個人事業主の児童扶養手当は所得額で判定|所得制限の表の読み方と現況届の注意点を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

📘 この記事でわかること
- 所得制限限度額は政令上は所得額で規定され、収入ベースの額は参考表示にとどまることと、個人事業主が見る欄
- 扶養親族等が1人の場合の限度額が、所得ベースで全部支給107万円・一部支給246万円であることと、収入ベースとの並び
- 前年の所得が11月分から翌年10月分の支給に効く仕組みと、案件を増やす前に4つの手順で確かめる流れ
確定申告を終えた春、来年度の案件を1件増やすかどうかを考えていました。手元の児童扶養手当の案内には「190万円」とあり、自分の売上の数字と見比べたところで、手が止まります。個人事業主のエンジニアが児童扶養手当の所得制限を確かめるとき、どの数字を見ればよいのでしょうか。先にお伝えすると、収入ベースの目安ではなく、所得額の欄で自分の位置を確かめます。
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1. 個人事業主が児童扶養手当の所得制限を確かめる理由
児童扶養手当が支える対象
こども家庭庁の資料によると、児童扶養手当は、父母が婚姻を解消した児童などを監護するひとり親家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与するために支給される手当です1。支給の可否と額は、所得制限限度額との位置で分かれます。
この所得制限限度額は、前年の所得に基づき算定されます1。そのため、案件を増やした年の数字は、翌年以降の手当を判断する材料として使われます。
190万円が収入ベースの数字であること
資料に示された収入ベースの限度額は、全部支給が190万円、一部支給が385万円(2人世帯)です1。案内で最初に目に入るのはこの数字ですが、売上の額とそのまま比べる前に、何を表した数字なのかを確かめる必要があります。では、判定の軸になっているのはどの数字でしょうか。
2. 児童扶養手当の手当額と支給期月
月額は全部支給と一部支給で分かれる
児童扶養手当の月額(令和8年4月からの見込額)は、全部支給が48,050円、一部支給が48,040円から11,340円です1。一部支給の額は、上限と下限の幅を持った形で示されています。
ただし、示されているのは見込額です。実際に受け取る額は、自治体の案内で確かめます。全部支給と一部支給は、所得制限限度額にそれぞれ別の線があり1、前年の所得がどちらの線に収まるかで分かれます。
支給期月は奇数月
支給期月は、1月、3月、5月、7月、9月、11月です1。案件の報酬が入る月と、手当が届く月は別々に動くため、家計の組み立ては支給期月に合わせて考えておくと整います。
出典:こども家庭庁「児童扶養手当」(2026年4月)をもとに作成
支給の月が分かれば、次に確かめるのは、その月の額を左右する前年の所得の額です。どの月の分から前年の数字が効くのかは、第5節で時間軸に置いて確かめます。
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3. 所得制限は所得額で決まる
収入から所得額を出す流れ
児童扶養手当の額を決める受給者の所得は、収入から各種控除額を減じ、養育費を受け取っている場合はその8割相当額を加えて算出します1。判定に使われるのは、この計算の終点に出る所得額です。
出典:こども家庭庁「児童扶養手当の所得制限限度額について」(2026年4月)をもとに作成
各種控除額の細目は、この資料の範囲には書かれていません。自分の所得額の出し方は、自治体の窓口で確かめます。
政令上の限度額と、収入ベースの参考額
所得制限限度額は、政令上は所得額で規定されています。収入額ベースの額は、参考として控除額等を加えて表示した額です1。案内に並ぶ190万円と385万円は、この参考の額に当たります。
そのため、個人事業主が自分の位置を確かめる欄は、所得ベースの欄です。収入ベースの額を売上の額と比べて可否を決めるのではなく、確定申告で出た所得の数字を、所得ベースの欄に当てます。では、所得ベースの欄には、具体的にどの数字が並んでいるのでしょうか。
4. 扶養親族等1人の限度額を所得ベースで読む
所得ベースの全部支給と一部支給
こども家庭庁の資料(令和8年度)によると、扶養親族等の数が1人の場合の所得制限限度額は、所得ベースで全部支給が107万円、一部支給が246万円です1。個人事業主が確かめるのは、確定申告で出た前年の所得額がこの数字のどこに入るかです。
この数字は扶養親族等が1人の場合の限度額で、扶養親族等の数が変わると限度額も変わります。自分の世帯に当てはまる欄は、資料の表で確かめます。
所得ベースと収入ベースの並び
案内で見かける収入ベースの額は、控除額等を加えて表示した参考の額です1。一方、政令で規定されているのは所得額の側で、所得ベースの全部支給107万円、一部支給246万円が扶養親族等1人の欄になります1。次の表は、この2つの見方を並べたものです。収入ベースの数字は2人世帯の額として示されています。同じ表に並べても、収入ベースは参考として表示された額であり、売上の額と比べる欄ではありません。
| 区分 | 所得ベース(扶養親族等1人) | 収入ベース(参考・2人世帯) |
|---|---|---|
| 全部支給 | 107万円 | 190万円 |
| 一部支給 | 246万円 | 385万円 |
| 資料での位置づけ | 政令上の規定額 | 控除額等を加えて表示した参考の額 |
| 個人事業主が使う欄 | 自分の所得額と比べる欄 | 売上とは比べない欄 |
所得額の位置が分かったら、次に確かめるのは、その数字が何月の分から効くかです。
5. 前年所得が効く期間
適用期間は11月から翌年10月
こども家庭庁の資料によると、令和元年11月から、前年所得による支給制限の適用期間は11月から翌年10月となりました1。判定に使う前年の所得は、1年のなかで好きな月に切り替わるのではなく、11月を境に入れ替わります。
前年の所得は、所得制限限度額を算定する土台です1。確定申告で所得額が出たあと、その額が11月分からの判定に使われる流れを、自治体の案内で確かめておきます。
出典:こども家庭庁「児童扶養手当」(2026年4月)をもとに作成
案件を増やす時期との重なり
来年度に案件を増やすなら、増えた分の所得が前年所得として使われ始める月を、先に頭に入れておくと見通しが立ちます。増やした年の途中の月は、それより前の年の所得が適用される期間に入っています1。
案件の報酬が入る月と、前年所得が効く月は、同じ時期には動きません。いつ受注して、いつ手当の判定に反映されるのかを、別々の時間軸で見る習慣をつけたいところです。
では、同居する親族に所得がある場合や、支給開始から年数がたった場合は、どの書類をいつ出すのでしょうか。
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6. 扶養義務者の所得と5年等を経過したときの書類
生計を同じくする扶養義務者の所得
こども家庭庁の資料によると、受給資格者と生計を同じくする扶養義務者がいる場合、その者の所得額が所得制限限度額以上のときは全部支給停止となります1。自分の所得額が限度額の内側に収まっていても、この条件は別に動きます。
案件を増やす判断は自分の所得額だけで決めがちですが、同じ生計の扶養義務者がいるかどうかも、手当を受ける側が確かめる項目に入ります。誰がこの扶養義務者に当たるかは、自治体の案内で確かめます。
支給開始から5年等を経過する月の前の書類
手当の支給開始から5年等を経過する月の直前には、現況届(8月)と併せて、就業しているなど適用除外の事由に当たることを明らかにできる書類を自治体に提出します1。現況届を出す月が決まっているため、書類は8月より前にそろえておくと、提出の時期に慌てずに済みます。
個人事業主が就業の事実を示す書類として何を出せばよいかは、この資料には書かれていません。提出前に、どの書類が適用除外の事由を明らかにできる書類として扱われるのかを、窓口で聞いておきます。
次の表は、2つの場面で資料が何を求めているかを並べたものです。
| 場面 | 資料の扱い | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 生計を同じくする扶養義務者がいる | その者の所得額が所得制限限度額以上のときは全部支給停止 | 同じ生計の扶養義務者の有無と所得額 |
| 支給開始から5年等を経過する月の直前 | 現況届(8月)と併せて、適用除外の事由に当たることを明らかにできる書類を提出 | 自治体の窓口 |
| 就業しているなどの事由がある | 適用除外の事由に当たることを書類で明らかにする | 自治体の窓口 |
書類の中身の細目は、この資料の範囲には書かれていません。そこで最後の節では、ここまで見てきた数字を、案件を増やす前の確認の順番に並べ直します。
7. 案件を増やす前に確かめる順番
確かめる4つの手順
案件を1件増やす前に確かめるのは、次の4つです。前年の所得額を確定申告の数字から出す。所得ベースの欄と比べる。養育費を受け取っている場合は、その8割相当額を加える1。最後に、その所得額が何月の分から効くかを見る1。
図の作成:Remogu編集部。こども家庭庁「児童扶養手当」「児童扶養手当の所得制限限度額について」の内容を整理したもので、統計データではありません
この順番は、資料が示す数字を、判断の流れに置き直したものです。控除の細目と各自の所得額の出し方は、自治体の窓口で確かめる前提になります。
手順ごとの確認先
4つの手順は、それぞれ見る数字と置き場所が違います。表では、手順ごとに何を確かめ、どの数字に当てるのかを並べました。
| 手順 | 確かめること | 当てる数字 |
|---|---|---|
| 1. 前年の所得額を出す | 収入から各種控除額を減じた所得額 | 確定申告の数字 |
| 2. 所得ベースの欄と比べる | 扶養親族等が1人の場合の限度額との位置 | 全部支給107万円、一部支給246万円 |
| 3. 養育費の8割相当額を加える | 養育費を受け取っている場合の加算 | 養育費の8割相当額 |
| 4. 適用の月を見る | 前年所得による支給制限の適用期間 | 11月から翌年10月 |
5年等を経過する月の直前の現況届(8月)は、この4つとは別の手続きです1。就業しているなど適用除外の事由に当たることを書類で明らかにする場面なので、案件の受注状況と一緒に整理しておきます。
数字で止まる春の判断を、動かす
案内の190万円と自分の売上を見比べて止まった手は、所得額の欄に移した時点で動き出します。収入ベースの目安ではなく、所得額の欄で自分の位置を確かめます。確定申告の数字を、所得ベースの全部支給と一部支給の線に当て、効き始める月を見る。この4つを順に踏めば、案件を1件増やす話を、数字のうえで検討できます。
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8. よくある質問
個人事業主は売上で判定されますか
所得制限限度額は、政令上は所得額で規定されています。収入額ベースの額は、参考として控除額等を加えて表示した額です1。個人事業主は、売上の額を限度額と比べるのではなく、所得ベースの欄で自分の位置を確かめます。扶養親族等が1人の場合は、所得ベースで全部支給が107万円、一部支給が246万円です1。
所得が増えた年の手当はいつから変わりますか
前年所得による支給制限の適用期間は、11月から翌年10月です1。所得が増えた年の分は、その翌年の確定申告で数字が出たあとの、11月分からの判定に使われる側へ回ります。実際の切り替わりの月は、自治体の案内で確かめます。
同居する親族の所得も関係しますか
受給資格者と生計を同じくする扶養義務者がいる場合、その者の所得額が所得制限限度額以上のときは全部支給停止となります1。同居しているだけで対象になるとは書かれていないため、生計を同じくしているかどうかを、自治体の窓口で確かめます。
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出典・参考情報
*1 こども家庭庁「児童扶養手当」(2026年4月・2026年10月確認)
*2 Remogu(株式会社LASSIC運営)公開情報:扱う案件の90%以上がフルリモート可能