【単価が据え置きのとき】協議を申し入れる手順と確かめることを解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 協議が行われないまま単価が据え置かれる仕組みと、要請すれば7割近くが協議に進むという調査結果
- 発注する側から進んで声をかけてくることはほとんどなく、要請が無ければそのまま据え置きが続くという構造
- 協議をせずに据え置くことが独占禁止法上の問題となるおそれがある場合と、申し入れを行う際の手順・材料
同じ単価のまま契約更新を重ねている方にとって、この状態がいつまで続くのか気になるところです。据え置きの理由は業務内容や市場の変化ではなく、協議そのものが行われていないことにある場合があります。公正取引委員会の調査では、要請をすれば7割近くの発注者が協議の席についています。この記事では、据え置きが起きる構造と、申し入れの手順・材料を整理します。
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1. 協議が行われないことによる据え置き
更新のたびに同じ金額が続く理由
契約を更新するたびに同じ金額が提示され、変わらないまま次の期間に入ってしまうことがあります。金額が動かない理由は、担当している作業の内容や市場の動きよりも、もっと手前にある場合があります。それは、そもそも価格について話し合う場が設けられていないという点です。
話し合いが行われない状態は、発注する側が意図的に拒んでいるとは限りません。公正取引委員会の調査では、引き上げの要請に応じて全ての商品やサービスについて価格の協議をした発注者の割合は60.9%です1。要請さえすれば、半数を大きく超える発注者が協議のテーブルにつくということです。
一方で、すべての受注者と定期的な協議の場を設けている発注者は27.1%にとどまります1。発注する側が自分から場を用意している割合は限られており、受ける側からの申し入れが協議の起点になる場合があります。
協議の有無で分かれる結果
据え置きが続く背景には、協議が起きる条件の違いがあります。定期的な協議の場を持つ発注者は一部にとどまる一方、要請があれば応じる発注者は広く存在します。この差を理解しておくと、次に取る行動が見えてきます。
受ける側に必要なのは、協議が無いことを据え置きの理由として受け止め続けるのではなく、協議の場そのものを作りにいく発想へ切り替えることです。声を上げなければ、金額は動く機会を持たないままになります。
単価が据え置きのまま続くことに気づくと、原因を自分の側に探してしまう場合があります。スキルの評価が下がったのではないか、成果が伝わっていないのではないかと考えるのは自然な反応です。もっとも、公正取引委員会の調査結果が示すのは、協議という機会そのものが持たれていない場合があることです。原因を自分の側にだけ求めるよりも、協議の有無という構造から見直すほうが、次の行動につながります。
契約更新の案内に金額欄だけが去年と同じ数字で並んでいると、変化を求めていいものかどうか迷う瞬間があります。担当者に確認していいのかどうかを決めかねているうちに、更新の期限だけが近づいてくることがあります。この迷いを解く手がかりは、感覚ではなく協議の有無という事実に置けます。
申し入れから協議に至るまでの段階を整理します。次の図で、気づく段階から協議に進む段階までの流れを確認します。
出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成
2. 要請後に7割近くが協議に進む割合
全ての対象で協議した発注者は60.9%
据え置きに気づいたとき、申し入れをためらう理由には、要請しても相手にされないのではないかという不安があります。しかし公正取引委員会の調査を見ると、この不安は実態と少し違います。
引き上げの要請に応じて、全ての商品やサービスについて価格の協議をした発注者の割合は60.9%です1。半数を大きく超える発注者が、要請を受けて協議のテーブルについています。
一部の商品やサービスについてだけ協議した場合まで範囲を広げると、割合は69.7%まで上がります1。何らかの形で協議に応じた発注者は7割近くにのぼるということです。
要請をためらったまま様子を見ている間は、協議の機会そのものが生まれません。次の更新でも、同じ金額が繰り返されることになります。
条件ごとの数字を並べた比較
この2つの数字を並べて見ると、協議の起きやすさが対象の範囲によってどう変わるかが分かります。全ての商品やサービスを対象にした場合と、一部でも含めた場合とでは、割合が変わります。次の表に、それぞれの割合と内容を整理しました。
| 区分 | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 全ての商品・サービスで協議 | 60.9% | 引き上げの要請に応じて、全ての対象について価格の協議をした発注者の割合です |
| 一部を含めて協議 | 69.7% | 一部の商品・サービスについて協議した場合まで含めた割合です |
表からも分かるとおり、対象を絞らずに全てで協議した割合と、一部でも含めて協議した割合は、どちらも半数を大きく超えています。申し入れをためらう理由として「相手にされないかもしれない」という不安を挙げる方もいますが、数字を見る限り、その不安ほど高い壁ではありません。
この2つの数字が示しているのは、協議という機会自体は、要請さえすれば持たれやすいという点です。据え置きの原因を自分のスキルや実績に求める前に、まず協議の申し入れという行動そのものを取っているかどうかを振り返ってみる価値があります。
次に、発注する側が自分から動かない場合に何が起きているのかを、具体的な数字で見ていきます。
3. 発注する側から声がかからない実態
定期的な協議の場を持つ発注者は27.1%
申し入れさえすれば半数を超える発注者が協議に応じる一方で、発注する側から自分たちに声をかけてくることは、それほど多くありません。
すべての受注者と定期的な協議の場を設けている発注者の割合は27.1%にとどまります1。4社のうち3社近くは、定期的に価格の話し合いをする仕組みを持っていないということです。
この数字は、発注する側が悪意を持って据え置いているという意味ではありません。単に、自分たちから場を用意する習慣が根づいていない発注者が一定数を占めるという実態を表しています。
定期的な場を持つ発注者が一部にとどまる状況は、裏を返せば、申し入れによって初めて協議が始まるケースが一定数あるということでもあります。声がかからないことを、関心が無いという意味に受け取る必要はありません。
声がかからない理由を示す発注者の言葉
調査には、発注する側の受け止め方も記録されています。値上げの相談がなければ協議を行っていないという意見を持つ発注者がいることが示されています1。
定期的な協議の場を持つ発注者の割合と、声はかけないが要請には応じる発注者の姿勢を、次の表にまとめました。自分から動かない限り、状況は変わりにくいことが見えてきます。
| 発注者の関わり方 | 内容 |
|---|---|
| 定期的な協議の場を設けている | すべての受注者と定期的な協議の場を設けている発注者の割合は27.1%です |
| 自分からは声をかけないが要請には応じる | 発注者から進んで価格協議の呼び掛けはしないが、受注者から価格転嫁の要請があれば必ず協議に応じるとする発注者が存在しています |
| 相談が無ければ協議しないという意見 | 値上げの相談がなければ協議を行っていないという意見を持つ発注者がいます |
表からも分かるとおり、発注する側が自分から場を用意するとは限りません。受ける側から声を上げない限り、協議という機会そのものが生まれない構造になっています。
表の3つの姿勢を並べてみると、発注する側の対応は一様ではないことが分かります。要請があれば応じる発注者が一定数を占めている以上、申し入れという行動そのものが結果を左右します。
3つの割合を、帯の長さで比べてみます。
出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成
全て・一部を含めた協議の割合に比べて、定期的な場を持つ割合は低く出ています。この差が、「向こうからは声をかけてこない」という実感の正体です。
4. 黙っていると進まないという構造
声をかけない発注者の2つの姿勢
発注する側から声がかかりにくいことは、数字にも表れています。ただし、声をかけてこない発注者がすべて同じ姿勢というわけではありません。
調査には、発注者から進んで価格協議の呼び掛けはしないが、受注者から価格転嫁の要請があれば必ず協議に応じるとする発注者が存在していることも記録されています1。
自分から動かない発注者の中にも、要請さえあれば応じる発注者と、値上げの相談がなければ協議を行っていないという意見の発注者の、両方が含まれているということです1。
声をかけない発注者の内訳を知っておくことは、申し入れをためらう気持ちを和らげる材料になります。値上げの相談が無ければ協議を行っていないという意見の発注者に対しては、相談そのものが協議の入り口になるからです。
何もしない場合と申し入れる場合の比較
この違いを踏まえると、受ける側が取れる行動は一つに絞られます。何もせずに待つのではなく、こちらから申し入れるという行動です。
黙っていた場合と申し入れた場合とで、その後の展開がどう変わるかを、次の図に整理しました。
出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成
図からも分かるとおり、待っているだけでは協議は始まりません。声をかけない発注者の中にも、要請があれば応じる発注者が含まれているという事実が、申し入れる行動を後押しします。
この構造を踏まえると、申し入れを先延ばしにする理由は少なくなります。記録に残る形で連絡を入れることが、次の協議につながる最初の行動です。
今の契約先との関係を続けながら、他の選択肢も同時に把握しておくと、申し入れの結果に関わらず動きやすくなります。
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5. 協議のない据え置きが問題になる場合
協議をせずに据え置くこと
申し入れれば協議が起きやすいという実態に対して、協議が無いまま据え置くこと自体が、制度の上でどう扱われているかを確認します。
据え置きが起きることはありますが、その扱われ方には違いがあります。協議をした上で据え置く場合と、協議をせずに据え置く場合とでは、制度上の位置づけが異なります。
価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の問題となるおそれがあります1。
引き上げを求められたのに、価格転嫁をしない理由を書面や電子メールで取引の相手方に回答せず、従来どおりに据え置くことも、同じく独占禁止法上の問題となるおそれがあります1。
2つの形に共通するのは、受ける側が声を上げたにもかかわらず、応答が明確に返ってこないという点です。据え置くこと自体が問題として扱われるのではなく、対応の透明性が欠けている状態が問題として扱われています。
問題になる据え置きの整理
問題となりうる据え置きの形を、次の表にまとめました。どちらも共通しているのは、理由や協議の記録が残っていないという点です。
| 据え置きの形 | 内容 |
|---|---|
| 協議をせずに据え置く | 価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことです |
| 理由を回答せずに据え置く | 価格転嫁をしない理由を書面や電子メールで取引の相手方に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことです |
表の2つの形に共通するのは、据え置くこと自体ではなく、協議や回答という手続きが欠けている点です。逆に言えば、協議の場を持ち、理由を書面で受け取っていれば、据え置き自体が直ちに問題になるわけではありません。
申し入れをする側に必要なのは、協議を求めたという記録を残すことです。書面やメールでのやり取りは、後から振り返る材料にもなります。
この2つの形を知っておくと、申し入れの際にどのような対応を求めればよいかが具体的になります。理由を尋ね、回答を記録に残すという行動は、このあとの交渉の材料にもなります。据え置きが続く事実そのものより、協議と回答という手続きが行われたかどうかを、まず確かめます。
6. 交渉の土台になる需要の数字
人材の不足感を示す数字
申し入れの材料は、協議した割合だけではありません。発注する側が置かれている状況を示す数字も、話し合いの土台になります。
IPAの調査では、DXを進める人材の量が不足していると答えた企業の割合の合計は85.1%です2。人材の確保そのものが、幅広い企業にとっての課題になっていることが分かります。
この数字は特定の技術や案件を指すものではありませんが、外部の力を借りる必要性が高い状況を裏づける材料として使えます。
人材の不足感が広がっている状況は、特定の技術や職種に限った話ではありません。外部の力を借りる必要性が高まっている分野ほど、協議の材料としての説得力も増します。
外部への委託が最も多い回答であること
競争にかかわる事業では、外部への委託による開発を行っている回答率が4割弱で最も多くなっています2。自社の中だけで完結させるより、外部に委託する動きのほうが目立っているということです。
この2つの数字を材料として持っておくと、申し入れの際に「なぜ今、話し合いを求めるのか」という背景を説明できます。人材が不足し、外部への委託が広がっているという状況は、受ける側にとって交渉の追い風になります。
材料を示す順番も大切です。まず自分の据え置きの期間を伝え、次に外部の状況を示す数字を添えると、相手にとっても話の筋道が分かりやすくなります。
ただし、これらの数字はあくまで背景の材料であり、個別の契約条件を保証するものではありません。材料として持ちながら、このあと整理する手順に沿って申し入れを進めることが大切です。
こうした数字を材料として持ちながら申し入れることは、単なる要望ではなく、状況に基づいた提案になります。
自分の経験がどのような案件で求められているかを具体的に把握しておくと、申し入れの材料はさらに厚みを増します。
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7. 申し入れる手順
手順の4つの段階
数字と構造を踏まえて、実際に申し入れる際の手順を整理します。台本をそのまま使うのではなく、手順と材料を押さえておくことが大切です。
申し入れから確認までの流れを、次の図にまとめました。
出典:公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」(2025年12月)をもとに作成
図の最初の2つの段階は、申し入れる前の準備にあたります。契約条件や据え置きの期間、理由と材料を整理してから連絡することで、相手に伝える内容が定まります。
受諾率という言葉の意味
申し入れたあとに出てくる回答を理解するうえで、押さえておく言葉があります。受諾率です。
要請受諾率とは、発注する側が要請された額に対して受け入れた金額の割合のことです1。要請した金額がそのまま通らなくても、一部が受け入れられれば受諾率としてカウントされます。
全てが一度に通るとは限りません。それでも、申し入れをすれば60.9%が全ての対象で協議に応じています1。まずは協議の席につくことが、最初の一歩になります。
手順と材料がそろえば、申し入れは特別な行動ではなくなります。今の契約先との協議と並行して、自分の経験に合うリモート案件も確かめておくと、選べる立場で話し合えます。Remoguは案件の90%以上がフルリモート可能です。
8. よくある質問
申し入れても金額が上がらない場合はどうすればよいですか
金額が上がらない場合でも、回答に理由が示されているかを確認します。理由を書面や電子メールで示さないまま据え置くことは、独占禁止法上の問題となるおそれがあります1。
何度も申し入れると関係が悪くなりませんか
公正取引委員会の調査では、要請があれば必ず協議に応じるとする発注者が存在することが示されています1。黙っているより、記録に残る形で申し入れることで、協議の入り口を作れます。
要請した金額の全額が通らなくても協議に意味はありますか
要請受諾率は、要請した額に対して受け入れられた金額の割合です1。全額が通らなくても、受け入れられた分はこの割合に反映されます。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」要請すれば協議になる(2025年12月・2026年10月確認)
*2 IPA「DX動向2025」人の足りなさ(2025年6月・2026年10月確認)