フリーランスのタスク管理|複数案件の納期と作業時間をひとつに束ねる段取りを整理
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 置き場が案件ごとに違うと締切の重なりが誰の画面にも出てこなくなる理由と、重なりを一つの一覧で見る考え方
- 発注時に示される期日や報酬の支払期日の事項と、それが各回の発注に付いて届く形を、自分の一覧へ写す手がかり
- 発注側が納期を決めるときの作業時間の目安を参考線にして、複数の案件の納期を作業時間から逆算する一覧の作り方
月曜の朝、3つのクライアントのチケットとチャットを順に開き、今週の作業を数えていきます。3つ目を開いたところで、木曜に2つの納品が重なっていることにようやく気づきました。業務委託で複数の案件を並行して受けるフリーランスのタスク管理は、作業量よりも、置き場が案件ごとに散らばっていることでつまずきます。タスクは案件ごとの置き場ではなく、自分の一週間に束ねます。
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・【稼働時間の見積り】案件の条件として先に置くための材料と注意点
・業務委託の納期遅延はどう扱われる?発注者の都合で延びたときと、やり直しで遅れたときの違い
・案件の掛け持ちを制限されたら?専属義務と実績の公表の考え方を解説
1. 複数案件でタスクが散らばる理由
置き場がクライアントごとに分かれる仕組み
業務委託で複数の案件を受けると、タスクの置き場はクライアントの数だけ増えます。ある案件はチケット、別の案件はチャット、もう一つはメールで依頼が届く、という形です。道具はそれぞれのクライアントが自分たちの都合で選んだもので、受ける側が決める余地は限られます。
そのため、タスクの管理は案件ごとに完結しやすくなります。案件Aのチケットを開けば案件Aの作業が見え、案件Bのチャットを開けば案件Bの依頼が見えます。どの置き場も、自分の案件の範囲では整っています。
案件をまたぐ重なりが見えない画面
一方で、案件をまたぐ重なりは、どの置き場にも映りません。案件Aのチケットは案件Bの締切を知りません。木曜に2つの納品が並んでいても、それぞれの画面には、自分の案件の期日が1つずつ見えているだけです。
重なりに気づける場所は、受けている本人の頭の中にしかありません。月曜の朝に3つの置き場を順に開いて数え直す作業が毎週必要になるのは、このためです。冒頭の場面のように、3つ目を開くまで重なりが分からない週も出てきます。
図の作成:Remogu編集部。置き場の関係を整理したもので、統計データではありません
案件ごとの置き場から一つの一覧へ向かう流れは、置き場をなくすものではありません。クライアントの道具はそのまま使い、案件をまたいで見たい情報だけを自分の手元に集めます。では、一覧に写す情報は、どこから分かるのでしょうか。
2. 発注時に示される案件ごとの期日
発注の時点で示される事項
フリーランス・事業者間取引適正化等法のQ&Aで、公正取引委員会は、業務委託事業者が3条通知で明示する事項として、給付・役務の内容、給付・役務提供の期日、報酬の額及び支払期日などを挙げています1。明示する義務を負うのは発注する側です。
期日は2種類が別の項目として並んでいます。給付・役務提供の期日と、報酬の額及び支払期日です。作業の締切と請求の予定は、別々の日付として一覧に写せます。
継続する案件で期日が各回の発注に付く形
同じ取引先との受発注が繰り返される場合について、厚生労働省の自営型テレワークの適正な実施のためのガイドラインは、共通する事項を包括的な契約とし、納期など各回の個別の事項をその都度の契約内容として明示することも可能としています2。注文者に向けたガイドラインで、フリーランスの側に書面の作成を求めるものではありません。
ここからは見立てです。期日が各回の発注に付いて届く形では、継続して受けている案件でも、期日は最初の契約に一度だけ書かれるとは限りません。発注が来るたびに期日を自分の一覧へ写す手順を決めておくと、案件をまたいだ並びが保てます。
示される事項と一覧での使い道
表の左は発注時に明示される事項で、右は一覧での使い道です。給付・役務の内容は、作業の中身と区切りを決める手がかりになります。給付・役務提供の期日は締切に、報酬の額及び支払期日は請求の予定に、それぞれ写せます。使い道の列は、タスク管理に生かす見立てで、法令が定めたものではありません。
| 明示される事項 | 一覧での使い道 |
|---|---|
| 給付・役務の内容 | 作業の中身と区切りを決める |
| 給付・役務提供の期日 | 作業の締切として置く |
| 報酬の額及び支払期日 | 請求の予定として置く |
では、期日が書かれないまま始まる案件は、どう受け止めればよいのでしょうか。
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3. 期日が書かれないまま始まる案件

勧告・指導の件数から確認できること
公正取引委員会は、令和7年度にフリーランス・事業者間取引適正化等法で勧告・指導した措置件数を公表しています。措置件数は1,552件で、業種別にみると情報通信業が最も多く575件(37.0%)でした3。これは措置を受けた事件の業種別内訳です。
同じ措置を違反行為の類型別にみると、全体2,727件のうち取引条件の明示義務違反が1,126件(41.3%)で、期日における報酬の支払義務違反に次いで件数の多い類型でした3。1件の措置に複数の類型が重なる延べ件数で、取引条件を示さなかった場合のほか、一部の事項の明示が不十分だった場合も含みます。
出典:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月10日)をもとに作成。1件に複数の類型が重なる延べ件数で、2本の帯は母数が異なります
件数の読み方と、期日の確かめ方
ただし、2つの内訳は母数が違います。1,552件と2,727件は別の数え方なので、足したり、同じ尺度で比べたりはできません。
また、どちらの数も、発注事業者の側の違反に対する勧告・指導の件数です。フリーランス全体のうち、取引条件が示されていない案件がどれだけあるかを表す数ではありません。期日が書かれない案件が一般にどのくらいあるかは、この資料からは分かりません。
とはいえ、取引条件の明示義務違反が、期日における報酬の支払義務違反に次いで件数の多い類型だったことは、数字から確認できます。ここからは見立てです。期日が書面にも連絡にも見当たらない発注を受けたときは、着手の前に期日を確かめ、返事を受け取ってから一覧に入れます。期日が決まらないまま始めると、一覧の上で重なりを見つけようがないためです。
期日がそろった案件は、次に、作業時間の側から並べ直します。
4. 納期を作業時間から逆算する方法
納期を決めるときの作業時間の目安
第2節で触れたガイドラインは、注文者が成果物の納期を設定する際、自営型テレワーカーの作業時間が長時間に及び健康を害することがないようにし、1日8時間を作業時間の上限の目安とするよう求めています2。主語は注文者で、納期を決める発注側に向けた目安です。受注者の働く時間を縛る決まりではありません。
とはいえ、この線は、自分の計画を立てるときの参考線にもなります。ここからは見立てです。複数の案件を足した週の合計が、1日8時間を目安にした線を超える週は、どれかの期日を動かせないか、早めに相談する必要が出てきます。
期日から数えて始める日を出す
納期を逆算するには、期日の前にある作業を時間に置き換えます。作業の区切りごとに見込み時間を見積もり、期日から数えて、いつ始めればよいかを出します。見込み時間は自分の見積りなので、根拠は出典ではなく自分の経験です。
週に充てる時間は、その週に使える時間のうち、その案件に割り当てる分です。空きは、割り当てたあとに残る時間として、一覧の端に置きます。空きが見えると、新しい依頼が来たときに、受けられるかどうかをその場で確かめられます。
一覧に置く列の意味
一覧に置く列は6つです。案件は、どのクライアントの作業かを示す略称です。作業の区切りは、完了を確かめられる単位を表します。期日は発注時に示された日付で、見込み時間は自分で見積もった時間です。週に充てる時間はその案件に割り当てる分を、空きは割り当て後に残る時間を示します。数字の欄に入る値は案件ごとに異なるため、列の意味だけを並べています。
| 列 | 書く内容 |
|---|---|
| 案件 | クライアントを示す略称 |
| 作業の区切り | 完了を確かめられる単位 |
| 期日 | 発注時に示された日付 |
| 見込み時間(自分の見積り) | その区切りに要する時間 |
| 週に充てる時間 | その週にその案件へ割り当てる時間 |
| 空き | 割り当て後に残る時間 |
列が決まったら、次は、案件の置き場からこの一覧へどう集めるかです。
5. ひとつの一覧に束ねる段取り
クライアントの道具を正とする考え方
一覧を作ると聞くと、クライアントの置き場から作業を全部移して、手元で一元管理する形を思い浮かべるかもしれません。ただ、その形は二重管理になりやすく、案件Aのチケットを更新したのに手元の一覧が古いまま、という食い違いを生みます。
そこで、クライアントの道具は正としてそのまま使います。作業の中身や細かな議論は、各案件の置き場に残します。自分の一覧に置くのは、どの案件の、何を、いつまでに、何時間で進めるか、という4点だけです。
置く項目を絞ると、更新の手間が小さくなります。期日や作業の区切りが変わったときも、直す場所は一覧の1行で済みます。以下は書き手の見立てで、手元の一覧は案件をまたぐ重なりを見るための道具、と位置づけています。
週に1回の集め方と並べ方
集める頻度は、週に1回を目安にします。月曜の朝に、各案件の置き場を順に開いて、新しく届いた依頼と期日の変更を拾います。冒頭の場面では、この作業を頭の中でしていたため、3つ目を開くまで重なりに気づけませんでした。一覧に書き出せば、2つ目を見た時点で重なりの候補が目に入ります。
拾ったあとは、期日と見込み時間を付けます。期日は発注時に示された日付をそのまま写し、見込み時間は自分の見積りを入れます。そのうえで、週に充てる時間を割り付けます。割り付けた結果、ある週の合計が前節で触れた作業時間の参考線に近づいたら、その週が重なりの候補です。
重なりを見つけた週は、割り付けを組み替える前に、相談の要否を決めます。自分の工夫で収まる範囲なら、始める日を前倒しします。収まらないときは、期日を動かせるかをクライアントに尋ねます。相談は早いほど選べる手が残るため、見つけた時点で動きます。
図の作成:Remogu編集部。段取りを整理したもので、統計データではありません
一覧に置く情報が決まったので、次は、置いてはいけない情報の線引きです。
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6. 手元の一覧にクライアントの情報を写さない

委託先を入口にする攻撃の位置づけ
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026の組織向けで、サプライチェーンや委託先を狙った攻撃は2位でした。2019年の初選出から8年連続8回目の選出です4。これは組織向けの順位で、フリーランス個人が受ける被害の順位ではありません。
一方で、業務委託を受ける側は、発注する組織から見れば委託先です。ここからは見立てです。委託を受ける側の手元の端末や資料も、発注元につながる入口になりうると考えると、手元の一覧に何を書くかは、タスクの整理とは別の判断になります。
新しい道具を使い始めるときの注意
IPAはテレワークを行う際の注意事項として、ウェブ会議のサービス等を新たに使い始める際は事前に初期設定の内容を確認し、セキュリティ機能を積極的に活用するよう案内しています5。これはテレワーク全般に向けた注意事項で、例に挙がっているのはウェブ会議のサービスです。
タスクを管理するツールを新しく使い始めるときにも、同じ考え方が当てはまります。ここからは見立てです。初期設定を確かめ、使える安全機能を入れてから運用を始めるほうが、あとから設定を見直す手間も小さくなります。
一覧に書くものと書かないものの線引き
線引きは単純です。一覧には、案件をまたぐ重なりを見るために必要な、案件の略称・作業の区切り・期日・見込み時間だけを書きます。反対に、クライアントの社名や個人情報、仕様の中身、認証情報、ソースコードは、手元の一覧に写しません。これらは各案件の置き場に残し、一覧からは見えない場所に保ちます。以下の表は書き手の見立てで、法令や出典が定めた区分ではありません。
| 一覧に書くもの | 一覧に書かないもの |
|---|---|
| 案件の略称 | クライアントの社名や個人情報 |
| 作業の区切り | 仕様の中身 |
| 期日 | 認証情報 |
| 見込み時間 | ソースコード |
ただし、クライアントが使う道具を指定している場合は、その規程が優先です。指定された道具に手元の一覧を重ねるのか、別の置き場に分けるのかは、案件ごとに確かめます。
次は、一覧で重なりが見えたとき、クライアントにどう伝えるかです。
7. 重なりが見えたときの伝え方と受け方
相談する順番を決めておく
週の一覧で重なりが見えたら、相談の順番は、期日、範囲、新しい案件の受け方の順にします。以下は書き手の見立てです。納期を動かせるかを最初に尋ねるのは、期日が各回の発注に付いて届く形では、納期が個別に決まっているためです。
期日が動かないときは、範囲を相談します。作業の区切りのうち、先に渡せる部分と後に回せる部分を分け、どちらを期日に間に合わせるかを決めます。それでも収まらない週が続くなら、次の案件を受ける時期を調整します。
図の作成:Remogu編集部。段取りを整理したもので、統計データではありません
遅れそうなときと、受ける前の見積り
納期に間に合わなくなったときの扱いは、業務委託の納期遅延はどう扱われる?発注者の都合で延びたときと、やり直しで遅れたときの違いで整理しています。相談の前に、遅れの原因がどちら側にあるかを見分ける手がかりになります。
重なりを減らすには、受ける前の見積りも効きます。案件を受ける時点で、作業時間を条件に添えておく考え方は、【稼働時間の見積り】案件の条件として先に置くための材料と注意点にあります。新しい案件を受けるときは、掛け持ちの制限が契約にないかも、案件の掛け持ちを制限されたら?専属義務と実績の公表の考え方を解説で確かめられます。
月曜の朝の一覧で閉じる
冒頭の月曜の朝に戻ります。3つのクライアントの置き場を順に開いても、重なりが見えるのは3つ目を開いたあとでした。同じ朝に、期日と見込み時間だけを書き出した一覧が手元にあれば、木曜の重なりは最初の数行で目に入ります。
タスクは案件ごとの置き場ではなく、自分の一週間に束ねます。置き場はクライアントの道具のまま使い、手元には期日と時間だけを置き、重なりが見えたら早めに相談します。この3つで、納品を落とす不安は、見える形で扱えるようになります。
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8. よくある質問
クライアントが指定するツールがあるときも、自分の一覧は必要ですか
書き手の見立てでは、必要です。指定された道具は、その案件の中だけを映します。案件をまたぐ重なりを見るための一覧なので、中身は写さず、案件の略称と期日と見込み時間だけを置けば足ります。
週3日の案件と週2日の案件を並べるときは、どう割り付けますか
書き手の見立てでは、曜日で分ける方法と、期日から逆算して日ごとに配分する方法があり、案件ごとに合うほうを選びます。条件として先に置く作業時間の考え方は、【稼働時間の見積り】案件の条件として先に置くための材料と注意点が参考になります。
体調を崩して期日に間に合わなそうなときは、いつ伝えますか
書き手の見立てでは、重なりを見つけたときと同じで、分かった時点で早めに伝えます。伝える内容の整理には、業務委託の納期遅延はどう扱われる?発注者の都合で延びたときと、やり直しで遅れたときの違いが手がかりになります。
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出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」(2026年8月26日・2026年10月確認)
*2 厚生労働省「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」(2026年8月・2026年10月確認)
*3 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況」(2026年6月10日・2026年10月確認)
*4 IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026年1月29日・2026年10月確認)
*5 IPA「テレワークを行う際のセキュリティ上の注意事項」(2026年6月4日・2026年10月確認)