フリーランスの英語案件で決めることは?契約の言語・紛争解決・請求通貨の条件
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 英語を使う案件の三つの形と、形ごとに契約や請求で確かめる中身が変わる理由
- 点数だけに頼らず、仕事の場面ごとの経験で英語力を伝える方法と、共通の物差しCEFRの位置づけ
- 仲裁条項に書く三点と、外貨建ての請求書で外国語・外貨で書いてよい範囲、円換算が必要な項目
フリーランスとして、海外の取引先とオンラインで打ち合わせをしました。英語で進めた仕様の話は問題なく終わり、最後に相手の担当者が契約書の草案を画面に出して、紛争解決の条項の仲裁地の欄を指し、「ここはどうしますか」と尋ねてきました。英語は聞き取れたのに、答える中身が自分の中にありません。業務委託で英語の案件を受けるときの英語は、仕事の英語と契約の英語の二つあります。
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1. 英語を使う案件の三つの形
契約相手の所在地で分かれる三つの形
英語を使う案件といっても、置かれる状況は同じではありません。契約を結ぶ相手がどこにいるか、英語がどの場面で出てくるかによって、手元に届く書類も、確かめる中身も変わります。ここでは書き手の見立てとして、三つの形に分けて考えます。
一つ目は、海外の取引先と直接、業務委託の契約を結ぶ形です。契約相手が国外にいるため、契約書が英語で届く場合があり、請求の通貨が外貨になる場合もあります。仕様の打ち合わせから契約の確認、請求まで、英語でやり取りする場面が並びます。
二つ目は、国内の参画先で、英語のドキュメントや英語で進むチームと仕事をする形です。契約相手は国内の事業者なので、英語が出てくるのは主に仕事の中です。仕様書を読む、プルリクエストやIssueを書く、会議で話すといった場面が中心になります。
三つ目は、外資系の日本法人が参画先になる形です。契約相手は国内の法人ですが、請求が外貨建てになる場合があります。国内の取引でありながら、請求書の書き方に外貨が絡む点が、ほかの二つと違います。
形によって変わる確認事項
三つの形を並べると、英語の使いどころは「仕事の中」と「契約と請求」に分かれます。仕事の中の英語は、三つの形のどれにも出てきます。一方、契約と請求の英語は、契約相手が国外か、請求が外貨建てかによって、必要かどうかが変わります。
図の作成:Remogu編集部。英語を使う案件の形を整理したもので、統計データではありません
たとえば一つ目の形では、紛争解決の決め方まで、自分で草案を読んで確かめる場面が生まれます。二つ目の形では、契約は国内の取引として確かめ、英語は仕事の場面に絞って考えます。三つ目の形で論点になるのは、請求書に外貨をどう書くかです。
三つの形のどれでも出てくるのは、仕事の英語です。次の節で、その英語力を相手にどう伝えるかを見ます。
2. 英語力を場面と共通の物差しで伝える
共通の物差しとしてのCEFR
英語力を伝えるとき、まず思い浮かぶのは試験の点数です。ただ、点数だけでは、英語をどの場面で使ってきたのかまで伝わりません。そこで、国際的な基準であるCEFRを見ておきます。
文部科学省の教育課程部会外国語ワーキンググループが2025年9月24日に示した資料によると、現行の学習指導要領は、小中高で一貫した目標を実現するため、国際的な基準であるCEFRを参考に5つの領域で英語の目標を設定しています1。
同じ資料は、CEFRを欧州評議会が示す、外国語の学習や教授等のためのヨーロッパ共通参照枠と説明しています1。ただし、これは学校教育の目標設定についての資料で、仕事で求められる英語力の基準を示したものではありません。段階の中身や試験との対照は、この記事では扱いません。
共通の物差しがあると知っておくと、英語力の伝え方は点数だけに限られなくなります。読む、書く、話すといった場面に分けて経験を並べる方法は、英語力を領域ごとに捉える発想と同じ向きです。これは書き手の見立てで、案件を出す側がこの枠組みで判断しているという意味ではありません。
場面ごとに添える中身
仕事で英語を使う場面を三つに分け、それぞれで相手に伝えられる中身の例を並べました。点数の代わりに、読んだ資料の種類、書いた文書の種類、参加した会議の形と頻度を添えると、相手は自分の案件で必要な英語と見比べられます。いずれも書き手の見立てです。
| 仕事の場面 | 伝える中身の例 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 英語の仕様書やドキュメントを読む | 読んだ資料の種類 | 公式ドキュメントやAPI仕様書を読んで実装した |
| プルリクエストやIssue、メールを書く | 書いた文書の種類 | 英語でIssueを起票し、レビューのコメントを返した |
| 会議で話す | 参加した会議の形と頻度 | 英語で進む定例に参加し、進捗を口頭で報告した |
英語の仕様書を読む場面なら、「英語で読めます」とだけ書くより、読んだ資料の種類を書きます。何を読んで何を作ったかが書かれていれば、相手は自分の案件で読む資料と照らし合わせられます。
書く場面と話す場面も同じ形です。書いた文書の種類を並べ、会議は参加した形と頻度を添えます。試験の点数を書く場合も、これらの中身と並べて置くと、点数が使われた場面とつながります。
仕事の英語が伝わったあとに待っているのが、契約の英語です。
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3. 揉めたときの決め方を契約で先に決める

仲裁条項に書く三点
冒頭の打ち合わせで尋ねられた仲裁地は、紛争解決の条項に書く項目の一つです。契約の内容で当事者の意見が食い違ったとき、どの手続で決着をつけるかを、契約の段階で取り決めておくわけです。
ジェトロの貿易・投資相談Q&Aのページ「クレームなどの紛争解決のための仲裁」(2026年8月)は、仲裁を使うには契約締結時に合意しておくのが現実的で、仲裁条項には仲裁機関・仲裁規則・仲裁地の三点を明記すると説明しています2。
ただし、このページは貿易取引向けの一般的な解説で、業務委託の契約に絞った説明ではありません。そのため、フリーランスの契約でもこう決まっている、とは言えません。海外の取引先との契約でも、揉めたときの決め方を締結時に決めておく考え方は参考になる、というのが書き手の見立てです。
三点それぞれの確かめ方
三点は、それぞれ違うことを決めています。仲裁機関は手続を担う機関、仲裁規則は手続が従う規則、仲裁地は手続をする場所です。草案を受け取ったときは、この三つの欄に何が書かれているかを順に読み、空欄や曖昧な書き方がないかを確かめます。
| 項目 | 確かめること | 草案を読むときの問い |
|---|---|---|
| 仲裁機関 | どの機関の手続か | 機関の名前が書かれているか |
| 仲裁規則 | どの規則に従うか | 規則の名前が書かれているか |
| 仲裁地 | どこで手続をするか | 場所が書かれているか、その場所で手続を進める負担を見込めるか |
仲裁判断の効力と国外での執行
同じページによると、仲裁判断には裁判所の確定判決と同じ効力があります。国外での強制執行は、ニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)の締約国に限られると、同ページは説明しています2。
出典:ジェトロ「クレームなどの紛争解決のための仲裁」(2026年8月)をもとに作成
どの国が締約国かは、この記事では扱いません。契約相手の国が対象かどうかは、契約前に専門家へ確認したい点です。
準拠法の条項
英文の契約書には、どの国の法律に従うかを定める準拠法の条項も並ぶことが多い、と書き手は見ています。ただし、どの法律が適用されるのか、その中身がどうなっているのかは、この記事では説明しません。草案にこの条項があれば、読んで分からない部分は専門家に確認します。
では、三点のうち仲裁地は、どのように決まるのでしょうか。
4. 仲裁地と言葉の問題
仲裁地は交渉で決まる
ジェトロの同ページは、仲裁地の選択には交渉が必要で、多くは紛争の内容や当事者間の力関係で決まると説明しています2。冒頭で尋ねられた「ここはどうしますか」は、この交渉の入口でした。
さらに同ページは、言葉や距離の問題から、自国の仲裁機関を選べれば最良だとしています2。ただし、相手が応じるとは限りません。
出典:ジェトロ「クレームなどの紛争解決のための仲裁」(2026年8月)をもとに作成
個人で受ける側にとって、言葉と距離は切実な問題です。英語の手続を国外で進める負担を、仕事と並行して背負えるかどうかを、草案の段階で考える必要があります。
草案を受け取ったときの読み方
草案のまま署名せず、少なくとも三点が何になっているかを読んで確かめます。これは書き手の見立てです。冒頭の場面で聞かれた仲裁地は、この三点の一つで、事前に草案を読んでいれば、聞かれる前に自分の考えを持てます。
一方、希望がそのまま通るとは限りません。通らなかった場合にその契約を受けるかどうかも、前もって考えておきます。自国の仲裁機関を選べなかったときの負担を見込めるかどうかが、判断の材料の一つです。
次は請求の場面です。参画先が海外の取引先ではなく、外資系の日本法人のときに何が変わるかを見ます。
5. 外資系の参画先へ外貨建てで請求するとき
外貨建てでも国内の課税取引
外資系の日本法人が参画先になる形では、契約相手が国内の法人なのに、請求が米ドルなどの外貨建てになる場合があります。この節で扱うのは、そうした国内の課税取引の請求書です。海外の取引先への請求は、別の話になります。
国税庁のインボイス制度Q&A(令和8年5月改訂)の問68は、米ドルなどの外貨建ての取引でも、適格請求書の記載事項は「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を除いて、外国語や外貨で記載してよいと答えています3。英語で作った請求書や、外貨で書いた金額が、それだけで認められないわけではありません。
ただし、同じ問68は、外貨建ての取引でも「税率の異なるごとに区分した消費税額等」は円換算した金額を記載する必要があるとしています3。換算の細かい方法や、どの為替相場を使うかは、この記事では扱いません。
記載事項ごとの書き方
請求書の記載事項は、外国語や外貨で書いてよいものと、円換算した金額を書くものに分かれます。英語の請求書を作るときは、この二つを分けて考えると迷いません。分け方は国税庁のQ&Aの回答のとおりで、換算の計算式までは回答に含まれていません。
| 適格請求書の記載事項 | 外国語・外貨で書いてよいか | 書き方 |
|---|---|---|
| 消費税額等以外の記載事項 | 外国語や外貨でよい | 外貨建ての金額や英語の表記で書く |
| 税率の異なるごとに区分した消費税額等 | 円換算した金額を書く | 円の金額で書く |
請求の通貨を契約で決める
請求の通貨を円にするか、外貨にするかは、契約で決める項目です。これは書き手の見立てですが、外貨で請求する場合は、為替の動きによって受け取る円の額が動きます。受け取る時点の額を見通しにくくなるため、通貨は契約の段階で確かめておきます。為替差損益の税務は、この記事では扱いません。
海外の取引先への請求と消費税の扱いは、輸出免税を扱った記事で、海外で差し引かれた税金の扱いは、外国税額控除を扱った記事で説明しています。この記事では、そこまで踏み込みません。
請求の通貨が決まったら、受ける前に何を順に確かめるかを整えます。
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6. 受ける前に決めておくこと

確認の順番
確認の順番を決めておくと、草案や参画先の話を受け取ったときに迷いません。最初に見るのは、契約相手の所在地です。国外なら一つ目の形、国内なら二つ目か三つ目の形で、あとの確認事項が分かれます。
図の作成:Remogu編集部。確認の順番を整理したもので、統計データではありません
次に、英語を使う場面を確かめます。仕様書を読むだけなのか、文書を書くのか、会議で話すのかを、第2節の表の中身と見比べると、自分の経験で受けられるかどうかが判断しやすくなります。
三番目は、契約相手が国外の場合の、揉めたときの決め方です。仲裁機関・仲裁規則・仲裁地の三つの欄が何になっているかを読みます。四番目は請求の通貨です。外貨建てなら、請求書に円換算した金額を書く項目があるかも確かめます。
契約書の言語
決めておく項目として、契約書の言語も挙げておきます。英語だけで届くのか、日本語訳が付くのか、付く場合はどちらを正とするのかです。これは書き手の見立てで、資料に定めがあるわけではありません。
日本語訳があっても、英語の原文とのあいだに食い違いがあったときにどちらを正とするかが書かれていなければ、読み違いのまま署名するおそれがあります。訳の有無と、どちらを正とするかは、署名の前に相手へ尋ねます。
確認する項目がそろったら、仕事の英語と契約の英語を、受けられる形に整えます。
7. 英語の案件を受けられる形に整える
二つの英語の用意
仕事の英語は、場面ごとの経験を書き出して用意します。読んだ資料、書いた文書、参加した会議を、第2節の表の形で整理しておけば、プロフィールにも面談にも使えます。点数は、その中身に添えるものです。
契約の英語は、仲裁機関・仲裁規則・仲裁地の三点と、請求の通貨を読めるようにしておくことです。外貨建てで請求するなら、円換算した金額を書く項目があることも頭に置きます。この二つが分かっていれば、草案を受け取ったとき、どこから読むかで迷いません。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングです。案件の90%以上がフルリモート可能です。契約の条件や英語を使う場面は案件によって異なるので、まず登録して、自分の経験に合う条件を見てみましょう。
英語の案件で使う英語は、仕事の英語と契約の英語の二つあります。仕事の英語は伝え方を、契約の英語は決める項目を、先に用意しておきます。そうすれば、仲裁地の欄を指されて「ここはどうしますか」と聞かれても、自分の言葉で答えを返せます。
8. よくある質問
英語の試験の点数はプロフィールに書いたほうがよいですか
書いてかまいません。ただ、点数だけでは英語を使った場面が伝わらないので、仕事でどの場面に英語を使ってきたかを添えます。読んだ資料、書いた文書、参加した会議の形が、点数の使いどころを示します。点数の目安は、この記事では扱いません。
英語の契約書しかなく、日本語訳が無いときはどうすればよいですか
書き手の見立てとして、まず日本語訳を求めます。訳が出てこない場合は、英語と日本語のどちらを正とするかを相手に確かめます。読んで分からない条項は、署名の前に専門家へ確認します。
海外の取引先から報酬の一部を差し引かれて支払われたらどうなりますか
海外で差し引かれた税金の扱いは、外国税額控除を扱った記事で説明しています。税額の計算や控除が受けられるかどうかは、この記事では扱いません。差し引かれた内訳は、支払の案内で確かめます。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 文部科学省「外国語に関する現状・課題と検討事項」(2025年9月24日・2026年10月確認)
*2 ジェトロ「クレームなどの紛争解決のための仲裁」(2026年8月・2026年10月確認)
*3 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(2026年5月・2026年10月確認)