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    ニセ社長詐欺とは?取引先の社長を名乗るメールが届いたときの手口と対策

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「ニセ社長詐欺の手口と対処」を示す図です。メール/グループ/残高/送金/確認を並べています。強調しているのは確認です。別の手段で確かめると添えています。

    📘 この記事でわかること

    • 2025年12月中旬から相談が急増した、社長名をかたってLINEグループの作成とQRコードの返信を求める手口の流れと、その後に起きる送金の指示
    • IPAの相談106件と警察庁の認知件数127件がそれぞれ数えた期間と、差出人や宛先、本文に現れるメールの特徴
    • 届いたメールに返信せず電話などの別の方法で確かめる対処と、グループに入ってしまったときの動き、取引先と決めておくこと

    参画中の取引先のメーリングリスト宛てに、取引先の社長の名前でメールが届きます。「LINEのグループを作成し、QRコードを返信してください。他の人は入れないように」。社長からの指示に見えるだけに、返信するか、手が止まります。これがニセ社長詐欺と呼ばれる手口で、取引先とメールでやりとりするフリーランスエンジニアにも届きうる手口です。疑って確かめたら失礼にならないか、という迷いには、返信ではなく、別の連絡手段で確かめます、という一言で答えられます。

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    1. ニセ社長詐欺の手口の全体像

    社長名のメールから送金までの流れ

    警察庁によると、令和8年1月頃から、法人の経営者等になりすまし、公開されている法人等のメールアドレスに電子メールを送って、業務を装い指定口座へ送金させるニセ社長詐欺が発生しています1。名前のとおり、社長の立場を借りた詐欺です。

    IPAも、2025年12月中旬から、実在する社長名や会社名などをかたる詐欺メールに関する相談が急増したと伝えています2。取引先の社長の名前が使われていても、その人が書いたメールとは限りません。

    流れは短く、4つの段階で進みます。IPAによると、メールには「LINEグループを作成してQRコードを返信しろ。」と指示するケースが多く確認されています2。警察庁の資料では、グループの作成を指示したあと、グループ内で法人の口座残高を回答させ、「事業資金が至急必要」等と送金させる流れが示されています1。

    図1:ニセ社長詐欺の流れ
    ニセ社長詐欺の流れ 社長名のメール 差出人は社長名 グループ作成 QRコードの返信 口座残高の回答 グループ内で 送金指示 事業資金が至急必要

    出典:IPA、警察庁の資料をもとに作成2

    気がつきにくい理由

    警察庁の資料は、実在する社長名や会社名が使われているために気がつきにくい特徴があるとしています1。見知った名前は、疑う入口を狭めます。取引先の社長の名前であれば、なおさら手が止まりやすい、というのがこの記事の見立てです。

    一方で、メールの中身は手がかりを残しています。差出人のアドレスや宛先、本文の言い回しには特徴があり、第3節で一つずつ見ていきます。

    資料の範囲と、この記事の読み方

    ここで引く資料は、主に法人を対象にしたIPAと警察庁のものです。フリーランスが取引先とメールでやりとりする場面への当てはめは、書き手の推論として、そう書いてある箇所で示します。資料が述べる事実と推論は、分けて読んでください。

    では、この手口はどれくらいの規模で起きているのでしょうか。次の節で、相談と被害の数字を確かめます。

    2. 相談と被害の数字

    三つの資料が数えているもの

    IPAの相談窓口には、2025年12月16日から2026年3月10日までの間に、この手口に関する相談が106件寄せられました2。警察庁は、令和8年1月から6月までの認知件数を127件、被害額を約38億8,000万円、既遂1件当たりの被害額を約3,100万円としています1。IPAの2026年4〜6月の相談では、「その他」に社長等をかたる詐欺メールの手口が16件含まれていました3。

    資料期間数値数えているもの
    IPA 相談窓口22025年12月16日〜2026年3月10日106件この手口に関する相談
    警察庁 上半期の情勢1令和8年1〜6月127件/被害額約38億8,000万円/既遂1件当たり約3,100万円認知件数と被害額
    IPA 第2四半期の相談状況32026年4〜6月16件「その他」に含まれていた手口の件数

    数字の読み方

    同じ手口を数えていても、集計する機関も期間も違います。IPAの106件は相談の件数で、警察庁の127件は認知件数です。足したり比べたりせず、それぞれ別の物差しとして読みます。

    被害額は、法人の経営者等になりすます手口についての数字で、フリーランス個人の被害額ではありません。ただし、既遂1件当たり約3,100万円という額は、一度の送金で動く金額の大きさを示しています1。

    16件も同じです。「その他」に含まれていた件数であり、この手口の相談の全体を表す数字ではありません。数字はどれも、手口が実際に届いている裏づけとして読みます。では、届いたメールのどこに手がかりがあるのでしょうか。

    3. メールの特徴

    差出人と宛先に出る特徴

    IPAは、差出人の表示名が自社や取引先の社長名などになっている場合があると示しています2。差出人のメールアドレスは、outlook.com、hotmail.com、gmail.comなどのフリーメールである場合が多いとされ2、宛先は自社のメーリングリストのアドレスの場合が多いと述べられています2。表示名、アドレス、宛先、本文の4つに分けて見ると、次のとおりです。

    見るところ特徴
    差出人の表示名自社や取引先の社長名などになっている場合があります2
    差出人のアドレスoutlook.com、hotmail.com、gmail.comなどのフリーメールである場合が多くなっています2
    宛先自社のメーリングリストのアドレスの場合が多くなっています2
    本文の指示「LINEグループを作成してQRコードを返信しろ。」と指示するケースが多く確認されています2
    本文の念押し「グループには他の人は入れないように。」などと書かれています2

    表示名とアドレスを見比べる

    表示名が取引先の社長名でも、アドレスがフリーメールなら、見比べる材料になります。普段のやりとりで見慣れたアドレスと違わないかを、届いた時点で眺めてみます。

    宛先にも手がかりがあります。メーリングリスト宛てで届いているなら、同じメールを受け取った別の人が、すでに気づいているかもしれません。書き手の推論ですが、周囲に一言かけるだけで、見方が増えます。

    本文の指示と念押し

    本文では、LINEグループの作成とQRコードの返信が求められます2。続けて「グループには他の人は入れないように。」といった念押しが書かれています2。

    この念押しは、書き手の見立てでは、周囲に相談させない働きをします。メーリングリスト宛てで届いたメールが、同じ宛先の人にも内緒にしろと言う。この矛盾に気づければ、返信の手は止まります。次の節では、返信してしまった先で何が起きるのかを見ます。

    4. グループに誘導されたあとに起きること

    QRコードを返したあとの動き

    QRコードを返信すると、LINE上で社長等をかたり、取引を装った振込の指示がされることが確認されています2。メールの段階では、まだ何も奪われていません。お金の話が出てくるのは、グループができてからです。

    警察庁の資料によると、グループ内では法人の口座残高を回答させたうえで、「事業資金が至急必要」等と送金させます1。業務を装った依頼なので、取引の一部に見えてしまいます。

    図2:グループに入ったあとの動き
    グループに入ったあとの動き 社長をかたる相手 グループ内 口座残高の回答 法人の口座残高 至急の送金依頼 事業資金が至急必要 指定口座への送金 取引を装った振込の指示

    出典:IPA、警察庁の資料をもとに作成1

    口座残高を先に聞かれる意味

    送金の依頼の前に、口座残高を回答させる段取りになっています1。書き手の推論ですが、残高が分かれば、相手は依頼する額を見積もれます。取引先の社長を名乗る相手から、事業用口座の残高を聞かれたら、その時点で立ち止まる合図です。

    では、この手口は、屋号で事業用口座を持つフリーランスにどう届くのでしょうか。次の節で、取引先のメーリングリスト経由で届く場面を考えます。

    5. フリーランスに届く場面

    取引先のメーリングリスト経由で届く経路

    IPAは、宛先は自社のメーリングリストのアドレスの場合が多いと述べています2。フリーランスは取引先の組織の一員ではありませんが、参画中の取引先のメーリングリストに入っていれば、同じ形でメールが届く場面を想像できます。この節は、書き手の推論として読んでください。

    差出人の表示名には、自社や取引先の社長名などが使われている場合があります2。取引先のメーリングリストを通じてそのメールが届けば、フリーランスの受信箱には、取引先の社長からの依頼に見えるメールが並びます。経路を整理すると、次のとおりです。

    図3:取引先のメーリングリスト経由で届く経路
    取引先のメーリングリスト経由で届く経路 社長名のメール 差出人の表示名 メーリングリスト 取引先の宛先 フリーランス 同じ宛先の受信者 LINEの依頼 QRコードの返信

    出典:IPAの資料をもとに、書き手の推論を加えて作成2

    メーリングリストに入っていることと、社長本人から届いたことは別の話です。社長名が使われていて、宛先も見慣れていれば、見慣れた連絡の一つとして開いてしまう場面があるはずです。

    屋号の事業用口座との結びつき

    警察庁の資料が示すのは、グループ内で法人の口座残高を回答させたうえで送金させる流れです1。屋号で事業用口座を持つフリーランスの場合、回答を求められるのは、その事業用口座の残高に置き換わる、というのが書き手の推論です。資料が述べる被害は法人についてのもので、フリーランスの口座を対象にした事例が資料にあるわけではありません。

    事業用口座の残高は、取引先に知らせる性質の情報ではありません。社長名のメールから出た依頼であっても、口座の残高を回答する理由が見当たらなければ、そこが立ち止まる位置になります。

    取引先からの依頼に見える形

    警察庁の資料は、実在する社長名や会社名が使われているために気がつきにくい特徴があるとしています1。取引先の社長の名前を知っているフリーランスにとっては、その名前が信頼の材料に働いてしまいます。

    日頃から、取引先とメールで依頼のやりとりをしているなら、LINEグループの作成という依頼も、新しい連絡手段を決めたのかもしれない、と受け取る余地が生まれます。書き手の推論ですが、依頼が普段の連絡の延長に見えるほど、疑いの入口は狭くなります。では、届いたときに何をすればよいのでしょうか。

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    6. 届いたときの確かめ方

    返信せずに別の方法で確かめる

    IPAは対処として、送信元とされる人に確認する場合は、送られてきたメールには返信せず、電話などの別の方法で確認するよう示しています2。届いたメールに返信すれば、その返信は差出人の欄にあるアドレスへ向かいます。確かめる連絡が、確かめたい相手に届かない形になってしまいます。

    この記事の冒頭に置いた一言は、この対処をそのまま言い表したものです。QRコードの返信を求められた場面でも、まず手を止めて、メールの外で本人につながる方法を探します。

    グループに入ってしまったとき

    警察庁の資料は、SNSグループに誘導されてしまった場合は、通報機能があれば通報したうえで、速やかにSNSグループから退出することが適切だとしています1。QRコードを返信してしまった場合でも、送金の指示が届く前なら、グループに残らない選択が取れます。

    日頃の承認フロー

    IPAは日頃の対策として、振込支払いを実施する際の二重チェック等の承認フローを構築することを挙げています2。組織向けの対策ですが、書き手の推論として、一人で事業用口座を動かすフリーランスでも、取引先に支払いの依頼を一度確かめる流れを挟めば、二重チェックに近い役割を持たせられます。

    場面ごとの動きを並べると、次のようになります。

    場面動き
    社長名のメールが届いた返信せず、電話などの別の方法で確認します2
    SNSグループに誘導されてしまった通報機能があれば通報し、速やかに退出します1
    日頃の備え振込支払いの二重チェック等の承認フローを構築します2

    三つの動きのうち、日頃の備えだけは、メールが届く前に決められます。取引先とのやりとりの中で、何を決めておけばよいのでしょうか。

    7. 取引先と決めておくこと

    連絡の確かめ方を先に決める

    IPAが示す、電話などの別の方法で確認する対処は2、届いてから考えると迷いが出ます。取引先との間で、重要な依頼が来たときは電話でも確かめる、という形を先に決めておけば、疑ったことが取引先への失礼に見える心配も小さくなります。契約の形や取り決めの中身は取引先ごとに異なるため、ここは書き手の提案として読んでください。

    送金や支払いの依頼の受け方

    送金を伴う依頼が来たときの受け方も、先に決める対象です。IPAが挙げる二重チェック等の承認フロー2は、依頼を受けた本人だけで判断しない仕組みです。フリーランスと取引先の間では、支払いに関わる依頼は、決めた連絡手段で本人に確かめてから動く、という形にできます。

    怪しいメールを受けたときの伝え方

    メーリングリスト宛てに届いたメールは、同じ宛先の複数人が受け取っている可能性があります。社長名のメールに疑問を感じたら、返信ではなく取引先の別の連絡先へ、その旨を伝えます。実在の社長名や会社名が使われた手口は気がつきにくいと警察庁が述べているため1、気づいた人から先に共有する形が、取引先にとっても助けになります。

    図4:取引先と決めておく3つ
    取引先と決めておく3つ 連絡の確かめ方 電話など別の方法 支払い依頼の受け方 二重チェックの承認 怪しいメールの伝え方 取引先へ共有

    出典:IPAの資料をもとに、書き手の提案を加えて作成2

    返信の前に置く一言

    取引先の社長の名前でLINEグループの作成を求めるメールが届き、返信するか手が止まったとき。疑って確かめたら失礼にならないか、という迷いは、確かめ方を先に決めておけば小さくなります。返信ではなく、別の連絡手段で確かめます。この一言が、迷いの場面での出発点になります。

    取引先とメールを通じて進める働き方では、連絡の確かめ方は日々の備えそのものです。Remogu(株式会社LASSIC運営)はリモートワーク案件に特化したエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です4。ここで決めた確かめ方は、参画先が変わっても持ち込めます。

    8. よくある質問

    取引先の社長からのLINEグループ作成の依頼は無視してよいですか

    無視してよいかどうかを直接述べた資料は、今回引いたものの中にはありません。IPAは、「LINEグループを作成してQRコードを返信しろ。」と指示するケースが多く確認されていると述べ2、送信元とされる人に確認する場合は、返信せず、電話などの別の方法で確認するよう示しています2。返信しないまま、別の方法で本人に確かめる形が、資料に沿った動きです。

    グループに入ってしまったらどうすればよいですか

    警察庁の資料は、SNSグループに誘導されてしまった場合は、通報機能があれば通報したうえで、速やかにSNSグループから退出することが適切だとしています1。グループ内で口座残高を聞かれても答えず、送金の依頼にも応じずに、退出を優先します。

    確かめる連絡は失礼になりませんか

    失礼になるかどうかを判断した資料はありません。ただ、警察庁の資料は、実在する社長名や会社名が使われているために気がつきにくい特徴があるとしています1。気づきにくい手口が実際に出ている以上、IPAが示す電話などの別の方法での確認2は、メールそのものを疑うというより、手口への備えとして伝えられます。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月・2026年10月確認)
    *2 独立行政法人情報処理推進機構「社長等をかたる詐欺メールに注意!」(2026年3月12日・2026年10月確認)
    *3 独立行政法人情報処理推進機構「サイバーセキュリティ相談窓口の相談状況[2026年第2四半期(4月~6月)]」(2026年7月22日・2026年10月確認)
    *4 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能