【RPA】副業で納めるロボットに付ける4つの備えと受ける前に決める条件
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 総務省が自治体向けに示した「野良ロボット」の説明と、作り手がいない時間に止まったロボットが抱えるリスク
- 動作ログ・止まった位置の確認・手作業で代替する手順・管理台帳という4つの備えを、副業の納品物に置き換える考え方
- 受ける前に発注元と決めておく6つの条件と、作って納めるだけでなく内製を手伝う受け方もあること
火曜の午前中、業務委託で納めたRPAのロボットが止まり、昼休みにスマートフォンを開くと、副業の発注元の担当者から「止まっています」とだけ連絡が届いていました。本業の会議は抜けられず、返事ができるのは夕方です。ロボットが動くのは平日の日中で、作り手が手を離せない時間と重なるため、RPAの副業は受けられないのではと迷う人もいます。RPAの副業は、自分がいない時間に止まる前提で納めます。その前提に立つと、何を渡せばよいかが見えてきます。
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1. RPAの副業で一番困るのは止まったとき
止まる時間と、手が空く時間のずれ
RPAの副業でいちばん困るのは、シナリオを作る場面ではなく、納めたロボットが止まったときです。ロボットが動くのは平日の日中が中心で、本業を持つ人が会議や作業で手を離せない時間と重なります。
図の作成:Remogu編集部。想定の時間帯を整理した概念図で、統計データではありません
一方、作り手が対応しやすいのは夜や週末です。止まった時間と手が空く時間がずれるため、止まってから作り手が気づくまでのあいだ、ロボットは止まったままになります。ここは書き手の見立てで、ロボットが動く時間帯は案件ごとに違います。
納める側が用意するもの
ただし、問題は作り手が駆けつけられないことそのものではありません。駆けつけられなくても、発注元が状況をつかんで次の手を選べるかどうかです。
たとえば冒頭の場面で、発注元に必要なのは、どこまで処理が済み、どこで止まったのかが分かる材料です。その材料が納品物に残っていれば、返事が夕方になっても、発注元は止まった位置をたどれます。では、作り手がいなくなったロボットは、そもそもどう扱われるのでしょうか。
2. 作り手がいなくなったロボットと「野良ロボット」
管理されているロボットと野良ロボットの違い
総務省が自治体向けにまとめたガイドブックは、担当者の異動後にメンテナンスされず放置されるなど、管理が不十分になったRPAを、通称「野良ロボット」と呼んでいます1。セキュリティ上のリスクにもなりかねない、という説明です。
表の上の行は、ガイドブックが運用ルールの例として示した管理台帳に載り、管理者と担当者が決まっているロボットです1。下の行は野良ロボットで、メンテナンスされずに放置され、セキュリティ上のリスクになりかねないと説明されています1。分かれ目は台帳への記載と担当者の有無です。なお、ここで挙げた資料は自治体向けのもので、民間企業の副業の発注を述べたものではありません。
| 状態 | 中身 |
|---|---|
| 管理されているロボット | 管理台帳に載り、管理者と担当者が決まっています1 |
| 野良ロボット | メンテナンスされずに放置され、セキュリティ上のリスクになりかねません1 |
副業の納品に重ねると
ガイドブックが描くのは自治体の担当者の異動後ですが、副業で納めた作り手が本業の時間帯に連絡を取りにくい状況も、ロボットを見る人がいなくなる点で重なります。ただし、この重ね方は書き手の見立てで、ガイドブックが副業を想定しているわけではありません。
そのため、納める側は、作り手がいなくなっても管理を続けられる形でロボットを渡すことを考えたいところです。では、作り手がいないあいだにロボットが止まったとき、運用する側は何を手がかりに動くのでしょうか。
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3. 備え1・2:動作ログと、止まった位置の確認

備え1:動作ログを残す
ガイドブックはシナリオ作成の推奨事項の1つに、処理中の動作ログを残し、RPAの動作結果を毎回確認する手段を設けることを挙げています1。自治体向けの推奨の例示です。
副業の作り手は、毎回の結果をその場で見に行けるとは限りません。そのため、動作ログは、作り手がいない時間帯に何が起きたかを後から読み取る材料として納める、というのが書き手の見立てです。
備え2:止まった位置を確認できるようにする
一方、停止したときの対応は、ガイドブックの別の箇所に書かれています。エラーメッセージやログの確認により、どこまで正常に処理され、どこで止まったのかを確認し、シナリオを修正して続きを処理するか、手作業で代替するかを判断する、という流れです1。
出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(2025年7月)をもとに作成
この流れで確認と判断を行うのは、ロボットを運用する側です。作り手が駆けつけなくても判断できるだけの材料を残しておくことが、備え1・2の狙いだと考えています。
では、判断の結果が「手作業で代替する」になったとき、運用する側は何を頼りに手を動かすのでしょうか。
4. 備え3:手作業で代替する手順の文書化
ガイドブックが挙げる文書化
ガイドブックはシナリオ作成の推奨事項として、RPAの仕様と合わせて、手作業で代替する際の手順を文書化することを挙げています1。自治体向けの推奨の例示であり、義務や規則として示されたものではありません。
停止時の判断には「手作業で代替する」という選択肢が含まれています1。副業で納めるなら、シナリオだけでなく、その選択肢を実行するための手順も納品物に入れる、というのが書き手の見立てです。
納品物に入れるものの一覧
表の右列で、ガイドブックの推奨事項に当たるものと、書き手の見立てとして足したものを分けています。ガイドブックが挙げているのはRPAの仕様と手作業で代替する際の手順の文書化で、動作ログの見方の説明は、備え1・2を副業の納品に合わせて置き換えたものです。
| 納めるもの | 中身 | 位置づけ |
|---|---|---|
| シナリオ | ロボットに処理をさせる本体です | 納品物の基本(書き手の見立て) |
| RPAの仕様 | 手作業で代替する際の手順と合わせて文書化するものです | 推奨事項の例示1 |
| 手作業で代替する際の手順 | ロボットが止まったときに、人の手で同じ処理を続けるための手順です | 推奨事項の例示1 |
| 動作ログの見方 | 残したログから止まった位置を読み取るための説明です | 書き手の見立て |
では、手順まで渡したロボットを、発注元はどう管理するのでしょうか。
5. 備え4:管理台帳に載る形での引き渡し
管理台帳に記載される項目
ガイドブックの構成管理の例では、RPAの適用業務・自動化範囲・動作環境・操作対象のシステム名・管理者・担当者等を管理台帳に記載し、一元管理する方法が示されています1。運用ルールの例です。
出典:総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(2025年7月)をもとに作成。項目はガイドブックが例として示したものです
担当者の欄に残り続けない引き渡し
第2節の野良ロボットは、担当者の異動後に管理が不十分になった例でした1。副業の作り手が担当者の欄に残り続けると、連絡の取りにくい作り手だけが頼りの、野良ロボットと同じ状況になりかねません。ここは書き手の見立てです。
そのため、納めるときに、管理者と担当者の欄を発注元側の名前で埋めてもらう形にしておく、というのが書き手の見立てです。作り手の名前は、納品時の連絡先として別に残せます。では、台帳に載る形で渡す以外に、受ける前に何を決めておけばよいのでしょうか。
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6. 受ける前に決めておく条件

発注元と話しておく6つの項目
この表は書き手の見立てで、資料から導いた条件ではありません。備え1〜4で納品物を整えても、止まったときの一次対応を誰がするか、連絡がつく時間帯はいつかを決めていなければ、結局は冒頭の場面に戻ります。表の例は、受ける前に発注元と話しておきたい内容です。
| 決めること | 決める中身の例 |
|---|---|
| 止まったときの一次対応 | 最初に対応するのは誰か |
| 連絡がつく時間帯と返事までの目安 | 夜や週末のどの時間帯に連絡がつくか、返事までどのくらいかけるか |
| ロボットを動かす端末とアカウント | 誰が用意するか |
| 操作対象のシステムの変更 | 変更があるとき、誰がどのように知らせるか |
| 納めた後の修正の受け方 | 修正を依頼する窓口と、受けられる範囲 |
| 秘密保持の範囲 | どの情報を、いつまで、誰に対して守るか |
時間のずれを先に共有する
連絡がつく時間帯を決める作業は、第1節で示した時間のずれを、発注元と共有する作業です。たとえば、返事は夕方になると最初に伝えておけば、「止まっています」とだけ連絡が届いても、発注元は待つ前提で動けます。時間帯を決めるのは、止まらないようにするためではなく、止まったあとの待ち方をそろえるためです。
では、納めて終わりにせず、発注元が自分でシナリオを作る側に回る場合、副業の受け方はどう変わるのでしょうか。
7. 内製を手伝う受け方
自治体で紹介された内製化の工夫
総務省のガイドブックは、RPAを導入済の自治体で、外部委託により作成したシナリオを手本に他業務のシナリオを内製化したり、事業者の指導を受けながらシナリオを完成させたりした例を、初期のハードルを下げる工夫として紹介しています1。自治体の例であり、民間企業の数字ではありません。
また、総務省の自治体DX推進参考事例集【第4.0版】に載る大分県別府市の事例では、RPAのシナリオの内製率が82%と記されています2。令和6年度末時点の1市の事例で、全国の自治体の平均ではありません。この数字は背景の例にとどめ、副業の受け方の根拠にはしません。
副業の受け方の並び
図の作成:Remogu編集部。受け方を整理した概念図で、ガイドブックが示した区分ではありません
並びの下へ進むほど、発注元が自分でシナリオを扱う部分が増えます。これは書き手の見立てで、自治体の例を手がかりに受け方を整理したものです。民間でも同じ形が通用するとは、この資料からは言えません。
どの受け方でも、前提は同じです。RPAの副業は、自分がいない時間に止まる前提で納めます。動作ログと止まった位置の確認、手作業で代替する手順、管理台帳、そして受ける前の条件をそろえておけば、昼休みに「止まっています」と届き、返事が夕方になっても、発注元が次の手を選べる状態を作れます。
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8. よくある質問
RPAの経験が短くても副業で受けられますか
経験の長さで線を引く資料は、この記事の根拠にありません。書き手の見立てとしての目安は、ロボットがどう止まるかと、止まったときに手作業へどう戻すかを、発注元に説明できるかどうかです。
動作ログを残すこと、止まった位置を確認できるようにすること、手順を文書にすることを自分の言葉で説明できれば、第3節から第5節の備えと照らして、受けられる範囲を考えられます。
在宅だけで受けられますか
ロボットを動かす端末やアカウントが発注元の環境にある場合があります。受けられるかどうかは案件によって異なるため、リモートでの接続方法を最初に決めるのが書き手の見立てです。
第6節の表にある「ロボットを動かす端末とアカウント」は、この確認にそのまま使えます。誰が用意するかを決めれば、在宅で対応できる範囲も見えてきます。
本業と同じ業界の副業を受けるときに確かめることは何ですか
書き手の見立てとして、確かめたいのは2点です。1つは、本業の契約書や社内の規程で、副業がどう扱われているかです。
もう1つは、秘密保持の範囲です。本業で知った情報と、副業の発注元から預かる情報の境目を、受ける前に決めておく必要があります。第6節の表の「秘密保持の範囲」と合わせて、発注元とも話しておきたい内容です。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(2025年7月・2026年10月確認)
*2 総務省「自治体DX推進参考事例集」(2026年7月27日・2026年10月確認)