【シャドーAI】起きる理由と、AI利用ルール整備の案件でフリーランスが担う役割
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 個人の判断でAIを業務に使うシャドーAIの意味と、白書が機密情報の流出等のリスクをはらむと指摘する理由
- 生成AIの利用が86.4%に広がる一方、27.0%が組織的な取組はないと答える実態と、ルール作りでつまずく課題
- 禁止より先に安全な活用環境とルールを整える順番と、その対策の案件でフリーランスが担う作業
社内AI基盤の構築支援で参画した初日に、「シャドーAIを止めたいので、外部のAIサービスへの通信を遮断したい」と相談されました。遮断の設定はすぐにできます。ただ、遮断したあと、その人たちはどこで仕事を進めるのだろうと手が止まりました。フリーランスエンジニアとして対策を頼まれたとき、禁止を厳しくするだけで本当に減るのか、気になる方もいるのではないでしょうか。答えを先に言えば、止める前に、使える場所を用意します。
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1. シャドーAIとは
個人の判断でAIを業務に使う状態
総務省の令和8年版情報通信白書は、組織の中の人が個人の判断でAIを業務に使うものを「シャドーAI」と呼んでいます。入力した機密情報の流出等のリスクをはらむ、というのが白書の見方です1。
白書の言い方の中心は「個人の判断で」の部分です。この記事では、組織の承認を経ずに、個人の判断でAIを業務に使う状態と読み替えて進めます。読み替えは書き手の整理であり、白書の定義そのものではありません。
使う人に悪意があるかどうかは、この言葉の条件に入っていません。業務を速く進めたい気持ちで始めた利用でも、承認を経ていなければ、組織の側からは見えない場所で機密情報が入力されるおそれがあります。
組織が用意した環境で使う場合との違い
対になる状態は、組織が情報漏えい対策等を施した活用環境を用意し、利用時のルールを整え、周知したうえで使う形です。白書は、この2つをそろえると生成AIを個人作業の効率化に安全に活用できるとしています1。同じ生成AIでも、どこで誰の判断で使うかによって、組織にとっての意味が変わります。
図の作成:Remogu編集部。総務省の白書の記述を整理したもので、統計データではありません
そして、利用そのものはすでに広く行われています。日本で自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した企業の割合は86.4%でした1。そのため論点は、使うか使わないかよりも、どこで、誰の判断で使われているかに移ります。では、個人の判断による利用は、何が問題になるのでしょうか。
2. 何が問題になるのか
機密情報の流出等のリスク
白書がシャドーAIに結び付けているリスクは、入力した機密情報の流出等です1。AIに質問や資料を入力する行為は、入力した内容を組織の管理の外へ渡す行為にもなり得ます。承認された環境であれば、情報漏えい対策等を施せますが、個人の判断で使う場合はその前提がありません1。
なお、この記事では被害の事例や件数は扱いません。白書が示しているのはリスクの存在であり、実際に何件起きているかの数値は、この記事で使う資料にないためです。数字を作らずに、リスクの構造だけを整理します。
起きることと、問題になる理由の対応
次の表は、シャドーAIで起きることと、それが問題になる理由を並べたものです。白書の記述に沿った整理で、各行は書き手がまとめた言い方です。
| 起きること | 問題になる理由 |
|---|---|
| 業務の入力に機密情報が含まれる | 入力した機密情報が流出等するリスクをはらむ1 |
| 組織の承認を経ずに使われる | 情報漏えい対策等を施した環境の外で使われる1 |
| 利用時のルールが周知されていない | 個人の判断に任されるため、使い方が人によって分かれる1 |
表の2行目と3行目は、白書が示す対策の裏返しです。環境の整備と、ルールの整備・周知がそろえば安全に活用できるというのが白書の考え方なので、どちらかが欠けた状態が、問題の出どころと読めます1。次は、そもそもなぜこの状態が生まれるのかを見ていきます。
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3. なぜ起きるのか
利用の広がり
先に挙げたとおり、日本で何らかの業務で生成AIを利用している企業は86.4%です1。活用の方針についても、生成AIを「積極的に活用する」か「活用する領域を限定して利用する」とした割合の合計は、大企業で74.0%、中小企業で58.1%でした1。
方針として活用を進める組織が多数を占める以上、現場の人にとって生成AIは身近な道具です。使える場面が目の前にあれば、承認された環境を待たずに個人の判断で試す人が出ても、不思議ではありません。これは資料の数値からの書き手の推論です。
組織の取組の空白
一方、日本で全社横断・部署単位・個人業務単位のいずれかで生成AIの組織的な活用に取り組んでいると回答した割合は65.6%でした1。これに対し、「組織的な取組はない」と回答した割合は27.0%と約3割に上り、米国・ドイツ・中国に比べて顕著に高い結果でした1。
出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」をもとに作成。棒の長さは値に合わせています。2つの割合は設問が異なります
2本の棒は同じ調査の別々の設問の結果なので、足し引きはできません。それでも並べて見ると、利用が広がる一方で、組織としての取組がない企業が約3割あるという構図は読み取れます。
ここから先は書き手の推論です。利用が広がり、組織の取組が届いていない企業では、個人が自分の判断で使い始める余地が生まれます。発生した割合を示す数値は資料にないため、「何割の企業で起きている」とまでは言えません。起きやすい土壌がある、という整理にとどめます。
では、取組を進めようとする側は、どこでつまずいているのでしょうか。
4. ルールを作る側がつまずくところ
指針を整えた企業の割合
白書の調査では、生成AIの不適切な利用を防ぐ取組として、日本は「全社的な指針やガイドラインを整備している」が41.1%で最も高い回答でした1。指針を整える動きは、すでに最も多い取組として進んでいます。
指針を作るだけでは、使える環境が用意されたことにはなりません。環境の整備とルールの整備・周知をあわせて進めることで安全に活用できるというのが、白書の考え方でした1。
DX動向2026に見る課題と整備状況
ここからは、白書とは別の調査である、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2026」を使います。AI導入・運用上の課題では、「専門人材が不足している」が50.1%で最も高く2、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」が45.8%、「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」が39.7%でした2。ルール等の整備状況は、次の表のとおりです。
| 区分 | 項目 | 割合 |
|---|---|---|
| 課題 | 専門人材が不足している | 50.1%2 |
| 課題 | 効果やリスクに関する理解が不足している | 45.8%2 |
| 課題 | 利用を管理するルールや基準の作成が難しい | 39.7%2 |
| 整備状況 | 社内ガイドラインやルールは全社的なものを定めている | 32.5%2 |
| 整備状況 | AIポリシーを定め、社内に周知している | 28.8%2 |
| 整備状況 | AIポリシーとガイドライン・ルールのどちらも定めていない | 16.7%2 |
課題の3項目と整備状況の3項目は、別々の設問への回答です。ただ、課題の欄には人材の不足、リスクの理解、基準づくりの難しさが並び、ルールを作ろうとする側の手が止まりやすい箇所が見えます。
白書の41.1%とDX動向の32.5%は、設問も対象も異なるため、並べて差を論じることはしません。どちらの調査でも確認できるのは、ルールを整える動きが進む一方で、作る側にも難しさがあるという点です。では、ルールの前に何を整えればよいのでしょうか。
5. 禁止より先に、使える環境を整える
白書が示す2つの整備
白書は、企業内に情報漏えい対策等を施した生成AIの活用環境を整備し、あわせて利用時のルールやガイドラインを整備・周知することで、生成AIを個人作業の効率化に安全に活用できるとしています1。示されているのは、環境とルールの両方をそろえる道筋です。利用を禁じる手順は、この記述に含まれていません。
冒頭の相談に戻ります。外部のAIサービスへの通信を遮断するだけでは、環境の整備にもルールの整備・周知にも当たりません。遮断した先に使える場所が無ければ、個人の判断で使う理由は残ったままです。これは白書の記述を踏まえた、書き手の読み方です。
環境、ルール、活用の順番
問題の出どころは、組織の承認を経ずに、情報漏えい対策等を施した環境の外で使われることでした1。そのため、先に環境を用意し、そこで使うときのルールを整えて周知する順番が自然です。順番の置き方は書き手の整理です。
一方で、ルール作りには難しさがあります。「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」と答えた割合は39.7%でした2。文面だけで利用を縛ろうとせず、環境の整備と並べて進める意味は、ここにあると考えます。これも書き手の推論です。
図の作成:Remogu編集部。総務省の白書の記述を整理したもので、統計データではありません
では、この環境とルールを整える側として参画すると、どんな作業を担うのでしょうか。
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6. 案件で担う作業
環境とルールを形にする作業
白書が示す環境の整備とルールの整備・周知を、エンジニアの作業に置き換えると、次の表のようになります。作業の分け方は書き手の整理であり、白書がこの5つを挙げているわけではありません。
| 作業 | 中身 |
|---|---|
| 社内の生成AI利用環境の構築 | 情報漏えい対策等を施した活用環境を整える1 |
| 入力データの扱いの設計 | 機密情報の流出等のリスクを踏まえ、入力してよい情報の範囲を決める1 |
| 利用ルールの文書化と周知の支援 | 利用時のルールやガイドラインを書き、利用者へ届ける1 |
| 利用状況の見える化 | 承認された環境が使われているかを、組織の側で確かめられるようにする |
| 人が確認する箇所の設計 | 人の判断や確認を介在させる箇所を決める1 |
上から3行は、白書が示す環境とルールに直接つながる作業です。4行目の見える化は資料に記述が無く、書き手が付け加えた作業です。承認された環境を用意しても使われなければ元に戻る、という見立てから置いています。
人の確認を残す設計と、周知の難しさ
5行目の根拠は、白書が紹介する企業の事例です。この事例では、人間が責任を取るべき点を見極めたうえで、人の判断や確認を適切に介在させる「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を重視しています1。1社の事例なので、一般の傾向として読むことはしません。
周知の支援にも手がかりがあります。IPAの調査で、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」と答えた割合は45.8%でした2。ルールを書いて配るだけでは、効果やリスクの理解まで届かない場合があると考えられます。ここも書き手の推論です。
これらの作業に必要な専門人材が不足していると答えた割合は50.1%でした2。人材の不足が課題として挙がっている領域なので、環境の構築から文書化まで通して関われるエンジニアの経験は、参画の場面で話の材料になります。次は、請ける側の自分の作業にも同じ線が引かれる点です。
7. 参画先で自分がシャドーAIにならない進め方
自分の作業にも同じ構図がある
シャドーAIは、組織の中の人が個人の判断でAIを業務に使う状態を指します1。フリーランスが参画先の資料やコードをAIに入力するとき、個人の判断だけで進めれば、同じ構図になり得ます。契約上の扱いや法的な責任は、この記事では断定しません。契約書と参画先の決まりを確かめる必要があります。
対策を担う立場なら、なおさらです。利用環境を整える側が、自分だけ別の場所で使っていては、示す順番に説得力が出ません。
AI利用を始める前の確認
進め方は、参画先のルールと環境に従うのが基本です。ルールも環境も無いときは、クライアントと協議して取り決めます。確認の順番は、次の図のとおりです。
図の作成:Remogu編集部。確認の順番を書き手が整理したもので、統計データではありません
協議の結果は、あとから見返せる形で残します。口頭だけの取り決めでは、参画先の担当が代わったときに根拠が示せません。残す形式は、参画先のやり方に合わせます。
止める前に、使える場所を
冒頭の相談に、いまなら答えられます。通信の遮断は、使える場所を用意してから、ルールを整えて周知する流れの中に置きます。遮断だけを先にすると、使う人は行き場を失います。止める前に、使える場所を用意します。
こうした環境づくりをリモートで進めたい方は、まず登録して、自分の経験に合う条件を確かめてみてください。Remogu(株式会社LASSIC運営)は、リモートワーク案件特化のエンジニアマッチングで、案件の90%以上がフルリモート可能です3。場所に縛られず、これまでの基盤やセキュリティの経験を活かす道が開けるかもしれません。
8. よくある質問
シャドーAIは禁止すればなくなりますか
禁止でなくなると示す数値は、この記事で使った資料にありません。白書が示すのは、情報漏えい対策等を施した活用環境の整備と、利用時のルールやガイドラインの整備・周知を、あわせて進める形です1。禁止だけを先に進める形は、示されていません。
AIの利用ルールを定めている企業はどのくらいですか
IPAのDX動向2026では、「社内ガイドラインやルールは全社的なものを定めている」が32.5%で最も高く、「AIポリシーを定め、社内に周知している」が28.8%でした2。
一方、AIポリシーとガイドライン・ルールの「どちらも定めていない」企業は16.7%でした2。この数値は、DX動向2026の範囲での結果です。
シャドーAI対策の案件ではどんなスキルが求められますか
求められるスキルを数値で示す資料は、この記事で使ったものにありません。参考になるのは課題の数値で、AI導入・運用上の課題として「専門人材が不足している」が50.1%で最も高い回答でした2。
白書が示す処方から読み取れるのは、情報漏えい対策等を施した環境の構築と、ルールやガイドラインの整備・周知に関わる力です1。案件ごとに中身は異なるので、案件の内容で確かめます。
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Remoguは、株式会社LASSICが運営するITエンジニア・デザイナー専門のリモートワーク案件紹介サービスです。フルリモート・ハイブリッドの案件から、スキルに合うものを探せます。
使える環境と分かりやすいルールを整える仕事は、AIの導入が進む組織ほど求められます。その経験を生かせるリモートの案件から探してみてください。
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※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。
出典・参考情報
*1 総務省「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」(2026年7月24日・2026年10月確認)
*2 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026」(2026年7月・2026年10月確認)
*3 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能