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    intra-martのフリーランス案件は「紙の決裁」を知る経験が強み|評価される理由と条件

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    明るい窓際の机で、横一列に4つの空の枠が並ぶ無地の回覧用紙を書類の束から持ち上げる両手

    📘 この記事でわかること

    • 岐阜県と福島県の資料から分かる、自治体で電子決裁のシステムが動き始めた時期と、紙の決裁が残っている現状
    • 福島県庁が母数を電子決裁の対象案件に絞り、紙決裁の理由の入力を求める改修をR8.6に実施するとしている流れ
    • 紙に戻る例外を知る経験を、案件の言葉に直して伝える方法と、参画前に確かめる順番

    業務委託の案件の打ち合わせで、「電子決裁は入れたのに、結局みんな紙で回しているんです」と相談された場面を考えてみます(創作の例示です)。intra-martで稟議や申請のワークフローを長く組んできたフリーランスのエンジニアなら、課長が不在のときの代決や、金額で変わる合議先が頭に浮かぶはずです。それでも、ローコードやクラウドの話題が増えるなかで、その経験は古い技術の経験と見られ、外の案件では評価されないのではと迷う人もいます。この記事の見立ては、intra-martの経験は、決裁が紙に戻る理由を知っていることです、というものです。自治体の公開資料を手がかりに、その根拠と条件を確かめます。

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    1. intra-martの経験が古く見える理由

    職務経歴書の一行が伝えるもの

    職務経歴書に「intra-mart」と書くと、外からはどう読まれるのでしょうか。書き手の見立てでは、長く続く業務基盤の保守と読む人もいれば、Javaの保守の仕事と受け取る人もいます。経験の長いエンジニアが「古い技術の経験」と見られるのではと迷うのは、この読まれ方が頭にあるからです。

    ただし、職務経歴書の一行は、仕事の中身をほとんど伝えません。稟議や申請のワークフローを組む仕事は、システムの機能を並べる作業ではなく、組織の決まりごとを画面と流れに写す作業です。誰が起案し、誰が承認し、誰が最後に決裁するのか。その決め方こそが仕事の中心だと、書き手は見ています。

    経歴の中に積まれた3つの経験

    中身を分けると、少なくとも3つの経験が積まれています。1つは、決裁の流れそのものの設計です。もう1つは、課長が不在のときの代決や、金額で変わる合議先のような、例外の扱いです。3つ目は、規程が改定されたときに流れを直す、追従の仕事です。いずれも書き手の見立てで、案件ごとに当てはまり方は異なります。

    図1:職務経歴書の一行と、仕事の中身の違い
    外からの見え方と中に積まれた経験の対比 外からの見え方 古い業務基盤 Javaの保守 中に積まれた経験 決裁の流れの設計 例外の扱い 規程の変更への追従

    図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません

    組織に決裁の仕組みがあるかぎり、製品の名前が変わっても、決め方の設計と例外の扱いは残ります。そのため、経験が古く見えるかどうかは、製品名よりも、中身をどう言葉にするかで変わります。では、自治体の電子決裁は、実際にどこまで動いているのでしょうか。

    2. 自治体で動き始めた電子決裁のシステム

    岐阜県が資料に書いた構築と運用開始

    岐阜県の「文書管理システム構築・運営費」の要求内容によると、県は令和4年度から電子決裁機能を備えた次期文書管理システムの構築に着手し、令和6年度から運用を開始しています1。自治体の電子決裁が、構想の段階を過ぎて動き始めている一例です。製品名は資料に書かれておらず、intra-martのシステムだと読める記載もありません。

    同じ資料は、電子決裁機能を「起案者が電子ファイルを登録し、回議ルートに設定された承認者及び決裁者がシステム上で差戻し、引上げ又は決裁を行うことができる機能」と注記しています1。これは岐阜県の文書管理システムでの注記であり、電子決裁の一般的な定義ではありません。

    注記に並ぶ回議ルート、承認者、決裁者、差戻し、引上げは、決裁の流れの部品の名前です。ワークフローを組んできた人にとっては、見慣れた言葉でしょう。ただし、差戻しと引上げが流れのなかに置かれていることまでは分かっても、例外が現場で実際にどう扱われているかは、資料には書かれていません。

    資料に書かれた4つの項目

    岐阜県の資料には、構築を始めた年度、運用を始めた年度、電子決裁機能の注記、成果指標の4点が書かれています。構築の着手は令和4年度、運用の開始は令和6年度で、成果指標は起案文書の電子決裁率です。成果指標は実績ではなく目標なので、表では「目標」と分けて示しています。

    項目内容
    構築の着手令和4年度から、電子決裁機能を備えた次期文書管理システムの構築に着手
    運用の開始令和6年度から運用を開始
    電子決裁機能の中身(資料の注記)起案者が電子ファイルを登録し、回議ルートに設定された承認者と決裁者が、システム上で差戻し・引上げ・決裁を行う機能
    成果指標(目標)起案文書の電子決裁率を、2021年度の0%から2026年度に100%にする目標

    成果指標は、同じ資料に抜粋された岐阜県デジタル・トランスフォーメーション推進計画の記載です1。2026年度に100%になったとは読めず、目標の数字だけから、紙の決裁がどう残るのかも分かりません。では、システムが動いたあとの決裁は、どうなっているのでしょうか。

    3. システムの導入後も紙に残る決裁

    オフィスの机で、2段の書類トレーの上段に無地の書類を置く手。横に閉じたノートパソコン

    福島県庁が掲げる電子決裁率

    福島県総務部行政経営課は、2026年6月17日付で「令和8年度福島県庁ペーパーレス化 アクションプログラム」をまとめています2。県庁のペーパーレス化の取組を整理した資料で、ここから電子決裁率の実績と目標が読み取れます。

    このアクションプログラムが紹介する福島県行財政改革プランは、電子決裁率を指標にし、令和12年度までに100%、取組初年度の令和8年度は60%の達成を目標にしています2。いずれも目標であり、達成した数字ではありません。

    一方、R7年度の電子決裁率は26.8%です2。この数字は、電子決裁できない案件も含めた全案件に対する割合です。電子決裁の仕組みがある県庁でも、全案件のうち電子で決裁されたのは26.8%だったことになります。

    図2:福島県庁の電子決裁率、R7年度の実績とR8・R12年度の目標
    福島県庁の電子決裁率の実績と目標 R7年度 実績 26.8% R8年度 目標 60% R12年度 目標 100%

    出典:福島県「令和8年度福島県庁ペーパーレス化 アクションプログラム」(2026年6月17日)をもとに作成。R7年度は全案件が母数で、R8年度以降の目標とは母数が異なります

    26.8%と60%は同じ物差しではない

    図の26.8%と60%は、同じ物差しでは並べられません。26.8%は全案件が母数で、R8年度からは電子決裁できない案件を母数から除いて管理するからです2。60%は母数が変わったあとの目標なので、実績との差を「伸び」として読むのは避けます。

    100%も令和12年度までの目標で、いまの実績ではありません。この図から分かるのは、電子決裁のシステムがある県庁でも、R7年度の時点では全案件の一部しか電子で決裁されていなかったことと、その差を母数の取り方も含めて管理しようとしていることです。では、紙のまま残る案件の理由は、どう集められるのでしょうか。

    4. 紙で決裁する理由を記録する改修

    R8.6に実施するとしている改修

    福島県は、R8年度から母数を電子決裁対象案件に絞るため、紙決裁の際に理由の入力を必要とする文書管理システムの改修をR8.6に実施するとしています2。改修が行われたかどうか、行われた場合にどんな結果が出たかは、資料には書かれていません。

    資料が挙げている項目は、時期、改修の中身、目的の3点です。時期はR8.6、中身は紙で決裁する際の理由の入力、目的は電子決裁できない案件を母数から除いて管理することです。表2は、その3点を並べています。

    項目内容
    時期R8.6に実施するとしている
    中身紙で決裁する際に、理由の入力を必要とする文書管理システムの改修
    目的R8年度から、電子決裁できない案件を母数から除いて管理する(母数を電子決裁対象案件に絞る)

    紙に残る理由を見えるようにする動き

    紙で決裁する案件に理由を添えれば、電子決裁できない案件を母数から除いて管理できます。書き手は、この理由の入力を、紙に残る案件の中身を見えるようにする動きと読んでいます。システムを入れて終わりではなく、紙に残る案件を数え、分けて管理する段階に入っている、という読み方です。

    理由としてどんな内容が集まるのかは、資料にはありません。ただ、代決や合議先の変更、紙の原本の添付のような場面は、決裁の仕事を知る人には想像のつく例です。これは書き手の一般的な例で、福島県の資料に書かれた理由ではありません。

    そのため、紙に残る理由を知っている経験は、システムを入れたあとの仕事で出番を持つ場面があると、書き手は見ています。では、長い経験は、どの場面で役に立つのでしょうか。

    5. 長い経験が役に立つ場面

    資料に出てくる決裁の部品

    岐阜県の資料の注記には、起案者、回議ルート、承認者、決裁者、差戻し、引上げという言葉が並んでいました1。これらは、決裁の流れを組むときに最初に決める部品です。流れを一度でも設計したことのある人なら、それぞれの部品を、どこまで細かく決めておく必要があるかが分かります。

    ただし、資料に書かれているのは部品の名前までです。差戻しと引上げが、現場でどんな場面に使われているのかは書かれていません。ここから先は、書き手の一般的な例を使って考えます。

    紙に戻りやすい場面の例

    まず、課長が不在のときの代決があります。承認者が席にいない日に、誰が代わりに承認するのか。流れの設計に入っていなければ、その日の決裁は止まり、紙に戻る理由になりえます。

    次に、金額によって合議先が変わる場面です。一定の金額を超えると、通常のルートに別の部署が加わる。こうした変更が流れに入っていないと、利用者は紙に書き足して回すほうが早いと感じるかもしれません。さらに、添付が紙の原本でなければならない場面もあります。代決、合議先の変更、紙の原本は、いずれも書き手が思いつく一般的な例で、岐阜県や福島県の資料に書かれた理由ではありません。

    図3:決裁の流れと、紙に戻る例外
    決裁の流れと、紙に戻る例外の例 ふだんの順路 起案 回議ルート 承認 決裁 紙に戻る場面 差戻し 引上げ 代決 合議先の変更 紙の原本

    図の作成:Remogu編集部。差戻しと引上げは岐阜県の資料の注記にある語です。代決・合議先の変更・紙の原本は書き手の一般的な例で、自治体の資料に書かれた理由ではありません

    経験が出番を持つ条件

    こうした例外の扱いを知っていることが、案件で役に立つかどうかは、案件の中身によって決まります。流れの設計や見直しを含む案件なら、例外を先に洗い出せる人の経験は出番を持つと、書き手は見ています。一方、すでに流れが固まっていて、画面の細かな修正だけを頼まれる案件では、その経験を使う場面は限られます。

    つまり、経験が評価されるかどうかは、製品名よりも、案件がどの段階の仕事を求めているかで変わります。評価の理由も条件も、公的な調査の結果ではなく、書き手の見立てです。では、その経験を、案件の言葉にどう直せばよいのでしょうか。

    6. 経験を案件の言葉に直す

    明るい机で、見開きの無地のノートの左に長い横線、右に短い横線を引き分ける手元

    職務経歴書の書き方の組み替え

    職務経歴書に製品名だけを書くと、読む側は製品の名前から中身を想像するしかありません。そこで、製品名の横に、何を設計し、何を直したのかを案件の言葉で添えます。たとえば「承認ルートの設定と変更」と書くより、「回議ルートの定義と例外の洗い出し」と書いたほうが、決裁の仕事をしてきたことが伝わると、書き手は考えます。

    表3は、積んだ経験と、案件での伝え方の組み合わせの例です。例は書き手の一般的な見立てで、実在の案件や資料から取ったものではありません。

    積んだ経験案件での伝え方
    承認ルートの設定と変更回議ルートの定義と、例外の洗い出し
    紙の申請書の電子化画面と帳票の移行
    規程の改定に合わせた保守ルート変更が及ぼす影響の確認
    利用者からの問い合わせ対応定着の支援と、手順書の整備

    伝え方を選ぶときの目安

    伝え方は、案件の依頼文に出てくる言葉に寄せます。依頼文が移行を中心に書かれていれば、紙の申請書を電子化した経験を先に置きます。保守が中心なら、規程の改定に合わせて流れを直した経験が先です。同じ経歴でも、案件ごとに順番を入れ替えるわけです。

    経験の長いエンジニアがフリーランスとして最初の契約を結ぶ場面については、50代エンジニアの最初の契約でも整理しています。経験を言葉に直す作業は、年代にかかわらず、案件の依頼文を読むところから始まります。

    伝えた経験が、実際の案件で求められるかどうかは、打ち合わせで確かめるしかありません。そのため、次に、参画を決める前に何を尋ねるのかを順番に見ていきます。

    7. 参画前に確かめること

    打ち合わせで尋ねる4つの順番

    自治体の資料から読めたのは、電子決裁のシステムが動き始めていること1、R7年度の電子決裁率が全案件に対して26.8%だったこと2、そして福島県が紙決裁の理由の入力を求める改修をR8.6に実施するとしていることでした2。これらは、紙に残る案件の理由を扱う仕事が、いまの現場にある可能性を示しています。ただし、案件ごとの中身までは分かりません。

    そこで、打ち合わせでは、次の順番で尋ねます。最初に、対象の業務と決裁の種類です。次に、紙に残る案件をどう扱うのか。3つ目は、ルートの変更を誰が決めるのか。最後に、自分の担当範囲と契約です。順番は書き手の見立てで、尋ねる中身は案件によって変わります。

    図4:参画前に確かめる順番
    参画前に確かめる4つの順番 1 対象の業務と決裁の種類 2 紙に残る案件の扱い 3 ルート変更を決める人 4 担当範囲と契約

    図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません

    担当範囲と、決める人の確認

    4つのうち、最後の担当範囲は、案件ごとに差が出やすい点です。既存システムの保守を請け負う場合に、どこまでを自分の仕事とするかの線の引き方は、Javaの保守範囲の記事で整理しています。決裁の流れの設計や例外の洗い出しを頼まれるなら、その作業が契約の範囲に入るかも、先に言葉にしておきます。

    ルートの変更を誰が決めるのかは、提案の通り方にも関わります。流れを変える提案は、システムの担当だけでなく、決める立場の人に伝わる言葉でなければ進みません。そうした提案の組み立て方は、DX提案と決裁者も参考になります。

    決裁が紙に戻る理由を知っている経験

    冒頭の相談に戻ります。「電子決裁は入れたのに、結局みんな紙で回しているんです」と言われたとき、代決や合議先の変更が頭に浮かぶ人は、決裁が紙に戻る理由を知っています。その経験が、どの案件で役に立つのかは、尋ねる順番を踏んで確かめられます。intra-martの経験は、古い技術の経験ではなく、決裁が紙に戻る理由を知っていることです。

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    8. よくある質問

    intra-mart以外のワークフロー製品の経験も生きますか

    生きる場面はあると、書き手は見ています。決裁の流れと、紙に戻る例外の知識は、製品の名前とは別に積まれた経験だからです。ただし、案件が求めているのが特定の製品の設定や操作であれば、その製品での経験が先に見られます。案件の依頼文で、設計と保守のどちらが中心かを確かめてください。

    Javaの開発経験がまだ少なくても参画できますか

    案件によっては、開発以外の役割もあると、書き手は見ています。たとえば、流れの設定、要件の整理、移行、定着の支援といった仕事です。ただし、どの案件にそうした役割があるかは、依頼文と打ち合わせで確かめるしかありません。参画できるとは言い切れないため、担当範囲を先に尋ねます。

    自治体ではなく企業の案件でも同じ考え方ですか

    紙に残る例外を洗い出す点は、同じ考え方が使えると、書き手は見ています。代決や合議先の変更は、組織の種類を問わず出てくる場面だからです。この記事が扱った数値は自治体の資料に限られており、企業の電子決裁率については、事実として示せるものがありません。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 岐阜県「文書管理システム構築・運営費」(2026年・2026年10月確認)
    *2 福島県「令和8年度福島県庁ペーパーレス化 アクションプログラム」(2026年6月17日・2026年10月確認)