業務委託に試用期間はある?初回の短期契約と更新・解除の予告の違い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 発注側の言う試用期間が、契約の上では初回の期間・更新の判断・解除の取り決めの3つに分かれること
- 1か月以上を予定する契約や更新で通算1か月以上になる契約の線と、更新で続く契約に当たる2つの要件
- 6か月以上の業務委託で解除日の30日前までに予告があることと、予告の義務と解除の効力が別の話であること
参画前の打ち合わせで、発注側から「最初の1か月は試用期間ということで」と言われ、思わずうなずきました。話はそのまま次の議題に移り、帰り道になって気づきます。その1か月が終わったあとに何が起きるのかを、誰も口にしていませんでした。合わないと思われた時点で、前触れもなく終わるのではないか。この不安は、試用期間という言葉が契約の上で何を指すのかが見えないまま残るために起きます。業務委託の試用期間は、契約の言葉にすると、初回の期間と更新の約束です。
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1. 「試用期間」と言われたときの読み替え
発注側の言葉としての試用期間
この記事では、試用期間を、発注側が打ち合わせで使った言葉として扱います。契約書の用語として決まった意味を持つ項目ではなく、相手がどんな中身を思い浮かべているかは、言葉だけでは分かりません。なお、この節と第2節の読み替えや確認項目は、一次情報に書かれた決まりではなく、書き手の見立てです。法の決まりとして書くのは、出典の番号を付けた箇所だけです。
言葉をそのまま受け取ると、手元に残るのは「しばらく様子を見る期間がある」という印象だけです。印象だけでは、期間の長さも、終わる日も、終わったあとの扱いも決まらないまま参画が始まります。不安が消えないのは、この空白があるからです。
一方で、同じ言葉でも、発注側が思い浮かべている中身は打ち合わせごとに違い得ます。更新するかどうかを決める時期のつもりなのか、作業の範囲を小さく始めるつもりなのか、途中で終えることもあり得るつもりなのか。こちらから尋ねない限り、その中身は表に出てきません。
契約書での置き場所
書き手の見立てでは、業務委託の契約書に「試用期間」という独立した欄があるとは限らず、様子を見る期間は、期間・更新・解除の条項に分かれて入ります。1つ目は初回の契約期間で、いつからいつまでの契約かを決めます。2つ目は更新の判断と時期で、終わる前に誰がどんな材料で続けるかを決めるかを定めます。3つ目は解除の取り決めで、期間の途中で終えるときの扱いを決めます。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません
こう分けると、打ち合わせで尋ねることが決まります。いつまでの契約なのか、続けるかどうかをいつ決めるのか、途中で終えるときはどうするのか。試用期間という1つの言葉を、3つの質問に置き換えるわけです。質問が3つになれば、答えを契約書の条項の文面で見比べられます。
では、言葉の名前ではなく、中身はどこで確かめればよいのでしょうか。
2. 言葉ではなく中身で確かめる
契約の名称より、働き方の実態を見る考え方
公正取引委員会のQ&Aは、契約上は業務委託であっても、労働関係の法令が当てはまるかどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて判断されると説明しています1。契約書にどんな呼び名が書かれているかより、実際にどう働いているかが見られる、という考え方です。
ここで紹介しているのは、判断の考え方までです。個々の契約や働き方がどう判断されるかは、この記事では扱いません。「試用期間」と書いてあるから業務委託でなくなる、といった話でもありません。
この考え方から、書き手は契約の読み方について1つの見立てを持っています。それは、呼び名そのものは何も約束せず、約束になるのは、期間・更新・解除・作業の範囲といった中身だ、という見方です。発注側の指示の範囲や進め方については、別の記事で整理しています。業務委託における指示と指揮命令の範囲もあわせて確かめてください。
打ち合わせの言葉と確かめる中身
打ち合わせで出やすい4つの言い方を、契約書のどの項目で確かめるかに対応させました。「試用期間」は初回の期間と終わる日、「様子を見たい」は更新を判断する時期と材料、「合わなければ」は解除の取り決め、「まずは小さく」は作業の範囲です。この対応は書き手の見立てで、法の決まりを示したものではありません。右端の列は、書面のどこを見ればよいかの目安です。
| 打ち合わせで出る言葉 | 契約で確かめる中身 | 書面で見る箇所 |
|---|---|---|
| 試用期間ということで | 初回の契約期間と終わる日 | 期間の条項(開始日と終了日) |
| 様子を見たい | 更新を判断する時期と材料 | 更新の条項(判断する時期、成果物や進め方) |
| 合わなければ | 解除の取り決めと予告 | 解除の条項(予告の有無と日数) |
| まずは小さく | 作業の範囲と成果物 | 作業内容の条項 |
ただし、4行目の「まずは小さく」だけは、期間ではなく範囲の言葉です。小さく始めるという話は、作業の範囲と成果物が書面に書かれて初めて意味を持ちます。口頭の「小さく」のままだと、始めてから範囲が広がっても、どこまでが約束だったのかを後から確かめられません。
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3. 初回の短い契約にも引かれる1か月の線

1か月以上を予定する契約
公正取引委員会の解釈文書は、特定業務委託事業者の義務を定めた条の対象に、1か月以上の期間行うことを予定している業務委託が含まれることに留意が必要としています2。特定業務委託事業者は、法律の用語で発注側の事業者を指します。初回の契約を1か月と決めても、1か月を超える予定で結んでも、この線の内側に入ります。
つまり、初回の短い契約であっても、期間が1か月以上なら発注側に果たすべき義務が生じます。義務の中身は多く、この記事では並べません。短期案件で何が変わるのか、1か月・6か月で分かれる決まりで詳しく整理しているので、そちらを確かめてください。
更新で通算1か月以上になる契約
同じ解釈文書は、契約の更新により通算して1か月以上継続して行うこととなる予定の業務委託も、その条の対象に含まれるとしています2。初回の契約が短くても、更新を重ねて通算で1か月以上続く予定の契約であれば、この線に入ります。
そのため、初回を2〜3週間で区切る契約でも、更新を予定しているなら、1か月の線の内側にあるかどうかを見ます。更新を見込んでいるかどうかは、打ち合わせで発注側に尋ねられる材料です。書き手は、初回の期間を尋ねるときに、続ける予定の有無もあわせて確かめることをすすめます。
一方で、もう1本、別の線があります。6か月以上の期間行う業務委託に係る契約を解除する場合等の予告義務です1。1か月の線は、特定業務委託事業者の義務を定めた条の対象になる期間です。6か月の線は、解除等の予告の対象になる期間です。2本は別々の決まりで、1つの期間の長さが両方を同時に決めるわけではありません。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会の資料の説明を整理したもので、統計データではありません
予告の中身は、更新の条件を見たあとに確かめます。
4. 更新で続く契約に当たる2つの要件
前後の契約に求められる2つの要件
公正取引委員会のQ&Aは、契約の更新により継続して行う業務委託というには、2つの要件を満たす必要があると説明しています1。1つ目は、前後の契約の当事者が同一で、内容に一定程度の同一性があること。2つ目は、前の契約の終了日の翌日から次の契約の締結日の前日までの空白期間が、1か月未満であることです。
図の作成:Remogu編集部。公正取引委員会のQ&Aの説明を整理したもので、統計データではありません
片方だけでは満たさない
2つとも満たす必要があるので、片方だけでは要件を満たしません。当事者が同じで内容も近くても、空白期間が1か月以上あれば、2つ目の要件を満たさない形です。逆に、空白が短くても、前後の契約の当事者が違ったり、内容に同一性が見られなかったりすれば、1つ目の要件を満たしません。
なお、どの程度なら「一定程度の同一性」に当たるのかは、確認した資料には書かれていません。契約の内容が前の契約と近いかどうかを自分で判断せず、気になる場合は発注側と書面の文面を見ながら確かめます。
短い初回の契約のあとに続けて契約を結ぶ場合
打ち合わせで「まず1か月で」と言われ、終わったあとに同じ発注側と続けて次の契約を結ぶ予定なら、2つの要件に当てはまるかどうかが分かれ目になります。これは書き手の見立てで、個々の契約がどう扱われるかを示すものではありません。初回の契約を結ぶ段階で、続けて次の契約を結ぶ予定があるかを尋ね、予定があるなら空白期間をどのくらい置くつもりかも確かめます。
5. 6か月以上なら解除の30日前に予告
予告の義務を負うのは発注側
公正取引委員会のQ&Aは、第16条第1項が、6か月以上の期間行う業務委託に係る契約を解除する場合等の予告義務を定めたものだと説明しています1。1か月の線とは別に、6か月以上という、もう1本の線が置かれているわけです。
厚生労働省の案内は、発注事業者は、フリーランスとの業務委託契約が一定の場合に当たるとき、例外事由に該当する場合を除いて、契約の解除日または契約満了日から30日前までに予告しなければならないとしています3。予告をする側は発注事業者で、受け取る側が業務委託を受ける個人です。
試用期間の場面に引き寄せて考えると、初回の期間が1か月や2か月の契約は、この6か月の線の手前にあります。一方で、更新が続いて6か月以上になる契約なら、予告の対象になり得ます。初回の期間だけを見て予告は関係ないと考えず、更新の予定と合わせて見ておきます。
予告の例外事由の1つ
同じ案内は、予告の例外事由の1つとして、業務委託の期間が30日以下など短期間である場合を挙げています3。例外事由はほかにも、災害、再委託、フリーランス側の責めによる場合などがあります。全部の例外事由はこの記事では並べません。
ただし、例外事由の1つに挙げられているのは、短期間の場合があるという一点です。個々の契約がその例外に当たるかどうかは、契約の内容を見て決まります。自分の契約には予告がないと読み取らず、契約書の文面を見ながら発注側と確かめてください。
| 場面 | 予告の扱い | 出典 |
|---|---|---|
| 6か月以上の業務委託を解除する場合等 | 発注事業者は、解除日の30日前までに予告する(例外事由に当たる場合を除く) | 公正取引委員会のQ&A1、厚生労働省の案内3 |
| 業務委託の期間が30日以下など短期間 | 予告の例外事由の1つ | 厚生労働省の案内3 |
表の2行目は、短期間の契約が例外事由の1つに挙げられている、という事実の整理です。その契約でどう扱われるかを決めるものではありません。
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6. 予告の決まりと解除の効力は別の話

解除の効力はこの法律で判断されない
先ほどのQ&Aは、予告義務の説明に続けて、解除の効力はこの法律に基づいて判断されるものではなく、解除の効力や損害賠償は民事上の争いとして司法の判断等で解決されると説明しています1。予告の義務と、解除が有効かどうかという効力は、別の話です。
この記事は、予告が無かった場合に解除がどう扱われるかには踏み込みません。出典が示しているのは、予告の義務を定めた規定と、解除の効力を決める判断が別の場所にあるという点までです。予告があれば大丈夫、予告が無ければ終わり、といった読み方は、どちらも出典から出てきません。
解除条項を先に確かめる
そのため、書き手は、試用期間として始めた契約が期間の途中や終わりで終わる場合の扱いを、契約書の解除条項で先に確かめておくことをすすめます。これは書き手の見立てです。法の予告の決まりに頼る前に、契約の文面で、いつ誰がどんな手続きで終えられるのかを見ておきます。
解除条項の置き方や、予告の日数を契約書にどう書くかは、別の記事で整理しています。案件の中途解除と事前の予告で詳しく確かめられます。この記事では、尋ねる順番を整えるところまでにとどめます。
初回の契約を結ぶ段階で、解除の条項に予告の有無と日数が書かれているかを見ます。書かれていなければ、書き加えられるかを尋ねます。この確認は参画を始めたあとでは言い出しにくくなるので、打ち合わせのうちに済ませておきます。
7. 参画を始める前に確かめること
書面で見る6つの項目
これまでの節を、参画前に書面で見る項目に直します。表3の6項目は、書き手の見立てで、法の決まりとして定められた一覧ではありません。報酬の額と支払期日は、この記事の出典には書かれていない項目ですが、様子を見る期間の契約でも書面で確かめておきたい点として加えました。
| 確かめること | 書面で見る箇所 |
|---|---|
| 初回の契約期間と終わる日 | 期間の条項(開始日と終了日) |
| 更新を判断する時期 | 更新の条項(いつまでに決めるか) |
| 判断の材料(成果物・進め方) | 更新の条項、作業内容の条項 |
| 報酬の額と支払期日 | 報酬の条項 |
| 解除の条項と予告 | 解除の条項(予告の有無と日数) |
| 作業の範囲 | 作業内容の条項 |
表3は書き手の見立てです。報酬以外の項目は、第2節の「打ち合わせで出る言葉」の対応表と同じ線上にあります。報酬の額は、試用期間という言葉が出た打ち合わせで、あとから話が変わりやすい項目です。額と支払期日は、更新後の決め方も含めて、初回の契約の段階で書面に残します。
確かめる順番
6項目を一度に尋ねる必要はありません。順番は、初回の期間、更新の時期と材料、解除の条項、作業の範囲です。報酬は、この4つの話が済んだところで、額と支払期日をまとめて尋ねます。期間が決まらないと、更新の時期も解除の日も決められないからです。
図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません
打ち合わせの帰り道に残らない不安
冒頭の打ち合わせに戻ります。「最初の1か月は試用期間ということで」と言われたとき、うなずく前に尋ねられることは、もう手元にあります。1か月の契約なのか、続けるかどうかをいつ何を見て決めるのか、途中で終えるときの扱いはどう書かれているのか。この3つが答えられていれば、帰り道に残る不安は小さくなります。
業務委託の試用期間は、契約の言葉にすると、初回の期間と更新の約束です。言葉がトライアルでも、様子見でも、同じ3つの質問に置き換えられます。質問を持って打ち合わせに臨めば、相手の言葉を疑うのではなく、約束の中身を一緒に書面へ移す場に変わります。
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8. よくある質問
トライアル期間やお試し期間と言われた場合も同じ考え方でよいですか
書き手の見立てでは、同じ考え方でかまいません。言葉が違っても、初回の期間、更新の判断、解除の取り決めに読み替えて、書面で確かめます。名前より中身を尋ねる点は変わりません。
試用期間の間は報酬を低くすると言われたら、何を確かめればよいですか
書き手の見立てでは、報酬の額と支払期日、更新後の報酬の決め方を、初回の契約の段階で書面に残すよう頼みます。口頭の約束のままだと、更新のときに話が変わっても確かめる手がかりが残りません。
試用期間の1か月で終わると言われたら、予告はありますか
書き手の見立てでは、30日前の予告の対象になるのは、6か月以上の業務委託です1。初回の1か月だけで終わる契約は、対象に当たらない場合があります。一方で、更新を重ねて通算6か月以上になっていれば、対象になり得ます。個々の契約への当てはめは断定できないので、解除の条項を書面で確かめてください。
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業務委託で試用期間と言われたら、初回の契約期間と更新の条件を書面で確かめてから参画を始めると落ち着いて進められます。契約条件が明示されたリモートの案件から探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」(2026年8月26日・2026年10月確認)
*2 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(2026年10月1日・2026年10月確認)
*3 厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく就業環境整備のポイント」(2026年8月6日・2026年10月確認)