スクレイピングの副業は何を決めてから受ける?規約・著作物・個人情報の判断基準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 収集先の規約や公式のAPIと、集める中身が著作物かデータかという、コードを書く前に依頼者と確かめる2つの入口
- 個人情報が入るときにガイドラインが定める取得と利用目的の扱いと、取得の間隔や納品後の使い道の決め方
- 依頼者と書面に残す7つの項目と、本業と並べて副業を受けるときに確かめる5段階の順番
副業の打ち合わせで、「このサイトの一覧を毎朝ぜんぶ取ってきてほしい。コードは20行くらいでしょう」と言われました。スクレイピングのコードなら書けると思いながら、何を集めて何に使うのかをまだ聞いていないと気づきました。業務委託で受ける副業は、頼まれたとおりに納品したあとで、集めた中身や集め方のせいで自分も困らないかが気がかりです。スクレイピングの副業は、コードを書く前に、何をどこからどう集めて何に使うかを決めます。
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1. スクレイピングの副業で後から困る場面
依頼の一文に残っている4つの未定
「毎朝ぜんぶ取ってきてほしい」という一文には、決まっていない点が4つ残っています。どのサイトから集めるのか。何を集めるのか。どの間隔で取りに行くのか。集めたものを納品後に何に使うのか。この4つは、依頼文を読み返しても答えが書かれていないことが多く、打ち合わせで聞かなければ分かりません。
図の作成:Remogu編集部。副業の収集依頼で確かめる点を整理したもので、統計データではありません
収集先が変われば、確かめる規約も変わります。集める中身が違えば、扱いの考え方も違います。取得の間隔と納品後の使い道は、依頼者の運用によって決まります。コードの20行は、この4点が決まってから書き始めても遅くありません。
頼まれたとおりに納品した後の不安
頼まれたとおりに書いて納品したあとで、集めた中身や集め方が問われたとき、自分は関係ないと言い切れるのでしょうか。副業で収集を受けようとする人が抱えやすいのは、この不安です。この記事では、不安を4つの条件に分け、受ける前に依頼者と決める形で答えます。
4つの条件は、条件1が収集先の規約とAPI、条件2が集める中身の種類、条件3が個人情報の有無、条件4が取得の間隔と納品後の使い道です。第2節から第5節で順に取り上げ、第6節で依頼者と書面に残す項目にまとめます。
ただし、この記事は個々の収集が許されるか許されないかを判断するものではありません。法令に関わる部分は、文化庁、個人情報保護委員会、デジタル庁が公開した資料の記述の範囲で整理します。資料に書かれていないところは、依頼者と確かめる項目として挙げるにとどめます。
2. 条件1:収集先の規約とAPIの確認
依頼を受ける前に見る場所
依頼を受ける前に見るのは、収集先ごとの決まりです。サイトの利用規約に収集に関する定めがあるか、公式のAPIやデータ提供が用意されているか、robots.txtに何が書かれているか、ログインしないと見えないページが対象に含まれるか。この4つは、コードを1行も書かなくても確かめられます。
確かめる項目と見る場所
確かめる4項目は、規約の収集に関する定め、公式のAPIやデータ提供の有無、robots.txtの記載、ログインの要否です。見る場所は項目ごとに違い、規約はサイトの規約のページ、APIとデータ提供はサイトの案内のページ、robots.txtはサイトのトップのアドレスの直下、ログインの要否は実際の画面です。分からない項目は推測で進めず、依頼者に聞く項目として残します。
| 確かめること | 見る場所 | 依頼者と話す内容 |
|---|---|---|
| 利用規約の収集に関する定め | サイトの利用規約のページ | 定めがある場合に、依頼を進めてよいか |
| 公式のAPIやデータ提供の有無 | サイトの案内のページ | 用意されている場合に、そちらを使えるか |
| robots.txtの記載 | サイトのトップのアドレスの直下 | 記載がある場合に、どう扱うか |
| ログインが要るページかどうか | ログイン前と後の実際の画面 | 対象がログイン後の画面に及ぶか |
公開データでも条件は持ち主ごと
デジタル庁が公開した調査研究の最終報告書は、政府のデータについても、データライセンスや二次利用規約の詳細は保有者ごとに個別の確認が必要だと整理しています1。報告書は委託事業者の報告書に基づいて作成されたもので、文中の解釈は政府を代表した意見ではないと断り書きがあります。
これは政府のデータの話で、民間のサイトの規約を直接扱ったものではありません。ただ、公開されているデータでも使える条件は持ち主ごとに確かめる、という考え方の例にはなります。副業の収集でも、収集先ごとに見ていく姿勢は同じです。
robots.txtの記載の扱い
同じ報告書は、海外の公開クロールデータについて、一部のサイトがクローリングをブロックしており、クロールはrobots.txtの許可に依存すると説明しています1。これは特定の収集主体の運用の説明で、法的な要件を述べたものではありません。
そのため、個人が副業で受ける収集でrobots.txtに従う必要があるかは、この資料からは分かりません。それでも、記載は相手のサイトが収集をどう扱っているかを知る手がかりになります。記載を見つけたら、自分で判断せずに依頼者へ伝え、対応を決めます。次は、集める中身のほうを確かめます。
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3. 条件2:集める中身が著作物かデータか

素材ごとに考え方が分かれる
文化庁の著作権テキスト(令和8年度版)は、編集著作物やデータベースの著作物について、個々の素材は著作物の場合もあれば、単なるデータ等の場合もあると説明しています2。制度を解説した資料で、個別の収集を判断したものではありません。
図の作成:Remogu編集部。文化庁の資料の説明を例に整理したもので、統計データではありません
図の3つの分け方は、資料の説明を副業の収集に当てはめた書き手の整理です。文章や画像は著作物の場合があり、価格や数値は単なるデータ等の場合があります。一方で、一覧やデータベースは、個々の素材がデータ等でも、全体が編集著作物やデータベースの著作物にあたる場合があります。
たとえば、価格だけを集める依頼でも、依頼の実態は一覧ごと取り込むことかもしれません。その場合、素材が単なるデータ等であることだけでは話が終わりません。何を、どの単位で集めるのかを、打ち合わせで具体的に聞きます。
解析の用に供する場合という例
同じ資料は、著作権法第30条の4(著作物を享受することを目的としない利用)の条件の説明の中で、該当する場合の例として「情報解析の用に供する場合」を挙げています2。例として挙げられているだけで、情報解析に使えば集めたものを自由に扱えると読むことはできません。条文には、ほかにも満たすべき条件があります。
そのため、集めた中身を解析に使うのか、そのまま見せるのかで、考え方が変わり得ます。使い道は条件4で決める項目と重なるので、集める中身と使い道を並べて、依頼者と確かめます。資料は再公開の可否を扱っていないので、この記事でも再公開が許されるかは書きません。
次の条件は、集める中身に個人の情報が入るかどうかです。
4. 条件3:個人情報が入るかどうか
義務を負うのは個人情報取扱事業者
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)が取得について定めているのは、個人情報取扱事業者です。副業で収集を受ける人が、その義務を負うとは限りません。依頼者が負うとも限りません。誰が当たるかは依頼の形によって変わるので、集める中身に氏名や連絡先のような個人の情報が入るかどうかを、まず依頼者と確かめます。
委託先としての監督や再委託の扱いは、別の記事(個人情報保護法でフリーランスが求められること)で整理しています。この節は、集める段階で出てくる3つの定めだけを扱います。
取得と利用目的に関する3つの定め
ガイドラインが定める3つは、適正取得、要配慮個人情報の取得、利用目的の通知または公表です。適正取得は、偽りその他不正の手段による取得を禁じています。要配慮個人情報は、あらかじめ本人の同意が要ります。利用目的は、ネット上で本人が自発的に公にしている情報を取得した場合に、通知または公表が必要な事例として示されています。
| ガイドラインの定め | 中身 |
|---|---|
| 適正取得(法第20条第1項) | 偽りその他不正の手段による取得は禁じられています3 |
| 要配慮個人情報(法第20条第2項) | 法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意が必要です3 |
| 利用目的(法第21条第1項) | ネット上で本人が自発的に公にしている情報を取得した場合は、通知または公表が必要な事例として示されています。単に閲覧しただけの場合は除かれます3 |
公開されている情報でも確かめる場面
利用目的の事例は、公開されている情報なら集めてよい、という根拠にはなりません。むしろ逆に、本人が公にしている情報を取得した場合でも、通知または公表が要る事例として示されています。そのうえで、単に閲覧しただけの場合は除かれます。
要配慮個人情報の具体的な項目や、同意が不要になる例外の中身は、この記事では取り上げません。収集の対象にそうした情報が入りそうなときは、コードを書き始める前に依頼者へ伝え、ガイドラインの記述を一緒に確かめます。次は、取得の間隔と納品後の使い道です。
5. 条件4:取得の間隔と納品後の使い道
取得の設計で決める4点
取得の設計で依頼者と決めるのは、取得の間隔、同時接続の数、取得する範囲、止める条件の4点です。この記事の資料には負荷に関する数値の基準が載っていないので、秒数や本数は書きません。相手のサーバーの通常の利用を妨げない設計にする、という方針を、書き手の見立てとして先に依頼者と共有します。
図の作成:Remogu編集部。取得の設計で決める点を整理したもので、統計データではありません
「毎朝ぜんぶ」の依頼なら、朝のうちのいつ、何回取りに行くのかを決めます。同時接続の数は、一度に取りに行く本数です。取得する範囲は、対象のページと項目に絞ります。数を決めるときの基準は、収集先ごとに依頼者と相談します。
止める条件は、取得をやめる場面と、やめる人を決めておく項目です。相手のサイトが応答しなくなったとき、規約が変わったとき、robots.txtの記載が変わったときに、誰が気づいて誰が止めるのか。連絡の順番まで決めておけば、納品後に運用を任された場合も動けます。
納品後の使い道
集めた中身を納品したあとに依頼者が何に使うのかで、条件2と条件3の見方が変わります。解析に使うのか、そのまま見せるのかで、著作権の考え方が変わり得ることは第3節のとおりです2。個人の情報が入るなら、利用目的の通知または公表が要る事例もあります3。
使い道が決まっていない依頼であれば、決まるまで収集の範囲を狭くしておく進め方もあります。範囲を絞った状態で納品し、使い道が固まった段階で広げるかどうかを話し合います。広げるときは、条件1から条件3を、あらためて同じ順で確かめます。
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6. 依頼者と書面に残すこと

書面に残す7項目
書面に残す7項目は、収集先と範囲、集める項目、取得の間隔、個人情報の有無と扱い、納品物の形と使い道、収集先の規約が変わったときの対応、成果物の権利です。表の左が決める項目、右がその具体例です。書面の形は契約書でも、メッセージでの合意でもかまいませんが、あとで読み返せる形で残します。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 収集先と範囲 | 対象のサイトと、取りに行くページの範囲 |
| 集める項目 | 取得する項目の一覧と、取得しない項目 |
| 取得の間隔 | 取得する時刻帯と、1回に取りに行く範囲 |
| 個人情報の有無と扱い | 個人の情報が入る場合の扱いと、入らないようにする方法 |
| 納品物の形と使い道 | 納品するデータの形式と、依頼者の用途 |
| 収集先の規約が変わったときの対応 | 取得を止める連絡先と、再開を判断する人 |
| 成果物の権利 | 納品するコードの権利を、誰が持つか |
規約が変わったときの対応
収集先の規約やrobots.txtの記載は、依頼を受けたあとに変わる場合があります。変わったときに誰が気づき、誰が止めるかを決めていないと、納品後に動けません。書面には、変更に気づいた側が相手に連絡する、という程度の取り決めでも書いておきます。
成果物の権利との切り分け
納品するコードの権利は、集めた中身の扱いとは別の取り決めです。コードの権利を誰が持つかは、別の記事(成果物の著作権の譲渡)で整理しています。収集の依頼では、集めた中身の使い道と、書いたコードの権利を、書面の別の項目として分けて残します。
7. 本業と並べて受けるための順番
確かめる5段階の順番
依頼を受ける順番は、収集先の確認、中身の確認、個人情報の確認、取得の設計、書面の5段階です。収集先の規約とAPIは、コードを書く前に確かめられるので最初に置きます。中身の種類と個人情報の有無は、収集先が決まれば見えてくるので、その次です。
図の作成:Remogu編集部。副業で収集を受ける順番を整理したもので、統計データではありません
取得の設計は、前の3段階で分かった内容を受けて決めます。たとえば、個人の情報が入る収集先なら、取得する範囲を絞る相談から始まります。最後に、決めた内容を書面に残して、コードを書き始めます。
本業の経験を副業に持ち込む前に
本業でスクレイピングに近い処理を書いた経験があっても、副業の依頼は別の収集先、別の依頼者、別の使い道を持っています。本業で通った段取りを、そのまま当てはめない方が安全です。5段階を毎回同じ順で確かめるのは、そのためです。
Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です。場所に縛られずにPythonの経験を活かす道は、副業のほかにもあります。まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみてください。
打ち合わせで「コードは20行くらいでしょう」と言われたら、コードの話に入る前に、収集先、中身、個人情報、間隔、使い道を聞きます。スクレイピングの副業は、コードを書く前に、何をどこからどう集めて何に使うかを決めます。
8. よくある質問
公開されているページなら、どれでも集めてよいですか
公開されていても、確かめる点が残ります。集める中身は著作物の場合があり、一覧全体が編集著作物やデータベースの著作物にあたる場合もあります2。個人の情報が入るなら、本人が自発的に公にしている情報でも、通知または公表が要る事例があります3。収集先の条件は持ち主ごとに確かめます1。どれも集めてよいかの結論は出せないので、依頼者と一緒に確かめます。
APIがあるサイトでもスクレイピングで受けてよいですか
書き手の見立てとしては、公式のAPIやデータ提供があるなら、先に依頼者へ伝えて、そちらを使えるかを確かめます。使えるなら、収集先の規約や取得の間隔を、一から決め直さずに済む場合があります。使えない理由が依頼者の側にあるときは、その理由を書面に残します。
本業の業務で使う収集と似た依頼を副業で受けるときに確かめることは何ですか
書き手の見立てとしては、2点です。1つは、本業の契約や社内の規程で、副業がどう扱われているかです。もう1つは、本業で知った情報を副業に持ち込まないための、秘密保持の取り決めです。この2点は記事の資料に記述がないので、本業の契約書や規程の文面を読んで確かめます。
リモートワーク案件をお探しの方へ
Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
スクレイピングの副業は、収集先・中身・取得の間隔・使い道を依頼者と先に決めておくと、本業と並べて受けやすくなります。リモートで受けられるPythonの案件から探してみてください。
会員登録無料 / 案件閲覧・相談は無料
※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 デジタル庁「政府等保有データのAI学習データへの変換に」(2025年6月2日・2026年10月確認)
*2 文化庁「著作権テキスト」(2026年5月21日・2026年10月確認)
*3 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年6月・2026年10月確認)