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    フリーランスの報酬の仕訳は入金日にどう書く?源泉所得税と振込手数料の扱いの違い

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    白く明るい机で、無地の白い紙片の束を大きい山と小さい山に分ける両手と、水色の手帳

    📘 この記事でわかること

    • 請求額110,000円が入金99,350円になる差の中身と、差を税と振込の費用に分けて見る考え方
    • 売掛金を請求した額のまま消す理由と、差し引かれた源泉所得税を事業主貸で書く例
    • 請求書で報酬と消費税を分けるかどうかで、源泉の対象額が100,000円と110,000円に分かれる仕組み

    月末に通帳を開くと、110,000円で請求した業務委託の報酬が99,350円で入っていました。会計ソフトに「売上 99,350円」と打ちかけて、手が止まります。差の10,650円はどこへ行ったのか、売掛金の残高がずれたまま年末を迎えないか、と不安になったことはありませんか。フリーランスの報酬の仕訳は、請求した額と入った額の差を分けて書きます。この記事では、差の中身から入金日に帳簿へ書く順番まで、金額の例を使って整理します。

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    1. 報酬が請求額どおりに入らない理由

    請求額と入金額の差の中身

    請求書に書いた額と通帳に入る額が違うとき、書き手の見立てでは、差の中身はおもに2つです。取引先が差し引いて納める源泉所得税と、振込にかかる手数料です。この記事の金額はすべて書き手が置いた例なので、実際の差引額は取引先の支払通知書や明細で確かめます。

    たとえば110,000円を請求し、源泉所得税が10,210円、振込手数料が440円差し引かれると、入金は99,350円になります。冒頭の差の10,650円は、この2つを合わせた額でした。

    図1:請求額から入金額までの差し引きの流れ
    請求額から入金額までの差し引きの流れ 差の10,650円は2つに分かれる 請求額 110,000円 源泉所得税 10,210円 振込手数料 440円 入金額 99,350円 請求した額 取引先が納める税 振込の費用 通帳に入る額

    図の作成:Remogu編集部。金額は書き手の例で、統計データではありません

    差し引くのは取引先

    源泉所得税を差し引くのは、報酬を支払う取引先です。国税庁のタックスアンサーNo.2795は、源泉徴収の対象になる報酬について、源泉徴収をするのは支払う側だと説明しています1。受け取る側が自分で計算して引くものではないので、手元の請求書だけでは入金額が決まりません。

    もう1つの差である振込手数料にも、国税庁の資料に例があります。インボイスに関するQ&Aは、10,000円を請求し、買手が振込手数料相当額の440円を差し引いて9,560円を振り込む場合を取り上げています2。売手の側では、この440円の書き方が複数あります。選び方は第5節で扱います。

    では、この差を帳簿にどう書けば、売掛金の残高が合うのでしょうか。まず、売掛金から考えます。

    2. 売掛金は請求した額のまま消す

    入金額で売上を書き直さない

    入金額の99,350円を、そのまま売上に書き直したくなる場面があります。ただし、書き手の見立てでは、これは避けたい書き方です。請求した日に売掛金110,000円を書いているなら、入金日に消す売掛金も110,000円です。売上を99,350円に書き直すと、差の10,650円が帳簿から消えてしまい、年末の売掛金の残高が請求書の合計と合わなくなります。

    国税庁の記帳説明の資料にも、売掛金の回収に触れた記載があります。現金出納帳の記載例の注意点として、売掛金を回収した場合には同時に売掛帳の口座の受入金額にも記載すると示しています3。回収した金額を売掛帳にも書く点までが資料の範囲で、預金出納帳の書き方や白色申告の場合は、この資料から読み取れません。

    つまり、入金日に帳簿の動きを止めるのは、売掛金を消す作業と、差額の行き先を決める作業の2つです。前者は請求額のまま、後者は差の中身ごとに分けて書きます。

    請求額と入金額の記録先

    110,000円の請求に対して99,350円が入った例を、項目ごとに分けると、記録先は次のように並びます。売掛金は請求額の110,000円、普通預金は入った99,350円で、差の2項目は別の行に書きます。記録先の科目は書き手の例で、国税庁の資料に源泉所得税や振込手数料の仕訳例があるわけではありません。

    項目金額記録先(書き手の例)
    請求額110,000円売掛金の減少
    入金額99,350円普通預金の増加
    源泉所得税10,210円事業主貸
    振込手数料440円支払手数料

    源泉所得税の行を事業主貸にした理由は、次の節で述べます。

    3. 差し引かれた源泉所得税の書き方

    明るい机で、無地の白いカードを透明なクリアファイルに差し入れる手元

    事業主貸で書く例

    差し引かれた源泉所得税は、事業の経費ではありません。書き手の例では、この10,210円を事業主貸で書きます。国税庁の資料に、源泉徴収された税額の仕訳例は載っていないので、これはあくまで書き手の判断です。

    参考になるのは、科目の定義です。同じ記帳説明の資料は、事業主貸を、事業用の現金を家計用に充てるような場合に使用する勘定科目と説明しています3。源泉徴収された税額をこの科目で処理する例までは、資料に書かれていません。迷うときは、税務署や税理士に確かめてから決めます。

    確定申告までの残し方

    差し引かれた源泉所得税は、そのまま放置される額ではありません。国税庁のタックスアンサーNo.2020は、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合は、所得税の確定申告によってその過不足を精算すると説明しています4。精算の結果として納める額が出ることもあるので、差し引かれた額が戻ると決めつけずに、確定申告で扱う前提で残します。

    そのため、書き手の見立てでは、入金のたびに差し引かれた額を取引先の明細と合わせて残しておくと、年が明けたあとに照合しやすくなります。帳簿の10,210円と、取引先が納めた額が食い違っていれば、確定申告の前に気づけます。

    図2:差し引かれた源泉所得税が精算されるまでの時系列
    差し引かれた源泉所得税が精算されるまでの時系列 最後は確定申告で精算 入金日 帳簿に記録 年をまたぐ頃 取引先の明細と照合 確定申告 過不足を精算 時間の流れ

    図の作成:Remogu編集部。書き手の例を含む流れの整理で、統計データではありません

    源泉所得税の額は、請求書に消費税を書くかどうかでも変わります。次は、その違いを金額で見ます。

    4. 請求書の消費税の書き方で変わる源泉の対象額

    消費税を分けた請求書と分けない請求書

    源泉徴収の対象になる報酬について、国税庁のタックスアンサーNo.2795は、報酬・料金等に消費税等の額が含まれる場合は原則として消費税等を含めた金額が対象だと説明しています。そのうえで、請求書等で報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、報酬・料金等の額のみを対象にして差し支えないとしています1。

    税額は、同じ資料の計算方法の表で決まります。支払金額、つまり源泉徴収の対象となる金額が100万円以下の場合、税額は支払金額に10.21%を掛けた額で、1円未満の端数は切り捨てます1。これは原稿料や講演料などの報酬・料金等についての表の値です。

    書き手の例で計算します。報酬100,000円と消費税10,000円を請求書で分けて書いていれば、対象額は100,000円で、源泉所得税は10,210円です。分けずに110,000円とだけ書いていると、対象額は110,000円となり、110,000円に10.21%を掛けて1円未満を切り捨てた11,231円が対象の税額です。

    図3:請求書で消費税を分けた場合と分けない場合の源泉の対象額
    請求書の書き方による源泉の対象額の比較 区分の有無で対象額が変わる 分けて書いた請求書 対象額 100,000円 源泉 10,210円 分けていない請求書 対象額 110,000円 源泉 11,231円

    図の作成:Remogu編集部。計算は書き手の例(1円未満切り捨て)で、実際の額は取引先の支払通知書で確かめます

    自分の報酬が対象になるか

    ここで注意したいのは、エンジニアの業務委託の報酬がすべて源泉徴収の対象になるわけではないことです。源泉徴収をするかどうかを決めるのは取引先で、自分の報酬が対象になるかは、報酬の種類と支払う側で決まります。対象の範囲は案件の報酬が源泉徴収の対象になる範囲で整理しています。

    そのため、差し引かれていた場合の書き方と、対象かどうかの判断は分けて考えます。取引先が差し引いたのであれば、10,210円や11,231円という額は、支払通知書の記載のとおりに帳簿へ移します。自分で率を当てはめて額を決める必要はありません。

    次は、源泉所得税と並ぶもう1つの差、振込手数料の書き方です。

    5. 振込手数料は支払手数料か売上値引きか

    440円の2つの書き方

    振込手数料を取引先が差し引いて振り込んできたとき、売手の側には2つの書き方があります。1つは、自分が負担した費用として支払手数料で書く方法です。もう1つは、請求額の値引きとして売上値引きで書く方法です。どちらを選ぶかは、取引先との契約や合意と、自分の消費税の申告の方法で決まります。この記事では、どちらがよいかの結論は出しません。

    国税庁のインボイスQ&Aには、後者の例があります。10,000円を請求し、買手が振込手数料相当額の440円を差し引いた9,560円を振り込み、売手が440円を売上値引きとして処理する場合、売上値引きの金額が440円なので、その売上値引きに係る適格返還請求書の交付は必要ありません2。1万円未満の対価の返還等に当たるためです。

    ただし、この扱いは、適格請求書発行事業者が売上値引きとして処理する場合の話です。免税事業者の場合の扱いは、このQ&Aからは読み取れません。支払手数料として書く場合の書類の扱いは、このQ&Aの例には出てこないため、振込手数料の消費税上の扱いと返還インボイスで別に整理しています。

    書き方ごとの科目と書類

    2つの書き方を、借方に置く科目と書類の扱いで並べます。経理処理を途中で変える場面にも、国税庁の資料は触れています。売手が負担する振込手数料相当額について、適格請求書等保存方式の開始後に、支払手数料としての経理処理から、売上げに係る対価の返還等としての経理処理に変更することは問題ないとしています2。

    書き方借方の科目書類の扱い
    支払手数料として書く支払手数料詳細は振込手数料の記事で整理
    売上値引きとして書く(適格請求書発行事業者の場合)売上値引き1万円未満なら適格返還請求書の交付は不要2
    経理処理の変更支払手数料から売上値引きへ変更は問題ない2

    書き方を決める前に、取引先との契約書や発注書で、振込手数料をどちらが負担するかを見ておきます。負担の取り決めと帳簿の書き方が食い違うと、あとで説明に困ります。

    6. 入金日の仕訳を1つにまとめる

    夕方の窓際の机で、開いた無地の帳面に縦線と横線を引くペンと手

    請求日と入金日の2回に分ける

    ここまでの内容を、書き手の例として1つの仕訳にします。まず請求した日に、売掛金110,000円と売上110,000円を書きます。入金日には、売掛金を請求額のまま消し、差の2つの項目を別の行で書きます。請求日と入金日の2回に分けると、売上は請求額のまま残り、年末の売掛金の残高も請求書の合計と並べて見られます。

    国税庁の資料に、この仕訳の形そのものは載っていません。以下は税込経理で書く書き手の例で、売上値引きを選ぶ場合は、支払手数料の行を売上値引きに置き換えます。

    入金日の仕訳の例

    借方に置くのは、通帳に入った99,350円の普通預金と、差し引かれた源泉所得税10,210円の事業主貸、振込手数料440円の支払手数料です。貸方には、売掛金の110,000円を置きます。借方の合計と貸方の合計は、どちらも110,000円で一致します。

    借方(書き手の例)金額貸方金額
    普通預金99,350円売掛金110,000円
    事業主貸10,210円――
    支払手数料440円――

    事業主貸の定義は、前に引いた記帳説明の資料にあります。事業用の現金を家計用に充てるような場合に使用する勘定科目という説明で、源泉徴収された税額の処理例は載っていません3。科目の選び方に迷うときは、事業主貸と事業主借の使い分けも参照できます。

    免税事業者か課税事業者か、税込経理か税抜経理かによって、書く額が変わる場合があります。この表は税込経理の例です。税抜経理で書くときの違いは、税抜経理と税込経理の違いで扱っています。

    7. 入金日に確かめる順番

    帳簿に書く前の4つの手順

    入金日に帳簿を開く前に、取引先から届く支払通知書や明細を見ます。そこに書かれた源泉所得税や振込手数料の額が、帳簿へ移す額の元になります。自分で率を当てはめて額を決めるより、支払通知書の記載のとおりに写すほうが、取引先の記録と食い違いません。

    次に、請求額と入金額の差を、源泉所得税と振込手数料に分けます。差の2項目が支払通知書の合計と合えば、売掛金を請求額のまま消す準備が整います。合わないときは、帳簿に書く前に、取引先へ内訳を問い合わせます。

    図4:入金日に確かめる順番
    入金日に確かめる順番 差を分けてから売掛金を消す 支払明細 取引先の分 差を分ける 源泉と手数料 売掛金 請求額で消す 明細 保存する 1番目 2番目 3番目 4番目

    図の作成:Remogu編集部。入金日の手順の整理で、統計データではありません

    差を分けて書く

    3つ目で売掛金を請求額のまま消し、4つ目で明細を残します。差し引かれた源泉所得税は、確定申告で過不足を精算する対象です4。入金のたびに明細を保存しておけば、年が明けたあとの照合も、確定申告の準備も、手元の記録だけで進められます。

    冒頭の99,350円に戻ります。通帳に入った額と請求した額の差は、取引先が納める源泉所得税と、振込の費用でした。報酬の仕訳は、請求した額と入った額の差を分けて書きます。差が見えれば、売掛金は請求額のまま消え、年末の残高も請求書の合計と並べられます。

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    8. よくある質問

    源泉所得税が差し引かれていない報酬もありますか

    あります。源泉徴収をするのは報酬を支払う側で1、対象になるかどうかは報酬の種類と支払う側で決まります。差し引かれていない報酬であれば、事業主貸の行は出ず、売掛金と普通預金の差は振込手数料だけです。対象の範囲は、第4節で挙げた記事で整理しています。

    報酬が翌月や翌年に入る場合も同じ書き方ですか

    書き手の見立てでは、書き方は同じです。請求した時点で売掛金に書き、入金日に請求額のまま消します。年をまたぐ報酬を、どの年の売上に入れるかという計上の時期は別の話で、12月の売上をどの年に入れるかで整理しています。

    取引先が源泉所得税を差し引き忘れていたらどう書きますか

    書き手の見立てでは、全額が入金されていれば、売掛金と普通預金の差は振込手数料だけになります。差し引くかどうかは取引先が決めることなので、自分で判断せず、取引先に確かめます。確かめた結果は、支払通知書や連絡の記録として残しておきます。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 国税庁「原稿料や講演料等を支払ったとき」(2026年4月1日・2026年10月確認)
    *2 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(2026年5月・2026年10月確認)
    *3 国税庁「記帳のしかた及び帳簿の保存」(2026年5月1日・2026年10月確認)
    *4 国税庁「確定申告」(2026年4月1日・2026年10月確認)