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    【Looker】業務委託で引き受ける指標の定義とデータ権限の判断基準

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    夜の暗い部屋のデスクライトの下で、無地の紙2枚を左右に並べ、間のペンの横に手を置く

    📘 この記事でわかること

    • Lookerの仕事が画面づくりで終わらない理由と、成果指標を決めかねている企業の調査結果
    • 指標の定義を書く仕事と決める仕事の分け方と、データの利用主体が1つではない前提
    • 個人データに触れる仕事が委託になり得る場合の役割分担と、契約の前に決めておく項目

    参画して最初の週、営業部と経理部が同じ「売上」の数字を見て食い違い、「Lookerで直しておいてください」と頼まれました。直すのはモデルに書かれた1行の定義ですが、どちらの数え方に合わせるかは、自分では決められません。業務委託でLookerの仕事を受けるとき、数字の意味を決める責任まで背負わされるのではないか、という不安が浮かびます。Lookerの業務委託は、定義を書く仕事と決める仕事を分けて受けます。

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    1. Lookerの仕事が画面づくりで終わらない理由

    指標の定義が集まる層

    Lookerは、データベースにあるデータを、モデルに書いた定義に沿って画面へ出す道具です。この記事では、データベース、モデル、ダッシュボードの3層に分けて考えます。モデルの層では、LookMLというLooker用の言語で、売上や解約率のような指標を、どのデータからどう数えるかとして書きます。ダッシュボードはその定義を読んで表示する層で、画面の見た目は定義の上に乗っています。

    そのため、Lookerの仕事は画面を並べて終わりにはなりにくいと考えます。同じ「売上」でも、返品を引くのか、税を含めるのかで数字は変わり、その選び方は定義に書き込まれます。グラフを直す作業と、定義の1行を直す作業は、見た目が似ていても中身が違います。

    図1:Lookerで扱うデータの流れ
    データの流れと、指標の定義が集まる層 指標の定義はモデルに集まる データベース 元のデータ モデル LookMLで定義を書く 売上・解約率の数え方 ダッシュボード 画面で見せる

    図の作成:Remogu編集部。Lookerの層を整理した概念図で、統計データではありません

    図のとおり、指標の定義が集まるのはモデルの層です。画面の数字が食い違ったとき、原因をたどった先にあるのは、たいていモデルに書かれた数え方です。

    Looker Studioとは別の製品

    名前が似ているLooker Studioは、Lookerとは別の製品です。この記事で扱うのは、モデルに定義を書くほうのLookerです。Looker Studioの経験をどう生かすかは、よくある質問で触れます。

    一方、ダッシュボードを作ってきた経験は、画面の層では生きます。モデルの層の仕事は、画面づくりの経験とは別に、何を書いてきたかを示す必要があると考えます。案件の説明に「Looker」とあっても、依頼する側が求めているのが画面なのか定義なのかで、仕事の中身は変わります。

    では、指標を決める側の企業は、実際にどこまで決められているのでしょうか。

    2. 成果指標を決めかねている企業の調査

    IPA「DX動向2026」の2つの結果

    IPAの「DX動向2026」は、企業を対象にした調査です。DXの成果を把握するための成果指標を設定している企業は、4社に1社にも満たないという結果でした1。数字で成果を測るには、何を指標にするかを先に決める必要があります。その入り口で止まっている企業が、調査には表れています。

    同じ調査で、成果指標を設定できない要因として企業が最も多く挙げたのは、「設定方法がわからない」でした1。意見が割れているのではなく、決め方そのものが分からない、という答えが最多です。

    ただし、この調査が測っているのはDXの成果指標です。BIで追う指標の数や、Lookerの利用状況ではありません。Lookerの案件の動向を示す数字としても読めません。

    調査から読み取れる範囲

    表1は、調査の結果を項目ごとに並べたものです。企業向けの調査なので、回答しているのは企業であり、個人のエンジニアではありません。割合や社数は、この記事では取り上げません。見ていただきたいのは、成果指標を設定している企業が4社に1社にも満たないことと、設定できない要因の最多が設定方法の分からなさであることの2点です。

    項目内容
    調査IPA「DX動向2026」(2026年7月)。企業向けの調査です1
    成果指標の設定設定している企業は4社に1社にも満たない
    設定できない要因最も多く挙げられたのは「設定方法がわからない」1

    この結果から、数え方を言葉にする作業が進んでいない企業がある、と考えます。これは調査の結論ではなく、書き手の見立てです。Lookerで定義を書く人は、決まっていない数え方を、書く段階で初めて突きつけられる立場にいます。次の節で、書く仕事と決める仕事の分け方を整理します。

    3. 定義を書く仕事と決める仕事の分け方

    打ち合わせ机で、無地の紙2枚を並べて相手に向け、向かいの指が右の1枚を選ぶ

    書く仕事の範囲

    定義を書く仕事は、決まった数え方を、モデルに計算式として書くことです。LookMLで書き、書いた式がねらいどおりの数字を返すかをテストし、いつ何を変えたかの記録を残します。ここまでは、エンジニアが自分の手で完結できる範囲だと考えます。

    「Lookerで直しておいてください」という依頼は、書く仕事として受けられます。ただし、直したあとの数字が営業部と経理部のどちらの見方に合うかは、書く仕事の外にあります。式は書けても、その式が正しいかどうかの基準は、書く側からは出てきません。

    決める仕事の範囲

    決める仕事は、どの数え方を採るかを選び、部署間の食い違いを裁き、承認することです。売上に返品を含めるか、解約をいつの時点で数えるかは、業務の都合と責任に結びついた判断です。この判断を下せるのは依頼する側だと考えます。

    図2:指標の定義をめぐる仕事の分担
    書く仕事と決める仕事の分担 決めるのは依頼する側 書く仕事 計算式をモデルに書く テストする 変更の記録を残す 決める仕事 どの数え方を採るか 部署間の食い違いを裁く 承認する

    図の作成:Remogu編集部。仕事の分け方を整理した概念図で、統計データではありません

    食い違いが起きたときの動き方

    冒頭の場面に戻ると、受ける側の動きは決まってきます。営業部の数え方と経理部の数え方を、それぞれ定義の案として書き、数字がどう変わるかを並べて見せます。どちらを採るかは、依頼する側が決めます。

    決まった内容は、定義の記録とともに残します。そうすると、あとから数字を問われたとき、誰がいつ何を決めたかをたどれます。決める責任を背負うのではなく、決めるための材料と記録を渡すのが、受ける側の位置だと考えます。

    では、モデルに触れる人は、どこまでのデータに触れてよいのでしょうか。

    4. データの利用主体は1つではない

    デジタル庁のガイドラインが整理していること

    デジタル庁の「データガバナンス・ガイドライン」は、主に企業の経営者に向けた文書です。データの利用主体は1つではなく、必要なデータの品質や保護の手段も、データのライフサイクルによって異なると整理しています2。営業部と経理部が同じ売上を別々に見ていた冒頭の場面は、利用主体が複数いる状況の一例だと考えます。

    同じガイドラインは、データを共有や連携する相手にはそのための仕組みを整える一方、共有や連携を望まない相手にはデータへのアクセスを遮断する必要がある、と記載しています2。経営者が認識しておくこととしての記載です。

    ここで押さえたいのは、これが経営者向けの文書であり、業務委託を受ける側に課された義務ではないことです。依頼する側が整える前提を、受ける側がどう読み替えるかが、この節の中心です。

    ガイドラインの記載と先に聞くこと

    表2は、ガイドラインの3つの記載と、それを受ける側から見たときに先に聞いておくとよいことを並べています。左の列がガイドラインの記載、右の列が書き手の見立てです。右の列は、ガイドラインが受ける側に求めているものではありません。仕事を引き受ける前に、依頼する側の整え方を知るための問いとして使えると考えます。

    ガイドラインの記載受ける側が先に聞くこと
    データの利用主体は単一ではない2誰がどの数字を見るか
    品質や保護の手段はライフサイクルで異なるどの段階のデータに触れるか
    共有や連携を望まない相手にはアクセスを遮断する2自分のアカウントでどこまで見えるか

    たとえば、自分のアカウントで見えるデータの範囲は、仕事の進め方に直結します。見えるデータが広ければ、定義を試す範囲も広がります。逆に狭ければ、書いた式を試せる範囲が限られるため、先に知っておくほうが段取りを組みやすくなります。

    見えるデータの中に個人データが含まれているときは、話がもう一段変わります。次の節で、その場合の位置づけを整理します。

    5. 個人データに触れる仕事は委託になり得る

    監督の義務を負うのは委託元

    経理部の売上の元データに、顧客の氏名や連絡先が入っていたとします。モデルに定義を書くためにそのデータへ触れるなら、仕事の位置づけは、個人データの取扱いの委託に近づきます。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、個人データの取扱いを委託する事業者、つまり委託元に、委託先で安全管理措置が適切に講じられるよう、委託先を監督することを求めています3。

    ここで義務を負うのは、依頼する側の事業者です。業務委託でLookerの仕事を受けるエンジニアに、監督の義務があるという書き方にはなっていません。受ける側にとっては、依頼する側がどのような整理で仕事を渡してくるのかを知る手がかりになります。

    必要のないデータは渡さない前提

    同じガイドラインは、委託元が委託先を監督するに当たり、委託する業務内容に対して必要のない個人データを提供しないことを当然の前提としています3。これも委託元の側の整理です。

    一方、受ける側から「定義を書くために、顧客の氏名の列は要りません」と申し出る場面は考えられます。これは書き手の見立てで、ガイドラインが受ける側に求めている動きではありません。それでも、触れるデータを最小限にしておくと、依頼する側が整理する範囲も小さくなり、双方にとって話が進めやすくなると考えます。

    分析も委託の例に含まれる

    ガイドラインの注記には、個人データの入力、編集、分析、出力等の処理を委託することが、個人データの取扱いの委託として想定されています3。分析が委託の例として挙がっている点は、Lookerの仕事を考えるうえで見逃せません。

    図3:個人データの取扱いを委託するときの役割
    委託元と委託先の役割 監督の義務は委託元にある 委託元 監督の義務 必要のない個人データは 渡さない 委託先 渡された範囲で 取り扱う 分析も委託の例に含まれる

    図の作成:Remogu編集部。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)の記載を整理した概念図で、統計データではありません

    ただし、Lookerの仕事がすべて個人データの取扱いの委託に当たる、というわけではありません。扱うデータに個人データが含まれているかどうかで、位置づけが変わります。含まれるときは、触れる範囲を契約で決めておく、という進め方が考えられます。これも見立てです。では、契約の前には何を決めておけばよいのでしょうか。

    6. 契約の前に決めておく項目

    明るい机で、無地の書類を透明なクリアフォルダに差し入れる手元

    指標の定義とデータの範囲

    契約の前に確かめる項目へ置き換えると、大きく2つに分かれると考えます。1つは、指標の定義を誰が決め、どの手順で承認し、変えたときにどう記録を残すかです。もう1つは、見えるデータの範囲とアカウントの権限、そして個人データが含まれるかどうかです。

    前者が曖昧なまま始めると、冒頭の場面のように、書く側が決める側の役を暗黙のうちに引き受けてしまいます。後者が曖昧なままだと、触れてよい範囲が分からないまま作業を進めることになります。どちらも、仕事を始める前に言葉にしておけば、後から揉める余地が小さくなります。

    成果物の形と引き継ぎ

    表3は、契約の前に決めておく項目と、その例を並べています。指標の定義とデータの範囲に加えて、成果物の形と引き継ぎの方法も入れました。モデルのコードだけが成果物なのか、テストや定義の一覧まで含むのかで、仕事の範囲は変わります。項目はいずれも書き手の見立てで、ガイドラインや法令が定めているものではありません。

    決めること例
    指標の定義を決める人どの部署の誰が決めるか、承認の手順はどうするか
    定義を変えたときの記録いつ、誰が、何を変えたかを残す場所と形式
    見えるデータの範囲自分のアカウントで見られるデータと、その権限
    個人データの有無扱うデータに個人データが含まれるか、含まれるなら触れる範囲
    成果物の形モデルのコード、テスト、定義の一覧のどこまで含めるか
    引き継ぎの方法参画が終わるときに何をどの形で渡すか

    たとえば、定義の一覧を成果物に含める取り決めをしておけば、参画が終わったあとも、数え方を誰が読んでもたどれます。引き継ぎの方法を先に決めておく利点は、参画が終わる段階で慌てずに済むことです。

    最後に、これらの項目を、自分の経験に結びつけて言葉にする段階へ進みます。

    7. 引き受けた範囲を言葉にする

    範囲を言葉にする5つの順番

    引き受けた範囲を言葉にできると、条件を話し合う材料になると考えます。たとえば「定義の一覧とテストを成果物に含めた」と書けば、画面づくりだけではない仕事だったことが相手に伝わります。単価の数字を挙げなくても、何を引き受けたかが具体的に見えるからです。

    言葉にする順番は、図4のとおり、定義を書く範囲、決める人、触れるデータ、成果物の形、条件の話し合いです。この順に整理しておくと、決める責任を背負う仕事なのか、書いた成果を渡す仕事なのかが、先に区別できます。

    図4:引き受けた範囲を言葉にする順番
    範囲を言葉にする順番 範囲が決まってから条件を話す 1 定義を書く範囲 2 決める人 3 触れるデータ 4 成果物の形 5 条件の話し合い

    図の作成:Remogu編集部。範囲を言葉にする順番を整理した概念図で、統計データではありません

    冒頭の場面に戻って

    最初の週に頼まれた「Lookerで直しておいてください」は、書く仕事として引き受けられます。どの数え方を採るかは、依頼する側が決めます。決まった内容は、定義の一覧とテストと記録の形で残します。

    Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。リモートで参画する案件では、依頼する側と画面越しに範囲を言葉でそろえる場面が増えます。会員登録をして、自分の経験に近い条件の案件を見ながら、引き受ける範囲を考えてみてください。

    Lookerの業務委託は、定義を書く仕事と決める仕事を分けて受けます。

    8. よくある質問

    Looker Studioの経験は業務委託で生かせますか

    Looker Studioは、モデルに定義を書くLookerとは別の製品です。ダッシュボードの組み立てや、見る人に合わせた指標の見せ方の考え方は生かせると考えます。一方、LookMLでモデルを書いた経験は別に示す必要があります。案件で求められているのがどちらの層なのかを、先に確かめてください。

    LookMLを書いた経験がまだ少なくても受けられる仕事はありますか

    範囲を区切った仕事なら、考えられます。たとえば、既存の定義の一覧づくりや、テストの追加です。決まった数え方を整理して書き出す仕事は、新しく定義を決める仕事とは別に切り出せます。範囲を区切った仕事から入り、書いた成果を成果物として残していく進め方が考えられます。

    指標の数え方で部署の意見が割れたときはどうしますか

    決めるのは依頼する側です。受ける側は、それぞれの数え方で数字がどう変わるかを選択肢として並べ、影響を見せます。決まった内容は、定義の記録として残します。

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    Lookerの業務委託は、指標の定義を書く範囲と触れるデータの範囲を先に決めておくと、引き受けた仕事を言葉にしやすくなります。リモートで受けられるデータ分析・BIの案件から探してみてください。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 IPA「DX動向2026」(2026年7月・2026年10月確認)
    *2 デジタル庁「データガバナンス・ガイドライン」(2025年6月20日・2026年10月確認)
    *3 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年6月・2026年10月確認)