フリーランスエンジニアが不安定になる4つの原因と、制度で備える判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 不安定さが取引先の集中・契約期間の終わり・入金までの期間・病気やけがの4つに分かれることと、それぞれで起きること
- 6か月以上の業務委託に30日前の予告があることと、報酬の支払期日が受領日から60日以内に定められていること
- 労災保険の特別加入と二つの共済で備えられる範囲と、制度では埋まらず自分で用意する部分
月末に入金予定を見ながら、来月の契約は更新されるのか、先月納めた分はいつ入るのか、今週熱が出たら仕事はどうなるのかと、心配が三つ同時に浮かぶことがあります。業務委託で働くフリーランスエンジニアは、これを全部まとめて「不安定」と呼びがちで、そうなると、どこから手を付けてよいか分からなくなります。不安定は、ひとかたまりで見ずに出どころで分けます。出どころが分かれば、制度で備えられる部分と、自分で用意する部分が見えてきます。
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1. 不安定さの4つの出どころ
三つの心配が示す出どころの違い
月末の三つの心配は、同じ「不安定」の言葉で括られますが、起きている場面は別々です。来月の契約が更新されるかは、契約が終わる日の問題です。先月納めた分がいつ入るかは、報酬が入るまでの待ち時間にかかわります。熱が出たら仕事はどうなるのかは、働けない期間の備えの話です。
出どころが違えば、必要な備えも違います。たとえば、契約が終わる日に備えたいときに病気やけがの制度を調べても、契約の不安は残ったままです。反対に、入金までの待ち時間に困っているときに取引先を増やしても、待ち時間そのものは変わりません。
書き手の見立てとして、フリーランスエンジニアの不安定さは、取引先の集中、契約期間の終わり、入金までの期間、病気やけがの4つに分けられると考えられます。技術名や職種に左右されず、業務委託で働く人に共通する分け方です。
出どころごとに起きること
4つの出どころは、起きる場面も、備える相手も別です。まず全体を見渡すと、それぞれの違いが分かります。
図の作成:Remogu編集部。不安定さの出どころを整理した概念図で、統計データではありません
取引先の集中は、仕事の入り口が少ないほど、1社の契約の終わりが仕事全体の終わりに近づく問題です。ただし、取引先の数ごとの実態を示すデータは、ここでは扱いません。書き手の見立てとして読んでください。
契約期間の終わりは、契約が更新されない日が来る問題です。業務委託の契約には期間があり、終わる日の前に予告を受ける決まりが法律にあります。予告の数え方は第3節で扱います。
入金までの期間は、納品してから報酬が入るまでの待ち時間の問題です。こちらも、支払期日の上限が法律で定められています。病気やけがは、働けない期間に報酬が止まる問題で、仕事中や通勤中のものには制度があります。
では、出どころの一つめである取引先の集中は、1社が終わるときにどんな影響を残すのでしょうか。
2. 取引先の集中と、1社が終わるときの影響
1社に寄ったときに起きること
取引先が1社だけの場合、その1社との契約が終わった日が、仕事の入り口がなくなる日になります。契約が更新されなかったとき、次の案件を探し始めるのはその日からです。探し始めてから話がまとまるまでには時間がかかる場合があり、その間は報酬が入りません。
一方、取引先が複数あれば、1社の契約が終わっても、残る契約があります。ただし、複数の契約が同じ時期に終わるなら、取引先の数だけでは備えになりません。そのため、数と同じくらい、終わる時期が重なっていないかが分かれ目になります。
取引先が倒産した場合に使える貸付けの制度は、第5節で扱います。倒産は契約が終わる原因の一つですが、取引先の業績悪化や契約の終了そのものは、その制度の対象ではありません。
取引先の数ごとの影響と備え
取引先が1社だけなら、契約の終わりは仕事の終わりと重なります。2社あれば残る契約がありますが、終わる時期が近いと、同時に空きが出ます。3社以上でも、終わる時期を一覧にして把握していなければ、終わりの日は突然に近づきます。いずれも書き手の見立てで、数値の裏付けはありません。備えの共通点は、次の案件を探し始める時期を、契約が終わる前に決めておくことです。
| 取引先の数 | 1社の契約が終わったときに起きること | 備え |
|---|---|---|
| 1社のみ | 仕事の入り口がなくなる場合があります | 2社目の取引先を探す、終わる前に次の案件を探し始める |
| 2社 | 1社分は残るものの、報酬の入り口が半分近く減る場合があります | 終わる時期が重ならないようにずらす |
| 3社以上 | 影響は分かれますが、終わる時期が重なると同時に空きが出ます | 契約の終わる時期を一覧にして把握する |
取引先が複数あっても、1社ごとの契約がいつ終わるかは、契約期間で決まります。では、契約の終わりにはどんな決まりがあるのでしょうか。
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3. 契約期間と、終わる30日前の予告

予告の対象になる契約の条件
フリーランス・事業者間取引適正化等法には、業務委託を終わらせる際の予告に関する定めがあります。予告の対象になるのは「継続的業務委託」で、6か月以上の期間行う業務委託、または契約の更新により6か月以上継続して行うこととなる業務委託を指します。1
最初の契約期間が短くても、更新を重ねて6か月以上続く見込みなら、対象に入ります。そのため、契約書に書かれた期間だけでなく、更新の条件も合わせて見る必要があります。
反対に、期間の短い契約や単発の契約は、対象外になりうるものです。自分の契約がどちらに当たるかは、契約書の期間と更新の条件で確かめます。
30日前の数え方
予告の「30日前」は、予告した当日から解除する日の前日までに、30日間が確保されている必要があるものです。1厚生労働省の資料は、8月31日に解除する場合は8月1日までに予告が必要という例を示しています。
出典:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(2026年2月26日)をもとに作成
予告は、契約が終わる日を前もって知らせるものです。予告を受けてから次の案件を探し始めると、30日間では間に合わない場合があると考えられます。そのため、契約の終わる時期を自分で把握し、予告を待たずに次の案件を探し始める時期を決めておくと、動き出しが遅れにくくなります。
契約の終わりの次は、報酬が入るまでの待ち時間です。では、支払期日にはどんな上限があるのでしょうか。
4. 支払期日と、入金までの待ち時間
支払期日の上限は受領日から60日以内
同じ法律は、発注側にあたる特定業務委託事業者の義務の一つとして、期日における報酬の支払を挙げています。支払期日は原則として、受領日から60日以内のできる限り短い期間内です。2
60日は上限であり、「60日以内に入金されます」という約束ではありません。数え始めは受領日で、納品物を受け取った日から数えます。入金の日そのものは、契約で定められた支払期日で決まります。
支払期日で確かめる項目
支払期日の決まりのうち、知っておきたいのは、どの日から数えるか、上限は何日か、そして自分の契約でその日が分かるかの3点です。数え始めは受領日、上限は受領日から60日以内のできる限り短い期間内です。契約を結ぶ時点で支払期日が分かるかは、書き手の見立てとして、契約前に確かめておきたい項目です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 数え始め | 受領日 |
| 上限 | 受領日から60日以内のできる限り短い期間内 |
| 義務を負う側 | 特定業務委託事業者(発注側) |
| 自分で確かめること | 契約を結ぶ時点で、支払期日が分かるか |
報酬が入るまでの間も、日々の支払いは続きます。そのため、入金までの待ち時間は、手元に置く資金の問題として考えられます。必要な金額の目安は、ここでは示しません。
では、病気やけが、取引先の倒産には、制度でどこまで備えられるのでしょうか。
5. 病気やけが、取引先の倒産で使える制度
労災保険の特別加入
令和6年11月1日から、企業等から業務委託を受けているフリーランスは、業種・職種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました。3特別加入すると、仕事中や通勤中のケガや病気、死亡に対して補償を受けられます。エンジニアも、業務委託で働いていれば対象の範囲に入ります。
ただし、補償の対象は仕事中と通勤中に限られます。私生活での病気やけがは、この制度の対象になりません。補償の種類や保険料は、加入を考えるときに窓口で確かめる項目です。
経営セーフティ共済と小規模企業共済の貸付け
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先事業者が倒産して売掛金債権等が回収困難になった場合に、納付した掛金の10倍(限度額8,000万円)と回収困難な売掛金債権等の額のいずれか少ない額の範囲内で、共済金の貸付けを受けられる制度です。4貸付けは借入れであり、給付ではありません。返す前提のお金なので、取引先が倒産したときの資金繰りを支える仕組みと考えられます。
加入資格は、1年以上継続して事業を行っている中小企業者です。4個人事業主がどう扱われるか、1年をどう数えるかは、制度の窓口で確かめます。
小規模企業共済の共済契約者貸付制度には、一般貸付けや傷病災害時貸付け等の種類があります。5貸付限度額は自分が納めた掛金の範囲内で、掛金納付月数により掛金の7割〜9割です。こちらも給付ではなく借入れで、種類ごとの条件は、加入前に窓口で確かめます。
制度ごとの対象と性質の違い
労災保険の特別加入は、仕事中や通勤中のケガや病気が対象で、特別加入すると補償を受けられます。経営セーフティ共済は、取引先の倒産が対象で、中身は貸付けです。小規模企業共済の契約者貸付も借入れで、傷病災害時貸付け等の種類があります。3つの制度は、使える場面と、補償か貸付けかという性質が違います。
| 制度 | 対象になる場面 | 中身 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 労災保険の特別加入 | 仕事中や通勤中のケガや病気、死亡 | 特別加入すると補償を受けられます | 私生活の病気やけがは対象になりません |
| 経営セーフティ共済 | 取引先の倒産で、売掛金債権等が回収困難になったとき | 掛金の10倍(限度額8,000万円)と回収困難な売掛金債権等の額のいずれか少ない額の範囲内の貸付け | 給付ではなく借入れです。加入資格は、1年以上継続して事業を行っている中小企業者です |
| 小規模企業共済の契約者貸付 | 一般貸付けや傷病災害時貸付け等 | 自分が納めた掛金の範囲内(掛金納付月数により7割〜9割)の貸付け | 給付ではなく借入れです。種類ごとの条件は窓口で確かめます |
これらの制度で、不安定さの4つの出どころは、どこまで埋まるのでしょうか。
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6. 制度で埋まらない部分と、自分で用意する部分

制度で埋まる部分と埋まらない部分
書き手の見立てとして、制度が届くのは、4つの出どころのうち一部です。残りは、自分で用意する部分として残ります。
図の作成:Remogu編集部。本文の制度の対象を整理した概念図で、統計データではありません
制度で埋まるのは、仕事中や通勤中のケガや病気と、取引先が倒産したときの資金繰りです。前者には労災保険の特別加入があり、後者には経営セーフティ共済の貸付けがあります。ただし後者は借入れなので、返す前提で使うお金です。
一方、埋まらない部分は三つあります。私生活の病気、契約が更新されない期間、入金までの待ちです。第5節までに見た制度の中には、この三つに対応するものがありません。
自分で用意する三つのもの
埋まらない部分に向けて、自分で用意するものは、手元資金、取引先の分散、契約の終わる時期の把握の三つに整理できると考えられます。手元資金は、入金までの待ちと、契約が更新されない期間を支えるものです。金額の目安は、人によって条件が違うため、ここでは示しません。
取引先の分散は、第2節で見たとおり、数だけでなく終わる時期をずらすことまで含みます。契約の終わる時期の把握は、第3節の予告の数え方と合わせて、次の案件を探し始める時期を決める材料になります。
私生活の病気は、制度の対象にならない部分であり、その備えも自分で考える領域です。どの備えを選ぶかは、ここでは扱いません。
では、独立を迷っている人は、これらをどの順番で確かめればよいのでしょうか。
7. 独立を迷っている人が先に確かめること
確かめる順番
独立を迷っている人が先に確かめるのは、不安定さの出どころの順に、取引先の数、契約期間と予告、支払期日、労災保険の特別加入、共済の加入資格の5つです。
図の作成:Remogu編集部。確かめる項目を並べた概念図で、統計データではありません
最初は、取引先の数と、それぞれの契約が終わる時期です。一覧にすると、第2節の備えの出発点ができます。次に、契約が6か月以上続く見込みなら、予告の対象になるかを契約書で確かめます。1
そのうえで、支払期日が契約を結ぶ時点で分かるかを確かめます。上限は受領日から60日以内のできる限り短い期間内です。2労災保険の特別加入は、仕事中や通勤中のケガや病気の補償を受けるための制度です。3最後に、経営セーフティ共済は、1年以上継続して事業を行っているかが加入資格です。4
出どころで分けたあとの一歩
月末に入金予定を見ながら浮かぶ三つの心配は、分けてみると、契約の終わり、入金までの待ち、働けない期間という別々の問題でした。不安定は、ひとかたまりで見ずに出どころで分けます。分けたあとは、制度で備える部分と、自分で用意する部分が見えています。
契約の終わりに備えるには、次の案件を探し始める時期を、契約が終わる前に決めておくことが助けになります。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。まず登録して、自分に合う案件の条件を確かめてみる一歩から始められます。
8. よくある質問
フリーランスになって後悔する人は多いのでしょうか
割合を示すデータは、ここでは扱いません。書き手の見立てとして、後悔につながりやすいのは、不安定さを分けずに独立した場合だと考えられます。三つの心配がひとかたまりのままだと、起きたときに何から手を付けるか決められません。独立前に出どころを分けて確かめておけば、起きることを想定した準備ができます。
案件が途切れたときに使える給付はありますか
この記事で扱った制度の中に、案件が途切れたこと自体を理由に使える給付はありません。労災保険の特別加入は、仕事中や通勤中のケガや病気などへの補償です。3経営セーフティ共済は、取引先の倒産時の貸付けです。4小規模企業共済の契約者貸付も、給付ではなく借入れです。5ほかの給付は、ここでは扱いません。
独立したばかりでも経営セーフティ共済に入れますか
加入資格は、1年以上継続して事業を行っている中小企業者です。4事業を始めてからの期間の数え方や、個人事業主がどう扱われるかは、制度の窓口で確かめます。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
不安定さは、どこから来るかを分けると備え方が見えてきます。取引先を1社に寄せすぎないためにも、フルリモートの業務委託案件から選択肢を広げてみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(2026年2月26日・2026年10月確認)
*2 公正取引委員会「公正取引委員会の最近の活動状況」(2026年4月・2026年10月確認)
*3 厚生労働省「「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました」(2024年11月1日・2026年10月確認)
*4 独立行政法人中小企業基盤整備機構「制度のしおり」(2026年1月・2026年10月確認)
*5 中小機構「小規模企業共済 制度のしおり」(2026年6月・2026年10月確認)