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    案件の開発環境はどこまで決まっている?確かめる項目と進め方を解説

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    「案件の開発環境の前提」を示す図です。クラウド/構成管理/DevOps/AIを並べています。強調しているのは構成管理です。行き渡り方が違うと添えています。

    📘 この記事でわかること

    • クラウドやAPIの導入が企業側でどこまで進んでいるかと、構成管理などの記録を残す道具がどの程度行き渡っているか
    • ノーコードや生成AIの活用がどれくらい広がっているかと、DevOpsのような自動化の仕組みがどこまで定着しているか
    • 参画前に確認しておきたい開発環境の具体的な項目と、公的資料をもとにした避けたい進め方の傾向

    案件情報を開くと、使用する言語やクラウドサービスの名前は並んでいても、開発環境そのものがどこまで整っているかは読み取りにくいものです。クラウドの契約から始まる案件もあれば、すでに自動化された仕組みに途中から加わる案件もあります。担当領域を選ぶ手がかりは、道具の名前ではなく、クラウドや自動化がどこまで組み込まれているかという一段深い部分にあります。ここではIPAとデジタル庁の公的な調査をもとに、開発環境の現在地と、参画前に確かめる項目を整理します。

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    1. クラウドとAPIの導入状況

    担当領域ごとの進み方の差

    同じ開発案件でも、クラウドの契約や設計から関わるのか、すでに動いている基盤の運用に加わるのかで、最初に触れる景色は大きく変わります。担当領域が決まった段階で、環境がどこまで整っているかもおおよそ絞り込めます。

    IPAの調査は、クラウドやAPIの導入について、ベンダー企業を中心に比較的進んでいるとしています1。システムを作る側にいるほど、クラウドを前提にした環境に早く触れる機会があるということです。

    利用する側の企業よりも、作る側の企業のほうが導入の歩みが先に進んでいます。道具の名前を覚えることよりも、どちらの立場の環境に加わるのかを最初に切り分けるほうが、見通しが立ちます。

    図1:クラウド・APIの導入が進んでいる場所
    クラウド・APIの導入が進んでいる場所を示す図 導入の進み方 利用する側の企業 導入は緩やかな段階 作る側の企業 クラウド・APIの導入が先行

    図の作成:Remogu編集部。案件を選ぶときに参考になる、導入が進む立場の違いを整理したもので、統計データではありません

    案件情報で見えにくい部分を補う視点

    案件情報に書かれているのは、使用する言語やクラウドサービスの名前までがほとんどです。契約や設計の初期から関わるのか、運用の途中から加わるのかまでは、文面だけでは判断がつきにくいものです。

    そこで役立つのが、業界全体の調査結果と照らし合わせる視点です。クラウドやAPIの導入が進んでいる領域だと分かれば、そこに新しく加わる立場は、比較的整った基盤の上で作業を始められると見通せます。

    クラウドやAPIの導入状況を、利用する側の企業と作る側の企業で並べると、担当領域による環境の整い方の違いが見えてきます。次の一覧は、案件を選ぶときに立場ごとの傾向を確かめる手がかりとして整理したものです。

    立場クラウド・APIの導入環境の傾向参画時に確認したい点
    作る側の企業比較的進んでいます1クラウドを前提にした基盤に触れやすい契約や設計の初期段階から関わる案件が中心
    利用する側の企業作る側に比べて緩やかです1既存の基盤に途中から加わる場面が多い運用や保守の工程を中心に確認する

    立場によって環境の整い方に違いがある以上、次に確かめるのは、記録を残す仕組みがどこまで根付いているかという点です。

    2. 構成管理の道具の普及度

    変更履歴を残す道具の広がり

    クラウドの契約が進んでいても、誰がいつ何を変更したのかを追える仕組みまで整っているとは限りません。設定や構成の変更履歴は、環境の成熟度を測るもう一つの物差しになります。

    IPAの調査は、構成管理のツールを導入している企業について、利用する側で約3割、作る側で約4割にとどまっているとしています1。クラウドやAPIの導入に比べると、履歴を残す道具の広がり方は緩やかです。

    入口が整っていることよりも、変更の記録が残る仕組みがあることのほうが、参画後の作業のしやすさに直結します。クラウドの有無だけを見るのではなく、履歴を追える仕組みの有無まで確かめます。

    構成管理の有無を確かめる意味

    構成管理の道具が一部にとどまっているということは、整っている環境と整っていない環境の差が、まだはっきり残っているということでもあります。この差を事前に知っているかどうかで、参画後の負担の感じ方は変わります。

    変更履歴の有無を確かめる質問は、担当者との打ち合わせでも聞きやすい内容です。設定変更の記録がどこに残るのか、誰が確認できるのかを尋ねるだけで、環境の成熟度はおおよそ把握できます。

    図2:構成管理ツールの行き渡り方
    構成管理ツールの行き渡り方を示す図 導入は3割から4割にとどまる 利用する側の企業 約3割 作る側の企業 約4割

    出典:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成

    入口の整い方だけでなく、記録が残る仕組みまで確かめておくと、環境の全体像はさらにはっきりします。次は、道具そのものの広がり方に目を向けます。

    3. ノーコードやローコードの広がり

    道具を使う場面の広がり

    打ち合わせでノーコードやローコードの話題が出る場面があります。コードを書かずに画面や処理を組み立てる手法は、実際に取り入れられています。

    IPAの調査は、ノーコードやローコードについて、一部の利用を含めると全体の約4割の企業が取り入れているとしています1。特定の業種に限らず、幅広い企業で使われ始めている段階です。

    この広がりは、コードを書く力そのものの価値を下げるものではありません。むしろ、道具を選ぶ判断や、道具では対応しきれない部分を見極める力の価値が上がっていく変化だと捉えられます。

    案件の幅の変化

    ノーコードやローコードが取り入れられている案件では、実装そのものよりも、業務の要件をどう整理するかが問われる場面が増えています。道具の操作を覚えることよりも、業務の要件を読み解く力のほうが差になります。

    これまでコードを書く工程を中心に経験を積んできた方にとっては、要件の整理や連携部分の設計といった、周辺の工程に強みを広げる機会にもなります。

    道具が広がるほど、道具と道具のつなぎ方を分かっている人の価値は相対的に高まります。では、開発の現場でAIはどのように位置づけられているのでしょうか。

    4. 開発におけるAIの位置

    生成AIは、意識している段階の企業が中心

    開発の現場でAIをどう使うかという話題は増えていますが、実際にどこまで組み込まれているかは企業によって差があります。導入済みと、検討や試行の段階とでは、現場で求められる関わり方も変わってきます。

    同じ調査は、開発におけるAIの導入について、利用する側の企業で検討中・試行中を含めて約2割、作る側の企業で約4割が意識している状況としています1。導入が完了した状態というより、向き合い始めている段階の企業が中心です。

    構成管理の道具やクラウドの導入に比べると、AIの位置づけはまだ固まりきっていません。だからこそ、案件ごとにAIとの関わり方を確かめる価値があります。

    立場ごとの意識の差

    生成AIの導入状況を、利用する側の企業と作る側の企業で並べると、意識している段階にどれくらいの差があるのかが見えてきます。次の一覧は、担当領域を選ぶときに、AIとの関わり方をどの程度想定しておくとよいかを整理したものです。

    立場AI導入の状況何を確認すると見通しが立つか
    利用する側の企業約2割が意識している状況1まだ広い範囲での定着には至っていない段階
    作る側の企業約4割が意識している状況1開発の現場でAIに触れる機会が増えている段階

    AIとの関わり方を確かめておくと、次に見るものがはっきりします。それは、開発の進め方そのものを自動化する仕組みが、どこまで根付いているかです。

    5. DevOpsの導入状況

    作る側を除いた導入状況

    DevOpsという言葉自体は広く知られていますが、実際の開発現場でどこまで定着しているかは、また別の話です。言葉の広まりと、仕組みの定着は同じ速さで進むとは限りません。

    同じ調査は、DevOpsやモデルベース開発について、作る側の企業を除くと導入している企業は少ないとしています1。クラウドやノーコードに比べると、広がり方はゆるやかです。

    導入が進んでいる企業が限られているということは、実際に定着した現場で積んだ経験が、それだけ他と比べにくい強みになるということでもあります。

    導入が少ない領域での経験

    DevOpsが定着した現場を経験しているかどうかは、案件情報の文面だけでは伝わりにくい情報です。打ち合わせの中で、開発から運用までの流れがどこまで自動でつながっているかを尋ねてみると、実情がつかめます。

    言葉を知っていることよりも、実際に運用まで一貫して関わった経験のほうが評価につながります。自分がどの工程を、どこまで自動化された環境で担当してきたかを文書に書き出しておくと、打ち合わせでも伝えやすくなります。

    導入が一部にとどまっている今だからこそ、DevOpsが定着した環境に関わる経験は、次の案件を選ぶときの材料になります。

    6. 自動化と更新テストの前提

    構築と運用に置かれた前提

    クラウドを使うこと自体は入口にすぎず、その先の構築や運用をどう進めるかには、公的な資料でも具体的な前提が示されています。ここからは、進め方そのものの前提を見ていきます。

    デジタル庁の基本方針は、IaCによるインフラ作業の効率化を挙げています2。構築の段階から、手作業ではなくコードで環境を整える進め方が前提として置かれています。

    同じ基本方針は、運用作業の自動化を徹底することも挙げています2。構築だけでなく、日々の運用作業についても、自動化を前提にした進め方が求められています。

    更新時の確認の前提

    クラウドサービスは自動で更新される場合があり、更新のたびに動作が変わっていないかを確かめる仕組みも欠かせません。構築や運用の自動化と並んで、更新への備えも前提の一つです。

    同じ基本方針は、マネージドサービスの更新時における確認テストの最適化も挙げています2。手作業で毎回すべてを確かめるのではなく、確認そのものを効率化する進め方が前提とされています。

    構築・運用・更新の3つの場面すべてに自動化の前提が置かれているということは、参画する側にとっても、この3つのどこに強みがあるかを文書に書き出しておく価値があります。

    図3:自動化が置かれる3つの位置
    自動化が置かれる3つの位置を示す図 構築・運用・更新のすべてに自動化の前提 インフラ構築を IaCで効率化 運用作業の 自動化を徹底 更新時の確認 テストを最適化 構築 運用 更新

    出典:デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(2026年)をもとに作成

    7. 使わない方針の道具と、確かめる項目

    使用を避けるサービスと、活用が広がるサービス

    自動化を前提にした進め方がある一方で、そもそも使わない方針が示されているサービスもあります。何を使うかだけでなく、何を使わない方針にしているかも、開発環境を知るうえでの手がかりになります。

    基本方針は、サーバーの構築を前提とするものなど、使用を避けるべきサービスもあるとしています2。クラウドであれば何でも使ってよいわけではなく、進め方の前提に合わないサービスは選ばれにくくなっています。

    一方で、外部のサービスや製品そのものは幅広く活用されています。IPAの調査は、外部のサービスや製品について、一部での利用を含めて6割強の企業が活用しているとしています1。避ける方針があるのは特定の性質を持つサービスであり、外部サービスの活用自体は広く根付いています。

    図4:確かめておきたい2つの視点
    確かめておきたい2つの視点を示す図 使用を避ける方針と、活用の広がり サーバーの構築を前提とする サービスは使用を避ける方針 外部サービスを活用 6割強の企業が導入

    出典:デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(2026年)、IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」(2025年4月)をもとに作成

    参画前に確かめておきたい項目の一覧

    クラウド・API、構成管理、自動化、使用を避けるサービスの4つの視点を、参画前に確かめる項目として一覧にまとめました。案件情報を読むときに、どこを見れば環境の実情がつかめるかの手がかりにしてください。

    確認する項目見る観点関連する視点
    クラウド・APIの活用度契約や設計から関わるか、運用から加わるかを確かめる立場によって進み方が異なります1
    構成管理ツールの定着度変更履歴が残る仕組みがあるかを確かめる利用する側で約3割、作る側で約4割にとどまります1
    自動化の徹底度運用作業がどこまで自動化されているかを確かめる自動化の徹底が挙げられています2
    避けるべきサービスの有無サーバーの構築を前提とするサービスが含まれていないかを確かめる使用を避けるべきサービスもあります2

    冒頭で触れたとおり、案件情報から読み取れるのは言語やクラウドサービスの名前までです。クラウドや自動化がどこまで組み込まれているかは、打ち合わせで尋ねて初めて分かります。

    構成管理の仕組みがあるか、運用作業が自動化されているか、使用を避ける方針のサービスが含まれていないか。この3点は、公的資料が挙げる項目をそのまま質問にできます。道具の名前の一段深いところまで確かめられれば、担当領域も選びやすくなります。

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    8. よくある質問

    外部のサービスや製品は、どのくらいの企業が活用していますか

    IPAの調査は、一部での利用を含めて6割強の企業が活用しているとしています1。

    運用作業について、公的な資料は何を挙げていますか

    デジタル庁の基本方針は、運用作業の自動化を徹底することを挙げています2。

    開発におけるAIの導入は、どのくらいの企業が意識していますか

    IPAの調査では、検討中・試行中を含めて、利用する側の企業で約2割、作る側の企業で約4割が導入を意識しています1。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 IPA「2024年度ソフトウェア動向調査 簡易分析レポート」進んでいる領域(2025年4月・2026年10月確認)
    *2 デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」手作業を減らす(2026年・2026年10月確認)