【定年後のエンジニア】業務委託で技術の仕事を続ける前に決める3つの条件
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 定年後に同じ組織で働き続ける形と業務委託で受ける形を、契約の相手と年金との関係と働く量の決め方で比べた整理
- 在職老齢年金の支給停止の基準額が2026年4月に51万円から65万円へ見直されたことと、業務委託の報酬の扱いの確かめ方
- 元の組織と業務委託契約を結ぶ制度の導入企業が全体の0.1%であることと、契約書で先に確かめる項目の手がかり
定年前の面談で、「定年後もこのまま残りますか」と聞かれました。エンジニアとして技術の仕事は続けたい。けれど、働く量や場所は自分で決めたい。そう気づくと、選べる形が1つではないことに目が向きます。定年後の仕事は、年齢ではなく契約の形で決まります。年金との関係と、契約で先に決めておく3つの条件を、順に確かめていきます。
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1. 定年後に技術の仕事を続ける2つの形
同じ組織で働き続ける形
定年後も技術の仕事を続ける道は、大きく2つに分けると整理しやすくなります。1つは、定年後も同じ組織で働き続ける形です。もう1つは、業務委託として仕事を受ける形です。この分け方は書き手の見立てで、制度上の区分ではありません。
同じ組織で働き続ける形では、契約の相手がこれまでと同じ組織です。環境が変わらないぶん、仕事の進め方は引き継ぎやすい形です。ただし、働く量や時間帯は、組織が用意している制度に沿って決まります。選べる幅は組織によって異なります。
業務委託で受ける形
業務委託では、案件ごとに委託元の事業者と契約を結びます。契約の相手が案件ごとに変わるので、何を、どこまで、いつまでに受けるのかを、契約の段階で自分から確かめる場面が増えます。働く量も、契約の条件として話し合って決める形です。
2つの形を比べる軸は3つです。契約の相手、年金との関係、働く量の決め方です。年金との関係は第2節で、働く量の決め方は第6節で順に確かめます。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てで整理したもので、統計データではありません
この2列は、どちらが良いかを示すものではありません。同じ技術の仕事を続けても、契約の形が違えば、年金との関係も働く量の決め方も変わります。では、まず年金との関係から見ていきます。
2. 条件1:在職老齢年金と業務委託の関係
調整の対象になる人
最初の条件は、在職老齢年金との関係です。日本年金機構の案内では、在職老齢年金で年金額が支給停止される場合があるのは、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける人です1。加入しているかどうかが、調整を受けるかどうかの入口です。
同じ組織で働き続ける形で、厚生年金保険に加入するかどうかは、この記事では判断できません。組織に尋ねて、加入の有無を先に確かめます。業務委託で受ける形は、この入口の外にあるかどうかが論点です。
調整の計算に使う額
調整の計算に使う額は、総報酬月額相当額と、老齢厚生年金の基本月額の合計です1。総報酬月額相当額は、毎月の賃金(標準報酬月額)と、1年間の一時金分を12で割った額を合わせたものです1。表1に項目ごとの中身を並べました。業務委託の報酬の行は、この記事で使った資料に記述がないため、書き手の見立てとして書いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給停止の対象 | 厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける人1 |
| 計算に使う額 | 総報酬月額相当額と、老齢厚生年金の基本月額の合計1 |
| 総報酬月額相当額の中身 | 毎月の賃金(標準報酬月額)と、1年間の一時金分を12で割った額1 |
| 業務委託の報酬 | 個人で受ける形なら、計算の項目に入らないと読めます(書き手の見立て)。自分の形での扱いは、年金事務所で確認します |
業務委託の報酬の扱い
業務委託の報酬が計算に入るかどうかは、この記事で使った資料には書かれていません。書き手の見立てでは、個人として委託元から受け取る報酬は、毎月の賃金(標準報酬月額)の項目に当たらないと読めます。根拠は2つです。対象が、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける人であること1。計算の項目が、毎月の賃金と1年間の一時金分であること1。
ただし、これは見立てです。法人を作って役員として報酬を受ける形などでは、扱いが違うことがあります。どう違うかはこの記事では書けません。自分の形で働くと決めた段階で、年金事務所に確かめます。次は、この基準額が2026年4月にどう動いたかです。
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3. 2026年4月の基準の見直し

51万円から65万円への見直し
日本年金機構の案内によると、2026年4月以降、在職老齢年金で支給停止の基準となる、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計は65万円に見直されました1。2026年3月以前は51万円でした。
出典:日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」(2026年4月1日更新)をもとに作成
51万円から65万円へ動いたのは、調整の計算に使う線です。調整を受けるかどうかの入口は、先に見たとおり、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける人かどうかです。
見直しを比べる材料にする
業務委託で受ける形では、報酬が計算に入らないと読めます。そのため、この基準額が自分に直接当てはまるかどうかは、まだ分かりません。それでも、同じ組織で働き続ける形と並べて考えるときには、基準額が動いた事実は比べる材料です。
次に、年金とは別の軸として、元の組織と業務委託契約を結ぶ制度を見ます。
4. 条件2:元の組織と業務委託契約を結ぶ制度
高年齢者就業確保措置の選択肢の1つ
2つ目の条件は、元の組織と業務委託契約を結ぶ制度の有無です。厚生労働省の集計結果の注記によると、高年齢者就業確保措置の選択肢の1つに、事業主が業務委託契約を締結する制度の導入があります。この制度は、創業支援等措置に当たります2。
高年齢者就業確保措置そのものは、事業主の努力義務です3。そのため、元の組織がこの制度を用意しているとは限りません。定年後に元の組織と業務委託契約を結べるかどうかは、組織ごとに確かめる項目です。
導入企業の割合
厚生労働省に報告した企業(2025年6月1日時点)のうち、創業支援等措置を導入していた企業は132社で、報告した企業全体の0.1%でした。前年から変動はありません2。数えているのは企業の数で、業務委託で働く人の数ではありません。
出典:厚生労働省「集計結果」(2025年12月19日)をもとに作成
書き手の見立てでは、導入している企業が全体の0.1%にとどまる以上、元の組織だけに頼らず、外の案件も並べて考えるほうが選択肢は広がります。ただし、この数字だけで、元の組織と業務委託で続けられる見込みを判断することはできません。
元の組織の制度の有無を確かめたら、次は契約で確かめる項目を見ます。
5. 契約で確かめる項目の手がかり
計画の記載事項から一部を選ぶ
創業支援等措置を講じる事業主は、計画を作成する必要があります。記載事項には、業務の内容、支払う金銭、契約を締結する頻度、納品、契約の変更、契約の終了(解除事由を含む)に関する事項が含まれます3。この計画は事業主が作る書類で、読者が作る書類ではありません。
ただし、この6つは記載事項の一部です。表2は、記載事項の一覧から、契約の確かめ項目につながる6つを選んだものです。
外の案件の契約への置き換え
右の列は、書き手の見立てとして、外の案件の契約で確かめる項目の手がかりに置き換えたものです。制度の要件ではありません。元の組織から話が来たときも、外の委託元と話すときも、同じ項目を見ていきます。
| 計画の記載事項 | 定年後の業務委託で確かめること |
|---|---|
| 業務の内容 | 担当範囲 |
| 支払う金銭 | 支払の条件 |
| 契約を締結する頻度 | 更新の間隔 |
| 納品 | 成果物の形と受け渡し |
| 契約の変更 | 範囲が変わるときの協議 |
| 契約の終了(解除事由を含む) | 終わり方と解除の条件 |
労働関係法令の説明と備え
厚生労働省の解説資料は、創業支援等措置による業務委託が、労働基準法等の労働関係法令が適用されない働き方であることを、事業主が十分に説明するよう求めています3。対象は創業支援等措置による業務委託です。定年後の業務委託一般に広げて読まないようにします。
業務委託で受ける形では、仕事中のけがへの備えなどを、自分で考える場面が出ます。労災への備えは、労災保険の特別加入の記事で確かめられます。次は、契約の項目のうち、稼働と成果物をどう区切るかです。
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6. 条件3:稼働と成果物の区切り方

区切りを契約に書いておく
3つ目の条件は、稼働と成果物の区切りです。ここは資料に決まりがないため、書き手の見立てとして書きます。業務委託では、働く量も成果物も、契約で自分から区切ります。区切りを契約に書いておくと、範囲が変わるときに、書いた内容を土台に協議できます。
稼働量と時間帯
稼働の量は、1週間に充てる時間の上限として決めます。時間帯は、連絡が取れる時間帯として決めます。働く量を自分で選べる点は、業務委託で受ける形の特徴です。選べるからこそ、上限を決めずに受けると、自分の予定を自分で守れなくなります。
成果物と引き継ぎ
成果物は、どの単位で受け渡すかを決めます。引き継ぎは、どこまでを自分が担うかを決めます。契約の期間と更新の間隔、リモートでの環境とアカウントの扱いも、同じく先に決める項目です。表3に、決めることと例を並べました。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 稼働の量 | 1週間に充てる時間の上限 |
| 稼働の時間帯 | 連絡が取れる時間帯 |
| 成果物 | 成果物の単位 |
| 引き継ぎ | 引き継ぎの範囲 |
| 契約の期間 | 契約の期間と更新の間隔 |
| 作業環境 | リモートでの環境とアカウントの扱い |
3つの条件がそろったので、順番に並べて、受ける仕事を決めます。
7. 3つの条件を並べて受ける仕事を決める
確かめる順番
年金との関係は年金事務所で、元の組織の制度は組織で、契約の項目と稼働・成果物の区切りは委託元との協議で確かめます。確認先が3つに分かれるため、順番を決めておくと動きやすくなります。
図の作成:Remogu編集部。確かめる順番を書き手の見立てで整理したもので、統計データではありません
契約の形で決める
冒頭の面談の場面に戻ります。「定年後もこのまま残りますか」という問いに、残るか離れるかの二択で答える必要はありません。同じ組織で働き続ける形にも、業務委託で受ける形にも、確かめる項目があります。項目を確かめたうえで選べば、働く量や場所を自分で決める余地が残ります。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。年金事務所への確認と並行して、まず登録して案件の条件を見ておくと、表3の区切りを具体的に考えやすくなります。
定年後の仕事は、年齢ではなく契約の形で決まります。契約の相手、年金との関係、働く量の決め方を自分で確かめて、技術の仕事の続け方を選んでみてください。
8. よくある質問
定年前から業務委託の仕事を始めておけますか
書き手の見立てでは、今の契約や規程で、ほかの仕事を受けることの扱いがどう決まっているかを、先に確かめます。始められるかどうかは、その内容で変わります。断定できる一般論はないので、自分の契約と規程を読んで判断します。
業務委託で働くときも年金事務所に相談したほうがよいですか
相談する価値があります。第2節で見たとおり、業務委託の報酬が調整の計算に入るかどうかは、書き手の見立てにとどまります。法人を通す形などでは扱いが違うことがあるため、自分の形を伝えて確かめます。
元の組織から業務委託の話が来たら何を確かめますか
表2の6項目に沿って確かめます。担当範囲、支払の条件、更新の間隔、成果物の形と受け渡し、範囲が変わるときの協議、終わり方と解除の条件です。これは書き手の見立てで、外の案件で契約を結ぶときにも使えます。
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定年後の技術の仕事は、年金との関係と契約の区切りを先に決めると続けやすくなります。フルリモートの業務委託案件から、手元で進められる仕事を探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」(2026年4月1日・2026年10月確認)
*2 厚生労働省「集計結果」(2025年12月19日・2026年10月確認)
*3 厚生労働省「事業主が講ずべき措置(努力義務)等について」(2026年4月1日・2026年10月確認)