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    【VBA】副業で作ったマクロは誰が面倒を見る?引き継ぎと受け渡しの進め方

    監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

    明るい事務所の机で、USBメモリと綴じた手順書を載せた木のトレーを両手で相手に渡す

    📘 この記事でわかること

    • マクロが作った人に紐づきやすい理由と、表計算ソフトの中で収まる業務を副業の受けどころとみる考え方
    • 納めるときに渡すものの一覧と、聞き取りから引き渡しまでの流れ、マクロ付きファイルの受け渡しで相手が警戒する点
    • 委託先として見られる副業の個人が、受ける前に決めておく保守の範囲や受け渡しの経路と、本業と並べる受け方の順番

    副業で受けた集計マクロを納めて半年ほど経ったころ、「担当が替わって、ボタンを押したら止まるようになりました。どこを見ればいいですか」と連絡が来ることがあります。作った本人にしか分からない作りにしていたと気づくのは、その連絡を読んだときです。本業でVBAを書いている人ほど、副業を受ける前から「納めたマクロの面倒を、自分がずっと見ることになるのではないか」と迷います。VBAの副業は、作る前に手放し方を決めます。

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    1. VBAの副業で迷いやすい2つのこと

    納めたあとに続く連絡への不安

    副業でマクロを納めるとき、最初に頭をよぎるのは納めたあとの連絡です。修正のお願いはいつまで来るのか。動かなくなったとき、どこまで見るのか。本業なら同じ職場の誰かが引き受けますが、副業では作った本人に連絡が届きます。

    マクロは、納めた時点では動いていても、渡したファイルの形や使う人が変わると止まる場合があります。これは調査の結果ではなく、書き手の見立てです。止まったときに相手が頼れるのが作った本人だけだと、納品の日が終わりの日になりません。

    ただし、連絡が続くかどうかは腕前だけでは決まらず、納め方で変わる部分が大きいと考えます。保守をどの期間・どの範囲で受けるか、修正の依頼をどんな形で受けるかを先に決めておくと、連絡が来ても何を頼まれているのかが分かります。つまり、不安は「終わりの線と修正の受け方」を決める作業に置き換えられます。

    相手の業務を知らないまま作る不安

    もう一つの迷いは、相手の業務を知らずに作れるのかという点です。集計の元データがどこから来て、誰がどう手で直しているのか。副業の作り手は、相手の業務の外から入ります。

    そのため、聞き取る範囲と、相手のデータで動かして確かめる段を、作業に入る前の約束に入れておきたいところです。業務を全部理解してから作る必要はありません。理解が及ばない部分を、相手のデータで動かして確かめる段に回します。

    図1:2つの迷いをほどく順番
    2つの迷いをほどく順番 迷いやすいこと 受ける前に決めること 保守がいつまでも続く 終わりの線と 修正の受け方 相手の業務を知らない 聞き取る範囲と 相手データで確認

    図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません

    では、そもそもマクロはなぜ作った人に紐づきやすいのでしょうか。

    2. マクロは作った人に紐づきやすい

    資料が挙げるマクロの属人化

    総務省の「自治体におけるRPA導入ガイドブック」は、自治体の職員向けに書かれた資料です。民間の副業にそのまま当てはまる調査ではない点を、先に断っておきます。

    この資料は、表計算ソフトのマクロ機能の活用にはプログラミング能力が要るため、作成・管理が属人的になりがちだとしています。自治体では人事異動で担当が替わりますが、そこで正しく引き継がれないと、自動化した業務の内容がブラックボックスになることが多々ある、という説明です1。

    書き手の見立てでは、副業で納めるマクロにも同じ構図が起こり得ます。相手の担当が替わり、残ったのが動くファイルだけなら、冒頭の連絡のように作った人に問い合わせが届きます。資料から分かるのは自治体の場合で、副業の事例ではありません。

    表計算ソフトの外にまたがる業務

    同じガイドブックは、表計算ソフト以外のアプリケーションを使う業務の自動化は、マクロ機能だけでは難しくなるとしています。RPAは、そうした業務にも比較的低コストかつ短期間で導入できる特徴がある、という説明です1。

    この説明は、RPAのほうが優れていると言うものではなく、手段ごとに向く業務が違うという整理です。VBAが時代遅れになったという話でもありません。副業で受ける側から見ると、業務が表計算ソフトの中で完結するかどうかが、受けるか見送るかの目安になります。

    手段ごとの説明と受けどころ

    ガイドブックの説明と、副業で受けるときの書き手の見立てを並べます。真ん中の列が資料の説明、右の列は見立てです。右の列の「受けどころ」は、表計算ソフトの中で完結する業務を指します。外にまたがる業務は、無理にVBAで抱えず、別の手段も話題にしたほうが相手の役に立つと考えます。

    自動化の手段ガイドブックの説明副業で受けるときの見立て
    表計算ソフトのマクロ表計算ソフトを中心とした自動化。プログラミング能力が要り、作成と管理が属人的になりがちと説明表計算ソフトの中で完結する業務が受けどころ
    RPA表計算ソフト以外のアプリケーションを使う業務にも、比較的低コストかつ短期間で導入できると説明業務が表計算ソフトの外に広がるときは、RPAなど別の手段も話題にする

    次は、受けたマクロを属人化させないために、何を渡せば手放せるのかです。

    3. 引き継げる形で納める

    夕方の事務所で、付箋がたくさん貼られたモニターの前で頬杖をつく担当者の腕

    納めるものの一覧

    先ほどのガイドブックは、RPAの運用について、シナリオの保守性を高める共通のルールを定め、仕様や操作方法を文書として残してノウハウを継承することが重要だとしています1。対象はRPAで、マクロの話ではありません。

    書き手の見立てとして、マクロも同じ考え方で納めるのが近道だと考えます。動くファイルだけを渡すと、相手の担当が替わった時点で中身を知る人がいなくなります。ファイルと一緒に、仕様と操作が分かる文書を渡せば、作った人以外でも読み解く手がかりが残ります。

    納めるものを、次の5つに絞ります。いずれも資料が定めた項目ではなく、書き手の見立てです。「入力と出力」「前提とするシートの形」を仕様のメモに書いておくと、シートの形が変わって止まったときに、どこを見ればよいかが分かります。

    納めるもの中身
    マクロ付きファイル動作する状態の一式
    仕様のメモ入力と出力、前提とするシートの形
    操作の手順ファイルを開き、実行し、結果を確かめるまでの順
    変更の履歴いつ、何を直したか
    確認に使ったデータの範囲どの範囲のデータで動作を確かめたか

    納めるまでの流れ

    文書は、納める直前にまとめて書くと抜けが出ます。そこで、業務の聞き取りの段階から、仕様のメモに書く材料を集めておきます。たとえば、どの列を入力として使い、何を出力するのかは、聞き取りの時点で相手と言葉をそろえておけます。

    試作のあとには、相手のデータで動かして確かめる段を置きます。ここで見つかった食い違いは、確認に使ったデータの範囲として文書に残します。流れの最後の引き渡しでは、ファイルと文書を一緒に渡します。

    図2:納めるまでの5つの段
    納めるまでの5つの段 業務の聞き取り 試作 相手のデータで確認 文書の作成 引き渡し

    図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません

    もう一つ、納めるときに見落としたくない話があります。マクロ付きファイルそのものが、受け取る側にとって注意の対象だという点です。

    4. マクロ付きファイルの受け渡しはセキュリティの話でもある

    受け取る側から見たマクロ付きファイル

    IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編]」は、その名のとおり組織向けの解説書です。WordやExcelで「マクロを有効にする」「コンテンツの有効化」のボタンを押すと、悪意あるプログラムが起動することがあると述べています。「信頼できる場所」に指定したフォルダで開くと、ボタンが表示されずにマクロが実行されてしまう問題もあるとしています2。

    これは悪意あるファイルを想定した記述です。副業で納めるマクロが悪意あるものだと言っているわけではなく、副業の受け手に義務や推奨を示した資料でもありません。それでも、受け取る側の組織から見れば、マクロ付きファイルは開く前に警戒する対象になります。

    図3:マクロ付きファイルを受け取った側の流れ
    マクロ付きファイルを受け取った側の流れ ボタンが出る場合 ファイルを開く ボタンの表示 押すかの判断 ボタンが出ない場合 信頼できる場所で開く ボタンなしでマクロが実行

    図の作成:Remogu編集部。IPAの解説書の記述を整理した概念図で、統計データではありません

    経路と扱いを先に確かめる

    同じ解説書は、業務でマクロ機能を使わない組織に対し、マクロを無効化しておくよう求めています2。裏返すと、マクロを業務で使う組織は、マクロ付きファイルの扱いを決めておく必要があります。これは資料の記述ではなく、書き手の見立てです。

    そのため、受ける前に、ファイルの受け渡しの経路と、相手の組織が業務でマクロをどう扱っているかを尋ねておきます。たとえば、メールで送ってよいのか、共有の置き場を使うのかは、相手によって異なります。納品の当日に慌てないためにも、開く手順まで相手と決めておきたいところです。

    図3の「信頼できる場所」は、資料が問題として挙げている点です。警告を避ける手段として相手に勧める話ではなく、この記事でも設定の手順は扱いません。次は、副業の個人が相手からどう見られているかです。

    5. 副業でも、相手から見れば委託先

    組織向けの解説書が挙げる委託先の問題

    IPAの解説書は、組織の情報セキュリティを担当する側に向けて書かれています。2026年版では、組織の10大脅威として「ランサム攻撃による被害」と「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が、4年連続で1位と2位に選ばれました2。

    ただし、解説書自身が、この順位は危険度を表すものではないと書いています。副業の個人が攻撃を受けた件数や被害の大きさも、この資料には載っていません。ここから言えるのは、組織が委託先を含めた取引全体を見ているという点までです。

    同じ解説書は、委託元の組織に向けた対策として、組織間の取引や委託契約における情報セキュリティ上の責任範囲を明確化し、合意を得ることを挙げています2。対象は委託元の組織で、副業で受ける側に課された義務ではありません。

    受ける側から先に言葉にする

    書き手の見立てを述べます。副業の個人でも、業務のファイルやデータを預かった時点で、相手の組織からは委託先として見られると考えます。個人か法人かにかかわらず、預かる側は預かる側です。

    そのため、相手が責任範囲の確認を求めてくる場合があります。たとえば、預かるデータをどこに置くのか、納品後に誰が何を直すのかといった確認です。求められてから慌てて答えるより、受ける側から先に言葉にして提案したほうが、話が早く進むと考えます。

    この見立ては、IPAの解説書の記述を副業に当てはめたもので、資料が副業の受け手に求めている内容ではありません。何を言葉にしておくのかを、次の節で項目に分けます。

    6. 受ける前に決めておくこと

    朝の書斎で、開いたノートに描いた3つの四角をペンで1本の線でつなぐ手元

    決める6つの項目

    ここから先は資料に根拠のある話ではなく、書き手の見立てです。冒頭の連絡のような場面で困らないために、受ける前に相手と合意しておきたい項目を6つに整理しました。右の列は、決める中身の例です。

    保守の期間と範囲、修正の依頼の受け方は、「保守がいつまでも続く」という不安への答えです。相手のデータで確かめる段や業務データの扱いは、相手の業務を知らない不安への答えになります。どれも金額や期間の数字ではなく、まず言葉で決めるものです。

    決めること決める中身の例
    保守の期間と範囲いつまで、どの不具合や変更までを受けるか
    修正の依頼の受け方依頼の窓口、依頼に書いてもらう内容、受ける回数の考え方
    ファイルの受け渡しの経路メールか共有の置き場か、開く手順を誰がどう伝えるか
    業務データの扱い預かるデータの置き場、納品後の返却や削除
    マクロを動かす環境相手のPCの表計算ソフトの版や、使う人の範囲
    連絡の時間帯本業の時間と重ならない、返信できる曜日と時間

    本業との両立に効く項目

    副業は、本業の時間の外で進めます。そのため、連絡の時間帯と修正の依頼の受け方は、とくに早めに決めておきたい項目です。依頼の形が決まっていれば、返信できる時間に落ち着いて内容を読めます。

    マクロを動かす環境も見落としがちです。相手のPCの表計算ソフトの版が自分の環境と違うと、手元で動いたマクロが相手側で止まる場合があります。どの環境で動作を確かめたのかを、確認に使ったデータの範囲と一緒に残しておくと、止まったときの切り分けに使えます。

    では、これらを踏まえて、本業と並べながら受けるには、どの順番で話を進めればよいのでしょうか。

    7. 本業と並べるための受け方

    受け方の順番

    これまでの節の内容を、受け方の順番として並べ直します。最初に聞くのは業務の範囲です。次に、その業務が表計算ソフトの中で収まるかを見ます。収まらない場合は、RPAなど別の手段も話題にします。

    収まるとわかったら、手放し方を決め、受け渡しを決めて、最後に契約へ進みます。契約の前に手放し方と受け渡しを決めておくと、契約の条件に書き込めます。この順番は書き手の見立てで、資料が定めた手順ではありません。

    図4:本業と並べるための受け方の順番
    本業と並べるための受け方の順番 業務の範囲を聞く 表計算ソフトの中で収まるか 収まらないとき RPAなど別の手段 手放し方を決める 受け渡しを決める 契約

    図の作成:Remogu編集部。書き手の見立てを整理したもので、統計データではありません

    外にまたがる業務は抱えない

    総務省のガイドブックは、マクロ機能だけでは自動化への対応が難しい業務に対しても、RPAは比較的低コストかつ短期間で導入できるとしています1。この説明を踏まえた書き手の見立てでは、表計算ソフトの外にまたがる業務を、無理にVBAで抱える必要はありません。

    相手の業務を聞いた結果、表計算ソフトの外に広がると分かったときは、別の手段の話題を出すほうが相手の役に立ちます。VBAを受ける力と、受けない判断をする力は、両方とも副業を長く続けるために使えます。VBA資産をどこへ移すかという考え方は、別の記事で扱っています。

    手放し方を先に決める

    冒頭の連絡に戻ります。「担当が替わって、ボタンを押したら止まるようになりました」と届いたとき、仕様のメモと操作の手順が相手の手元にあれば、見る場所は相手にも分かります。保守の範囲を決めてあれば、頼まれた内容がその範囲に入るのかも、落ち着いて判断できます。

    本業を続けながら副業を受けるなら、納めたあとの時間も本業と同じ財布から出ていきます。だからこそ、受ける前に終わりの線を引き、納めるものを決め、受け渡しの経路をそろえておくことが、手離れのよさにつながると考えます。

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    8. よくある質問

    Excel以外(WordやAccess)のマクロの副業も同じ考え方で受けられますか

    書き手の見立てとして、同じ考え方で受けられると考えます。納めるものを決め、保守の範囲を決め、受け渡しの経路をそろえる点は、どのソフトのマクロでも変わりません。ただし、動かす環境や業務の広がり方はソフトごとに違うので、受ける前に相手に尋ねて確かめます。

    相手の業務を知らなくても受けられますか

    書き手の見立てでは、受けられます。業務を全部知る必要はありません。聞き取る範囲と、相手のデータで動かして確かめる段を、最初の約束に入れておきます。知らない部分は、聞き取りと相手のデータでの確認で埋めていきます。

    納めたマクロを後でRPAや別の言語に置き換えたいと言われたら、どうしますか

    書き手の見立てでは、仕様のメモや操作の手順が残っていれば、置き換えの材料として使えます。入力と出力、前提とするシートの形が文書にあれば、置き換え先でも同じ動きを目指せます。移行先の考え方は、VBA資産の移行を扱った別の記事にまとめています。

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    ※公開中の案件数は時期によって変わります。記事中の案件の傾向は執筆時点のものです。

    出典・参考情報

    *1 総務省「自治体におけるRPA導入ガイドブック」(2025年7月・2026年10月確認)
    *2 独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編]」(2026年3月・2026年10月確認)