者が、提供するSaaSの機能や対応範囲、提供形態などをカタログに掲載します。次に「検索」で、行政機関の担当職員が自分たちの要件に沿ってカタログの中を探します。ここで見つけやすい形に情報が整っているかどうかが、選ばれる確率を左右します。
続く「比較・選定」では、条件に合いそうな複数のSaaSを並べて、機能や運用条件の違いを確認します。そして最後に「個別契約」に進み、選ばれた事業者と行政機関のあいだで契約手続きが行われます。全体を通して感じるのは、機能を作る力よりも、その機能を正しく伝える力が問われる場面が多いという点です。
開発を頑張るよりも、開発した内容を行政が理解できる言葉に翻訳するほうが、案件の入口に近いこともあります。プログラムを書く技術と、それを検索されやすい形に整理する技術は、別のスキルとして扱ったほうが実態に近いといえます。自分がどちらの技術をどこまで担ってきたかは、言葉にしておくと案件を選ぶ手がかりになります。Remoguでは、経験豊富なエージェントが、これまでの経験の棚卸しからお手伝いします。
| 段階 | 行政機関の動き | 事業者側の対応 | 求められる情報整備 |
|---|---|---|---|
| 登録 | カタログにどのSaaSがあるかを把握する | 自社のSaaSをカタログに掲載する | 機能・対象範囲・提供形態などの記載 |
| 検索 | 要件に沿ってカタログ内を検索する | 検索されやすい項目名・区分を整える | 行政が使う分類・キーワードとの整合 |
| 比較・選定 | 複数のSaaSを比較して候補を絞る | 仕様や運用条件の違いを説明できる状態にする | 比較の材料になる仕様情報の充実 |
| 個別契約 | 選定した事業者と契約手続きに入る | 契約に必要な資料や条件整理に対応する | 調達仕様チェックシートとの整合確認 |
出典:デジタル庁「デジタルマーケットプレイス(DMP)について」(2025年2月)をもとに作成
開発と情報整理の経験を棚卸しして、リモート案件を見てみる →
3. 従来の調達との違いと課題
「行政の調達は時間がかかる」というイメージを持つ人は少なくないでしょう。その印象は、DMP以前の調達の進め方を知ると裏付けが見えてきます。従来の情報システムに関する契約では、調達のたびに行政機関の調達仕様に対して複数社が提案と価格を提示し、総合評価方式で最も優れた事業者が落札するという流れが取られてきました1。
「参入障壁」と「透明性」という2つの課題
この方式には、調達期間が長く手続が官民双方の負担になりやすいこと、参入障壁が高く市場の透明性が低いことという課題があります1。案件ごとに提案書を一から作る負担は、規模の小さい事業者ほど重くのしかかります。結果として、限られた顔ぶれの事業者が繰り返し受注する構図になりやすく、行政機関にとっても選択肢が広がりにくい状態が続いてきました。
DMPが目指す姿は、調達期間を短くして官民双方の調達を簡素にすること、市場の透明性を高めて多様な事業者の参入を促進することです1。提案書の作成に時間をかけるより、カタログの情報を整えておくほうが多くの案件で有利になる。これは、単発の提案力よりも、継続的な情報整備の力が問われる方向への転換だといえます。
ここで見えてくるのは、DMPが単なる手続きの簡略化ではなく、調達に参加できる事業者の顔ぶれそのものを変えようとしている点です。大手のシステムベンダーに集中してきた行政案件の入口が、情報整備次第で中小の事業者やフリーランスに開かれていく余地が生まれます。
| 観点 | 従来の総合評価方式 | DMP(カタログ調達) |
|---|---|---|
| 契約までの流れ | 調達のたびに提案書と価格を募る | 登録済みの事業者から選んで契約する |
| 事業者の増減 | 参入障壁が高いという課題がある | 多様な事業者の参入を促す |
| 市場の見えやすさ | 市場の透明性が低いという課題がある | 調達を簡素にし透明性を高める |
| 官民双方の負担 | 調達期間が長く負担になりやすい | 調達を簡素にすることを目指す |
出典:デジタル庁「デジタルマーケットプレイス(DMP)について」(2025年2月)をもとに作成
4. カタログ登録と行政の検索を支える実装
DMPの狙いが「調達の簡素化」と「多様な参入」にあるとわかると、次に気になるのは、その狙いをどう実装で支えるかという点です。カタログに載せるだけでは、行政機関から見つけてもらえません。検索され、比較され、契約の根拠として扱われるところまでを見据えた情報整備が必要になります。
検索されやすさを左右するメタデータ整備
カタログに登録する情報は、単なる商品説明ではありません。対応領域、機能の一覧、提供形態、連携方式といった項目を、行政機関が使う分類やキーワードに沿って整理する作業にあたります。開発現場で仕様を理解しているエンジニアほど、仕様を文書に落とす作業を的確に行える立場にいます。機能を作った本人が、その機能を検索可能な形に翻訳できるかどうかが問われる場面です。
もう一つの実装対象が、調達仕様チェックシートです。DMPでは、調達仕様チェックシートとカタログサイトの検索結果を、随意契約の確証や指名競争入札の根拠として契約手続きに用いる流れが想定されています1。つまり、カタログの記載内容とチェックシートの項目がずれていると、契約手続きそのものが滞ってしまいます。情報の整合を保つ作業は、開発の裏側にある地味な仕事に見えて、契約の成立を左右する重い役割を担っています。
華やかな新機能の開発よりも、こうした整合性の確認や項目の照合のほうが、行政向けSaaSの現場では価値を持ちやすい場面が多くあります。目立たない作業に価値を見出せるかどうかが、この領域で活躍できるかどうかの分かれ目になります。
| 整備の観点 | 具体的な作業内容 | エンジニアが関わりやすい点 |
|---|---|---|
| 基本情報 | サービス名・提供形態・対応領域などの登録 | 情報を過不足なく整理し記載する作業 |
| 機能・仕様の記載 | 主要機能や連携方式などの仕様情報の整理 | 開発現場の理解にもとづく仕様の文書化 |
| 検索性を高める分類 | 行政が使うカテゴリやキーワードとの整合 | メタデータ設計・タグ付けの実務経験 |
| チェックシートとの整合 | 調達仕様チェックシートの項目に対応した記載 | 項目を照合し過不足を洗い出す作業 |
出典:デジタル庁「デジタルマーケットプレイス(DMP)について」(2025年2月)をもとに作成
5. リモート・フリーランス案件でどう関わるか
行政向けSaaS・DMPの案件が求めているのは、派手な新機能の開発力だけではありません。カタログ登録の情報整備、行政が検索しやすいメタデータ設計、調達仕様チェックシートとの整合確認。これらは、リモートで完結しやすい作業でもあります。行政機関に常駐しなければ進められない仕事ではなく、資料と仕様を丁寧に扱える人であれば、離れた場所からでも十分に関われる領域です。
行政の専門性と情報を整える力
行政向けの仕事と聞くと、法令や制度に精通していなければ関われないと身構えるかもしれません。しかし実際にエンジニアが担うのは、SaaSの機能や仕様を、行政が理解し検索できる形に整える作業が中心です。制度への深い知見よりも、仕様を漏れなく文書に書き出し、項目を照合する丁寧さのほうが、この場面では役に立ちます。行政の専門知識よりも、情報設計の経験が活きる場面だと捉え直すと、参画の道筋がぐっと具体的になります。
SaaS開発の経験がある人はもちろん、メタデータ設計やタグ付け、仕様書の整備に携わってきた人にとっても、この領域は活躍の場になり得ます。むしろ、開発だけを担ってきた人よりも、開発と運用の間で情報を整理する役割を担ってきた人のほうが、カタログ登録の実務にはなじみやすいこともあります。
中小の事業者やスタートアップにとっても、この流れは無縁ではありません。DMPが目指しているのは、多様な事業者の参入を促すことです1。登録の情報整備を丁寧に行える体制さえあれば、規模の大小にかかわらず候補として並ぶ余地が生まれます。その体制づくりの一部を、リモートのエンジニアが担う場面は今後も増えていくと考えられます。希望に合う案件がサイトの一覧に見当たらないときも、Remoguにはサイトに載っていない案件があり、登録後にエージェントから希望に合うものを紹介します。
メタデータ設計や仕様整備の経験を伝えて、案件を見てみる →
冒頭の「縁遠い」という感覚に戻ると、DMPは行政の仕事の入口を、都度の提案・審査から、登録されたカタログを検索して選ぶ形へ置き換える仕組みです1。従来の総合評価方式が抱えていた参入障壁の高さと市場の透明性の低さに対し1、調達を簡素にして多様な事業者の参入を促すことを狙っています1。
その入口を支えているのは、カタログに載せる情報を検索されやすく整え、調達仕様チェックシートと照合する地道な作業です。行政の専門知識よりも、仕様を文書に書き出して項目を照合する力が問われるため、リモートで関われる余地があります。Remoguが扱う案件は、90%以上がフルリモート可能です2。
行政の案件を自分で探す手がかりが少ないときは、Remoguでは、希望条件を伝えておくと、エージェントが代わりに案件を探して営業します。縁遠いと感じていた行政の仕事に、まず一歩だけ近づいてみてください。
6. よくある質問
行政の専門でなくても関われますか
関われる場面は多くあります。求められる中心は、法令や制度への深い知見ではなく、SaaSの機能や仕様を行政が検索・比較しやすい形に整理する作業です。開発現場での経験があれば、その内容を仕様書の言葉に置き換える力を活かせます。
どんなスキルが活きますか
仕様の整理力、メタデータ設計、項目の照合作業に慣れていることが強みになります。開発そのものの技術力に加えて、機能や条件を漏れなく言葉にする丁寧さが役に立つ場面が多くあります。
SaaS開発やメタデータ設計の経験は活きますか
活きやすい経験です。カタログ登録では、機能や対応領域を行政が使う分類に沿って整理する作業が中心になるため、SaaS開発の現場で仕様を扱ってきた経験や、メタデータ設計・タグ付けに携わってきた経験がそのまま強みになります。
中小の事業者やスタートアップにも余地がありますか
DMPが目指しているのは、多様な事業者の参入を促すことです。登録の情報整備を丁寧に行える体制であれば、規模の大小にかかわらず候補として並ぶ余地が生まれます。その体制づくりをリモートで支える関わり方も広がっています。
案件はフルリモートでも進められますか
行政機関への常駐が前提の案件ばかりではなく、資料と仕様を扱う作業を中心にリモートで進めやすい領域です。Remoguが扱う案件は90%以上がフルリモート可能で、条件は案件によって異なるため、まずは自分の経験に近い案件を確かめてみましょう。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
まずはSaaSや公共向けクラウドのシステムのリモート案件が、いまどんな条件で並んでいるかを見てみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「デジタルマーケットプレイス(DMP)について」(2025年2月・2026年10月確認)
*2 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能