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    合同会社とフリーランスの違い|株式会社と比較する設立費用と届出の判断基準

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    明るい窓際の机で、紺と薄緑の無地の小箱を並べ、薄緑の箱に指先を置く手。手前に無地の書面とペン

    📘 この記事でわかること

    • 個人事業と法人は契約の名前がどう変わるのかと、形態を選ぶ前に法人にする理由を決める順番
    • 設立の登記で払う登録免許税の最低額が株式会社と合同会社でどう違うのかと、定款認証の手順が入るのは株式会社の設立であること
    • 厚生年金保険の適用事業所とフリーランス法の対象になり得る範囲が、形態を問わず共通である点

    契約の更新の打ち合わせで、取引先から「次回から法人名義で契約されますか」と聞かれました。個人事業のフリーランスとして受けてきた案件を会社の名前に切り替える話ですが、株式会社にするか合同会社にするか、まだ決めていなかったことに気づきました。どちらを選ぶか、何を基準に決めればよいのでしょうか。この記事では、形態は、法人にする理由と、最初にかかる手間で選ぶ、という見方で順に整理します。

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    1. フリーランスと合同会社・株式会社の違い

    契約の名前が変わる

    個人事業のフリーランスは、自分の名前で取引先と契約します。法人にすると、契約の当事者は会社になり、取引先との契約書や請求書には会社の名前が載ります。株式会社でも合同会社でも、この骨格は同じだと考えられます。

    この違いは、案件の内容や進め方を変えるものではありません。リモートで開発を請け負う仕事そのものは、個人事業のときと同じ場所で、同じ相手と続けられます。変わるのは、誰の名前で約束を交わし、誰の口座に報酬が入るかという、書面と手続の側です。

    ただし、法人にすると決めるまでには、税の比較が先に来ます。個人の所得税と法人税の税率の比べ方は、別の記事で扱っています。この記事は、法人にすると決めたあとに、株式会社と合同会社のどちらを選ぶかだけを扱います。

    形態を選ぶ前に置く問い

    形態を比べ始める前に、法人にする理由を決めておくと迷いが減ると考えられます。取引先に求められたのか、契約の名義を切り替えたいのか、事業を広げる準備なのか。理由が決まると、形態の違いのうち見る点が絞れます。

    理由を決めずに形態から入ると、設立の費用と手間の比べ合いだけになります。一方で、理由が先にあれば、費用や手続のどこまでを気にすればよいかを自分で線引きできます。図1は、この順番を分岐の形で表したものです。

    図1:個人事業から株式会社・合同会社へ進む道筋
    個人事業のフリーランスから株式会社・合同会社への分岐 形態の前に理由を決める 個人事業の フリーランス 法人にする理由 株式会社 合同会社

    図の作成:Remogu編集部。法人にする場面の順番を整理したもので、統計データではありません

    では、形態を選ぶ手がかりになる事実は何でしょうか。最初にかかる費用のうち、国の税額表に載っている登録免許税から見ていきます。

    2. 設立の登記で払う登録免許税の違い

    株式会社と合同会社の最低額

    国税庁の登録免許税の税額表では、設立の登記にかかる登録免許税は、株式会社も合同会社も資本金の額の1,000分の7です1。違いが出るのは、その額が最低額に満たないときです。株式会社は15万円、合同会社は6万円が、申請件数1件につきかかる額として示されています。

    つまり、資本金の額の1,000分の7が15万円に届かない小さな資本金で株式会社を作ると、登録免許税は15万円になります。同じ条件で合同会社を作ると、6万円です。表1は、この2つの形態の税率と最低額を並べたものです。

    税率と最低額の比較

    表1:設立の登記にかかる登録免許税の税率と最低額
    形態登録免許税の税率最低額(申請1件につき)
    株式会社資本金の額の1,000分の715万円
    合同会社資本金の額の1,000分の76万円

    この額は登録免許税だけです。設立にかかる費用の全部ではありません。手続の中身によっては、ほかにも費用がかかる場合があり、その額はこの税額表には載っていません。形態の違いを見るときは、登記で払う税の最低額の違い、という範囲にとどめて読んでください。

    そのため、この差だけで形態を決めるのは早すぎます。最初に払う登録免許税の最低額が違うことは、判断材料の一つです。もう一つの材料である設立の手順の違いは、次の節で扱います。

    3. 株式会社の設立に入る定款認証の手順

    明るい公共施設の窓口カウンターで、紺の無地の書類ばさみを差し出す手と受け取る手

    定款認証と設立登記の流れ

    株式会社の設立には、定款認証の手順が入ります。法務局の株式会社の設立登記(オンライン申請)の案内には、定款認証と同時に申請する場合の作成例が、別に用意されています2。

    この流れは、法務省の運用でも確かめられます。法務省は2024年9月20日から、定款認証と設立登記を合わせて原則72時間以内に完了させる運用を始めました3。ただし、これは条件を満たした場合の運用です。

    図2は、株式会社の設立の手順を3つの段階で表したものです。定款認証のあと、オンラインで設立登記を申請し、法務局で処理される順になっています。

    図2:株式会社の設立で認証から登記まで進む流れ
    株式会社の設立で認証から登記まで進む流れ 認証が先、登記が後 1週間以内 定款認証 公証役場 設立登記の申請 オンライン 法務局での処理 登記の完了へ 条件を満たせば原則72時間以内

    出典:法務省、法務局の公表資料32をもとに作成

    合同会社は設立の前に確かめる

    株式会社の設立に定款認証の手順が入ることは、ここまでの資料で確かめられます。一方で、合同会社の定款の扱いは、今回の資料には載っていません。そのため、この記事では合同会社に同じ手順が要るか要らないかを断定しません。

    合同会社を選ぶ場合も、設立の前に法務局の案内で手順を確かめる、という進め方が現実的だと考えられます。手順の有無は、最初にかかる手間に直接響きます。形態を決める材料にするなら、確かめた結果を使ってください。

    では、設立の手順や費用の違いとは別に、形態を問わず共通している点は何でしょうか。次の節で、比べる軸を絞ります。

    4. 株式会社でも合同会社でも変わらない点

    厚生年金保険の適用事業所

    日本年金機構の案内では、厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所です。事業主のみの場合も含まれています4。法人にすると、働き手が自分だけでも、厚生年金保険の適用事業所になるということです。

    この記事の見立てとして、合同会社も法人である点は株式会社と同じです。このため、厚生年金保険の面では、形態の違いが選ぶ理由にはなりにくいと考えられます。保険料の額や負担の増減は、この記事の範囲を超えるため扱いません。

    フリーランス法の対象になり得る範囲

    公正取引委員会のガイドラインでは、フリーランス・事業者間取引適正化等法の特定受託事業者に、法人も含まれるとしています5。条件は、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ人を使用しないことです。法人にしたあとも、この条件に当てはまれば、対象になり得ます。

    ただし、法人であることだけで対象になるわけではありません。ここで言えるのは、一の代表者以外に役員がなく人を雇っていない法人なら、対象になり得る、という範囲までです。

    表2:株式会社でも合同会社でも共通する項目
    項目株式会社・合同会社に共通すること
    厚生年金保険法人の事業所は、事業主のみの場合も適用事業所です
    フリーランス法一の代表者以外に他の役員がなく、人を雇っていない法人は、特定受託事業者に含まれ得ます

    この2点は、形態の違いでは決まりません。残る比べどころは、最初にかかる登録免許税の最低額と、設立の手順です。比べる軸が絞れたところで、個人事業から法人に移るときの届出の期限を見ていきます。

    5. 個人事業から法人に移るときの届出の期限

    2つの届出と期限の起点

    国税庁の案内では、新たに法人を設立する者は「法人設立届出書」を法人設立の日以後2か月以内に提出するとしています6。期限を数え始める日は、法人の設立の日です。

    これとは別に、個人事業をやめる側の届出があります。同じ国税庁の個人事業の廃業等の届出の案内では、廃業する者は「個人事業の開業・廃業等届出書」を、廃業した年分の所得税の確定申告期限までに提出するとしています6。こちらの起点は設立の日ではなく、廃業した年分の確定申告期限です。

    そのため、「設立から2か月」と「確定申告期限」を、一つの期限として混ぜないようにします。届出ごとに、どの日から数えるかが違います。

    図3:法人に移るときの2つの届出と期限
    法人に移るときの2つの届出の期限 起点が違う2つの期限 法人の設立の日 起点 法人設立届出書 設立の日以後2か月以内 廃業した年分 所得税の確定申告期限 個人事業の開業・廃業等届出書 確定申告期限まで

    出典:国税庁「廃業する場合」6、法人設立届出書の期限も同じ案内6をもとに作成

    廃業の届出とほかの届出

    個人事業の廃業の届出の期限については、廃業届の期限をまとめた記事で詳しく扱っています。個人事業をやめて法人に移る場面でも、確かめる順番は同じです。

    この節で期限を確かめられた届出は、上の2つだけです。ほかに届出が要るかどうかは、今回の資料には書かれていません。設立の前に、税務署の案内で必要な届出を確かめておくと、期限の取り違えを避けられます。

    では、届出が済んだあと、取引先との契約では何が変わるのでしょうか。

    6. 取引先との契約で変わること

    曇りの窓際の机で、無地の書面の上の白いカードを水色のカードに置き換える両手

    契約と請求の名義

    個人事業のときは自分の名前で契約し、自分の名前で請求書を出します。法人にすると、契約書の名義も請求書の発行者も会社になります。株式会社でも合同会社でも、変わるのは名義という点で、この見立ては形態を問いません。

    報酬の振込先と連絡の窓口も、切り替えが話に出る項目です。表3は、場面ごとに個人事業のときと法人にしたあとを並べています。実際の取り決めは契約ごとに異なるため、一般的な整理として読んでください。

    表3:契約の場面で名義が切り替わる項目
    場面個人事業のとき法人にしたあと
    契約書の名義自分の名前会社の名前
    請求書の発行者自分の名前会社の名前
    報酬の振込先自分の名前の口座会社の名前の口座を、取引先と相談して決めます
    連絡の窓口自分契約の当事者である会社の窓口

    名義を切り替える時期の相談

    切り替えの時期は、形態を変える前に取引先へ相談しておくと進めやすいと考えられます。更新のタイミングで切り替えるのか、契約の途中で名義を変えるのかによって、契約書の作り直しの手間が変わるためです。

    冒頭の場面のように、取引先のほうから法人名義の話が出ることもあります。そのとき、形態が未定のままでは切り替えの時期を答えられません。設立の予定日が見えた段階で、取引先に伝えられる状態にしておくと、打ち合わせが止まりません。

    契約や請求の場面で会社を特定する番号については、個人事業主の法人番号をまとめた記事があります。名義を切り替える前に、一度目を通しておくと話が進めやすくなります。

    では、ここまでの事実を踏まえて、株式会社と合同会社のどちらを選べばよいのでしょうか。

    7. 株式会社か合同会社かを決める判断基準

    決める順番

    形態の違いとして確かめられたのは、2つでした。設立の登記で払う登録免許税の最低額が、株式会社は15万円、合同会社は6万円であること1。そして、株式会社の設立には定款認証の手順が入ること2です。

    一方で、厚生年金保険の適用事業所になる点4や、フリーランス法の対象になり得る範囲5は、形態を問わず共通でした。比べる軸は、登録免許税の最低額と手順の有無に絞られます。

    そのため、決める順番は、まず法人にする理由、次に最初にかかる登録免許税の差、続いて定款認証の手順の有無、最後に取引先へ名義を切り替える時期です。理由が先にあるから、差が出る項目のどこまでを気にすればよいかが決まります。

    図4:株式会社か合同会社かを決める順番
    株式会社か合同会社かを決める順番 理由が先、形態は最後 法人にする理由 登録免許税の 最低額の差 定款認証の 手順の有無 名義を切り替える 時期 税の判断は税理士や税務署へ

    図の作成:Remogu編集部。判断の順番を整理したもので、統計データではありません

    税の判断は専門家に確かめる

    この記事は、税の負担を比べるものではありません。個人の所得税と法人の税の比べ方、保険の扱い、消費税の変わり方は、法人化で変わる税率・保険・消費税をまとめた記事で扱っています。

    自分の場合に当てはまる税の判断は、収入や取引の状況で変わります。決める前に、税理士や税務署に確かめてください。この記事で言えるのは、形態の違いのうち、登録免許税の最低額と設立の手順の範囲までです。

    次回の打ち合わせに向けて

    「次回から法人名義で契約されますか」と聞かれたとき、株式会社か合同会社かが決まっていないのは、おかしなことではありません。決める材料は、すでに手元にあります。形態は、法人にする理由と、最初にかかる手間で選びます。

    法人にする理由を言葉にし、登録免許税の最低額の差と定款認証の手順を見比べ、届出の期限を数え間違えないようにする。それだけ整えば、取引先への返事は具体的になります。

    Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。名義が会社に変わっても、リモートで案件に参画する形は変わりません。まず登録して、自分の経験に合う案件の条件を確かめてみてください。

    8. よくある質問

    1人でも合同会社を作れますか

    人数の規定は、今回の資料には載っていません。そのため、この記事では数字を挙げて答えません。合同会社の設立に必要な人数は、法務局の案内で確かめてください。

    法人にしたあとも、フルリモートの案件に参画できますか

    契約の名義が個人から法人に変わるだけで、案件の探し方は変わらないと考えられます。リモートで参画できるかどうかは、案件ごとの条件で決まります。名義の切り替えについては、取引先に相談してください。

    法人にすると税金の負担は軽くなりますか

    個別の事情で変わるため、この記事では断定しません。収入の水準や取引の状況によって、結果は一人ひとり異なります。税率や保険の比べ方は法人化の記事に載せているので、自分の場合は税理士や税務署に確かめてください。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 国税庁「登録免許税の税額表」(2026年4月1日・2026年10月確認)
    *2 法務局「株式会社の設立の登記をしたい方(オンライン申請)」(2026年2月2日・2026年10月確認)
    *3 法務省「スタートアップ支援のための定款認証に関する新たな取組について」(2025年3月3日・2026年10月確認)
    *4 日本年金機構「適用事業所と被保険者」(2026年10月1日・2026年10月確認)
    *5 公正取引委員会「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(2026年1月・2026年10月確認)
    *6 国税庁「廃業する場合」(2025年・2026年10月確認)